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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十一章地の底に堕ちる者
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料理人と喰らう者

どうも皆様泥陀羅没地です。


今更ながら259話のサブタイトル変更をお伝えします。



――トトトトッ――


包丁で音を刻む…野菜を切り、肉を切り分け…焼いて煮てと料理を作る…。


「〜〜〜♪」


身体が軽い、寝不足も無く…思考もクリアだ…。


朝から働き夕べに至るまで、その調子が衰えることは無かった……。


○●○●○●


「ンムンムッ♪―此処のテールスープは美味しいニャ!」

「サラダの味付けも悪く無いな」

「私はトマトパスタが好きかにゃ?」

「……」


運ばれて来る料理を平らげる…その光景を周囲の酒飲み達は面白そうに見ていた…。


――パクパクパクッ――


片端から運ばれる料理を喰らい、皿を積み上げる二匹の猫と二人の男…。


「ケプーッ…もう食べれないニャア♪」

「ほらチシャ、フルーツ食うか?」

「「食べるにゃ!」」

「食えねぇんじゃねぇのかよ…」


倒れたと思えば男の一声で飛び起きるその一連の流れに酒飲み達が笑い出し、酒場はより一層賑わってゆく……。


そして、その珍妙な一団は想定よりも高く付いた食事代に溜息を吐いて帰っていった。


〜〜〜〜〜


「8人目……〝ベル・クレイラー〟…御歳17歳の料理人で、16歳から店で働いている…凄いな、僅か1年足らずで彼処まで料理人として成長するのか」


拠点へ戻り今日集めた情報を確認しながらアガサカは感嘆の声を上げて写真の青年を見る。


「〝才能〟って奴かにゃ?…まぁ何にせよこのベル・クレイラーも犯人候補なのは確かにゃね?」


ミケはソファに座りながらヒラヒラと舞う自分の尻尾を触りそう続け、


「まぁな…他にも数人居るが…今夜別々に対象を監視する、対象に動きが有ったなら良し、無ければソレはソレで良し、次の日にはまた別の標的を探せば良い」


クラーノは地図の所々にマークを記し、その場所にそれぞれの人物の写真を貼り付けそう言う。


「取り敢えず今回は一番〜四番を監視するぞ」


――ゴーンッ、ゴーンッ、ゴーンッ…――


空が紅く染まる時間に、夜の時間を告げる鐘が鳴り響いた……。



●○●○●○


――ザッ…ザッ…ザッ…――


「今日はベル君凄かったね〜…何時もより動きも良かったし驚いちゃった」

「有難う御座います…今日は何故だか調子が良かったですね…何時もアレだけ動けたら良いんですけど…」


ベルとシャネルはそう言いながら道を歩く…空は紅から暗い黒へ染まり初め、道行く人々も徐々に減ってゆく時間…シャネルの家の前にベルは立ち、二人は名残惜しげに別れを告げて、ベルは一人道を歩く。


「……」

(良い匂いだったなぁ…)


