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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十一章地の底に堕ちる者
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冥府の扉叩くは厄災の王

どうも皆様泥陀羅没地です。


日付が変わりましたが投稿ドウゾ。

――ゴロゴロゴロッ――

――バチッバチチッ――


――カコンッ――


海が巨人を包み込む…それでもその動きを緩やかにするだけなのは、流石巨人の重量故か?…ならば。


「〝土泥大穢流(どでんおおえながれ)〟」


その濁流を更に重い泥に変えてしまえばどうなるか?…更にその動きは緩やかになるだろう。


さて、此処で一つ問答だ……今現在俺は新たに創造した2本腕で雷を〝圧縮〟し、現在俺の眼下には泥で身動きの取れない巨人の神兵…俺はコレから何をするでしょ――。


「答えは〝こうする〟んだよなぁ!」


圧縮した雷を巨人へ投げ付ける……無茶した所為で腕2本が炭に成ったがその分威力はお墨付きだ。


その強力な〝雷の塊〟は巨人へ迫る…対して巨人はソレを迎え撃たんとその大剣を構えていた。


「さて?――お前の身体は雷を通さないのか?」


巨人が剣で雷を〝裂く〟…分断した雷は2つに分かれて巨人を穿つ事なく落ちてゆく…雷を斬るとは流石に驚いたが生憎。


「――〝そんな神業〟でどうにかなる物じゃ無いんだなぁ、コレが♪」


雷が泥の海へ触れた…その瞬間泥の海を駆け巡る膨大なエネルギーの塊、ソレは俺の操る泥の海の全てを駆け巡り、その全てに〝暴虐〟を働いた。


――バリバリバリバリッ――


『グヌウゥゥゥゥッ!?!?』


巨人の口から痛みに対する忍苦の声が響き渡る…生身で雷を直に受けてその程度の反応なのが驚きだが…。


「驚いたな、まだまだ生きてるか…」


流石にピンピンとまでは行かず疲労からか荒い息を吐いているがそれでもまだ余力は有るのだろう…その姿に少なくない尊敬を俺は送る。


『見事…也……この数千年久しく感じた事のない苦痛…成る程、我を前に一人で挑むと宣うだけは有る……貴殿は正しく〝王〟と呼ぶに相応しい強さを持っている…』

「ストレートな賛美は嫌いじゃないぞ?…殺意や憎悪に塗れた罵倒も好きだがな♪」

『――此処まで我を追い詰めたのも…此処まで我を〝滾らせた〟のも…今生の中で貴様唯一人で有ろうな』


――グッ――


フィアノスはそう言い己の大剣を持ち上げ、強く振り下ろす、その瞬間…〝海〟が消し飛んだ。


――ザァァァァァッ――


土煙と雨が俺を襲う……ソレはほんの十数秒で止んだが、次の瞬間。


『〝己が身砕けても我が心砕けず〟』

『〝我が身に守る物は要らず〟』

『〝我が全身全霊その全てを我が敵を砕く剣とせん〟』


フィアノスはそう言葉を紡ぎ、その剣を掲げる…。


『〝狭間護る巨躯の死兵(ガイア・フィアノス)〟』


そして、その言葉を紡ぎ終えると同時に…己の身を守っていた黒い装甲を脱ぎ捨てる。


『――〝我が全て〟を以て…我は貴様を討滅しよう』


その姿はドス黒い瘴気を纏った褐色の巨人だろうか…その身体に這い回る夥しく大きな刺青が蠢き、フィアノスの身体を這い回っている事、そしてその巨躯を除けばただの巨人と言い張れなくも無い…いや、結局その馬鹿げた〝重圧〟は普通の巨人とは言えないか。


