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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十二章:冥界統べる屍の王
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冥王と薄氷の舞台

「――ハァ♪…やはり長旅から帰還した後の我が家は落ち着くな♪」


長旅から帰還したその翌日、皆が集まる茶会場もとい会議室の最奥でベクターの茶を飲みながら俺はそう一息付き、その光景を見る。


「あ!?――テメェグルーヴッ、そのケーキは私のだろうが!?」

「一切れ位良いじゃありませんのッ、貴女も私のケーキを食べたでしょう!?」

「私特性ケミカルパンケーキは如何かな?」

「「要らんッ(要りませんわッ)」」

「……」



「お、ディヴォンこのパンケーキは良いぞ甘くない」

「ホントだ、結構好きな味かも」

「ベクター、焼くのは俺が変わるからアンタも休めよ」

「ほう?…では御言葉に甘えさせて頂きましょう」

「へい君達ッ、私のケミカルパンケーキは――」

「「要らない」」

「ホッホッホッ…老骨に斯様な劇物は厳しいですなぁ」

「……」



「月華ッ月華ッ、凄いよコレチョコが流れてる!」

「此方はチーズ…贅沢」

「甘〜い♪……ホラホラ二人共早く食べないと僕が全部食べちゃうよ〜?」

「「ッ!?――狡い!」」

「君達は――……駄目か」


その光景は例えるなら最後の晩餐か?……多種の菓子が所狭しと机に並び、セレーネ達はケーキを取り合い、バリッド達は互いに気を回しながらケーキを満喫し、アジィ達はとても楽しげに甘味の海に揺蕩っている…。


――コトッ――


「ふむ……薬草臭く、獣臭い…オマケに何だこのエグみは…何故コレを作ったのか理解出来ないが、ハッキリ言えば余り良い味とは言えないな…プロフェスと言い、研究者系統の人種は何故食べ物をキメラ合体させたがるんだ?」

「……それでも食うんだな」

「当然だ、出されたものは必ず食い切るし…俺の部下が丹精込めて作った物を無碍にしたくない」


己の周りに次々並べるゲテモノもかくやと言う程の独特なケーキ類を口に運び俺はそう言う……因みにヴィルは珈琲、つまり紅茶派の私とは敵対関係にあるが、この場所には紅茶派と珈琲派、ジュース派に緑茶派が居る乱戦なので互いに不可侵を結んでいるのだ…。


「――とまぁその話は投げ捨てるとして、早速本題の報告会と行こうか」


とは言っても昨日の今日、言う程の進捗はな――。


「はい、先ず私から全体的な進捗状況を…〝不毛の灰原〟、〝灼熱の火山地域〟、〝霧の谷〟、〝渇乾の砂漠〟、〝罠樹の密林〟、〝凍吹の霊山〟に有る元大罪の城を修復し今後の活動拠点としました、現在はその6ヶ所と元強欲が所有していた高原の城を繋ぎ合わせた範囲内には多数の下級死霊を放ち、細部まで観測に向かわせて居ます」


「――じゃあ次俺だな、火山地域からボスの持って来た合金だが、アレの不純物…軽石やら純度の低い鉱物を弾いて合金を作ってみた…かなり時間が掛かったんで少量しか採れねぇし他の鉱物と違い精錬も無茶苦茶に手間が掛かるんで全死霊の武具防具には出来ねぇが、物は良いぞ」


「黒い森の生態系に関しては大体調査してるよ、まだまだ時間は掛かるけど大まかな情報は揃ってきた」

「後は昨日から其の辺の悪魔共が主に会いたいとか言ってたな…全部姐さんが追い払ってたが」

「敵対して来た悪魔達は皆半殺しにして指輪で回収してるから後で送るね〜!」

「「いっぱい倒した!」」


――いと思ってた時期が私にも有りました。


「――随分と早いな」

「そりゃあやる事も全然無かったし〜」

「調査部隊の護衛位しかやる事無かったな」

「流石に僕等1人で倒すのが厳しいのも居たけどね」


俺はそう言うディヴォン達の言葉に思わず眉を顰めてしまう…こいつ等余りにも優秀過ぎないか?…いや良い事何だが。


「他にも細かい情報は資料にして主様に送って置きますので目を通して下さい」

「オーケー分かった…とまぁ取り敢えず現在の指針としては冥府各所の調査と俺の仕込みが十分育つまで待つ事になる、大体一ヶ月程掛かるがソレまでは各々好きにする事、組手やら何やらは俺は色々動かねば成らんので無理だ、だから最悪〝巨神兵〟とやり合え、だが殺しは無しだ、良いな?」


俺は4人と戦闘狂にそう言い含め言葉を終える、そうして茶会はゆったりと再開された…。



それから数時間後。



「う〜ん……やはり〝悪魔〟の湧きが多いな」


俺は平原、砂漠、密林、霊山に湧く悪魔を見てそう呟く…。


「やはり此処が瘴気の溜まり場に成ってるからかほぼ一日に数匹が生まれるペースに成る…自然淘汰によってある程度自浄作用が効くがそれでもコレは酷いな」


七罪が居た頃は各々が他の大罪共を始末しようと画策した結果この自浄作用が上手くいってたが、その大罪共はもう居ない。


「また新しい大罪に取って代わる悪魔どもが現れるだろうが……それでも完璧とは言えん」


冥府と現世は繋がっている…何方かが崩れればその影響は片方にも行くだろう…そうなればこの世界は御陀仏、俺の仕込みも何もかも巻き込んでパンと破裂して終わり…。


「そんな終わりは御免だ」


折角ここまで丁寧に仕上げて来たんだ、壊れるにも壊れ方って物が有る。


「――精々足掻くとしようか♪」


この薄氷の舞台が割れて砕けるのが先か、俺が舞台を踊り切るのが先か。


「中々ひりついて来たな♪」


俺はそう言いセレーネ達に駆逐される悪魔達を見てそう呟いた……。





●○●○●○


――ガシャァァァンッ――


「『――――!!!』」


〝ソレ〟は叫んでいた…怒りに、憎しみに、己を縛る枷に、己を縛った者共に向けて。


――ゾッゾッゾッゾッゾッ――


ソレの憎しみが〝種〟となり、憎しみの〝実〟が結ばれ、ソレの〝憎悪〟は群となってその〝穴〟へ這い降りてゆく…。


暗闇暗がり、暗黒漆黒の穴の奥に見える……その〝青い、蒼い空〟へ向けて。


その空の青を見て、その目を焼かれ…〝ソレ〟は叫び、そして誓う。


何時か必ずこの枷をこの大穴に施された〝封印〟を砕き己を縛ったものどもに、その子等に、その赤子、その先の先の赤子にも及ぶ呪いと滅びを与えんと。


――グルオォォォッ!!!――


その巨大な〝竜〟はそう近い、叫ぶのだった……。

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