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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十章:人と悪魔の争奪戦
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三つ巴の最終決戦

――ガチャッ――


「――ッソロモンさん!」

「やぁリリー……ソチラも随分と〝楽しめた〟様で」


砦内に散乱する黒い骸を躱しながら、リリーの手に触れる。


「テラー…案内ありがとう」

「ッ――((>ω<)!)」


――コンコンコンッ…ガチャッ…――


「おや、お早い帰還だねプロフェス……作戦は上手く行った様で…」


俺は次いで部屋に入ってきた今回の〝功労者〟へ目を向けると、彼は肩を窄めて薄く笑う。


「君達が派手に暴れてくれたからねぇ、お陰で苦労無く四肢は集まったよ……」

「残すは不動の〝南〟か…?」


俺の投げ掛けに、プロフェスが意地の悪いニヤケ顔をして答える。


「予定通りだよ……今日はもう夜更けだ、次のフェーズは明日の昼頃から始めようか」

「了解したよプロフェス……と言う訳でリリー、一度解散としようか?」



長夜の戦いの後……世界は静寂に包まれてゆく…やがて世界の影は薄れ、白光が暗闇に隠された朱色の惨劇を映し出す…。


――ガラガラガラガラッ――


「ヒューッ…流石に懐がスカスカだねぇ…」

「うわぁ…あれだけあった財布がもうこんなに軽く…」

「どんだけ壊したんだよ…?」

「失礼なッ、数える程しか壊して無いよ…」


修繕に捧げられた己の財貨への嘆きをぼやき、馬車に揺られて西の森を進む……。


「え〜っと、此処から森人達の〝首都〟までは後幾ら掛かるんだ?」

「〝通常馬車〟なら1週間…無理して5日だな、俺達のは〝風駆馬〟だから…大体2日と半日程か?」

「アーサーやプロフェス達の所は〝天脚馬〟とか言う特級品だから、大体半日有れば何処にでも行ける…インチキだね」


ウェイブの言葉にリヒトが答え、序に俺が補足する……移り変わる木々、通り抜ける早風に髪を揺らして俺達は向かう。


目指すは〝森人の首都〟…名を〝カロス・ユグ・クラルス〟…〝世界樹〟の麓に作られた森人達の住まう国で有る。


〜〜〜〜〜〜


『ボスエリアに侵入しました!』

『【踊誘植人花プロスティチュートゥ・アルラウネ】、〝魅妖〟の〝ラティーナ――』


「〝天上焦がす終末の炎〟」


……はい、終わりである…考えても見てほしい、我々は既に竜を屠るのに苦労しない程の強さを得ている、ましてや相手は植物で、此方には炎系の守護者達の中でも上位、恐らくは最強と言って良いリリーが居る…結果が余りにも無常だと言うのは想像に難くないだろう?…。


「いやぁ、疑似餌としても見目麗しい淑女が炭になるのを見るのは痛ましい…おや?どうかしたかなお二人さん?」


妙に前屈みだが?…はて?…。


「植物にも…負けた…」

「何で勝っているのに君がダメージ受けてるんだい?…」


可笑しい…圧勝なのに此方側のダメージ…主に精神への攻撃が酷いぞ?…。


後はそうだね…森の中から襲ってくる〝悪性精霊(アーク・ウィスプ)〟と、〝擬態植魔(ミミック・ローバー)〟達を適宜処理しつつ、我々は風を切る…そして、〝目印〟を超えたその瞬間。


――ブンッ――


「おぉ〜……コレは大きいね」


一瞬通り抜けた微かな魔力、そしてその瞬間に前方に現れた〝巨木〟…その神聖な美しさを纏うソレこそが…我等が旅の終着点〝世界樹〟であった…。


「この辺り一帯は森人の縄張りかな…〝視られている〟ね…」

「ん〜…何かこの気配ムズムズするなァ…」

「何はともあれ急ぐとしよう…プロフェス達を待たせているし、時間も無い」


既に日は真昼の刻を刻んでいる…時間は僅かしか残されていない……〝封印の時間は〟




「――やぁ、来たね」

「あぁプロフェス…待たせたようで悪いね」

「いやいや、実力者が多い方が都合が良い」


首都に入り広場でプロフェス達と合流する…アーサー、ダルカン…その他諸々の上位陣達が集まるこの光景は、流石に壮観と言える。


「女王陛下に話はついている……もう暫くすれば封印の〝儀式〟の準備が出来るだろう…問題は―」

「妨害に走る2陣営の対処ですか?」

「そうだリリー君、出来得る限りの備えはしているがそれでも警戒に越した事は無い」


そんな事を言っていると、道行く住民達がざわめき立ち、広場へ見るからに国仕えな雰囲気の美男美女達が向かって来る…。


「失礼、プロフェス殿は居られるか?」

「あぁ、此処だよ」


森人等の中から一人、金髪の青年が前に出てそう言う…それにプロフェスがそう応えると、その透き通る蒼い瞳でプロフェスを見て告げる。


「私の名前は〝ランス〟…女王陛下より儀の準備が整ったと言う言を伝える様に遣わされました」

「早いね……了解した、それじゃあ皆…気を引き締めて臨むよ」


プロフェスの言葉に全員の顔に真剣さが帯びる…最後の〝策〟が開始する。


〜〜〜〜〜


「……ようこそお越し下さいました…神の使徒、守護者の皆様」


連れられた先、木々が絡み合う幻想的な道の真ん中に、彼女は立っていた……。


その姿は以前見たリーゼル・フロリナ女王に酷似した少女…恐らくは彼女の〝娘〟だろう少女はそう言いその不思議な雰囲気を醸し出していた、その少女の姿からは見合わぬ雰囲気に、全員が瞠目し、少し足を緩める。


「私の名前は〝アリステラ・フロリナ〟…リーゼル・フロリナの娘にして、この国を納める現女王です」

「女王陛下、此度は我々の計画に賛同して頂き、誠に感謝致します」


プロフェスはそう言い、女王へお辞儀する…それに対して女王は穏やかな笑みと、その内に見える〝真剣さ〟さを以てプロフェスへ言葉を紡ぐ。


「母様より伝え聞いた〝災厄の悪魔〟…その復活を阻む為です、私達も出来る限りの助力は致します…此方へ」


アリステラはそう言うと、踵を返して道を進む…。


「綺麗な人ですね〜…」

「そうだね、少女の見た目とあの魅惑的な雰囲気は長命な森人特有の性質だろう……それに、魔術師としての腕前も素晴らしいの一言に尽きる」


纏う魔力、魔力の流れ…其れ等全てがプロフェスと同等かそれ以上…中々に見応えの有る人物だ。


――ギィィッ――


独りでに動く扉を抜け、そして我々は辿り着く…。


陽の光が包む、荘厳な祭祀場……其処に立ち並ぶ20人を超える術者の姿を。


「さぁ、始めましょう」


女王の言葉が美しく木霊する…一方で。





――ドドドドドドドドッ――


大地踏み鳴らし、空を黒が覆い……東西南北で、獣の厄災はその産声を上げようとしていた。


そして、その産声に潜み…5つの影が静かに迫る…森人の国へ。

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