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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十二章:冥界統べる屍の王
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霧の底の館へ

――ガラガラガラガラッ――


霧の谷を進む事凡そ数十分…進む三馬が牽引する馬車が止まる…そして漸く我等は到達する…。


――………――


「いやぁ、辺り一面霧で覆われ何も見えないなァ……辛うじて崖だと分かるが…良くこんな辺鄙な所に居を構えたものだ♪」


其処は先すら見通せない白霧の谷…辛うじて崖の淵がある事で其処が境界で有ると判る程度だ…さて。


「それじゃあ行こうか♪」


――バサッ――


翼を生やし谷へ飛び込む…バリッドはそのまま飛び降りるらしい、ならセレーネを掴んでく――。


「―主様?…セレーネは私が運びますわ♪」

「ん?…そうか?――別に俺が運ぶでも構わんぞ?」

「そうだぞグルーヴ、お前じゃ振り落とされそうだから嫌なんだが?」

「いえいえ、御心配なくッ、私の術で保護すれば落下の心配も有りませんわ、ですのでお任せ下さい♪」

「……ふむ、では任せよう」

「……チッ」

「フフンッ♪」


〝何故〟か二人の仲が険悪だが構うまい……それよりもバリッドを待たせるのも可哀想だ。


「行くぞ?」


二人へ合図して谷へ降りる……相変わらず霧の景色で見通しが悪いのが難点――。


――プツッ――


「ふむ?」

「――お〜来た来た!…余りに遅いんで何してんのかと思ったぜ」


ふと、通り過ぎざまに感じた薄い魔力に首を傾げる……特に何をするでも無い、何の効力も持たない魔力だが…。


「――まぁ良いか」

「――おぉぉぉ!?…ッテメェグルーヴッ、降ろすならもう少し気ぃ付けろ!」

「あら?…『此処まで来たら後は飛び降りれる』って言ったのは貴女でしょう?」


背後では仲良し二人組が乳繰り合っているが…ソレは置いておこう。


「しかししかし?…中々面白い魔力だな……甘い香りがする…」


霧の奥に朧気に映る屋敷を見て少しそう溢すと、その屋敷の方から数人の人影が現れる…。


「主様ッ!」

「ブフッ!?」


ソレの顔を見た瞬間、グルーヴの声が直ぐ背後に聞こえ俺の眼がグルーヴの冷たい手に隠される……その右隣ではバリッドの咽た声が聞こえたが…ふむ。


「〝淫魔〟の類いか……?…魔力から甘い匂いがするのもその所為か」


――キョロッ――


目の前に佇む、4人の美女を掌の眼で映しそう告げる…ふむ、その容姿とスタイルは確かに扇情的だな、バリッドが興奮するのも良く分かる、服装も何処か色香をフワリと匂わせるような、絶妙な塩梅…素晴らしいセンスと言うか、全員が全員人間で有れば絶世の美女や、千年に1人の美女やら大層なネームバリューで噂になったろう美女達だ。


