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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十五章:神殺を企む者、神敵を討つ者
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大いなる悪魔の前座⑩

――ガラガラガラッ――

――ザザザッ――


「ッ――ニノ!」

「ん、大丈夫…」


二人は地面に埋め尽くされた白骨の山を派手に撒き散らして体制を立て直す…其処は〝骨塚〟とでも言う様な…人獣、虫問わず膨大な数の命の果てが積み重なる〝白の死地〟だった。


「『推定三百メートル超えの高さから叩き落されてピンピンしてるのは人としてどうなんだ?…まぁそこそこ削れちゃ居るらしいが』」


――ドゴッ――


二人がその場所に鋭い眼を泳がせていると、空高くからそんな声と共に流星の如く黒い影が着弾する。


「『スーパーヒーロー着地ッて無茶苦茶痛いよな…ヒーローの老後は脚が使い物にならんだろ』」


砂煙を振り払いながら、鉄の身体へ姿を変えた屍肉の化物はそう戯言と共に立ち上がり、肉と骨を掻き分ける音を鳴らしてその身体を元通りに〝直す〟…。


「奇っ怪な身体じゃのう…鉄の皮膚で中身は肉か?」

「『〝機械〟だけに〝奇っ怪〟ってか?――良い線行ってるぜ爺さん』」

「じゃろ?」

「「『HAHAHA!…死ねぇい!』」」


――ギリィンッ――


そして雑談交じりに寒い親父ギャグを宣う爺を処刑する為に刃を振るう中、今どきピチピチレディなニノが割って入り冷静に分析する……ちょっと傷付くな。


「……多分違う…〝鉄の鎧〟にハデスが押し込められてる……〝蛸壺〟?」


――ギャリィンッ――


「『〝蛸壺〟か…中々上手い例えだな、どっかの爺と違うな♪』」

「ほざけッ」

「『そうカリカリするなよ爺さん、血圧上げてちゃ早死するぞ?』」


――ブォンッ――

――ザザッ――


俺の煽りに鋭いツッコミ(殺意)を返す三郎丸の元から離れ、俺は骨塚に手を突っ込む…。


――ゴボッ――


手のパーツの隙間から肉塊が膨張し、骨を貪る……そう、コレが〝俺〟だ。


「『生憎プロフェス等の所為で俺の身体はボロボロでね…〝息子〟のお陰でどうにか確実に生き延びれたがそれでもダメージは有った……で、なるべく早く〝器〟を創ろうとして出来たのが〝コレ(鉄の器)〟な訳だ…まぁコレに入ったら一挙動で〝中身〟がグズグズの挽き肉に変わるから、乗る時は人間を辞めなければならないが』」


そんな物好きはそう居ないだろう…恐らくきっと多分。


――ガタガタッ――


「『ん…ぉっと、イカンイカン、流石に話し過ぎたか…さて、そろそろこの肉体を維持するのも限界だ……さっさと始めようか♪』」


俺の言葉に空気が変わる…重く、鋭く…心を囃し立てる〝戦の空気〟に。


「『お前達さえ無力化すればあと面倒なのはプロフェス位のもんだ、そろそろ〝遅れて来る参加者〟の相手をする事も考えねばならん……手早く済ませよう♪』」


空気は重く、身体は軽く…俺の目は俺の動きを見計らう二人を捉える。


「『ッ――〝呪槍〟…〝腸穿つ海獣の屍槍(ゲイ・ボルグ)〟!』」

「「ッ!」」


脚を深く大地へ押し込む…溢れん魔力を己が右手に込めて、先程取り込んだ骨を作り変え〝黒い槍〟を作り…投げる。


――グォンッ――


鉄の身体を遺憾なく発揮し、その槍は風を捻り裂きながら垂直に突き進む……開戦の狼煙、戦の先駆けと成ったその槍は、常人では目で追うこともままならない速度であった……だが。


――ザザッ――


「動きが見えていれば避ける事等容易いわ!」

「でも、ちょっぴり危なかった?」


――ズドォッ――


流石は現代に生まれた戦人か、己へ迫る槍へ向かいながらもその速槍をいとも容易く避けるとは…相も変わらず惚れ惚れする戦の〝力〟…。


(初めは避けた…)

