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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十三章:日出る国に屍の影は降り
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陽は沈み、百鬼は駆ける⑰

――ザザンッ――


手足が飛ぶ…また生やす。


――ゴキッゴキッ『ブチンッ』ゴキッ――


首が捻じれ飛び、身体がひしゃげて曲がる…また〝直す〟。


痛みが奔る、切り裂かれた、擦り潰され、手足がもげて腸が引き摺り出される…ただ、風の〝暴威〟が何百と俺を殺し、俺は何百一回目を繰り返す。


「   」


声は出せない…当然だ、呼吸器を常に潰され、風を操られ酸素が入って来ないんだ……だから詠唱は出来ず、高度な術は使うことが出来ない…。


「………」


萩之助を見る……白い装衣に血が映える、冷たい眼差し泥のような妄執、ただ一人のための狂気、何百何千の時を経て尚も枯れない〝心の色〟…凡百の者には、ましてや俺のような〝贋作〟には到底生み出せない〝美しい色〟を…俺の枯れた眼はただ見惚れていた。


是非欲しい。


【自惚れるな】


俺もそう在りたい。


【馬鹿を言うな】


綺麗だ、とても美しい…汎ゆる殺意が混ざり合う…悍ましい?美しい?何方の性を持つソレが。


――ただ綺麗だった――


――ザリザリザリッ――


「    」


だから……もっと美しい物を探そう、俺の手で磨こう、大事に、ダイジニ…注意深く、丁寧に…心を黒で満たそう、心を白で満たそう…ソレが最も輝く〝やり方〟で〝満たしてみよう〟…だから。