「……」



己の顔の目を隠すグルーヴの手を退けて4人の前に立つと、4人が4人恭しくお辞儀する…その背後では二人の舌打ちが聞こえる…少し面白いな。


「さて、君達は何用で私達の前に現れたのか問うても?」

「はい、〝サタン〟様…我々は貴方様方をアマイモン様の元へ案内する為に遣わされました」

「宜しければ、御案内致しますので付いて来て頂きたく…」

「宜しいでしょうか?」


4人の目が俺を見据える……ふむ。


「…フフフッ♪…いや、構わないよ…敵意も無さそうだ――皆もそれで良いかな?」


俺は向き直り3人へ問う…するとバリッドは頷き、二人は渋々…ソレはもう渋々という風に頷く。


「――それじゃあ案内を頼むとしようか、〝レディ〟?」

「はい♪――それでは―」


――カッ――


その時、先頭に居た美女が1人足を躓かせる……ヒール故に悪路は少し不得手なのだろう。


――クイッ――


「主様!?」

「何、何も疚しい事を考えている訳じゃない…だからそう血涙を流すな、少し面白い……それはそうと、〝大丈夫〟かな?」


俺はそう言い今し方引き寄せた美女へ目を向ける……金髪に、その蒼い瞳が美しい…宝石の様でしかし人形程無機質さの無い…見る者を魅了する言い瞳だ…。


「悪路にヒールでは転びやすいだろう……どれ、道を教えてくれるなら私が運ぼうか?……〝美女の脚に傷が付くのは気分が良くない〟…どうかな?」

「ッ!…ぇえっと……コホンッ、い、いえ!問題有りません、御客人にそんな事をさるのは……ッ!」

「――〝私は構わないよ〟?」

「ッ〜〜〜!?」


目を慌ただしく動かすその美女へ加えてそう言うと、今度は顔を紅くする…少し嗜虐心が湧くが…。


「「」」

「……」


流石にこれ以上踏み込むのは後ろの鬼達が恐ろしいので引くとしよう……ソレはそうと。


「所で1つ質問だが、君達の名前は何と呼べば良い?…何時までも君や美女と言うのは少し面倒では無いかな?」


チラリと二人を見ると相変わらず不機嫌そうだが納得も有り、コレは問題無さそうだ。


「あ、わ、私は〝リディア〟とお呼び下されば…」


私の腕に掴まっている美女はそう言い、立ち上がる…相変わらず耳先は赤いようだが。


「私は〝ニーナ〟とお呼び下さい」


その隣、赤毛のショートカットの美女はニーナと名乗りお辞儀する。


「私は〝キャスニア〟とお呼び下さい〜♪」


その隣の同じく赤毛の何処か緩い雰囲気の美女はそう言い眠くなる様な声でそう言う。


「私は〝サーシャ〟と」


そして残るは艷やかな黒い長髪を靡かせる眼鏡の美女…。


「成る程……此方の自己紹介は先の様子を見れば不要かな?…それでは案内を頼むとしよう…宜しく頼むよ♪」


そうして我々は4人に連れられ屋敷へ向かうのだった…。


「バリッド様は凄まじい剛腕をお持ちなのですね?」

「おう!?…まぁ、鍛えてるからな!」

「とても逞しくて素敵ですわ♪…少し触らせて頂けますか?」

「応、構わねぇぜ!」

「セレーネ様、喉はお乾きでは無いですか?」

「……いや、要らん」

「それではお茶菓子等は如何ですか?…グルーヴ様もどうでしょうか?」

「大丈夫ですわ…私は主様のクッキーが有りますので」

「まぁ、ハデス様はお茶菓子もお作りに?…流石、美しいお二人の主様、多才なのですね♪」

「「……」」


案内の間、4人はそれぞれの下につき…会話を投げ掛ける…ふむ。


「興味が有るなら食べると良い…何何も毒等入っていない故、安心すると良い」


――パチンッ――


そう言い4人の手元にクッキーの詰まった小袋を渡す…すると4人は嬉しそうに紐解くとクッキーを一枚口に含む…。


「――お気に召したかね、〝ニーナ〟殿?」

「ッ!…はい、凄く美味しいですね…私もお菓子作りには自信が有りましたが、こんなに美味しい物は作った事が有りません」

「そうかい?…そんな事は無いだろう?」


俺はそう言いニーナの取り出したクッキーを一切れ口に含む…ふむ。


「サクサクとした食感に解ける様な柔らかさ、木の実の風味が良いアクセントだ…私は君のクッキーの方が好みだね♪…もう一つ食べさせてくれないかな?」

「どうぞ、そう言って頂けるのは嬉しいですね…」


彼女に断りを入れ、もう一切れ食べて見る……うん。


「〝美味しい〟よ、凄く…良い腕だ♪」

「ッ…それは、良かったです…」

「「…」」


俺が笑顔でそう言うとニーナは少し目を泳がせてそう呟く……そんなこんなあり、各々と交流し、全員と親しく成った頃には霧の屋敷が目の前に現れ、その入口まで歩を進めていたのだった……。


「それでは、中へお入り下さい♪」


そして、先頭のリディアが扉を開きそして我々は霧の屋敷…〝色欲の館〟へ足を踏み入れた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 他とは違って、随分と友好的な態度ですねぇ……
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