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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十三章:日出る国に屍の影は降り
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苛めっ子、苛められっ子

――ガンッ――


(痛い…痛い…)


「お、当たった!」

「やるなぁッ、じゃあ俺は金玉狙お!」


――ガンッ――


(何で…何も悪い事して無いのに……)


身体中に投げられる石、ソレを受けながら…その子は蹲り、耐え凌ぎながら涙を流す。


ソレを見て、見ぬふりする者達、憐れみながら何もせぬ者達が道々を進む。


何故この童が石に打たれるのか?…悪行故か?…不興故か?…。


否……ただ純粋な〝悪意〟がその童に降ったただけ…。


『逃げようとするからそうなるんだ!』

『やり返せば良いでしょう、男なんだから!』


ソレが積もり積もり山となり、やがてその光景に誰も手を差し伸べることは無かった…母も父も、その誰もがその童へ手を差し伸べることを諦め、遂には疎む様になった……。


蹲る童には欠片の悪もない…人の子等が持つ泥の悪意に纏わりつかれ、孤独に追い遣られただけだった……。


童はただ、蝕み壊れかけた心の中で今一度問う、他ならぬ天へ、空へ、空に巣食う神とやらへ。


――何故?…と――


その問いに答えは返ってこない……返って来るのは石の礫だけだと分かっていても、その童には問わずには居られなかった……。



○●○●○●



「〜〜♪――おぉ、此処の団子は素晴らしいな!」


舞う桜を見ながら、運ばれて来る団子を頬張り俺は景色と味覚を堪能する。


道を行き交う男と女、玩具を手に駆け回る童、こそ泥をし店の店主に拳骨を喰らう悪童…良くも悪くも活気に満ち、人の営みが満ちている……。


『キャアァァァッ!?!?』

『アァッ、アアァァァッ!?!?!?』


〝壊し甲斐が有る〟……。


「お団子好きなんですか?」

「ん?――えぇ、このモチモチとした弾力と甘みがたまらなく……ついつい食べ過ぎてしまいます♪」


店の売り子へそう言い微笑む……するとその愛嬌の有る顔を赤面させて売り子は緊張に身を硬くする…。


「――折角ですし一緒に食べますか?…綺麗なお嬢さんと桜を見ながら食べるのもまた一興と言うものです」

「はぇ!?――い、いやぁッ、まだまだお客様が居るのでッ!」


俺がそう言うと店の娘は顔を赤くして嵐の様に去ってゆく……ソレは残念。


『……』

「――ンンッ、美味しい♪」

『……チッ』


何処其処から下心と欲望の剥き出した男共の舌打ちが聞こえた気がするが…まぁ気の所為だろう…さて、団子も食べ終わった所で。


「次は白玉だな!」


おっとその前に煎餅を買おうか。


そうして観光し、その他諸々の食事を喰らい、道中迫る盗人やら悪餓鬼と遊びながら道々を練り歩く事数分。


――シュワァァァッ――


「う〜ん、口の中で溶ける綿飴も甘露で良し♪―――おや?」


綿飴、煎餅その他諸々を脇に抱え、道を行く事少しして……ふと、そこの道に奇妙な隙間が目についた…。


(〝憐憫〟…〝同情〟…?)


すれ違う者皆がそんな情を抱き通り過ぎる……ソレへ少しの興味を抱き、覗いてみれば其処には……童の群と童が居た。


(ほぉ……アレは…〝苛め〟だな)


なぁんて事は無い、ただ群れた小僧っ子が善悪無視して暇潰しに弱い童を虐めているだけ…道理で誰もが憐憫を抱く訳だ…何せ虐められている童に欠片の悪徳は無いのだから。


苛めを見た、しかし誰も手を差し伸べない……。


子を守るべき親が、人間を守るべき守護の者がそのたった一人無垢な童に手を伸ばさない…。


所詮は〝その程度〟……だからそんな純真は〝黒〟に染められるんだ。


――ザッ――


草履で地面を蹴りながら、俺はその童の元へ向かう…。


その、〝壊れ掛けた硝子〟の少年へ。


――パシッ――


「あ〜!?――邪魔するなよオッサン!」

「後もうちょっとで10点だったのに!?」


童へ差し向けられた礫を掴み、その悪童等を見る…。


――ゴリッ――


「「「「「ッヒィ!?」」」」」


ちょこっと〝躾〟をし、砕いた礫を撒き捨てると、その童達は蜘蛛の子散らす様に其の場を離れてゆく…途端湧き出すのは俺の行動への〝偽善者〟だと抜かす愚かな色と賞賛の色。


そんな物はどうでも言い。


「立てるかな?……しょーねん?」


俺の言葉に、蹲っていた少年が始めて顔を上げる……その顔は弱々しく、痣だらけで、血を流して壊れ掛けた心を必死に守ろうとする〝儚い少年〟のソレだった。


「酷い傷だ…可哀想に……誰も助けてはくれなかったらしい」


俺がそう言い周囲を見ると、皆してこぞって顔を背ける…。


「コレを飲め…本当なら私が癒してやりたかったがその辺の術はどうも不得手でね」


屍肉を弄るのは得意だが…と心の奥底で呟きながら、俺はその薬瓶を少年へ手渡す。


「苦いが吐き出すなよ、ちゃんとお前の傷を元通りにしてくれるから」


恐る恐ると俺の手から瓶を受取り、その少年が薬瓶を一息に傾ける。


「ッ――ゴッ…ングッ」


飲んだ瞬間その目に涙を浮かべ吐き出しそうになった少年は直ぐにその口を抑えて喉へ流し込む……ソレから数秒後、その効果は如実に現れる。


「な…おった……?」

「そうだよ、ちょっとした伝手で作った回復薬だ……うんと苦いがお前程の傷ならものの数秒で直してくれる……さぁ、薬をちゃんと飲めた少年へ、御褒美…いやいや口直しの綿飴をプレゼントしよう♪」


俺は手から一本の綿飴を抜き取り、少年へプレゼントする……するとソレを少年は受け取り、申し訳なさ下に一口食む。


「少し歩こうか…実はこの国に来たのはつい最近で、目新しい光景を見て歩きたい……ソレに…良かったらだが君も一緒に来て一緒に美味い飯や菓子でも食べて回ろう♪」

「あ、その……お、お名前は…?」

「ん?……あ〜……そうだな、まだ名乗ってなかったかな……そ〜だね〜……うん、適当に〝テス〟とでも呼んでくれ、因みに君の名前は?」

「あ…え、えっと…〝信太〟です…あの、助けてくれてありがとうございます…」

「礼儀正しいね…いやいや、気にするな、私が不快だったから手を出しただけさ……さぁ、目障りな連中も消えたし、早く見て回ろう♪」


俺はそう言い少年……いや、信太の手を引き道々の人間達を押しのけて進む…。


本来の予定では一人練り歩き甘味やらを食べつつ情報を集めようと思っていたが多少変わったな…まぁ何にせよ許容範囲だ……何より。


「ッ……」


この少年は、中々〝美しい色〟をしているからな。


「あ、あの…ひ、一人で歩けますッ」

「いやいや、見知らぬ土地で一人歩きすれば迷ってしまうだろう?」

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