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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十二章:冥界統べる屍の王
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暴食―邂逅―

――ドゴンッ、ドゴンッ――


何者かが城へ続く大門を叩く…その余りの強さと、立ち昇る魔力に皆が皆、警戒と共に武器を構えていた…。


「敵襲、敵襲だ!」


叫びは見る間に伝播する…そして一人、また一人とその場に参戦しその扉が開くのを待つ。


「『暴食く〜ん、出っておいで〜…出ないと目玉と、その四肢を引き裂き、腸を抉り出してお前の目の前で犬の餌にでもしてやるぞ〜?』」

「『開け〜、開け〜…開け、ヒラケヒラケヒラケヒラケヒラケヒラケ――』」

「『すみませ〜ん、ベルゼブブさ〜ん、留守ですか〜?』」


叩く、叩く、その支離滅裂な言葉の山を投げ掛けながら…その狂気を欠片も隠す事は無く…ソレが数分続き、悪魔達の中に警戒の糸が切れかけた者が現れ始めたその時。


「『あ、コレ押戸じゃなくて引戸なのか」


――バコンッ――


そんな何気ない言葉と共に、扉が吹き飛ぶ…扉はその形を歪めて圧縮され、その〝黒い球体〟に吸い込まれると、ソレを〝黒い手〟が握り潰す…そして、辺りに舞い散る土煙の中を悪魔達が凝視した瞬間。


――ドスッ――


「ガヒュッ!?」


喉を黒々とした肉の触手が悪魔の喉を貫き、一瞬止まるとそのまま土煙の中に悪魔を引き込んだ。


――バリッ、バキャッ、ムグッ――


悪魔の悲鳴と咀嚼音…突如現れた触手に悪魔達の警戒心が高まる…やがて、土煙を晴らしてその中で隠れ潜む〝化物〟を引き摺り出した…。


――ギョロッ――


その行動に、悪魔達は後悔する事になるだろ…その姿は人と呼ぶには余りに掛け離れた姿だった。


「『ウゥム…やはり程度の低い悪魔は食っても薄いな…小腹を満たすには量が有って良いだろうが』」


無数の口で言葉を吐き、残る悪魔の肉片を一つの口に放り込み…その背中から伸びた無数の腕を揺らしながら、その男は顔を不機嫌に歪めて此方を見ていた。


「『一、十、百…凡そ数百匹居て〝この程度〟か…コレなら王蟲達の方が幾分マシだったな…まぁ良い…』」


悪魔はそう言い、次の瞬間その腕を此方へ差し向ける。


「『お前達をさっさと平らげて、〝ベルゼブブ(メインディッシュ)〟を頂くとしよう♪』」


そして、一体と3人の化物による〝蹂躙〟が始まった。



――ドスドスドスッ――


腕を鋭い槍に作り変えて雑多な悪魔達を貫き、悪魔はソレを小さく圧縮して喰らい。


――ブゥンッ――


巨躯の男はその大剣を一薙ぎして地面と壁に深い傷を与えながら無数の悪魔を二つに断ち切り。


――ヒュンッ――


黒いドレスの美女はその扇で美しく風を撫で、その風に己の鋭く黒い美しい羽を乗せて飛ばし、悪魔達を穿ってゆく。


――バキッ、ドゴッ――


緋色の美女はその顔をつまらなそうにしながら拳を振るい、雑多な悪魔達の四肢を首を潰して回る…。


逃げようとする者はその瞬間には殺されて喰われ、僅かに現れた立ち向かう者はその攻撃を障壁に阻まれ喰い殺される…アレだけ居た仲間はたったの数分で淘汰され、鏖殺され…そして。