「――フフフッ、良いね…益々惜しい」


この決着に真の意味で全力を注げなかったのは酷く惜しいな……だが。


「貴様の意を汲んで…俺も〝全身全霊〟を使ってやろうか♪」


決着はどの戦いにも存在する…ソレを無様な形で終わらせるのだけは我慢ならんな。


「〝万屍〟」


――ゴプッ、ゴポッ…――


やるなら双方満足して終わる最高の終わりを迎えるとしよう♪



○●○●○●


「〝黒染災禍津伏魔くろぞめわざわいまがつのふくま〟」


眼前の〝好敵手〟がそう祝詞を紡ぐ…その瞬間、ソレの身体が一瞬にしてドロドロに溶け、その姿を変える。


ソレは膨張する肉塊を思わせる姿で胎動し、己の内で肉塊を掻き混ぜている様な不快な音を撒き散らしながら心臓の鼓動を鳴らしていた…。


その悍ましい姿を見ながら、我は昂ぶりを感じていた…。


数千年間、生まれ出たその時からずっとこの場所で狭間を守護してきた…冥府から抜け出そうとする者をその度に斬り伏せて叩き落とし、現世からの者を警告と共に送り返す…。


退屈など考えた事もなかった…故に悪魔の甘言に惑わされる事も無く、何千年と過ごして来た……。


眼の前の〝アレ〟はこの数千年で初めて見る存在だった…。


冥府から抜け出そうとするどの悪魔よりも強大で、不思議な在り方…。


我欲で有る事に変わりはない…だが、アレは己が〝負ける事〟を楽しんでいる。


ソレが奇妙で、しかし少し分かって来た。


アレは飢えているのだ…己の心を癒す術に…だから己を超える者を求め、ソレを超える過程を味わい〝無卿〟を慰むのだ。


己を越え得るならば例え奴は蟲であっても受け入れるのだろう…それはある種〝最も悪魔を逸脱した悪魔〟といって差し支えないだろう。


そして今、一度奴の〝悦楽〟が終わろうとしている。


――ドパァッ――


ソレは己の腹を引き裂き出てきた……その纏う気配や姿は先程見たものとは大きく異なるが、その〝空虚な眼〟に浮かんだ〝愉悦〟は依然変わらないでいた。


「――ンンッ、サァ……俺の準備を待って貰って悪いな……それじゃあ互いに全霊出し終えた所でだ…」

『うむ…』


我とソレが対峙する…そして。


「『いざ尋常に、勝負!』」


互いに攻撃する、我の大剣と…奴の術で。


「〝腐枯ノ息吹(あざかれのいぶき)〟」

『〝無道ノ剣嵐〟』


奴の術を切り裂いてゆく…切り裂く毎に放たれた魔術は霧散し、己等の周囲を舞う。


我の攻撃は悉くを躱され、奴のいた場所には小賢しい術を置かれ、ソレを斬り飛ばしてゆく。


剣が豪雨の様に舞い、風圧が神殿を震わせる……我も奴もその顔を笑みに溢れさせ、その笑みは次第に深まってゆく。


もっと、斬りたい、もっと遊んでいたいとまるで童の様に……しかし、寂しくも此処は現、どんなに望んだ夢であっても現は必ずやって来る。


「―――〝収束〟」


ソレは何百度目か分からぬ剣戟を放った時…奴の言葉と共に周囲に残留していた黒い魔力の残滓は奴へ集まってゆく……。


「〝圧縮〟…〝神滅〟」


巨大な黒い球体は言葉と奴の動きと共に徐々に収束し、その形を小さく変える……ソレは徐々に収束し、次第には手に収まる程、指で掴める程に小さく成る…その恐ろしい力の圧力に周囲が歪み、本能からコレが最後の攻撃と認識した…。


「〝万物破却〟」


そして、奴が構える……己の掌に浮かぶ黒い破壊の塊を。


「〝虚の終焉(ホロウ・エンド)〟」


その黒い塊を奴が掌で打つ……その瞬間、音も何も無く、黒い波動が己へ迫る…。


それへ大剣を振るった……そして、私は〝負けた〟…。


何の抵抗も無く、何一つ発さず…破壊の音も何も無く……私の身体を〝消し飛ばし〟……勝負は終わった。



『――嗚呼、見事だハデスよ』

「――ハハハッ♪…お前の方が良くやったな…」


互いに活動限界を迎え、身体を朽ち果てさせる……。


「ソレじゃあ俺達は通らせてもらうぞ?」

『あぁ…好きにしろ……儂ではもう止められんでな』

「無責任だな?」

『事実よ』

「『ハッハッハッ!』」


我と奴は互いに笑い合い、そして。


「『一度、満足』」


そうして眠りに就いた……暗い暗い深い眠りへ――。



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