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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第二章:悪夢に足掻く者達
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悪夢の劇場に狂騒は奏でられる⑤

制作途中で投稿した作者が居るらしい

――ザッ……ザッ……ザッ……――


狂った鐘の音に混ざり合う様に、土を踏む音が響く……煩わしい喧騒に顔を歪める者、戦士と呼ぶには華やかな服装の者、無表情に先へ行かんとする者、最前線を歩む者……その僅か5人の者達、姿形がそれぞれ違う、纏う雰囲気がそれぞれ違う、そんなチグハグな者達の中で唯一の共通点……〝剣の紋章〟。


そんな彼等は溢れんばかりの戦意を以て〝住民〟を開放すべく行軍していた……だが。


――ゴーンッ!!!――


『※※※※!?!?!?』

『ッ!?』


その歩みは、鐘と共に発せられた悲痛な、憤怒を帯びた〝咆哮〟によって遮られた。


――ピンポンパンポーン♪――


「『おめでとう諸君、君達の尽力により〝南の獣〟の楔は解かれ、暴走状態に移行したぞ、南の諸君には最悪の情報だったか?』」


そして告げられるその情報に、円卓の面々は動揺し声を荒げる。


「どういう事だ!?何故楔が解けた!?」

「伝令は伝わった筈だろう!?」

「まさか……ハデスが妨害したんじゃ無いでしょうね?」


口々に飛び交う憶測の嵐……しかしそれは。


「おいおい、ソレは流石に心外極まるぞ〝塵芥共(ゴミ共)〟」


それを聞いていた悪夢の主によって遮られる。


『ッ!?』

「ッ!」


――ブンッ――

――ズパンッ――


「――ふむ、やはりその剣は相変わらずの無法振りで……反吐が出るなぁ勇者サマ」

「ハデスッ……貴様――」

「いやしかし、そこの女、今の発言は聞き捨てならんなぁ……この舞台は俺が作ったんだ、何故態々俺が楽しむための舞台装置を俺自身で解かねばならん?……憶測は結構だが言葉には気を付ける事だ、俺の気分次第では細切れにする所だったぞ?」

