戦鬼姫と屍の王
どうも皆様泥陀羅没地です。
皆様お待ちかねのセレーネ、メインヒロインと主人公のイチャイチャの時間だオラァ!
それはそうと最近作者のテンションと投稿頻度が可笑しいって?…はい、私もそう思います、ホント何ででしょうね?…。
「――生憎と近接戦は封印されて居るからね」
「応、視りゃ分かる…簡単に死んだら殺すぜ?」
「ハッハッハッ♪―誰に言ってるんだ?」
俺とセレーネは互いに見合う…距離にして凡そ8メートル、俺の手には杖が、セレーネの手には篭手が。
殺意と戦意の入り混じった闘気をぶつけ合いながら、俺とセレーネは無人の荒野…〝龍の縄張り〟に居た。
こうなったのは数十分前。
――バァンッ――
「ハデス!」
「――あぁ、分かってるさ…今日はセレーネの番だろう?」
「応!―1日中ヤルぞ!」
「――言い方が直球過ぎるなオイ…まぁ良いか…それで、場所は?…下手な場所でやれば他の守護者共にバレるし、俺の結界の中ではフェアとは言えないだろう?」
俺は暗に宛は有るのかとセレーネへ目を向けると、セレーネはその胸を張り堂々と言う。
「んなもん無い!」
…と、予定調和と言えばそうだが此処まで言い切られるといっそ清々しい。
「ふぅむ……あ、良い場所在るじゃないか♪」
十秒程思考して、俺はセレーネの要望においてピッタリな場所を見つけてセレーネと共に転移する。
〜〜〜〜〜〜
「――と言う訳でお前達の世界を使いたいんだが、良いか?」
「ふむ…構わんぞハデス…だが」
そういう訳で俺は目の前のガレリアへ頼むと、ガレリアはすんなりと受け入れてくれる…流石龍王、持つべき者は懐の深い友である。
「――1つ、条件がある」
そんなこんなで俺は条件付きで龍の世界の荒野へ足を運んだのだった……。
〜〜〜以上回想終了〜〜〜
「しかし良いのか?…二人きりじゃ無くて?」
そして今、俺は今更ながらせれへ聞き返す…ガレリアの条件はズバリ、〝龍の観戦〟で有る。
「何と…龍で無い者がこれ程の力を…」
「ガレリア様の御友人の戦いが見られるなんて…!」
空を大地を遠くから龍の群れが埋め尽くし、その視線が此方へ集まる…セレーネの要望としてはこの地が適任だが、こうも視線が多いとセレーネも嫌がるかと思い、そう問うと。
「ハンッ、私もお前もそんな物気にするタマかよ!――それに」
俺の言葉にセレーネは言葉を紡ぎ、顔を笑顔に染める。
「見物人が気にならなく成る程、私に釘付けにしてやるよ」
臆面なく、羞恥無くそう言ってのけるセレーネに、思わず笑みが溢れる。
「――ハッハハハッ!…うん、そうだね…確かにそうすれば良い♪」
俺達の周りを遠巻きに見る龍達、その中から人状態のガレリアが現れ、俺とセレーネの間に立つ。
「今回は我等の観戦を許可して貰って悪いな…皆も以前から貴様等の実力に興味が有った様でな」
「構わん、俺等の方こそ感謝するべきだろう…」
「そう言ってくれると助かる……どれ、公平を期す為だ…我が開始の宣言をしよう」
「「了解」」
ガレリアの申し出を受け入れ、俺とセレーネが両者構える……そして。
「それでは――〝武器を構えよ〟」
厳粛たる声が響き渡り、騒然としていた世界が静かに成る、その中で動くのは俺とセレーネだけ…。
「〝ソレでは…宣言する〟」
俺とセレーネの闘気が高まる…互いが互いを見て、集中を高めてゆく…世界から色が失せ、時が遅くなり、そして目の前の〝相手〟だけに全神経を注ぐ……鼓動がゆっくりと響く…そうして、極限まで集中が高まった…その瞬間。
――パァンッ――
