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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第二章:悪夢に足掻く者達
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魔術の拡張性


魔術とは、魔力と呼ばれるエネルギーを〝詠唱〟及び〝魔術陣〟に流す事で、その言葉の、文字の意味を紡ぎ、世界に顕現させる技術である。


その始まりは、世に君臨した〝魔王〟を討伐する為に集められた5人の勇者にそれぞれ与えられた〝原始の五属性〟が元であり、人が長い時を経て研究、解析して漸く形を成したモノが〝魔術〟と呼ばれている。


「―――魔術を扱うに能って求められるのは生まれた時から保有する魔力と、その魔力の〝性質〟である………ねぇ?」


――ギィ……ギィ……――


「随分と選民意識の強い事で」


それでは、この世界で初めて創ったベクター何かは雑魚中の雑魚になるんだが……ん?


「なぁ、ベクター……お前何か魔力多くない?昨日見た時と全然違うんだけど」

「あぁ、申し訳ありません主様、実は昨日、主様がお眠りになられた後、私の種族が変化致しまして、〝下位執事屍人〟から〝中位執事屍人ミディア・バトラー・アンデッド〟へ進化しました」

「成る程?……ってイカンイカン、今は調査中だったな……え〜っと〝特異魔術〟は……コレか〝魔術の拡張性〟……ほほお?」


コレは中々面白そうな書物だな?


――――――――――――


世に特異魔術と呼ばれる魔術がある、それは既存の五属性とは異なる事象を引き起こし、希少な力故にそう呼称される力だと私は考え、研究を始めた……結論から言えば、それは何ら特別な事では無かった、しかし世界の魔術の歴史を塗り替えられる物だと、私は唱える………選民意識の強い愚か者にはマトモに取り合っては貰えんだろうが、もし私の同類か、それとも私以上のロクデナシならば有用な資料となるだろうと思い、こうして残す事にした。



まず、特異魔術とは、重力を操る物や無から有を創る物、果ては時空を飛び越える等、その力は計り知れない、そしてそういった技術を生まれながらに保有する者の多くは、無意識か、或いは直感でその事象を認識している、ソレ故にそれを知らぬ他者から見れば特異な力を使っている様に見えるのだ。


例えば、人が何故空を飛べないのか……私は鳥の様に翼が無いからと思っていたが、重力魔術と言う物を知って、その認識を変えた、我々は大地に引っ張られている故に空を舞う事は出来ないのだ、鳥は羽を用いて重力に逆らい空を飛ぶと知った……生まれてから常に包まれていたこの重さにこそその秘密が有ったのだと、私は感激したよ。



〜〜〜〜〜〜


「ニュートンの林檎か……しかし、成る程、特異魔術は既存の魔術の延長線ね……」


魔術の拡張……これ程心が沸き立つ話題もそう無いか……フフフッ。


「つまりはこういう事か?〝押し潰れろ〟」


俺は言葉に魔力を乗せて、そう吐きながら、手に持ったクッキーの重力を増やす様に意識する、すると。


――グシャッ――


「あ、ヤベ」


クッキーどころか、俺の腕ごと地面にもげ落ち、床に減り込んだ。


「クッキーだけのつもりだったんだが……案外制御が難しいな……それじゃあ」


俺は一点を見つめて、其処に自分の姿がある事を強く意識する、そして魔力を込めると。


――ベチャッ――


「oh……コレは酷い」


次の瞬間、目前に壁が迫っており、俺の首は地面に植えられていた……実験室の至る所に手足はバラバラに配置され、その断面はまるで綺麗に切断された様に滑らかだ。


「ヤベえな、魔力消費もそうだが下手に使うと一瞬で惨殺死体にジョブチェンジする」


しかし、コレを十全に使い熟せれば莫大な利点を得られるか……研究は続けるか。


「何百……いや、何千回解体現場になるだろうな? 此処……」


血塗れになる前に書物は全部退けておくか。



●○●○●○


「で……ボスの言ってた場所に着いたは良いんだがよぉ?」

「凄い数ですね〜」


東の方面……道から離れて移動していたバリッドは、地図の位置に来て面倒そうに頭を掻く……人気のない森の中、その更に奥に、隠れた洞穴……其処を守る様に数人の男が居た。