――グシャンッ――


最後の一匹は言葉を紡ぐ事も許されず、拳によって頭蓋を潰された。



「『――所詮、求める事を止め、甘い汁を啜る下級悪魔ではこんな物か…児戯にも劣る戯れだったな』」


赤濡れた大地を進みながら、ハデスはその扉へ進む。


「『〝バリッド〟』」

「了解ボス」


ハデスの言葉にバリッドが大剣を振るう……その大剣は歩みを止めないハデスを横切り、その眼前の荘厳な大門を破壊する…。


――カッ――


大門が崩れ落ち、瓦礫の礫が落ちる中…とうとうハデス等が暴食の城へ足を踏み入れた…その瞬間。


――ギィンッ――


「不敬で有るぞ、雑種」


黒い魔力の刃がハデスの眼前に迫り、障壁とぶつかり霧散する。


「この魔力、この威力…成る程、〝上位悪魔〟…いや、〝爵位持ち〟か」


ハデスの顔が僅かに興味深そうに輝き、眼前の…ギラギラと悪趣味な装飾に身を包んだ男へそう目を向けると、男はその顔を愉悦に染めて言葉を吐く。


「フンッ、我の〝黒刃〟を受けてまだ立っていられるとは…雑種の中でもそれなりに腕が立つようだな?」


――カッ――


その自尊心に溢れた言葉を吐きながら、悪魔は独り語り続ける。


「だが、この程度で我の力量を見誤るとは愚かだな…我はベルゼブブ様より、〝伯爵〟の爵位を与えられたのだ…爵位も持たぬ雑種共とは次元が違うのだよ」

「……」


――カッカッカッ――


悪魔はそう言い、恍惚とした表情で空を見上げる……そして、心底侮蔑した様な表情で眼下を見下ろしてこう宣う。


「貴様等の如き下等な雑種に教えてやろう…我は〝伯爵〟を賜りし〝アルマトン〟…我が至高の力により貴様等は死――」


――キィンッ――


その瞬間悪魔の首が吹き飛ぶ…ハデスの手によって。


「話が長ぇ…せめて話の最中に術の構築位しろ…後お前の術はその〝黒刃〟をちょっと作り変えただけで何の面白味もねぇ…俺の興味を返せ」


――バクッ――


ハデスはそう言いながら階段を登る…そして、その階段を開くと其処には。


――ボガァンッ――


「ほぉ、アルマトンを倒すとはやるな…だが、我は奴の様には行かんぞ?」


その通路の奥に扉を構え、その扉を守る様に立つ〝悪魔〟が居た。


「……」


そしてまた長々と語り始めるその悪魔へハデスは歩み寄り。


「さぁ、〝侯爵悪魔〟で有る我、〝ケルニアニ〟の手柄となって――」


――バシュンッ――


その身体を弾け飛ばし、殺した。


「……」

「「「……」」」


そしてソレを喰らい扉を開くと――。


――ギィンッ――


「ほぉ、中々やるのう…」

「――チッ」


中へ入った瞬間、上から奇襲を受けてとうとうハデスはその苛立ちを隠さず舌打ちする。


「我の攻撃を――」

「〝分身〟だろうが不愉快だ」


その瞬間分身の首をへし折りそう呟く…すると通路の石柱から首の圧し折れた悪魔が倒れて此方を見ていた。


「な、何故…」

「どいつもこいつも、あいつもそいつも…無駄に長々と自分語りしやがって…自尊心だけが高い無能が…ソレに何の意味が有る、ただ自分の武勇を声高々に喚く事で何が変わった?」


――ガッ――


苛立ちの中でハデスは悪魔の頭に足を乗せる。


「テメェの武勇を聞いた所で敵のやる事は変わらんだろうが、萎縮するとでも思うのか?…馬鹿らしいッ」


――メキメキメキッ――


「ァ……ガァ…ッ!?」

「高々〝爵位持ち〟が粋がるな…己の強さを誇示したいなら示せ…コレでお前もまた一つ賢くなったな?」


――ゴシャッ――


「じゃあ死ね」


そうして悪魔の頭蓋を踏み砕き、ソレを食い尽くすと、漸くスッキリしたのかハデスはそのまま扉へ向かう。


「フゥ……少しスッキリした…残りの不快感はベルゼブブを殺して収めるとしよう♪…お前達も準備は良いか?」

「無論だぜ」

「応!」

「出来てますわ!」

「結構♪…それじゃあ初の大罪悪魔〝討伐〟…やって行こうか♪」


ハデスはそう言い、最後の大扉を開け放つ……そして、その中へ入りその中心を見て笑みを浮かべる。


「『――ハァ、外が騒がしいと思ったら〝君〟だったんだね?』」


其処には玉座に踏ん反り返り、此方を睨む暴食のガキ、その分身が居た…本体は。


「こうやって直で会うのは初めてだなァ?――ベルゼブブ?」


その背後に巨大な水晶に閉じ込められた〝巨大な蠅〟の方だろうが。

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