「〝試合開始〟!」
突如響いた異物の登場と共に、色は戻り戦いが始まる……最初に動いたのは。
「〝天落〟―」
セレーネだった。
――ドッゴオォォォォッ!!!――
その瞬間、大地が凄まじい音を立てて吹き飛び…龍も、龍王も瞠目し…固まる。
全く…何て一撃だ?――。
「相変わらずだなぁ!」
「ッ♪……どう言うこった?」
砂煙が晴れた…其処には、俺の元いた場所で佇む笑顔のセレーネと、其処から大きく離された俺の姿が有った……。
○●○●○●
セレーネは依然昂る戦意と同時に当惑を覚えていた。
(確かに〝殴った〟…)
開始から一秒にも満たない一瞬で、アレが術を行使する間すら与えずに…確かに触れ、確かに打ち抜いた感触は有った…だが、どう言う仕掛けか、ハデスはそのままの姿で、何の怪我も無く…無傷で立っていた。
「ッ♪……どういうこった?」
セレーネは問うた、己の疑問にソレが丁寧に教えてくれると理解していたから。
「なぁに、何も不思議な事は無い……余りに綺麗に〝殺された〟んで一瞬で再構築しただけさ♪」
ハデスの言葉にセレーネは納得する、対してハデスは面白そうに、そして驚いた様に告げる。
「しかしまさか術を構築するよりも早く殺られるとは思わなかった……流石に油断し過ぎたな…失策だった」
「ハッ、降参するか?」
〝否〟…セレーネは理解している、己の眼の前に居る男は…己の愛した男は、たかだか一度の死程度では到底止まらない事を。
「いやまさか…この程度で止まるつもり何て毛頭ないさ……しかしセレーネ、俺はお前との約束を破ってしまったな…〝簡単に死なない〟と言う約束を違えてしまった…」
ハデスはそう言い、セレーネを見る……その眼にセレーネの心臓が高鳴る。
紫の目が、己を見ている…冷たく、温かく、優しく、鋭く、チグハグで…明確な〝殺意〟を込めて。
「約束を違えた〝代償〟だ…〝全身全霊〟…全てを以てお前を〝楽しませる〟…お前を〝殺す〟と言う事で、赦してはくれないだろうか?」
ソレが、堪らなく嬉しい…。
「ッ――嬉しい事を言ってくれるじゃねぇの!」
「ッ――♪……〝原始の法、祖は分かたれし六の根源〟」
そしてセレーネは駆ける…高鳴る鼓動と共に、膨大な魔力の嵐を吹き荒れさせる己の〝敵〟へ。
●○●○●○
「〝始まりは暗闇より、暗闇を光が照らし、光の元に大地は生まれ、大地を包むは大気、大気巡りて海は生まれ、海を焼くは炎…炎は滅びと再生を生み、世界は闇より終わりを告げる…巡り巡りて新たな始まりを告げる〟」
莫大な魔力の渦、其処に生まれる6つの力の奔流を間近で受け、龍王ガレリアはその目を瞠目させる。
(一度見ぬ間に何と凄まじい成長……)
その魔力だけを見るならば、己にも届き得る程に…その魔力は莫大だった…五百年の封印がソレへ何を与えたのか、ガレリアは理解もままならない。
「…神にでも成るつもりか?」
ガレリアが呟く、本来は起こり得ない現象を…人が、獣が、魔物が悪魔が神と成る…文字通り次元を超えるその行為の到底成し得る事叶わない無理難題を……眼の前の今、戦いを繰り広げる友を見て、ガレリアはそう思う。
もしかすれば…と。
「……」
ソレは友として嬉しき事では有るが、同時に王としては十分に警戒せねばならない事であると理解している…故にガレリアは複雑な視線を二人の戦いに送っていた…願わくば友と争う事が無い様にと僅かな祈りと、或いは己が挑戦者になり得るかもしれないという歓喜も共に。
○●○●○●
「〝我は始まりを告げる者、我は滅びを招く者〟」
