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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十三章:日出る国に屍の影は降り
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夜明けに見えるは屍か未来か⑫

血の匂いが充満する地獄の中で、彼等は隊列を敷く。


「『ッ―――!!!』」


遥か山奥から此方へ這い進むその巨躯へ、大きな恐れとそれ以上に硬い〝使命感〟に駆られて。


夜を暗い闇が覆う…だが、ソレも時期に終わる…夜の深まりが途絶え、そして日出時がやって来る…コレは陽の光を呼び覚まし、人々が勝利を得る為の、未来を得る為の戦いと成った。


「『――急な作戦に集った勇士諸君、君達の覚悟に感謝する』」


その場に集う彼等へ、遥か遠く…主なき城から此方を見下ろす男は告げる…感謝を。


「『君達が居なければ、我々は、我々が守るべき人々は〝来る死〟にただ絶望するしか無かっただろう…だが、君達が来てくれたお陰で、その最悪は回避出来るかも知れない…そう、〝可能性〟だ、この作戦が上手くいく保証は無い…だが、何もしなければ何も起こせない…だからこそ、君達へ私は無茶な命令を下す必要が有る……君達は〝死兵〟だ、私の描く作戦、それを成すために集った〝贄〟だ…私を恨む事は構わない、だが、恨んだまま事を成して貰いたい…君達の大いなる奮戦に期待する……〝フェーズ1〟…開戦に備えよ!』」


そして、厳粛なる命令を……その言葉に皆が緊張と殺意にも似た戦意に身を強張らせる。



――ガリッ――

――ドゴッ――


岩肌を砕き、木々を押し潰し……ソレは迫る……100や200で測れない…1キロ程は有ろうという長身、その重量を聞いて分からせる足音を奏で、百足の鎧蟲…竜喰らう大百足が国を喰らおうと迫りくる。


その光景を彼等は見据える……動かずにただ、其処へ来るのを待つ。


百足は猛進し、そして眼前に見える肉の群れを見て顎から涎を垂らして迫る…。


進み来る化物の姿を見ても、彼等は動かない……ただ、〝待つ〟…そして、大百足がその場所へ足を踏み込んだ……その瞬間。



――  ――


『ッ!――〝起爆〟!!!』


百足の背後で何者かが凄まじい魔力の蠢きと、破壊を響かせて、〝開戦〟の狼煙を上げる。


そして、狼煙と同時に彼等がそう〝叫んだ〟その瞬間。


――ドドドドドドドッ――


草原は一瞬の間も与えられず焼尽し、焼け野原と化した……そして響き渡る百足の叫び声と、崩れ落ちる身体を認識したと同時に。


「『ウオォォォォォォッ!!!』」


その手に剣を、その拳に鎧を、その斧を肩にして…何百の守護者達が大地を駆ける……そして、その空には虹の流星が無尽に続き、百足の身体へ炸裂してゆく。


そうして始まった〝百足退治〟にして、この馬鹿げた戦争、〝悪魔の茶番〟を締める最後の戦が…。


その始まりを……遥か遠くから〝ソレ〟は見ていた。


●○●○●○


「……あの短時間で良くもアレだけの炸薬を野に仕込んだもんだ…」

(だが、ソレとあの人数では倒しきれんのは見て分かるだろう……となればアレは肉壁か……プロフェスめ、何を企んでいる?)

「――おっとイケナイ、思考が逸れた…」

「今の爆発は…?」

「んなこたぁどうでも良いだろッ!…それよりも俺達の方がヤバいぜッ」


俺は好奇に早る思考を元に戻し、眼前の彼等へ目を向ける…。


「成る程成る程、コレも防ぐか素晴らしい……ソレじゃあ次はどうしようか♪」


荒い息を吐き、焦りと冷や汗で歪む顔…しかしその姿がまた俺の悦を誘う。


「六度の攻撃…一度目は〝全員〟へ、二度目は〝一人〟へ、対応する度此方も手を変え品を変えて六度目の〝生還〟…それどころかさしたる消耗も無く傷は浅いと来た物だ…全く見事であり、こうも耐え忍ばれるのは予想外で自分の見通しの温さには参ったね」


