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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十五章:神殺を企む者、神敵を討つ者
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大いなる悪魔の前座⑥

――ヒュンッ――


「おぉ、怖い怖い…仲間を殺されてお怒りかなヒーロー?」

「チィッ」


苛烈に迫る連撃を一瞬障壁で足止めして躱してゆく……数が二人減ったとは言え、体感的にはその戦力の増減に変化を感じられない。


「闘争において、〝怒り〟は非常に面倒な燃料だ……瞬く間に浸透し、身を焦がす程に熱く、燃え尽きる事すら厭わない……心底面倒臭く、故にこそ面白い〝感情〟だ」


怒りはさらなる闘志を沸かせ、制限していた力を解き放つ…ソレは多大な恩恵を与えると共に、非常に危険なリスクを伴う。


「怒りは盲目を誘う……今のお前の様に♪」


――ドスッ――


「ッ自分から――」


突き出されたアーサーの剣へ突き進み、己の腹を貫かせる……さて、コレで身体の固定は済んだ…。


――ゴッ…ズロォッ…――


「3人目♪」


背中から生えた無数の触手がアーサーへ迫る…もう回避は間に合わないぞ?…。


「さぁ、どうするんだアーサーッ♪…どう凌ぐッ、迷う暇は有るのか!?」

「ッ――!?」


俺の言葉にアーサーが腕を前に顔を守る……聖剣は棄て、最小限の損失に抑えるか……なら――。


――ガチャンッ――


「――無視してんじゃねぇぜハデスッ!?」

「――あ”?」


アーサーの身体を触腕で貫き、その身体を肉塊に変えてやろうとした正にその時、俺の身体を、四肢を巻き取り首を鉄錆た鎖が巻き取り締め上げる……見えるは遥か遠くの血の海の上、水面を揺らしながら此方へ迫る炎と吹雪より、一足早く刃の鎧を纏った男が俺の前へ肉薄する。


――ゴキゴキゴキッ――


「グゲッ――悪いが俺にそう言う〝趣味〟は無いんだが…」

「〝白崩拳〟」

「――お?」


立ち退くアーサーと入れ替わり、ノーマンが俺の前に立つ…身動き出来ないこの状況で、喰らえば即死の〝拳〟が迫る……ピンチかな?…。


「――なぁんて、ちょっと驚いた振りしてみたり♪」


――ゴゴゴゴッ――


足場が大きく揺れ動く、ノーマンの拳は崩れ行く足場により俺の顔を逸れ、その地面の血染めの木船を木っ端微塵に破壊する。


衝撃に投げ出される俺と、ノーマン、そしてガチタンが木片と共に宙を舞う。


――ガシッ――


「ゴホッ!?――オイオイ、もうちょいソフトに掴んでくれよ、締まって呼吸し辛いぞ?」


俺は救護に来たクラーケン(地獄のすがた)にそう文句を付けながら、投げ出された二人を見る…。


「良くもやってくれたなッ、次は状況を良く見ておけ♪」


相も変わらず此方を睨んでいたが、俺がそう言い終えると同時に巨大な触腕に叩き落とされ、飛沫と共に吹き飛ばされる。


「3飛んで4人目だ♪」


さてさて、着実に数は減らしているが…慢心はイケナイ。


「慎重に行こうか、何せ俺は脆弱の肉の器…一太刀喰らえば死んでしまうか弱い命なのだから♪」


――ガタッ――


「?……おや、お前は――」

「確保したぞッ」


ふと、船の残骸から音が響きソチラを見る…其処にはヨイチが二人の骸を抱えて離脱しようとしていた…。


「成る程〝蘇生〟か…だが良いのか?…蘇生は〝エリセ〟が担当だろう?…お前と彼女の距離はかなり離れてるし、何よりこの蛸の足をその身重な状態で躱し切れるのか?」

「クオン!」

「〝裁定の鉄槌〟!」


残骸を足場に、ヨイチは空を飛ぶ…その刹那クオンの声と共に空高くへ忌まわしい十字が生まれ、落ちる…。


「成る程…俺を〝アレ〟で抑えるか…それで?」


ヨイチへ全ての触腕が迫る……空高くへ飛び、空へ投げ出した身体では迫る蛸の脚に対応する事は難しいだろう…。


「――あぁ、成る程♪――戦狂いでも仲間を助ける理性は有ったか♪」


――ズバッ――


俺の言葉の凡そ数拍後…ヨイチへ迫る触腕が突如その動きを止め、次の瞬間一太刀で斬り飛ばされ、その脚を沈める…。


そしてヨイチと入れ替わる様に業火と白氷の鬼がその手に刀を手にして此方へ迫る。


「「ハァァッ!!!」」


迫るは光の十字と炎と氷の鬼の一刀…空を埋め尽くす〝殺意〟の一撃が俺へ降り掛かる…。


「――大変結構♪」


血の海へ手を伸ばす…海の底、俺の腹に沈んだ〝ソレ〟を掴み…俺はソレは引きずり出し彼等へ差し向ける。


「〝血鱗ノ大蛟〟――何方が〝勝つ〟か、勝負としよう♪」


血の海が〝引く〟……その水位は目に見えて下がり、血の一滴まで空を昇る巨大な水竜の血肉に変わる。


そしてぶつかり合う〝炎〟と〝氷〟と〝光〟と〝竜〟


――ジュウゥゥッ――

――ビキッ――


振るわれる刀は竜の身体を切り裂き…その身体を蒸気に変えて消し飛ばし、或いは赤い氷像に変えて礫に変える。


――ジュワァァァッ――


或いはその血、その〝不浄〟を浄化し消し飛ばしてくる……だが、竜も負けてはいない。


――ザリザリザリッ――


斬り飛ばされたその身体の血を鋭く、歪んだ鱗に変えて、その手足や顔を抉り削ってゆく…。


己が身が消し飛ぶか、己の身が削り消えるか…互いに引かない、互いに持ち得る全てを以て眼前の敵を討とうと力を込める。



その結果は――。



――ザンッ――


竜を人が討つ……しかし、その姿は見るも無残で、明らかに致命的な傷を負っていると分かる……。


「――素晴らしい♪」


その二人の姿を、ハデスは至極満足気に頷き、その身体を〝動かす〟…。


「〝百屍〟…〝屍人屍獣百鬼夜行〟……改」


その姿は〝舞〟の様に優雅に、溢れる瘴気は恐怖を誘う冷たさを持っていた。


そして、目覚める……海の底で眠っていた〝何千の骨の墓〟…〝屍肉の大地〟から〝黒鎧の武者〟達が。


「〝死渇戦魔〟」


目覚める武者達が震え叫ぶ…そして、その目は空の二人を、大地の獲物を見ると各々が自由に動き出す。


戦場は海から移ろい屍肉の墓場…即ち。


「……♪」


〝屍の悪魔〟…その〝本領の地〟へ移り変わって行った。




○●○●○●


『……もうそろそろか?』

『えぇ…そうですねアーリー』


二人はその顔を真剣な物にして、空高くからその世界を見守る……冥府の獣が大地を埋め尽くすその光景を、ソレへ対抗する人々の奮闘を見て……そして。


――バサッ――


四方から迫る、〝白翼の子〟を見て……。


『本当にできるのかのう?』

『ソレは分かりません…ですが、見守る価値は有るでしょう』

『…そうか』


二人はその光景を目に焼き付けながら、この〝友の戦〟の行く末を見守る様にその眼差しを〝真っ暗な結界〟へ向けていた。

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