(ハデスはあの身体に慣れてない…)


――ケヒッ♪――


((使い熟される前に、仕留める!――))

「『――って所か?』」


お前達程の戦人だ、俺の弱点等一目見れば看破出来るだろう…故に俺へ追い縋り、己等の領域に持ち込む腹積もりだろうな。


「『――〝戻って来い〟…〝鏃の如く〟♪』」



――ガタガタガタッ――


其処は骨塚の奥深く……獲物を穿ち損ねた槍は〝主〟の声にその身を震わせる…。


――バキンッ――


そして、己の身を何百の破片に砕かせて戻って行く……主の元へ…その間に居る穿ち損ねた獲物の背へ喰らいつくように。


「「ッ!?」」


意識外からの奇襲は完全に嵌まった…此処までくれば並の者ならば〝終わり〟だ…そう、〝並の戦士〟ならば。


――ギギギッ――

――ブシィッ――


「チィッ…小細工を…」

「『――そう褒めるなよ♪』」

「ッ――アグッ!?」


至近距離にまで骨の鏃が迫っていたにも関わらず、ほんの微かな風の音色と己の直感で二人は攻撃を凌ぐ…微かな血肉と〝致命的な隙〟を引き換えに。


「『予想外への対処には誰しも思考に穴を開ける、それは例えどんな人間であれ変わり無い……まるで神の様な頭脳を持つ者であれ…〝小さな穴〟は開く…ソレがこんな一瞬一秒、刹那の攻防ならば、〝致命的な隙〟となるだろうさ♪」

「ッ――!!!』」


ニノの首を掴みながら、三郎丸へそう告げる…その言葉が言い終わらぬ内に振るわれた刀は俺の首元へ迫るが――。


「『〝死刻みの呪槍(ゲイ・ボルグ)〟…』」


――ドシャ――


ソレは俺の首を刈り取る前に止まる……三郎丸の脚が止まり、三郎丸は己の左胸を見て目を見開く…其処に生えていた〝黒い槍〟を見て。


「『〝ゲイ・ボルグ〟…海の獣の骨から生まれ、人々の手を渡りかのケルトの英雄〝クー・フーリン〟へ渡った由緒正しい〝英雄の槍〟…英雄の槍をこんな化物が〝騙る〟のは忍びないが…お前達を相手にするには相応の〝(初見殺し)〟が必要だった故、悪く思わないでおくれよ?』」


三郎丸が崩れ落ちる……立てぬまでも剣を握り続けるのは流石としか言い様が無いが…もう無意味だ。


「『言ったろう…〝決着は直ぐに着ける〟と』」


三郎丸へそう言い渡し、俺の顔へ刀を振るうニノの心臓も同じく貫く……。


「『お前達は俺としても好印象だが、今回の〝計画〟には些か邪魔過ぎる……何、お前達が暴れる舞台は此処ではないだけだ…だから今は眠ってくれ♪』」


寂れた骨塚に背を背け…俺は己の元へ迫る〝気配共〟の元へ飛び立とうとする……。


……しかし。


「待…て……ハデス…!」

「まだ…終わってない…!」


その直前……心臓を失い、倒れ伏した筈の二人は起き上がり、依然燃え滾る戦意を纏いヨロヨロと此方へ刃を向ける。


「『あぁ……知ってたさ、お前達がこの程度で終わる筈無い等、当然知っている』」


俺の言葉へ二人が構える……嬉しいよ、こうしてまだ抗ってくれるのは心底嬉しい事だ、喜ばしく思う…だが。


――ヒュッ――


「『――だが、今は駄目何だよ……悪いな』」


俺は一瞬……ほんの一瞬だけ、二人へそう言い遺し、その脚を〝刎ねる〟…コレで二人は動けんだろう、動けたとしても俺と奴等の元へ来る前に力尽きるだろう。


「『コレは〝戦争〟だが、〝勝負〟じゃない…お前達を殺す事はお前達の矜持を踏み躙った俺には出来ん……次の舞台まで、俺を憎しみ待っていろ』」


なに、俺はソレを受け入れるとも……そして、用意してやるとも…俺とお前達の〝舞台〟は、必ず…。


俺はそう良いその場を去る……二人からの殺意を背に受けながら…。

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