強欲―奪還―
どうも皆様泥陀羅没地です。
今日は凄い体調が悪く、絶望的に執筆が進まなかったです…申し訳無い。
多分後一本、出来たら投稿致しますので少々お待ち下さい。
――ヒュンッ――
「遅えなぁ!?」
「ハッ!―当たってねぇなら意味ねぇだろうがッ」
――ドゴンッ――
――タタッ――
マモンの腕を避ける、避ける…障壁は展開しない…どうせ無意味だからな。
「クヒッ♪」
「ッ――!」
マモンの顔が笑みを作り、その手を振るう……手には砂が握られ、その砂は高速で俺の顔を触れる。
「ツゥッ」
目に触れた異物への不快感に目を閉じ、其れ等を押流さんと涙が俺の目に溜まる――視界が潰れ、ソレへ対応する為に新たな目を生やす、その瞬間。
「ヒッヒヒッ♪」
俺の頭蓋へマモンが手を伸ばしていた……回避出来る程の距離では無い、防御は無意味だろう…だが、俺は努め冷静に一手を打つ。
――バキャンッ――
「ッ!?」
「――ッ♪」
即ち己の頭蓋を砕き、マモンの手に捕まることを防ぐ、そして。
「『〝近付い』―たな?〟」
今己の至近距離にいるソレへ、お返しとばかり腕を振るう。
――ブンッ――
〝黒色の腕〟…を。
「ッ!――危ねえなぁ!」
しかしソレは容易く避けられ今またしても距離が開く。
「危ねえ危ねえ…もうすぐで喰らう所だった♪」
マモンがそう言う…そう言うマモンの頬は微かに削り取られ、其処に有るべき皮が消え、肉と骨が剥き出しになり血を溢れさせていた…。
「自分で自分の頭を潰すとかイカれてんのか?」
「悪魔に正気を問う方がイカれてるだろうよ」
マモンの言葉にそう返し、俺はマモン赤黒く濡れた地面を踏む……。
「どうした大罪悪魔、この程度かよ?…初撃以外当ってないぜ?」
「良く言うぜ、テメェの方こそもう息が上がって来てんじゃねぇか♪」
俺とマモンは煽り合いながら、その距離を縮めてゆく……互いに平静に苛立ちを抑えて、また打つかり合う。
「シィッ!」
だが、その攻撃は以前にも増して強く鋭くなる…ソレに加えて厄介な事に、マモンがイーラの槍を持ち出してくる。
「チッ……槍相手に徒手空拳は相性が悪いか」
最も厄介なのはその〝奪う手〟だが、槍が増えた事で単純な火力が上がっている……このまま行けば此方が勝負を畳み込まれて負けるだろう。
「――仕方無い、此方も〝武器〟を使うとしよう」
「ッほぉ?――良いなァ、その〝剣〟は!」
「〝奪っても〟良いんだぞ?…奪えるならな」
「ハッ、言うじゃねぇか!」
俺の挑発にマモンが俺の剣へ触れる…その瞬間。
――ゾォッ――
――ブシッ――
『分を弁えろ、下郎め』
フェイディアがそう不愉快そうに言葉を吐き、マモンの腕が裂かれて血が噴き出す…。
「ツゥ!?――テメェその剣――」
「〝正解〟♪――〝本物の神の肉〟が融合した〝神剣〟だ♪」
痛みと驚きに数歩下がりながらそう言うマモンに、俺はそう返す…すると、マモンはその顔を驚きに歪めながら、笑みを作る…。
「ハッハハハッ!――良いじゃねぇかッ、テメェを殺しゃソイツも手に入る訳だ!」
「そうなるな?」
「俄然やる気が出てきたッ!」
マモンはそう言い、槍を構えて此方へ迫る……その速度は恐ろしく速いが、俺の剣への警戒と対応の為か速度は遅い……。
剣と槍…通常ならば槍の方が圧倒的に有利だろう…何せリーチが違うのだから……だが、ソレは〝剣〟で有ればの話だ。
――ガチャッ――
