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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十二章:冥界統べる屍の王
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暴食―捕食―

どうも皆様泥陀羅没地です。


取り敢えず本日の投稿…夜にもう一本投稿します。


次の話は掲示板回、その次が〝憤怒〟へ向けて…となります、お楽しみに。

さて、此処で一つ問題を提起しよう…。


戦闘開始の音頭に彼と私が共に放った術の特性から導き出される答えは?…。


片や万物喰らう〝消失の雨〟


片や無尽蔵に湧き出し肉を喰らう〝滅びの群れ〟…其れ等がぶつかり合ったその時、勝つのは果たして何方だろうか?…。


――ブンブンブンブンッ――


「『チィッ!?――何ヤッテルンダオ前等!?』」


答えは前者……〝消失の雨〟である、当然だろう防御も何も関係なく通り過ぎた先には何も残さない〝消失〟を何故高々一生命体の〝蟲〟が群れただけの術に負けるだろうか?…。


「おいおいどうしたベルゼブブ!?―敵の技に対して繰り出す〝選択〟が温くないか!?」

「『ッ―黙レッ』」


迫る黒の雨をその巨躯に見合わぬ動きで華麗に避けながら、ベルゼブブが新たに術を紡ぐ…。


「〝豊穣ヲ喰ラウ者〟」


ベルゼブブの紡ぐ魔術は地面へ下り、ソレが地面に広がると同時に一面に緑豊かな大地へ作り替える…だが、ソレは瞬く間に、まるで緑から灰色の大地へ塗り替える様にソレは全てを元に戻す……一見無駄な様に見えた、その術は次の瞬間――。


「ッおぉ!?」


俺の目を〝釘付けにした〟…ソレは些細な違和感から、ほんの興味本位で〝探知〟を張っただけだった……その瞬間。


――ブワァァァァッ――


辺り一面に埋め尽くされる生命の反応…そして灰色の大地は一瞬で黒に塗りつぶされ…やがてその遠くにある〝黒〟の正体を鮮明にして此方へ向かって来ていた…。


ソレは蟲の群れだった……掌程は有ろうかと言う虫の群れが何百、何千、何万…いや、何百万と数え切れぬ程に迫って来ていた……その〝食欲〟を枯らす事無く。


「コレは流石に〝予想外〟だなぁ!!!」


己の放つ〝雨〟では全て討滅するのは難しいだろう…かと言って此等を全て処理するにはかなりの範囲だ…なら。


――パチンッ――


雨を消し去り新しく術を構築する…幸いなのは個々がそれ程の強さを持っていない事だ…なら。


「〝空より見下す赤熱白光〟」

「〝繁栄と滅びの象徴〟」

「〝蝋焦がし人を落とす者よ、その愚かな御業を今一度見せてみろ〟!」

「『ッ!?――何ダヨソレ!?』」


複数の口を用い祝詞を〝重ねて唱える〟…複数の祝詞を一つの時間で補い、生まれた〝赤熱を噴出する球体〟を胸元に浮かべる。


「〝愚神ノ焼炎(アポロン・サン)〟」


そしてソレを両手で閉じる……圧縮された炎の塊が外部から押し込まれてその均衡を破り、全方位に炎の熱を吐き出し暴れ狂う。


空を舞う黒は一瞬にして〝燃え〟…数秒もせずにその炎を〝炭〟へ…炭を〝灰〟に変える。


ベルゼブブの大技はたった一撃で無力化された……だが、大罪悪魔の一角が放つ大技へ抵抗するのに、流石に俺も〝無傷〟とは行かない…。


――パチッ…パチチッ――


「――ハッハッハッハッ!―ハッハハハッ!―アッハッハハハーァ!」


身体中を炎が焦がす、その炎の熱を感じながら、俺は俺の内に燻る〝高揚〟に身を委ねていた…。


「――まだだ、まだまだ足りない!」


まだまだ踊り足りないだろうきっとそうだ、俺もお前もまだまだ生命は残っている。


「燃やし尽くし、喰らい尽くしてその腹が愉悦と狂気に満ちるまで!―この〝舞踏会(闘争)〟は終わらない!」


――ゴオォォォッ――


「〝千屍:鏖殺に吠える黒鬼〟――〝改〟」


炎が渦巻き、空の上に朱い血の炎が渦巻く…その炎の渦は次第に縮小し、俺の身体に〝衣〟の様に纏わり付き其処に〝鬼〟を産み落とす。


「〝咎喰の赤妖鬼〟」



●○●○●○


(何がどうなってるんだ…!?)


