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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十三章:日出る国に屍の影は降り
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縛られた竜を目指して

――ゴオォォォッ――


「――お〜いヴィル〜、来たぞ〜?」


其処は元憤怒の悪魔サタンの牙城にして、今は俺の部下にして俺の配下の武具装具の殆どを手掛ける職人ヴィルの巨大工房、その最奥のヴィルの鍛冶場へ足を運び、俺はその主へ声を上げる。


――カアァァンッ――


「おう、来たか主よぉ」


声の主…ヴィルは俺の声に赤鉄を叩く槌を降ろし、此方へ手招きする。


「で?…例の合金はどうだ?」

「〝冥混玉石〟だろ?…ありゃあ中々癖の有る代物だったぜ…ホレ」


ヴィルはそう言い、その熱された金属を冷やし俺へ見せてくる…。


「……虹色…と言うよりは玉虫色だな?」

「元が瘴気の溜まり場である冥府からの産出だからな、純粋な瘴気が大量に含まれてる…ソレにその性能もこの合金…〝呪色合金〟の所為でかなりブレる、同じ合金から同じ物を作ってもさの性能が大きく違うんだ…見てみろ」


ヴィルがそう言い二振りの短剣を取り出し俺へ見せる…其処には。


――――――

【玉虫色の短剣】


玉虫色に色を変える奇妙な短剣、大量の瘴気を内包し所有者を破滅へ導く呪われた装具。


効果1:所有者がこの剣を使う時、所有者の体力を吸収しソレに応じて剣の効果を底上げする。


効果2:所有者の速力、筋力を上昇させ、所有者に〝狂化〟を付与する。


効果3:所有者が死亡及び狂化を制御仕切れなかった場合、所有者の肉体は変質しこの装備に乗っ取られる。


――狂え狂え、力に溺れて朽ち果てろ――


―――――――

―――――――

【玉虫色の短剣】


玉虫色に色を変える奇妙な短剣、大量の瘴気を内包し所有者を破滅へ導く呪われた装具。


効果1:所有者がこの剣を使う時、所有者の体力を吸収しソレに応じて剣の効果を底上げする。


効果2:所有者の物耐、速力を上昇し、所有者に〝喰肉〟を付与する。


効果3:所有者が死亡及び〝喰肉〟を制御仕切れなかった場合、所有者の肉体が変質しこの装備に乗っ取られる。


――肉を喰め、血を啜れ、喰らい食らって喰らわれろ――


――――――――


「――ふぅん?…この装備を同じ合金から…確かに違うな、狂化の方は攻撃に振り切り、〝喰肉〟の方は肉と血を喰らっての回復効果…耐久に振ってるのか……共通点は呪われた装具である事と、何方も所有者の変質を促す効果がある事か……どれ」


――ズオォォッ――


「「ウアァァァッ…」」

「少し試すとしよう」


俺はそう言い適当に作った死霊にその剣を投げ渡す。


その瞬間。


「「ウアァァァッ―――!?!?」」


突如死霊が呻き声を上げて、その肉体をボコボコと作り変える。


「※※※※!!!」

「※※※※※!!!」


その姿は下位の死霊とは掛け離れた隆起した筋肉を持ち、或いは人の肉で構成された身体を獣の様に毛深い毛皮で覆う二匹の〝化物〟の姿をしていた。


「〝堕人〟…堕ちた人ね……成る程、こうなると独立した魔物に成る訳か」

「「―――!!!」」


――バシュンッ――


飛び掛かる獣の身体を八つ裂きにし、その肉を喰らい工房を綺麗にする……どうやらこの剣は使い切りな様で、消滅してしまったな。


「成る程……瘴気から形成された〝自我〟を器の、所有者の魂に張り付け寄生、其処から肉体を変容させる……傲慢のと近い仕様だな」


中々楽しそうじゃないか。


「ソレに…そうか、ヴィル、その合金は他にも有るか?」

「一応後100は有るぞ…普通の物と違って下手に叩き出すと瘴気を内包した部分も取り出されるんで量産がちと辛いがな」

「何、その半分で良い、それと一本合金を貸してくれ…試したい事が有る」


俺の言葉にヴィルが〝回収人〟からインゴットを取り出し俺へ渡す。


「フンフン……ちゃんと瘴気が自我を作り出してるな、淀みよりも薄いが、コレなら…」


俺はインゴットに瘴気を集め、俺の()から〝魂〟を取り出しそのインゴットに喰わせる。


「――グッド…〝性能〟の指向性は決められるな…ヴィル、この合金で〝作って欲しい物〟が有る」

「応、任せろ!」


俺はその合金をヴィルに渡し、作って欲しい物を告げる…するとヴィルはその顔を楽しげに歪めてニカリと笑って言葉を吐く。


「中々ハードな物を造らせるなハデスよぉ…わぁった、直ぐに取り掛かるが…何に使うんだ?」

「出来てからのお楽しみだ、それじゃあ頼んだぞ?……でだ、どうしたベクター?」


ヴィルにそう言い、俺は背後のベクターへ顔を向ける…音も気配も魔力も何も無く、突如現れた己の執事は何事も無い風に佇み、此方へ声を投げる。


「はっ、主様……実は調査隊を拡充し、調査を加速的に進めていた最中、気になる〝存在〟を発見致しまして…」

「〝気になる存在〟?…その調査部隊は?」

「壊滅しました、元より下位の死霊を編成しただけの量産型ですので特に痛手では無いのですが、その存在は主様にとってもとても興味深い個体だと思いこうして参りました」


ベクターの言葉に、俺は続きを促す…するとベクターは続きの言葉を話し始める。


「竜……と言えば良いでしょうか?……見たことも無い形状の竜でして、蛇の様な胴をした手足の短かな竜が〝縛られた状態〟で暴れていました」

「……ほぉ、〝竜〟…ソレも蛇に近い個体か…オマケに縛られた状態……確かに、面白そうだな♪」


俺はそう言いベクターをみると、ベクターは頷き此方へ地図を渡す。


「場所は東の山々を通り過ぎた場所に有ります…何か心当たりでも?」

「ん?…まぁな、ちょっとした下らない納得だ、気にするな……取り敢えず今からその竜に会いに行く事にしよう…御苦労ベクター」

「ハッ、恐縮です」


俺の言葉にベクターがそう恭しく頭を下げる…ソレを背に、俺は火山地域から己の城へ帰り、其処から1人空を飛び進み始める。


その脳裏にはベクターの言葉と其処から連想される蛇の様な体躯の竜…即ち〝東洋の竜〟を浮かべて。


「東洋の竜…この大陸には先ず見ない個体が冥府の外れに縛られて其処にいる…まだ確定とは言えない、言えないが…恐らくは」


俺は己の中で仮説を組み立てながら空を飛び進む……アルフ大陸には見なかった翼を持たない竜、アルフ大陸の外れに有る島国〝日出〟…こじつけと言えばそうだが、しかし冥府に縛られた状態で竜が居ると言う事はつまり。


「〝日出〟に冥府への穴が有った訳か♪」


この仮説があり得るかも知れない訳だ。


「暫くは冥府に籠る羽目に成るかと思ったが…案外何とか成りそうだ♪」


俺は内に湧いた好奇心に身を委ね、そのまま空を仰ぎ空を泳いでその場所へ迫る…抑えようもない笑みを浮かべて。

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