「生憎俺はか弱い死霊術師なんでね…文明の利器に頼らせて貰うとしよう」
俺はそう言い、その〝銃〟の引き金を引く……。
――ガチャンッ――
その瞬間火薬は爆ぜ、中の弾丸は驚く程の速度でマモンへ迫る…その不意打ちにマモンは反応出来ず……。
――バキャンッ――
その腕を千切れ飛ばせた……。
「チッ!?――クソがッ」
「良いよなぁ、銃……何せ引き金1つで人を殺せる…人類が生み出した最強の武力であり、人類が愚かで有る事の証明でも有る」
コレにより多くの骸が転がった…有り余る欲望が、〝強欲〟が故に人々は力を求めて力に溺れ、同種で争いそして屍の大地を築き上げた。
「〝人間の力の結晶を化物が使う〟…皮肉な話だろう?」
「ッ――!」
失くした腕を捨て置いて、マモンが迫る…早くもこの銃の弱点に気付いたらしい。
「〝近付けば使えない〟……その通りだ、コレは飽くまでも安全圏から無力な獲物を仕留める為の武器だからな…近付けば真価は発揮できなくなる」
マモンのその動きをじっと見る……既に銃に弾丸は込められた、遠くに居れば銃が狙い近くに寄らば剣が斬る…どう切り抜けるのかと、俺はその瞳をマモンに注ぐ。
――カチャッ――
銃を構える……銃身をマモンに向け、その引き金に力を込める……その瞬間。
――ザリッ――
マモンがその槍を握り、地面に脚を突き刺す……腕全体に力を込め、身体を捻り…その瞬間。
――ズォッ――
引き金を引くより早く、その〝槍を投げた〟……それは恐るべき速度で俺へ迫り、数瞬の内に俺へ選択を強制する。
(〝受けるか〟…〝弾くか〟)
避けるは無理だ、この速度なら避けるより当たる方が速い、腕を一本犠牲にして槍を受けるか、それとも……この銃の標準をマモンから槍へ移すかしかない。
「―――」
一瞬の思考の後、俺は選ぶ……。
――ズドォッ――
「グゥッ!?――キヒッ♪」
俺の腕を槍が吹き飛ばす……その腕に握られていた剣と共に、そして、俺はその引き金を引く……:。
――パァァンッ――
白煙が筒から吹き出し、火を吹くと同時に鉛の弾丸を飛ばす…そして、ソレは――。
――ズガァッ――
「ッグゥ!?――カハッ♪」
マモンの心臓を貫いた……だが、マモンは止まらない。
「俺の勝ちだッ♪」
――ブンッ――
――ブチィッ――
マモンがそう言い、俺の腕を引き千切り…そしてその片腕を俺へ伸ばす…。
「――〝俺の力〟を使えば〝死なない〟…ってか?」
「―――あ?」
「〝待ってたぞ〟――マモン♪」
俺の頭蓋へ腕を伸ばすマモンを見て、俺はそう告げる……その時、マモンは漸く気付いたのだろう……己が〝誘導〟された事に。
「〝起動〟」
俺が告げる、その〝罠の起動〟を……次の瞬間。
――ドスドスドスドスッ――
俺とマモンを貫く、〝屍肉の槍〟が全方位から飛び出して俺達を串刺しにする……。
「ガァッ……テ…メェ…」
「『ケヒヒッ…俺はコレでも』―死にはしないが……お前はどうだろうな?」
悪魔は再生能力が高い…だが、こうまでの攻撃は流石に治癒出来ないだろう……四肢は貫かれて磔に、身体中を屍肉の槍が貫き、身動きを封じ、心臓は貫かれ死は秒読みだ……♪
「――ならッ」
マモンがそう言い一本踏み出す……それだけでマモンの身体の血肉臓腑は引き裂かれて血の泥を噴き出し、その腕を無理矢理動かして俺へ……俺の〝魂〟へ伸ばす。
そして触れたその〝瞬間〟……マモンは気が付けば、〝其処〟に立っていた……。




