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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十三章:日出る国に屍の影は降り
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夜明けに見えるは屍か未来か①

――バサッ――


「――やぁ、目覚めはどうかな八岐の大蛇?……と言っても、その覇気を見れば分かるがね」


「「「ッ―――!」」」


俺の言葉に興奮気味に大蛇が答える…絶好調…とは言わないが、それこそ久しい世界に興奮好奇覚めやらぬと行った所か。


――トッ――


「さて、漸くゲームは後半戦……頭を使って身を削って前半戦を戦い抜いたお陰で〝腹が減った〟」


俺はそう言い、大蛇の頭一つに降り立ち、その肌に触れ、〝憎悪〟を喰らう。


――ジュオォォォッ――


「ハァッ♪…やはり竜のは格別に美味いな♪」


完全にとは行かずとも、殆どの魔力を回復出来た…さて。


「ソレじゃあ行こうか〝八岐の大蛇〟……憎き人々その都、〝日の出〟を冠する人々の心の拠り所を蹂躙することにしよう♪」

「「「「ッ―――!!!!」」」」


……ついでに、ちょっとした寄り道も、な♪…。



●○●○●○


「――ハッハハハッ!!!――等々〝八岐の大蛇〟が蘇ったか!」


首だけと成りながらしかし未だ死なぬ滝夜叉姫は山を押し潰しながら此方へ迫るその大蛇を見てその顔を愉悦に歪ませる。


「ッ――貴様、あの蛇について知ってる事を全て吐け」

「ッフン……短命な人間共はコレだから愚かというのだ……かつて己等の祖を絶滅まで追いやったあの〝八岐の大蛇〟を忘れるのだからなぁ?――ソレだけじゃない、我々の背後には〝骸の魔王〟が付いているのだ…貴様等に万が一の勝ち目など有る物か!」


そう言い滝夜叉姫はそう言うとその大蛇の方を見る……釣られて二人はその先を見ると、八岐の大蛇の頭上に一人の男を見る……。


「ハデス……」


その男は此方を見ながら、その手から死肉の槍を掴むと、此方へ向けて大きく飛ばす……その攻撃に二人が身構えたその時…その槍は己等では無く、その手前…即ち滝夜叉姫のその頭蓋目掛けて飛翔する。


「な、はぁ!?――ま、待てッ、待て待て待てッ…我々は仲間だ――」


――ドスッ――


飛翔する槍の矛先を理解した滝夜叉姫がその顔に焦りを滲ませそう叫ぶも虚しく、その槍は重力の重みを増して落下すると見事にその頭蓋を打ち抜いた。



●○●○●○


「――敗者が何時までもゲームにしがみつくな、不愉快だ」


その光景を遠巻きに見下ろし……そして何かを探す様にその場所を見渡し…やがて満足したのか今度はその視線を〝遥か遠く〟に見える日出へ移す。


「本番は此処からだ…しかし」


――ヒュンッ――


「貴様ァァァッ!!!」

「――その前に食いかけを平らげるとしようか♪」


だが、その刹那黒い影が夜を引き裂き身に余る怒りと憎悪を募らせて槍を振るう…その煩わしい叫び声の主は今にも破れそうな程血管を頭蓋に張り巡らせて一心に槍を振るう。


「「「「〝――〟」」」」


萩之助が持つ槍の気配を感じ取ったのだろう…大蛇はその顔を不快気に染めるとその口から呪詛を吐く。


――ドゴンッ――


「――止めろ♪…コイツは俺のだ♪」


その頭蓋を思いっ切り叩き詠唱を止めさせ萩之助へ問う。


「さて――その身、その傷、その余力で俺を相手に勝てると?」

「殺すッ」

「そうか――♪」


俺の言葉に簡潔にそう返して障壁を砕き割り、萩之助がとうとう俺の腸にその槍を突き貫こうとした…その瞬間。


「ッ――!?」

「〝残念〟……〝攻撃出来ないだろう?〟」


その槍は寸前で止まり、萩之助はその身体を不完全な体勢で止める…その隙を見て、俺は萩之助の頭蓋を掴み、その魔力で抵抗力も残っていない萩之助の身体に魔力を流す。


「ガアガガガガガッ!?――〝カグ――」


己の肉体が歪められてゆく、膨張する最中、此方へ手を伸ばそうとするも虚しく萩之助の身体は爆散し血肉を撒き散らしてその場所から完全に消え去る……しかし唯一残ったその指の欠片だけは、俺の手に収められた〝美女〟の骸をそっと撫でて力無く消える。


「――……さて、次は〝前菜〟だ」


そして何事も無く大蛇は進む……その絶景から見える街々を見ながら、制御の効かない笑みが頬を吊り上げ口を引き裂き、空に散らばる〝鉄の玩具〟が目を虜にする。


「〝守護者の玩具〟…さて、何処まで保つかな?」


俺がそう口にした…その瞬間、空に赤く煌めく何かを認識し…そして。


――ドムッ――


「グハッ!?――良いねぇッ♪」


障壁を容易く破り、己の身体に潰れた弾丸が減り込む……ソレへ意識を持っていかれた瞬間、すぐ近くに気配が迫り。


――スパァンッ――


「『チッ――〝外した〟!』」


腕を盾に時間を稼ぎほんの一瞬頭を下げた…その瞬間腕が一本斬り飛ばされ、その髪の毛の幾らかを斬って、鋼鉄の刃がエネルギー放出の音と共に飛び去った。


「――愉快、良いぞ面白い…メインディッシュの腹ごなしだ、遊んでやる……だが」


――バサッ――


腕を生やして翼も生やし、己の腕を奪ったソレへ飛び迫る。


「『ッ!?――速』」


――ドゴォッ――


「――簡単に折れるなよ?…つまらないからな」


俺の拳を受けた〝機械に身を包んだ守護者〟は、その腹を大きくへこませると地面へ突き進んでゆく。


その地面に咲いた土色の花を尻目に、空高く此方へ視線を送る熱烈な〝玩具〟達へ微笑みかけて俺は手を伸ばす…そして、空の上で鬼ごっこが幕を開けた…。



○●○●○●


――ドオォォォンッ――


遥か遠くから此処まで轟く破壊音……その巨躯を揺らし〝己〟を睨む八岐の大蛇を睨み返しながら、私はその刀を強く握る……。


身体が震える…だが、ソレは恐怖の震えでは無い……もっと〝どうしようもない〟…愚かな〝感情〟だ。


民草が命を賭け、世界の守人が全身全霊を以て国に訪れた厄災を滅ぼさんとしていると言うのに…どうしようもない私は〝胸躍らせている〟…。


「忌まわしい〝呪い〟を…ハデスめ…」


何時の夜に交わした言葉、あの悪魔の見透かす眼が気に入らない……化物の癖に、何も持ち得ない癖に持ち得ぬものを見透かすあの眼が。


「……祖よ…私はきっと――」


この城に住まっていた多くの祖先へ言葉の先を紡ごうとした…その瞬間。


――ガタッ――


「〝天光稲穂〟様…〝プロフェス〟さんがお呼びです……〝儀式の場〟は完了したとのこと」

「ッ!……――あぁ、分かった…直ぐに向かう」


その言葉は背後の扉を開く、〝賢者〟の使いに阻まれる、少しの錯乱と共にそう返すと、慌ただしいその使いの者は誰かへ何かを伝えながらその場所から離れてゆく。


――……――


完全に吐き捨てる場を失った己は、その言葉を飲み込み立ち上がる。


「……」


焼き付ける様に…己の眼に日出の街を刻み込み……そして己は扉を開き…己の、〝もう戻るかも分からない寝室〟を出る。

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