私の声に彼等はその〝色〟を変える…彼等は自身を卑下しているが、しかし。


「そう〝卑屈〟になるな…勝負を畳むために全力を尽くしお前達を殺そうとしているのにこうして今も耐え凌いできたんだ、お前達が真なる〝英傑〟…真の強者である事に何ら疑いの余地は有るまい」


もしソレを否定する者が居るならば私が嬲り殺してやるとも。


「さて…そんなお前達を倒す為にはどうするべきか、己の足りぬ脳で考えた…そして、1つ試そうと思うんだ…♪」


その言葉に3人はその顔を険しくする……なぁに、別に大したものじゃない♪


「ちょっとした」

「試行錯誤さ♪」


2つの口で言葉を紡ぎ、継いで呪詛を紡ごうとした口を開く…魔力を回していざ試さん…そう思い立ったその時だった。


――ベキベキベキッ――


「ッ――!」

「「「ッ!?」」」


己の真横から白い魔力の奔流が迫り…俺を飲み込んだ……。


「何者、何者だ?……否、語るまでも無い、この力、この不快な〝色〟、このしつこさ、この苛立ちは一人しか居ないな……?」


その光の奔流を握り潰し、俺はその先を目で睨む……其処に居たのはあの不愉快で愚かで矮小な下らない神の傀儡…勇者を騙る小僧が居た。


「――お前は…お前等は何故何時もこう良い時に邪魔をするかねぇ」

「……」


騙る口を持たないアーサーが此方へ駆けてくるのを見る……正直微塵も関心は無いが、仕方無い。


「そうまでして遊びたいなら遊んでやるさ」


そうして俺は〝言葉〟を紡ぐ。


「〝我は空を読み解く者〟」

「〝我は大地を築く者〟」


2つの口から別々の〝祝詞〟を、先程とは比肩も出来ない魔力を回して……。


「〝空の暗がりに眩き仔等よ、その御業を此処に顕せ〟」

「〝大地に生まれ、帰りし仔等よ、その軌跡を此処に示せ〟」


その魔力は空に大地に広がり…その空に赤く輝く礫を作り地面には暗く広がる闇が生まれる。



「〝星ノ盤陣〟…〝星射抜く傲慢の狩人(オーリーオーン)〟」

「〝屍魂ノ外法〟…〝生執ノ骸手〟」


その瞬間、空の上で赤い光が1つ輝き、其処から4つの光条がリリー達とアーサーへ迫る…ソレへ回避を試みようと藻掻いた刹那を大地から生えた骸の腕が掴んで阻む…四人がソレに気付いた時にはもう回避など出来る距離では無く…その光が四人を貫いた。


「――お〜上手く行ったか……いやまぁ一度した事は有るが、それでもこの規模は初めてだからな…いやぁ良かった良かった♪」


四人の黒炭が倒れ伏す…ソレを見据えながら、俺は続ける。


「――まぁ、殺せてないんだがな♪」

「「ッ!」」


その瞬間背後から、或いは倒れた骸の1つから炎が吹き出し己へ迫る。


「――オイオイ…コレでも死なんのは流石に不死身の化物な俺でも引くぞ?…何でコレで死なねぇんだよ」

「アーサーさん大丈夫ですか!?」

「此方は大丈夫!」

「――まぁ答えんよなぁ?」


俺はそう言い背後のアーサーの腕を掴み、リリー達の方へ投げる……すると遅れてその身体を炎から元の姿に戻してリヒトとウェイブが姿を見せる。


「〝再誕の炎〟…不死鳥が持つ性質、死して灰となり、その中から生まれ直す〝不死の力〟…ソレを他者にも適応させるとは…相当無茶な魔力消費してるだろソレ?」

「ッ…この程度問題無い!」

「嘘が下手だなリリー…魔力が萎んでるぞ?……まぁ良いまぁ良い♪……折角盛り上がって来た所なんだ♪…まだ、やれるよな?」


俺は傷を癒しつつ有る3人+αへそう告げて、その口で魔力を紡ぐ…今度は〝3つ〟…行けるかな?…。

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