ベルゼブブは今眼前に現れた〝炎の鬼〟を見ながら、焦燥を込めて悪態を吐く。


己の放った〝切り札〟…豊穣を喰らい文明を飢餓に追い遣る〝破滅の蟲〟が一撃で無力化された事も信じられない…だが。


――ゴオォォォッ――


先程まで消耗していた筈のその男の魔力が、以前にもまして上昇しているのが更に理解出来ない。


――ゴオォォォッ――


燃え盛る炎の熱が顔を煽る……その熱に思わず後退るが、ソレを見て目の前の〝塵〟と呼んだ男はその顔を冷たい笑みで満たした。


「――サァ、ベルゼブブ…焼き加減はどれがお好みだ?―レア?…ミディアムレア?…ウェルダンから消し炭まで、好きな物を選ばせてやるとも♪」


その言葉と同時に、その業火を更に滾らせる…それに思わず―〝呟いてしまった〟…。


「『〝化物〟メ…ッ!?』」


その瞬間、奴の…ハデスの〝瞳〟から〝感情が消えた〟…。


「化物、化物か…化物のお前が俺へそう告げるか…」


その目は紫の色を放って入るが其処に何の気配も無く、その奥に、感情の奥に蓋をされていたソレの〝本質〟が垣間見えた。


――ゾクッ――


ソレは空洞の〝虚無〟だった…生命ある者が持つには余りにも異質で、異常で、あり得ない〝感情〟…ソレがその瞳の奥に渦巻いていた。


「俺が化物なら、お前は何だ?……ただの悪魔?…ただの〝蟲〟か?…自らを他の悪魔を超越した〝化物〟で有ると誇示する癖に随分と〝人間臭い〟事を抜かすじゃないか♪」


――大いに結構――


ソレはそう言うと、その炎を黒く変えて此方へその引き裂かれた笑みを見せて言葉を続けた…。


「では〝化物〟の様にお前を貪り喰らうとしよう、戯れに四肢を削ぎ、頭蓋を開き、腸を肴に血を飲み干す…〝化物〟の様に♪」


その言葉を聞いた、その瞬間……僕は〝逃げた〟…その場から。


「所詮この程度か、〝悪魔〟…下らん化物の成り損ないめ…〝興醒め〟だ――」


――ズズズッ――


遠くからそんな冷たい声が響いた……その瞬間。


「――疾く喰らって終わりにしよう」

「ッ!?」


目の前にハデスが現れ、その黒い右手で僕の脚を〝削り取った〟…。


――バクンッ――


「〝不味い〟…」


削り取られ落ちてゆく脚をハデスの影が喰らい…ハデスはそう言い僕を見る。


「羽音が〝不愉快〟だ」


――ジュンッ――


その瞬間、僕の羽が焼き切られて僕は空を落ちる……――。


――ガシィッ――


事は無かった……空中に現れた〝影の中〟から白い大きな骨の腕が伸びて己を掴む……そして己の視界に悍ましい〝虚無の化物〟を映す。


「どうした悪魔、何を〝恐れる〟?…お前達は恐れさせる側だろう、人を喰らう側じゃないか?…―あぁ、そうだったそうだった♪」

「ヒィッ!?」

「〝お前〟はもう悪魔(化物)じゃ無かったな♪――ただの餌だ」


その化物の姿に、僕は悲鳴を漏らす……その身体を膨れ上がらせて、その腹から悍ましくドロドロに溶け合った人の顔と、其れ等が組み合わさり生まれた〝巨大な口〟が近付いていた。


「『さァ、お前ガ喰らッタ者達の気持チを味ワッてみロ…体ノ一部を噛ミ千切らレ、痛みニ悶えなガラ、磨り潰サレて腹ヘ収めラれル恐怖と絶望ヲ…〝餌〟とシて、ナ♪』」


――バクッ――


「ギヒィィィッ!?」


脚が食い千切られた…その痛みに悲鳴を上げる…だが、その直後、己のこの痛みがまだまだ序の口だったと知る。


――ゴリッ――


「ギィッ…ァアア!?」


食い千切られた脚が喰われる、その歯と歯で磨り潰されて、胃に運ばれて溶かされるその痛みが何十倍もの痛みで返ってくる。


「『驚いたカ?――そう、お前の脚ハまだ〝生きている〟…お前ハ生きたマま磨り潰サれ、胃で溶かサレル痛ミを味わっているンだ♪…中々出来る経験ジャ無いだろウ?』」


その言葉に、僕の心が凍り付く…つまりソレは――。


「『お前ハ永遠に〝痛み〟に苦しミ続ケル…そして、永劫に〝飢え〟…その飢えは満ちる事は無い…暴食ノお前に相応しイ末路だロウ?……なぁニ、俺の腹ニはお前と同じ〝地獄〟を味わう同士が居ルんダ♪…仲良く出来ルだろうヨ♪』」

