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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十二章:冥界統べる屍の王
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女王の威厳は堕ちる事無く

どうも皆様泥陀羅没地です。


何この女王様とその配下スッゴイ高潔…イメージとしてはもう少し機械的で合理的な蟲の側面が強いキャラクターの筈だったのに…。



――パラッ…パラッ…――


地より這い出る…久しく触れぬ空の色を見てソレは空を見上げた…。


そして告げた…生まれ出る筈だった〝子等〟への贖罪と、生命を賭して己の為に働いた〝民〟へ向けて…そして、その全てを〝必ず仇は果たす〟と意味を込めて。


――「『ッ――――!!!』」――


大地震わせる〝咆哮〟と共に、己等を襲った野蛮な〝蛮族〟共を睥睨し。


――ドッ――


その歩を進めた。



●○●○●○


「なんですの…アレ?」


グルーヴは己の目に映るソレの〝情報〟にそう呟く。


―――――――

【リアンデラ・カルマ】LV:150

【黒軍死蟲女王蟻】


生命力:2000000

魔力 :1500000

筋力 :1000000

速力 :600000

物耐 :1000000

魔耐 :1200000

信仰 :500000

器用 :800000

幸運 :400000


【固有能力】

〈民は王の為に、王は民の為に〉


【保有能力】

〈贄喰らい〉LV:MAX

〈岩石魔術〉LV:MAX

〈魔力精密制御〉LV:MAX

〈鼓舞〉LV:MAX

〈軍団指揮〉LV:MAX

〈気配察知〉LV:MAX

〈魔力察知〉LV:MAX


【保有称号】

〈地中の女帝〉、〈統治者〉、〈至高の女王〉


―――――――――


その余りに馬鹿げた〝格の違い〟を見て…。


「『ッ〝―――〟!』」


咆哮…ソレと共に迸る魔力と、己等へ注がれる殺意にグルーヴは漸く動く…。


――ドォ――


「ッ〜〜!?…キャアァァァッ!?」


後一瞬動くのが遅れていれば…或いは己のこの身体は一瞬にして潰れ去っていただろう…片翼と右半身を吹き飛ばされたグルーヴは、緊張に早る鼓動の中でそう感じ、地面に堕ちる――。