『今度はどうなるかな?』


――ゴオォォォッ――


俺の身体が地面に落ちる……何百の〝天狗の骸〟と、其れ等を積み重ねる〝影〟達の元へ……そして、俺は地面にぶち撒けられ続けた俺の〝血〟へ〝形〟を与える。


「ッ!?」


――ドゴォッ――


その〝光景〟を見た、その魔力を感じ取った萩之助は俺へ猛攻を畳み掛ける…また血しぶきが舞い、肉が削ぎ落とされる……だが、既に〝術〟は出来上がった。


――グチュッグチュグチュッ――


お前達が〝夜を明かす〟なら、その朝を俺が〝沈めよう〟


恐れる化物共を叩き起こし、恐れる化物共を奮い立たせよう。


汎ゆる力汎ゆる才能、その全てを以て人を血祭りに上げろと、永劫に夜は己等の者で有ると知らしめろと俺は命じよう…。


「〝屍月〟…〝狂夜の暗月〟」


空高くを赤く血に染まる月が昇る……ソレは日出を照らし、その光は汎ゆる妖魔へ狂気と力を与える……。


その中には、〝無論〟…俺も入っている。


「〝天の翼〟…〝死天〟」


紡ぐ語る、死を齎す者の詩をそして俺はその姿を〝死天の子〟へ作り変える。


「さぁ、仕切り直そうか…〝天狗の〟」

「……何と、出鱈目な力よ……」


呆ける天狗の長へそう言う…すると天狗の長は俺の術へそう言い驚愕を漏らす…。


「俺からすればお前の方が出鱈目だ……何度死んだと思ってる?」


少しでも再生が遅れたら〝終わってた〟んだ、それに俺のは仕込みも時間が掛かる…そう考えればお前のソレの方も大概出鱈目だろう。


「――まぁ良い、漸く互いが本気に成ったんだ……さっさとやり合おうか」


そうして俺と萩之助が互いに向き合う……山の頂で膨大な魔力が打つかり合い、互いに相手の動きを注意深く観察する……そして最初に動いたのは――。


――ドスッ――


「ッ…ブフッ…貴様……」

「「卑怯…とは言うなよ?」」


背後から強襲する、俺の〝分身〟だった……。


――ズバンッ――


腹に剣が突き刺さるのも厭わず、萩之助がその分身を切り裂き、剣を引き抜く…。


「戦闘での卑怯卑劣は弱者の言い訳だ…違うか?」

「ッ……やはり、人を殺す事しか頭に無い妖魔は思考が下劣だな…」

「そんなに褒めるなよ♪――寧ろ妖魔の癖に人間と友人な方が異端だろ?……とまぁ、其処まで褒めてくれるなら仕方ない」


――ゾッ――


その瞬間萩之助を囲う様に無数の分身体が現れ、全員が萩之助へ飛び掛かる。


「さぁ、〝本体〟は何処でしょうか?」 


そうして、山頂での茶番は幕を開け……反対に山の下で起きる闘争の焔はその狼煙は徐々に弱め、また静寂が戻りつつ有った。


○●○●○●


――ギギギギンッ――


「クゥッ!?」

「フンッ!」


日出の正門前で…雪崩込む鬼共の苛烈な攻めを守護者達が止める……その最前線では鬼の長と守護者の〝頂点〟が攻防を繰り返していた。


触れる白銀の剣と血濡れた赤い刀、酒吞が振るえばアーサーはその重みに耐えかね大きく後退り、アーサーが振ればその刃は酒吞の身体に浅くない傷を作る。


……だが。


「――つまんねぇなぁ、お前」

「――ッ!?」


――ドゴォッ――


酒吞の豪脚がアーサーの腹へ減り込む……その攻撃を受けて、アーサーはその身体を吹き飛ばして剣を振り落とす…しかし追撃は来ない、見れば酒吞はその顔を不満気に歪めながら、アーサーを見ていた。


「――やっぱりつまんねぇな、お前……全然話になんねぇよ」

「ゲホッ…ゲホッ!?――ど…ういう…事だ…!?」


その言葉にアーサーが顔を怒りに染めて問い返すと酒吞は欠伸をしながら適当に返す。


「お前との戦いが面白くねぇって言ってんだよ…使う装備も兵隊も一級品、攻撃は効くし、確かに硬え、何よりしぶとい…初めの方は〝良い敵〟だと思ってたんだがなぁ…全然面白くねぇし…実際殺り合ってるが思った以上に弱えよ、お前」


そう言い胡座をかいて座る酒吞に怒り心頭のアーサーが駆ける…だが。


「〝テメェの身体と思考が追い付いてねぇ〟」

「ッ――!?」


酒吞はそう言いながら剣を無造作に振るい、アーサーを地面に転がしてまた欠伸する。


「お前アレだな、肉体だけ鍛えてその肉体だけで何とかしてきた奴だろ…力だけのゴリ押しだ、技術も身体の動かし方も未熟過ぎる……大方〝ソレ〟の所為か?」


酒吞はそう言い、地面に転がるアーサーのその手に握られた剣を指差す。


「〝神の造物〟だろソレ…臭え神の気配がする…巫山戯た代物だ、神の力を貸し与えて強化する…コレを持ちゃ其処らの餓鬼でも妖魔を殺せる〝兵器〟に成る…下らねえゴミだな」


酒吞はそう吐き捨てながらアーサーを見る。


「神のソレも不愉快だが…成る程、俺が気に入らねぇのはアレだな…〝お前にやる気が無い〟事だ…確かに〝ハデス〟が言ってたとおりだな」

「ッ……僕に、やる気が無いだと…ッ!?」


酒吞の余りにもな物言いにアーサーがそう噛み付くが、酒吞はソレを歯牙にも掛けずに言葉を並べる。


「そうだよ、テメェにゃ〝やる気〟がねぇ……ってよりかは中身が〝すっからかん〟だな…テメェでは本気のつもりでもその腹の中は何も入ってねぇ…血も肉も骨も腸も何もねぇただの皮袋だ」


その言葉にアーサーは否定と共に刃を繰り出す…だが。


「〝あぁ?〟」


その酒吞が放つ、強烈な殺意に周囲の生命がその動きを全て止める……。


「――ほらな?…こんな殺気だけで動きが止まってらぁ…そんなんで良く俺の前に立ち、〝自分は守護者最強です〟何て面ァ出来るよなぁ?…」


酒吞は嘲りながら酒を飲み…そして冷たい目でアーサーを睨む。


「――どうせならハデスが〝来る〟よりも早くに日出を落とそうと思ってたんだがなぁ…思ったよりつまんねぇのに時間かけちまった……」


酒吞はそう言い頭を抱える……その言葉へ疑問が口に出かかった…その時。



――ドクンッ――


己の心臓が痛む程大きな心音を聞き、その瞬間言いようもない〝恐怖〟が体全体を覆った……。


「〝時間切れ〟だなぁ」


ただ、酒吞の言葉だけが…静まりきった戦場に浮かんでいた…。

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