――パチンッ――
俺は眼の前に迫る、弾丸より疾き鬼の姫をしっかりと認識する。
「〝崩壊と再生の輪廻こそ、世界の本質で在る〟」
俺は祝詞を唄いながら、魔力の嵐にセレーネが遮られた瞬間、複数の分身を放つ。
「「「「「〝即ち、崩壊と再生を呼ぶ我は世界と言って違う事無く〟」」」」」
「ッ!?」
魔力の嵐を突き抜けて、セレーネが現れた…その驚きが手に取るように分かる。
同じ声、同じ形、同じ顔、同じ気配の俺達がセレーネを見ていたのだから。
…しかし、次のセレーネの行動に今度は俺が驚かされる事になる。
――ダンッ――
「「「「「ッ!?」」」」」
瞠目する…だってそうだろう?…セレーネが何の躊躇いもなく〝俺〟の方に来たんだから。
分身の看破?…否、そんな上等な物じゃ無い、セレーネは今もどれが本体か分かっていない…ただの〝勘〟だ。
「コイツだろッ!」
――パチンッ――
「――〝正解〟だ♪」
指を鳴らし俺と分身の位置を入れ替える…分身はそう言いセレーネに頭蓋を割られて砕け散る。
戦いに明け暮れる修羅の姫…その経験が俺を探り当てた……セレーネにしか無い〝第三の眼〟…。
あぁ……コイツは――〝何処までも俺を楽しませる〟
「「「「〝我は世界、我は祖故に、また再生を始めよう…闇より生まれ、光が生まれ、大地が生まれ、風が生まれ、水がうまれ、炎が生まれ…汝が生まれた〟」」」」
バリッドも、グルーヴもディヴォンもタラトも…俺が産み落とした者達は既に、俺と同等の力を得ている…だが、決して俺を超えることはない……それは〝俺を越える事を恐れているからだ〟
それは奴等自身気付かぬ無意識の〝思い〟…創造者こそ絶対と言う万物の持ち得る無意識の〝枷〟だ。
――下らない――
創造者を越える事の何が悪だ?…創造者を踏破する事は赦されないのか?…赦されないと?…そうか…〝ソレは、お前の意見〟だろう?…。
セレーネはその〝無意識〟が無い…何処まで行っても〝自分自身が楽しめたならそれで良い〟を貫いている…だから躊躇わない、俺を殺し、俺を越える事を。
――パチンッ――
「「「〝そして我は汝へ与えよう…滅びを、炎は猛り、海は荒れ、風は暴れ大地は怒る…光は尽くを燃やし尽くし、そして闇は全てを呑み込むだろう〟」」」
それで良い…頂は常に変動するべきだ…だからこそ降ろされた者は這い上がろうと足掻くのだから…。
「「〝我は世界、世界の化身で在る〟」」
だからこそ、俺はセレーネを愛している…そして〝奴等〟にも期待しているのだ。
――パチンッ――
「〝我、再生と滅びの化身〟」
〝俺を越えると言う意思〟を真の意味で持つ事を。
――ドォッ――
暗闇が俺を、俺とセレーネを包む……暗闇の魔力は俺とセレーネを包み込み、収束し…〝光〟を与える。
「ッ――!?」
セレーネはその瞬間、立ち尽くす……いや、セレーネだけでは無い。
龍も、龍王も立ち尽くすだろう…何故ならば空には。
――ゾォッ――
何十、何百?…何千、何万?…そんな物では測れない。
――何億――
を越える、滅びの六元素が漂っていたのだから。
「〝一夜にして、世界は滅びる〟……さぁセレーネ…耐えてみせろよ?」
「ッ―――フフフッ、フハッ♪―アッハッハッハッハッハッ!!!」
――パチンッ――
俺の指と指が合わさり、鳴り響く……それと同時に降り注ぐ、俺の〝全身全霊〟…持ち得る魔力全て払い、並の術理では用いることの無い詠唱をし、俺の〝一月〟を用いた…〝丸一日〟続く、滅びの雨が。
「――上ッ等だァァッ!!!!」