「〝盗賊〟ねぇ……男の肉は不味いんだよなぁ」

「それに汚いですしね、殺して大旦那に献上しては?」

「ま、それもそうか、旦那にゃ綺麗汚いは関係ねぇしなぁ」


――ドンッ――


「あぁ?何だお前――」


――ブゥンッ!――


「ッ!?て、敵襲!」


――ドチャッ――


「弱えな……弱いと面白くも何ともないなァ?ボスと出会ったお陰かねぇ?」


骸を2つ作りながら、バリッドはそうぼやく。


「うひゃあ、流石バリッドの旦那だなぁ、力仕事を任せられるのは楽で良いっすねぇ」

「てかお前名前なんだよ、何時までもヴィルの弟子って呼ぶの面倒くさいんだが?」

「おっと、コレは申し送れました、あっしは〝下位職人屍人レッサー・クラフター・アンデッド〟の〝ジェイル〟でさぁ、東の砦建造を指揮する者です」

「ジェイルね、んじゃ俺は此処の雑魚消しとくから、作業に取り掛かってくれや」

「はいな」







「お〜い!そっちの建材はコッチに運べ〜!」

「「「応!」」」

「それはコッチだ!」

「「「応!」」」


西の深奥、木々が鬱蒼と生い茂り、方向感覚を狂わせる様な霧が立ち込める場所、其処では幾人もの屍人と、それを眺める白衣のタラトが居た。


「中々良い立地だねぇ」


椅子に腰掛けながら、作業風景を眺め紅茶を啜るタラトが、真横に張られた糸を引く。


――ビッ――

『―――ッ!?!?』


遠くから獣の叫び声が響く……此処を中心とした半径数百メートルは既に、タラトの領域と化したのだった。


「タラト様!拠点の外装はこの図面通りで宜しいのですか?」

「うん、別に構わないよ、私としては部屋の外見より中の機能がしっかりしたものだと嬉しいね」

「そこはお任せを、ヴィル師匠には色々叩き込まれましたので、全て完璧に仕上げて見せます!」

「フフフッ、それは楽しみだ」




「ふわぁ〜……暇ですわね〜?」

「「「クェェッ!?!?」」」


空を舞いながら、ドレス姿のグルーヴは欠伸をしてそう呟く、その周りを黒い羽に貫かれた〝人面鳥(ハーピー)〟の集団が墜落する。


「空中ですと一方的でつまらない……しかし地上に降りて戦うと主様からお借りした〝職人〟達を巻き込むかも……此処は我慢するしかないのでしょうね、仕方ありませんわね……せめて主様が居れば……」


そんな淡い願望を抱きながら、グルーヴは空を飛翔する。




「おい坊主!ソレはコッチだ!」

「うぇぇぇ!?」

「坊主!その建材運んでくれ!」

「ぐぇぇ!?」

「「坊主!釘が足りねぇ!馬車から持って来い!」」

「何で僕がこんな目に〜!?!?」



……南では、蒸し暑い湿地帯の中を駆けずり回る白蛇の少年ディヴォンが居た、厳つい職人の屍人に使い回される彼を見て、監督役の男は苦笑いを浮かべる。


「何とも怖い物知らずな……」


ディヴォンが悲鳴を上げる、ソレ以外は順調に進む拠点建造組であった。


「くそぅ……何で僕がこんな事……」


――ボトッ……――


「………へ?」


ディヴォンは周囲を見回っている最中、不意に目の前に現れた……何も無い場所から急に現れたソレを見て、目を点にする。


――カタカタカタッ――

「ひ」


ソレは……まるで今も生きているかのように指を動かす〝腕〟だった。


「ヒギャアァァァァァァ!?!?!?」


南の湿地帯で、凄まじい悲鳴が響いた……偶々通り掛かったプレイヤーはソレを聞き、そしてその場所はプレイヤー達の間で〝絶叫の沼地〟と呼ばれる事となったのだった……。


「あれ? 俺の腕何処に消えた?」


某時刻、そんな事など露知らず、犯人は暢気に自分の腕を探していた。


「ふぅむ……やはり視覚による転移位置固定はせずとも、〝目印〟を用意すれば問題無く……あぁ〝転移門〟はそう言う役割も有ったのかッ!だとすれば■■■を■■■して……うん、うん、早速試してみるか」


そしてソレ(捜索)を早々に諦めた。

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