「ッ――イヤダッ、止めてクレ!―力ナラヤルカラッ、オ前ニモ手ハ出サナイッ!」

「――♪」


――バクンッ――


僕の命乞いを無視して、ハデスは僕の身体を喰らう…ゆっくりと、味わう様に、何度も咀嚼してドロドロに成るまで噛み締め、そしてソレを呑み込む…痛みが身体中に走る、脚の無い脚が、腹の無い腹が痛み…僕が暴れるのを見て、ハデスはその顔を歪ませる。


「イヤダッ、イヤダイヤダイヤダッ!―オネガイシマスッ、オネガイダカラ普通ニコロシテ下サイッ!」


僕は痛みに悶えながら、何度もそう嘆願する……そして、頭だけに成り、そう懇願した…だが、ソレは――。


「〝断る〟♪」


無慈悲にもそう跳ね除けられ、その口が迫った。


――バクンッ――



暗闇と痛みと咀嚼音が響き…僕は意識を落とした……。




――ドサッ――


その瞬間、僕は其処に目覚めた……。


「ッ!?――ど、何処!?」


人間の身体に成ったのも気にせず立ち上がり、その場所を見渡す……その瞬間。


――ドクンッ――


心臓の鼓動と共に凄まじい痛みが全身を襲う、立っていられない程に……そして同時に僕は強烈な〝飢え〟に襲われた。


「ッ!?――空腹が…ッ――痛い!?―イタイイタイイタイッ!?」


痛みと空腹に全身を襲われ、僕は何時間何日間か分からないまま蹲る……痛みは常に襲い続け、空腹の余り地面の砂を喰らう…だが、ソレでも欠片の満ちも得られず、気が狂いそうな程に僕は叫ぶ…。


――ギャアァァァッ!?――


その時、離れた場所から声が聞こえ…僕は何も分からないままその声の下に向かう…。


気の遠くなる時間を掛けて、僕は其処に辿り着いた……其処には。


「※※※※※!?!?」


十字架に吊るされ、焼き殺される二人の男女と。


「※※※※※!?!?!?」


鎖に繋がれ狼にその肉を喰われ続ける〝何か〟が居た。


――パキンッ――


その瞬間、僕の心が折れる音が響いた……。


――ガシャンッ――


その瞬間、僕の身体を鎖が拘束する…そのまま僕は釣り上げられ、僕は鍋に落とされる。


身体中を燃える痛みが襲い、その鼻をくすぐる匂いに僕は飢え、そしてその鍋の中に沈む無数の食材に齧り付く…だが、ソレに味はなく、食感も何も無く、腹も満ちず…僕は鍋の中に沈められ、その熱と無限に続く飢えに声すら上げられずにただ、〝喰らっていた〟……満ちない飢えと、無限に続く痛みに苛まれて。




○●○●○●


――シュウゥゥゥゥッ――


『〝暴食〟のベルゼブブを討伐しました!』

『ハデスのレベルが上がりました!』

『新たな称号〈暴食〉を獲得しました!』


「――フゥ、コレで…取り敢えず一体目か」


脳に流れるアナウンスの声に軽く苛立ちを覚えながら、俺は王の居なくなった城に戻る…。


「――気分はどうだ、お前等?」

「…あぁ、問題無い……悪いなボス」

「助かりましたわ…」

「まさか、大罪悪魔があんな馬鹿げた力を持ってるとは思わなかったぜ…」

「何百年も籠もり続けた負の魔力だからな、流石にお前達でもキツイだろうさ……さて、はれて〝暴食〟の吸収に成功したのは良しとして…夜…が有るのかは知らんが夜も深くなって来た…一度この城で休むことにしよう…俺が目覚めてから今度は〝憤怒〟の吸収に向かう…良いな?」

「「「了解」」」


そうして晴れて主目的を少し進め、俺達は眠りに着いた……。


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