シャネルの髪から匂う、花の香りにベルはそう思い―そして、何かに気が付くと顔を赤くして頭を振る。


「何を考えてるんだ僕は…でも」


ベルの脳裏にシャネルが浮かぶ…以前は職場等でしか会わなかった彼女との距離が次第に縮まっている気がする。


――あわよくば――


「――〝恋人〟に、成れたら良いなぁ…」


そんな淡い言葉を呟き、ベルは家の扉を開く…。


そしてまた心地の良い眠りに沈んだ……。




やがて街の活気が静まり、辺りを静寂で包んだ……その時だった…。


――パチッ――


先程迄眠っていたベルの瞼がパチリと開き…そして、呟く。


「――あぁ…腹が減った」


――ゴリゴリゴリッ――


……と、その顔をニタリと歪めて起き上がる…その身体を徐々に大きく変えながら。


――グルルルッ――


そして、その腹から獣の唸り声の様な音が鳴るのを聞き、その頬を更に歪める。


 「この小僧…日に日に燃費が悪くなりやがって…ケッヒヒヒッ♪」


――ガッ――


「ハァァッ……今夜は誰を喰おうか♪」


そして〝ソレ〟は窓を蹴って飛び出す…その姿を影に溶け込ませて…。



○●○●○●


「アァクソッ…気持ち悪いッ…」

「おいゲード、テメェゲロ吐いたらブチ殺すぞ?」

「わぁってるよ…ウップ…」


夜の街をフラフラと歩きながら、二人の男が道を歩く…。


「あ〜クソッ、金がねぇなぁ…そろそろ金になる仕事探さねぇと…」

「つっても最近は人攫いやらはリスクが高えし…やるなら行商を襲うくらいじゃねぇか?」

「チィッ…世知辛えなぁ……ん?」


そう言いながら二人が悪巧みをしていたその時、一人の男がその目を凝らし、街道の先を睨む様に見る…。


――グルルルルッ――


「あ〜腹が減ったなぁ…そろそろ不味そうだ…ア?」


その先には腹を鳴らしながら困った様に腹を鳴らす〝男〟が居た…その目は眼の前に現れた二人をじっと見て、何かを考える様な仕草をしていた…。


「……ふぅむ、男か…いや、無しだな…今は女か餓鬼の気分だ…それに汚えし齢も食って硬そうだなぁ…だが…」

「――丁度良いカモが居るじゃねぇか♪」


男が一人ブツブツと何かを言いながら思案していると、それを見た二人の男が顔をニヤニヤと歪めてその脚を進める。


――ザッ…――


「応、餓鬼…金出せよ」

「――う〜ん…今は気分じゃねぇんだよなぁ…」

「―聞いてんのかァ!?」


二人組が並んで男を脅す…それを目の前にして気にする風でも無く男は何かを呟き、そしてふと顔を上げて二人組を見て言葉を返す。


「うん、お前等要らねぇや…失せろ♪」

「……は?」


何の脈絡も無くそう二人組へ言葉を吐き、眼の前に居る二人を無視して歩を進める…その時。


「舐めてんじゃねぇぞ、この餓鬼ァ!?」


酔っ払った方の男がそう言い腕を上げる…そしてその拳を振り下ろし男の顔を穿とうとする…。


彼等はその後、理解するだろう……この眼の前の男の〝気紛れ〟に従っていれば、或いはもう少し延命出来たかもしれないと…。


「――〝あ〟?」


男の拳が振り下ろされた…その万力の一撃が男の目の前に迫り…そして止まる。


「――は?」


――ドシャアッ――


そして酔っ払った男はそんな声を上げて転ぶ…だろう。


「――避けてんじゃねェ!!!」


転んだ男が叫びながら立ち上がろうと手を伸ばした、その時。


――スカッ――


「――あ?」


本来の己の腕なら届いて当然な位置に有る筈の地面が無い…その減少に混乱し、ふと男の方を睨む……其処には。


――バリッ、ブチィッ――


「――ングッ……チッ…やっぱり男の肉は不味いな…硬いのは良いが酒臭い上に汗臭い…やっぱり女か餓鬼の肉のが良かったか…」


己の腕を口に放り込み、そう言い放つ〝男〟の姿が有った…。


「ヒィッ!?」


相棒はその光景に後退り、混乱していた己はその光景を呆然と見ていた…コイツは今確かに、〝俺の腕〟を食った…なら、俺の手は――。


そして視線を己の右腕へ移す…其処に、〝腕〟は無かった。


――ピチャピチャッ――


「ッ―――!?」


その瞬間、痛みによって男は酔いを吹き飛ばされ、そして叫び声を上げようとした…だが。


――ブチィッ――


その次の瞬間、〝化け物〟の腕が伸び、己の喉を引き千切られた…。


「五月蝿えなぁ…〝餌〟が叫ぶな耳障りだ」


其処まで来て漸く男は理解する……目前のソイツは、〝人間〟では無いと。


「――まぁ、腹は膨れるから良しとしよう♪」


――ブチィッ――


その瞬間、二人の男の首が飛び…飛び散る血を啜る音と肉を引きずる音が夜の街を進む――。



――グルルルルッ――


獰猛な獣の様に、空腹を告げる音を鳴らして。



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