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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十二章:冥界統べる屍の王
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傲慢―失落―

――ジリィンッ――

――ガガガガッ――


無尽蔵に湧き出る武具と魔術、其れ等は空で打つかり相殺し、爆音と爆風を以て戦場を覆う…そして天と地で睨み合う二人を覆い――。


「――言ったろう、こう使うんだと?」

「ッ!?」


――ドゴッ――


瞬間横から現れた天の悪魔が地の堕天使の頭蓋を掴み、その顔を己の膝に打ち付ける。


――ブシャアッ――

――ゴキッ――


「グッ…ヌアァァァッ!?!?」


鼻が折れ、血を吹きながら痛みに呻くルシファーが、怒りと焦燥に駆られて槍を振るう。


――ブォンッ――


しかし痛みに瞳を閉じ、怒りに姿勢を乱した身体から放たれる槍の一閃は容易く避けられ。


「動きが単調だぞ?」


逆にハデスの持つ槍の石突がルシファーの下顎を捉え、ルシファーが更に顔を痛みと怒りに歪める。


「久々の生身に感覚でも鈍ったか?…存外手応えが無いんだな?」

「ッ〜〜!――愚弄するのも良い加減にしろッ!」


ハデスの挑発にルシファーが怒鳴り返す…そして。


「〝甘誘の黒蛇〟ッ!」


ルシファーの言葉と同時に巨大な魔術陣から一匹の黒い大蛇が姿を現す……ソレはハデスを認識するとその舌をヒラヒラと動かし、ハデスへ飛び掛かる……。


「ヒュウッ――アダムとイヴを唆した黒蛇か……確かその正体は〝お前〟か〝サタン〟とか言われてたか?」


ハデスはそう言い、その大口を開き迫る黒蛇を見て指を向ける。


「ただまぁ…この勝負には役者不足だろう?」


――ドパァッ――


その瞬間、黒蛇の頭蓋が消し飛び蛇は力なく崩れ落ちる…その血肉を撒き散らしてハデスの視界を赤に染めながら……。


「――あぁ♪…そうかそうか♪」


その血の海を障壁で押し退けながらふとハデスは楽しげに手で手を叩く、その瞬間。


――バリンッ――


「ッ掴んだぞ!」

「――早速取り入れた様だ、やるじゃないか褒めてやろう♪」


ハデスの障壁を押し破り、ルシファーの腕がハデスの腕を掴む…その光景にルシファーが初めて笑みを作り、ハデスもまた楽しげな笑みを作る。


「――だが、まだまだだな♪」

「ッ!?」


――ゴキゴキゴキッ――


ハデスがルシファーの槍を避ける……掴まれた腕など気にする素振りも無く……そして、そのままルシファーを己の上に持っていくとその身体を捻り、ルシファーに脚を向ける。


「〝剛馬の影脚〟」


そして己の足を作り変え、黒い影の脚でルシファーを空高くへ蹴り飛ばす……。


――ブチィッ――


己の腕を千切りながら……。


「貴様ッ、狂ったか!?」

「狂気が悪魔の正気だろうがッ」


空を進み、ルシファーがそう叫びながら眼下の怨敵へ叫ぶ…それに対してハデスもまた顔を悦に染めながらルシファーを追い、吹雪を降らす雲の中へ入ってゆく。


「さぁルシファー♪……そろそろこの馬鹿踊りも終いにしようか♪」


俺はそう言い槍を投げる……。


「〝かつて人の祖住まいし園、黒蛇に唆され追い立てられし憐れな子等のその楽園は堕落に堕ちた〟」


――ギュィンッ――


「――ッ!?」


その槍はルシファーの頬を掠め、その槍を目に追うルシファーは、次に俺の言の葉に意識を向ける…。


「〝木漏れ日は枯れ果て、川は穢れ、住まう獣は狂い叫び屍肉を貪る野獣と化した〟」


雲を突き抜け、空に黒い光が光り……そして雲はその空をまた覆い隠すだろう……だが。


――ゾッ――


雲ではその〝魔力〟は覆い隠せない…莫大な魔力、膨大な魔力のその蠢きは。


「ッ!?」

「〝失墜し、狂い果て醜くもソレは残り続けた…かつて見た、かつて共に過ごした彼等の、最後の砦へ成らんと〟」


ソレは彼の地の〝最後の想い〟…追い立てられたあの子の為に、唆されたあの娘の為に…ずっとずっと、狂おうとも、残り続けた…妄念と執着、偏狂の中に一握の理性を以て。


「――〝しかし彼の子等は定められた運命を捨てた、他ならぬ己等の為、その後の子等、その赤子の為に…美しきは終わらねば美しく成れぬ、愛おしい花も何れは枯れ、次へその場を続かせねばならない、終わらぬ踊りは踊りに非ず、終わらぬ歌は歌に非ず…故に、我は彼の地へ与えよう〟」


しかし、彼の地は終わらねばならない…己の子供達は疾うに空より落ちた、そして己の手で未来を掴んだ、そして滅び、彼等の子等がまた紡ぐ…最早腐り落ちてまで留まる理由は在りはしない、進めぬならば滅べぬならば俺がその終わりを引いてやろう。


「〝引導を、終わりを、滅びを……汝に今一度の休息を〟」


雲が弾ける……押し潰されて押し退けられて、ルシファーはそれを見た。


ソレは天高くより落ちる巨大な〝楽園〟…己よりも遥かに大きな巨大な隕石…滅べぬ都の滅びの時を。


「〝滅びに微睡み、耽るが良い〟」


逃げ場は無い……その馬鹿げた範囲からどう逃げると言うのかと、ルシファーが心へ抱く…そして。


「〝狂楽園の失墜(パラダイス・ロスト)〟」


かつての楽園は、どうしようもなく狂った楽園は遂に終わりを迎え、壮絶な崩壊と破壊を以て眠りに就く。


「※※※※※※!?!?!?」


そして、ルシファーを諸共に俺の視界は闇へ染まった……。





『レイドボス、〝傲慢〟の〝ルシファー〟が討伐されました!』

『ハデスのレベルが上がりました!』

『新たな称号〈傲慢〉を獲得しました!』

『新たな固有能力、【七罪の咎】を獲得しました!』



『――称号、〈暴食〉、〈憤怒〉、〈色欲〉、〈嫉妬〉、〈怠惰〉、〈強欲〉、〈傲慢〉が統合されます』

『新たな称号〈七罪〉を獲得します』


――――――

〈七罪〉

人が堕落する七つの罪を手にした証。


この称号を持つ者は、最早到底許す事等出来ぬ咎人であり、汎ゆる悪魔にとって畏怖と憧憬の者と成るだろう。


効果1:汎ゆる悪魔からの好感度が大きく上昇。


効果2:汎ゆる人種からの好感度が大きく低下する。


効果3:七罪に関する能力が大きく上昇する。


――爾はただ喰らい、無為に怒り、色情に塗れ、妬みに狂い、怠惰にして、強欲に求め、傲慢に君臨する……そして、その内は常に〝空〟である――


―――――――



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― 新着の感想 ―
[一言] 知ってますか作者様? 主人公のこう言うのを〈虚飾〉って言うんですよ? 実は〈虚飾〉も大罪なんです。 元ネタ的には確か〈傲慢〉に統合されてしまったんですが。 しかし、主人公の空っぽな心を飾る、…
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