セレーネの叫びが、世界に轟く……降り注ぐ滅びの雨は日が沈み、空の真上に月が来るまで振り続けた。
●○●○●○
「「「「「 」」」」」
その光景に、彼等はただ立ち尽くすしか無かった……彼等にとって憂慮すべき厄災の、その本気を見て。
今までの全てが児戯に思える程…巫山戯た力を見て。
「……コレは…流石にやり過ぎだな」
ソレを見て、さしもの彼をお気に入りとするその男も顔を顰めざるを得ないだろう。
何故ならばソレは、まさに〝神に届き得る所業〟なのだから。
如何にそれが、世界のシステムが合法と認めた物で有っても……〝看過〟はされない。
「――取り敢えず、〝警告〟は、俺がする……何時までも呆けて居ないで仕事に戻れ」
藤原太一の声に、漸く皆が戻り…そして業務に戻る……しかし、その場全ての人間がその時始めて心を一つにした…。
『彼奴本気で巫山戯んな』
……と。
○●○●○●
「――あちゃぁ……コレは流石にやり過ぎだねぇ」
その光景を、〝ソレ〟は苦笑混じりに見ていた。
「……守護者が…この世界の全てが神になる可能性は秘めて居るけれど…人の身で神の力を扱うのは、〝危険〟過ぎる」
己の娘等からの何百もの〝嘆願〟を見て、ソレは頭を掻く。
「取り敢えず、太一君が〝警告〟するっぽいから、太一君に任せよう…彼もこうなる事は分かってるだろうし…ね…」
ソレは、確かに己を見ている〝悪魔〟を見て…苦笑する。
「君は一体…〝何をしようとしているのかな〟?」
それは誰にも分からない……ただ1人悪魔だけが知る〝混沌の夢〟なのだから。
●○●○●○
「――ふぅ…」
変わり果てた荒野に降り立ち、俺はソレの前に立つ…〝月が照らす〟…セレーネへ。
「流石に…馬鹿だろ……お前…」
「その馬鹿に、此処まで耐え凌いだお前は大馬鹿か?」
――パキンッ――
「――おっと、流石に駄目か」
己の身体が音を立てて割れる…アレだけの無茶だからな、当然だろう。
「――楽しかったな」
「……あぁ、そうだな」
俺とセレーネが互いに見合う……覆い被さる形で…。
「「満足だ」」
俺とセレーネの身体が砕け散る……。
そして俺とセレーネは、深い眠りに落ちた……。
余談だが、その後しこたまガレリアに怒られた……まぁ当然だろう……しかし、龍達が満足していたので其処だけは感謝された……やっぱり龍は何処か可笑しいな。
いやぁ、チート主人公ってホント頭可笑しいね。
ですが御安心を、こんな巫山戯た力をそう何度も使わせる訳が有りません。
そもそも私、こんな巫山戯た力をそう安々と使わせたく無いですし…へ?じゃあ何で今回使わせたか?。
言ってしまえばこの作品の全生命(ゲーム内限定)が持ち得る可能性を主人公が先んじて至っただけなんですねコレが。
実際この世界ってどんな命でも神へ至ろうと思えば到れるんですね…その難易度が種族によって違うだけで。
神に成った場合その命は世界への干渉を禁じられます…当たり前ですね、あんな巫山戯た力を持ったのがそこかしこに入れば世界が壊れてしまうので。
守護者、プレイヤー的に言えば一種の〝キャラロスト〟です…その場合またプレイヤーは新たな器で再スタート出来ます…神へ至った守護者の器は世界が〝消費〟します、神レベルのリソースを世界が放っておく訳が無い。
そして皆様気付いたでしょう?…この世界の〝危うさ〟に…。
この世界は神の発生確率の割に根本から構造が脆いんですね。
例えるなら像が薄氷の上でタップダンス踊ってる見たいなもんです。
そんな世界をハデスがどうするか……楽しみですね。