――トサッ――


「――コレはコレは、些かお前達にとっては荷が重かったか?」


その瞬間、グルーヴを抱き止める〝何か〟の声に、グルーヴは空を見上げる…。


其処には巨躯の女王を見て、愉しげに声を鳴らす己の主が居た…。


○●○●○●


見て分かるその力の膨大さ…あのミェル・ワェルタを超えるその圧倒的〝暴威〟…。


「成る程確かに、〝全は1の為に、1は全の為に〟と言う訳だ」


――――――

〈贄喰らい〉

己の死すら捧げる献身の者を喰らう力。


喰らった者は献身の贄よりその力の一部を受け継ぐ。

――――――

――――――

〈王は民の為に、民は王の為に〉

王の庇護有って民は平穏を享受出来る。


故に王に不測の事態あらばその身を犠牲にしてでも我等は戦おう。


効果1:〝王〟の庇護下に居る〝民〟は、王が生きている間汎ゆる能力が〝超強化〟される。


効果2:〝王〟の庇護下に居る〝民〟は王に危機が迫ったその時、民は王にその身を捧げる。


―――――――


「――誰一人厭わず女王へ身を捧げ、女王は民の意志を汲んで〝その命を喰らった〟…」


正しく彼女と奴等で一蓮托生と言う訳だ…この馬鹿げた能力も得心が行く…。


「さて…どう調理するか…?」

「ッ――〝ボス〟!」

「ッ!…どうしたバリッド――ッ!?」


俺と女王蟻が互いに睨み合っていたその最中…ふとバリッドが大声を上げる。


――「『〝手ぇ出すな!!!〟』」――


と…その殺意にも似た言葉が俺へ突き刺さる……そして。


「――主様、私を降ろしてくださいまし」


俺の直ぐ近くで、グルーヴが俺を見据えていた…真っ直ぐと。


●○●○●○


私は主様のその眼を真っ直ぐと見つめてそう言う…その美しい紫の〝暗い眼〟を見て。


「主様へ、無様を晒したままでは終われませんわッ」


私の言葉に、主様はその瞳の奥の空洞に狂気を灯す。


「――成る程…出来るんだな?」

「やれますわッ」

「施しは?」

「不要です!」


私の言葉に主様が…ハデスが笑う、或いは嘲笑っていたのかも知れない。


「――大いに結構…では見せて貰おうか〝黒雨〟のグルーヴ…くれぐれも退屈させてくれるなよ?」

「――えぇ、主様は其処で私の舞を観ていて下さい」

「――あぁ、了解した」


主の言葉が終わると同時に、私は主の手から離れバリッドの元へ向かう。


ソレを主様はずっと見ていた…愉しげな笑みを崩す事無く。


「――バリッド!」

「ッ!―グルーヴ!」

「「ッ手を貸せ (貸しなさい)!」」


○●○●○●


――カチャッ――


「〜〜〜♪」


――何だコレは?――


今己の眼の前に居るソレの奇妙な行動に、女王は面食らい、動けないで居た…。


突如現れた〝異物〟…己の眼前に居た〝仇達〟よりも劣るその身で、仇達を超える〝魔力の渦〟に身を包んだソレのその奇妙な行動に、女王は困惑していた。


――コポコポコポッ――


「うぅむ…鑑賞にはやはりポップコーンとコーラが一番だな…お前もそう思わないか?」


椅子に腰掛け、机の上に甘い香りを漂わせる物を広げ、ソレを口に含み…敵意無く己の前に立つ〝ソレ〟はそう言い器に入った液体を飲み干す。


その一見〝無害〟に思えるソレを無視しようとした、その時…その目を見た己は立ち止まらざるを得なかった。


〝空洞〟


友好的な身振り手振りの裏に垣間見えた悍ましい〝空洞〟…ソレ故女王はその眼の前の悪魔に目を逸らせないでいた…。


仕掛ける事もせず、時間だけが過ぎてゆく……。


「――なぁ女王サマ?…コレはちょっとした興味本位何だがね」


その時、ふと男の声が響く……魔力を以て伝うソレは、己の耳に脳に届き、ソレの意味を理解する。


「〝民を喰らう〟気分はどうだった?」

「『ッ―――!』」


――ドゴォンッ――


その不愉快な〝言葉〟に、術を放つ…だがソレは何かに弾かれ、眼の前には涼し気な顔の男が居た。


「〝悔やんだか?…惜しんだか?〟…〝嬉々として贄へ成ったソレ等を見て、食らってどう思った?〟」


ソレの言葉に、更に術を放つ…それでも声は止まることはない。


「〝悔やんだ、惜しんだ…悲しく思い、それでも民の意志を継いだ〟…か……成る程、ソレは確かに本音なのだろうな……だが一方で、〝満ちた〟のだろう?…己の〝飢え〟は」


その言葉に、思わず身体が止まる……ソレは否定したくも否定出来ない事実で有ったからだ。


「〝欺瞞だな…お前は真実を一度覆い隠した…己の身体に蔓延る飢えと言う病巣の歓喜を…誰が為?…何の為に?〟」

「〝答えは民の為か?…それとも己の為か?…何方なんだ?〟」


――ドドドッ――


「…〝お前がその飢え満ちる歓喜を覆い隠したとして…果たして民はどう思う?〟」


気が付けば己の前に男は消え去り、其処には己だけが残った…。


『我が女王よ』

「ッ!」


その声を聞いた…其処には一匹の同胞……〝トルア・アルト〟が居た。


「ッ――済まない…私は、確かに同胞を喰らい、民を喰らい…〝歓喜〟を覚えた…」


空腹が満ちる感覚に幸福を覚えたのは確かだ……だが。


「だが、お前達の犠牲を望んだ訳では無い……我がお前達の意志を継ごうとしたのも確かなのだ…」

『……』

「我は…間違っていたのか?…」


眼の前の同胞へそう問う…気が付けば己の周りを無数の〝民〟が覆い、此方を見ていた。


『――否…断じて否である、我が女王よ』

「ッ……」


その瞬間、トルア・アルトはそう言うと私へ跪く…アルトだけではない、すべての民が私へ跪いていた。


『我が女王よ、飢えを感じる事は生命有る者の性で有る…我等はソレを以て生きてきたのでは無いですか?』

『然り、我等こそ…女王陛下へその様な選択を迫った事、悔やまねばなりませぬ』


皆がそう言い、我を見る…その顔に覚悟は有り…己を信じる様に、皆が口を揃えて言葉を続ける。


『『『『我等は女王の為に』』』』



「――ッ!―フフフッ♪」


気が付けば、我の目の前には再びソレが居て、その顔を笑みに変えて見据えていた。


――我は民の為に――


「―良い部下達だな、女王?」


男はそう、尊敬の念を我へ送り…そして不敵に笑い言葉を続ける。


「だが、俺の〝部下〟も負けては居ないぞ?」


――ドォォォッ――


男がそう言ったその瞬間、背後に凄まじい気配を感じてソチラを見る…。



其処には…。


「待たせましたわね」


凄まじい魔力を持った者と、その剛体を更に膨れさせた二人の〝仇〟が居た。


「な?……俺の自慢の部下達は、この程度の事で絶望しない…お前の部下と同じく、〝強い〟のさ♪」


男の言葉を聞き……我はその認識を改める…。


〝蛮族〟では無く…即ち〝敵〟として。



互いに見合い、そして合図はなく…同時に駆け出した……。

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