夜明けに見えるは屍か未来か⑯
どうも皆様泥陀羅没地です。
今回は少し短めです。
――ブンッ――
「もっと腰を入れて♪」
「ッ!」
――ザッザッ――
「目を動かせ、相手の足、身体の向き、重心、その視線、その殺気…常にソレを観察しろ♪」
「フゥッ!」
刃を振るう少年へそう言い、ハデスはその顔を楽しげな笑みで彩り躱す…その様子を四人はただ見ていた。
「彼奴……何をしてんだ…?」
ウェイブの疑問に四人が思わず肯定する様にその顔を浅く頷かせる。
突如現れた少年、その少年は事もあろうか人々を害する災厄の象徴へ挑んだ。
如何に消耗しようが、少年が他よりも突出した才を持っていようが…その化物がたった一言でも術を紡げば、或いはその爪で、拳で少年へ襲い掛かればたちまち少年は殺されるだろう。
その筈だ……なのにこの状況は何だ?…。
――ヒュンッ――
「ハハハッ♪」
少年は変わらず真剣な表情で、未熟な剣を振るう…その刃が振るわれる度にハデスは躱し、穏やかで無邪気な笑顔を深めて、少年へアドバイスを投げ掛ける。
弄ぶ様な悪辣な意思は無く、心底気を遣いながらその化物は少年へ接していた……敵同士とは思えぬ程に。
「ハァッ!」
「ッ!」
四人の傍観者が見守る中、遂に少年の刃が化物の顔へ触れた…。
「ッ――素晴らしい♪」
その時、化物の空っぽな身体から黒い魔力が滲み出した。
○●○●○●
――ポタッ…ポタッ…――
「やはりお前は物覚えが早いな……頭の回りも早い…その力は将来必ず武器になるだろう…」
定まらぬ視界でもハッキリと分かる信太へ俺はそう告げる……剣の振り方はもう既に身体が覚えてるのだろう…その立ち姿は先程とは見る影も無い……良い出来だ。
「課題はその体格と膂力だな……其処は将来のお前がどうなるかのブラックボックスだ……さて、剣の術も理の術も…俺が教え、お前へ与えられる餌は全て与えた…俺の与えた餌は全てお前が食い尽くした……最早俺の与えられる〝物〟は残っていない……この〝血肉〟を除いてな♪」
さぁ…此処からが本番だ…最早この肉体が壊れる事を気にする必要は無い…。
「さぁ私の信太、愛おしき原石の仔……正しき〝守護者〟…化物狩りの〝資格者〟よ…〝化物退治〟の時間だ♪」
己の生命を削り、俺は術を吐く……空に浮かぶは炎の槍…ソレが信太へ差し迫る。
「ッ――〝守護の盾よ〟!」
対して信太が術を紡ぐ、札が燃え尽きると同時にその炎を盾が阻む。
――プツッ――
「ッ……流石に、か」
削った生命と魔力を無理矢理に作り出した影響か…俺の視界が歪んで狂い、鼻からは赤い血が零れ落ちる…最早己が立つ事もやっとな状況に言葉を漏らす。
――ザッ――
「ハァァ!!!」
「ッ!…まだ、殺られるかッ!」
背後から迫る声と殺意に、何とか攻撃を薄皮一枚で躱す。
「〝悍ましき肉の鞭〟」
――ピキッ――
己の腕を1つ使い、残った腕を変形させて振るう…だが。
――ザンッ――
その鞭をいとも容易く信太は切った……そして、迫る信太の息遣い。
「ハァ!」
「ッ!」
振るわれる刃の音を聴く…しかし視界がぼやけて見え無い…幾らかの思考の末、その腕を声の主へ向けて突き出すと、その腕の感覚が消え去った。
「まだ、まだ!!!……」
俺は持ち得る全てを費やし、その姿を異形に変える……そして、迫る信太へその牙を向けたその瞬間。
「ッ――!?」
――ゾォッ――
その空からの〝邪魔物〟が信太を包む俺の身体へ突き刺さった。
「ッ―――」
――ギュンッ――
その瞬間、俺は俺の身体が崩れる前にその身体から槍を創り出し、その空へ投げ飛ばす…。
「てすさん!」
「ッ――あぁ♪」
その行く先を認識するよりも早く、俺は信太の声に全ての眼をそちらへ向ける……其処には己の〝核〟に刃を向けて、涙を浮かべながら何とか笑みを作る…私の〝大事な宝〟が居た。
「おめでとう…〝信太〟♪」
その刃が俺を貫く……ソレがトドメに成ったのか…その身体が崩れてゆく。
「ハッハハハ♪……負けた、負けたよ……完敗だ♪」
俺を見下ろす信太へそう言い、その手を伸ばす……だが、ソレは信太へ触れることは無い。
――ボロッ――
「夜明けに浮かぶは妖魔の骸、人は陽と共に勝利を掴んだ……その立役者は間違いなくお前だ♪」
腕が崩れ去る……四肢は灰になり…その身体にも亀裂が入り始める。
「俺を討ち果たしたお前には、何か用意せねばな……そうだな…あぁ、〝丁度良い〟のが居た♪……良し、こうしよう♪」
信太へ何を渡すかを決めていると、ふと、信太がその手で私の顔に触れる。
「てすさん…」
「…オイオイ、ヒーローがそんな顔するもんじゃないぞ?…敵を倒したなら堂々と立ち、勝利と笑みを人々へ見せてやるもんだ」
だからそう涙ぐむな……コレじゃあ負けた俺が浮かばれんだろう。
「全く……高々一ヶ月余りの出会いと言うのに…こうまで懐くんじゃ、今後お前が騙されたりしないか心配だ……」
「てすさん…」
俺へ真っ直ぐ見つめる信太を見返す……その顔は何時もの様に泣虫だったが…それでも強い〝心〟を持った顔だった。
「〝ありがとう〟」
そのたった1つの言葉にどれだけの想いが込められているのだろう…いや、全て理解している…この言葉に含まれた何重の意味を。
「――あぁ♪…どういたしまして♪」
俺はそう返し、とうとうその身体を砕けさせる……。
暗闇に、信太の言葉が響く……そして俺はその言葉の中に込められた記憶を夢に映して目を閉じる。
ただ暗闇を見続けるよりは、こうして小さな幻想に思いを馳せるのも悪くは無いだろう…?
本当はもう少しハデス戦を膨らませようと思いましたが、下手に膨らませてしまうと綺麗にハデス戦を締めれるか分からなかったので短く成りました。
作者の構成力ではこれ以上の締め方が分からなかった……。
そして後数話でこの章は終わりとなります…綺麗に締めれる様に頑張ります。