「ッ!?……な、なら何で解けたのよ!?」


俺が目を細めてそう告げると、女は半歩後退り、恐怖を散らす為に咆える……何故……か。


「生憎と俺も解らん……と言うより気付かなかった、鬼退治に夢中だったからな……ただまぁ、今回の〝参加者〟とは違う〝異物〟だな」


俺は俺へ剣を向ける円卓共にそう返す……全く、部外者が人のゲームに首を突っ込むなと言いたいが。


「まぁ過ぎた事だ、このツケは後に兆倍に返すとして、お前達はモタモタしていて良いのか?……〝アレ〟は移動を始めたぞ?」

『ッ!?』


俺の言葉に、全員が緩んでいた脚に力を込める……さて。


「俺はこのままお前達が負けても一向に構わんが、しかし……部外者の思惑通りと言うのも癪に触る……さて、どうしたものか?」


う〜ん、う〜んと俺が態とらしく身振り手振りで考え込むと、アーサーが声を上げる。


「勿体ぶるな、さっさと言え」

「オイオイ、随分な言い草だな勇者?……折角何か有情な手助けをしてやろうと思ったんだがなぁ?」


――ギンッ――


「お前の無駄話に付き合ってやる義理はない」

「おぉ怖……王たるものが人の話を聞かんのは如何なものかと道化は進言致しますが?……さて、それじゃあこうしよう」


――パチンッ――


『※※※!?!?!?』


「今から此処の獣の力を……そうだな、3割程落としてやる、……しかし……そちらの警戒レベルの低さを鑑みての裁定としては幾らかコチラが損だ……と言う訳で」


――ガシッ――


「「「「ッ!?」」」」

「何を!?」

「お前の聖剣に制限を付ける」

『――ッ!?』

「煩い奴だ……〝黙ってろ〟」


――ドギュンッ――


剣の刃を掴み、全ての瘴気を集中させる……白い剣身にドス黒い穢れが纏わり付く。


「この世界に居る内はソレに絶え間ない瘴気が流れ込む……腐っても女神の創った聖剣、弱らせるので精一杯だが……ハンデとしては十分だろう♪」


――ボトッ……ジュゥゥゥッ――


聖剣を掴んだ腕が焼け溶ける……つくづく聖剣は邪魔臭いな。


「さぁ聖剣本来の力を失ったお前は何だ?……物分かりの悪いお前にも分かる様に言ってやろう、〝聖剣頼りの鈍ら小僧〟、己が正義と驕りたければ自分の力を見せてみろ」


さて、用も済んだし帰るとするか。


「あぁ、ゲームが終われば聖剣の力も戻るだろう」 






○●○●○●


――ドゴンッ……ドゴンッ……――


西の街に、破砕音が響く……家々を破壊しながら〝鬼〟は街を駆けずり回る……燃え滾る身体の炎に焼かれながら、後ろを追う〝悪魔〟から逃れる為に。


「ハッハーッ!柔けぇ!」

「火炙りにしてやるよぉ!」

「メシヤ!油寄越せ!」

「え〜!?コレ料理用なんだけど!?」

「「「「寄・越・せ」」」」

「チクショー!!!」


楽しげに矢を射り、楽しげに剣を振るい、その身を削ってくる悪魔共。


『ダルカン殿、此方西の砦を除き全ての楔を抜きました、既に各方面に報告しており、最後の楔には厳重に警備を敷いています』

「でかした!戻っていいぞ!」


吉報に刃をむき出しダルカンは笑む……鍛え上げた剛腕が、背の大剣を掴み、持ち上げ――


――ブンッ――


『※※※!?――』


目前まで迫っていた鬼を一撃で断ち切った。


「『西の鬼が撃破されました……囚われた人は開放され、鬼が〝休眠状態〟に移行します、再活動は5分後です』」

「むぅ!……流石に一度では終わらんか……お前等、急いで住民救助に移れ、時間は無いぞ!」

『応!』



●○●○●○


『※※※!?!?!?』


東の鬼は、逃げていた……街を駆け回り、這い回り、ソレから逃げていた。


――ブンッ――


『※※※※※!?!?』

「喧しい、化物が」


ソレは厳格な声を上げて、逃げ惑い悲鳴を上げる鬼を斬り付ける……黒い長髪の女だった。


「さぁ、〝ハデス〟を喚べ、そうすれば楽に殺してやる」


そう言い、ゆっくり、ゆっくりと刻んで行く女……その姿は人で有ったが、その在り方は人とは言い難く、その本質は彼女の憎む〝ソレ〟に似ていた。


「『東の鬼が撃破されました、囚われた人は開放され、鬼は休眠状態に移行します』」

「チッ……使えないゴミが」


そのアナウンスと共に、女は舌打ちをして歯軋りをする……その顔は憤憎に歪んでいた。


「〝妹〟を誑かした悪人が……絶対に殺してやる」


天を睨みそう呟く女……空に浮かぶ赤い三日月が、笑った様に見えた。



○●○●○●


「う〜ん、やはりアレな方の守護者が居ると、〝蛹〟では役に立たんな?」


殺したのは……ふむ、ダルカン一派と……ふむ?…この女。


「〝憤憎〟、〝自信〟、〝独善〟……何処かで見た様な……まぁ良いか、忘れたということはどうでも良い事だったのだろう」


少なくともあの鈍ら勇者よりは使えるんだろうな……後は……。


「お!……ほうほう、プロフェスが動くか!」


視界の先にはプロフェスと、ソレに付き従う8人の守護者が居た。


「他の所は……勇者以外特に動きはないか……つまらん」


まぁ良い、プロフェスの戦闘に集中出来るしな。


「次の魔術は一体何を魅せてくれる?」


家々を跳び、館へ進軍するプロフェスを見ながら、俺は口角が上がるのを抑えられずに居た。



●○●○●○


『………』


ソレはただ、其処に居た……這い回る奴隷を見下し、緩慢な微睡みの中に……醜く肥えた腹を膨らませ、汚らしい吐瀉を垂れ流し、また眠る……また、戯れに奴隷を殺す事も有った。


『………』


悪夢の中で眠るソレは不意に目を開いた……それは単に目が覚めた訳では無い。


『………?』


感じるのだ、何かの接近を、何かが迫っているのを……その何かがソレにとって良き事か、悪しき事かは解らずとも、何か〝妙な事〟が起きていると、ソレは感じ、周囲を見渡そうと緩慢に首を動かし――


『「〝混沌の雨槍(カオス・ウル・スピア)〟」』


そして、上から突き刺さる膨大な魔力の槍に身体を貫かれていった……それだけでは無い、家も、奴隷もその周囲の尽くに槍は降り注ぎ、瓦礫に変えていく。


『ッ――※※※※※!!!!!』


明確な攻撃、敵……それを認識した、ソイツは、叫び怒鳴る……それは街全体に波及した。


「フゥ……街に居る人形達が全てコチラへ向かっている……ソチラは私の方で対処しよう、そちらの大物は君達四人に任せたよ」

「「「「了解」」」」





「『ゲーム開始から1時間30分が経過……そろそろ急げよ守護者達』」


夢の覚める時が近付いて来た。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 汚らしい吐瀉を吐き 久しぶりに【危険が危ない】の事例を見た!! ここで使うとしたら吐きではなく 振り撒きか垂れ流しとかの方が良かったかも? [一言] 初見で読み進めてるところです …
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