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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十章:人と悪魔の争奪戦
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血に染まる夜④

二本目出来ました…どぞ。

――ヒュンヒュンヒュンッ――


「――ハハハッ♪―俺の事を兎や角言えるタマかよ!?」

「少なくとも召喚師がそんなにアグレッシブに戦うのは見たこと無いね!」

「……」


振るい回される植物の根と踊る、幾十の音がのたうち回り、その中心では非常に露出の高い女が扇情的に踊る、いやまぁ。


「〝アルラウネ〟の特性をしていればコレが罠ってのは理解しているがしかし、見事な踊りだな」


――ブチブチブチッ――


「『Aaaaaa〜!!!』」

「ハハハッ、良いぞ踊れ踊れ――ヒヒッ♪」


――ガシッ――


荒れ狂うアルラウネの根を躱し、飛び越え…掴み、反動を付けて勢い良く横へ飛ぶ。


「――ッ!」


その先には同じくアルラウネ――の裏のジェームズを狙う〝死の狩人〟君が居た…偶然とは恐ろしいな♪


――ドゴッ――


「ッ――」

「フハハッ♪」


脚が狩人の腕へ減り込む…しかし流石に人の腕で支えるのにも限度が有ったのか――。


――ベキッ――


狩人の腕から鈍い破砕音が響き、狩人が浮く…そしてそのまま瓦礫のお仲間に成った。


「余所見は良くないよ狩人君?…いやいや、或いはちゃんかな?」

「猿みたいだねぇ…本当にどんな運動神経してるわけ?」

「そりゃゲームだからな、現実でこんな動き出来るかよ…ソレはそうと――。」


――ダンッ――


「『Aaaa――』」

「そろそろ次の演者に席を回そう♪」


アルラウネ…の疑似餌の首を掴み、砕き折る……感触は木に近いな。


「さて?…お前は?」


眼下の根の集合体…その奥を見る……蠢く音に守られた、〝実〟の形をしたソレ。


「脈打つ様相真紅の実…まるで心臓の様だな?」


――バキッ――


根を折り潰し、その実を掴む……残る根は勇ましくも実を守る様に集るが。


――ブチッ――


「『※※※※※※!?!?』」


ソレは無に帰す様に、無慈悲にも奪い取られてしまう…疑似餌の潰えた喉から凄まじい金切り声が上がり、アルラウネの巨躯がブルリと揺れ動く…少しして、アルラウネは活動を停止し、そして死んだ。


「さぁ、見せておくれよジェームズ、犯罪教授、安楽椅子に揺られた彼と対を成す者…お前のその知識を、その観察眼を、そしてその判断を……」

「?…」

「さぁ、次の踊りは誰が相手だ?」

「……」


――ジリィンッ――


「お前も踊ろうか?〝狩人〟」

「〝召喚〟…〝豪雪の大雪獣ウィンターキング・イエティ〟」

「『ウガァァァァァァッ!!!』」


黒衣の狩人と火花を散らす、そしてジェームズが新たに呼出した〝ソレ〟の登場によって、周囲に雪が振り始める。


「ほほう、イエティ…情報では北部の山奥に居ると聞いていたが…それもこの個体、ボス程は有りそうだ♪」


――ジリィン、バキッ、ギィンッ、ガッ、バキッ――


狩人の猛攻を捌き、イエティの方を見る……その巨躯を揺らしながら、イエティが拳を振り上げ、それを叩き付ける。


――ドゴォンッ――


「やるかデカブツ?」


狩人の猛攻を凌ぎ、距離を取る。


――ゴポッ――


「〝大地這う黒蜥蜴〟…〝殺れ〟」


そして影から使役獣を創り、狩人へ向ける…そして俺は、イエティへ向かって駆け出し。


――ドゴォンッ、バキッ、ドゴォンドゴォンッ――



その拳で殴り合う、その拳の重みが俺の腕へ触れ、筋肉に伝わる…コイツは中々、手応えのある玩具だな♪


――コン…コン…コン…――


「〝土槍〟」


俺がイエティに向き合った矢先、その杖の音と共に魔術が地面から迫る。


――コン…コン、コン…――


「〝風刃〟…召喚師が術を使っては行けない道理は無いだろう?」

「――ハッハッハッ、確かにそうだ♪」


そして夜の街に雪と紅色の冰が舞う、〝舞踏会〟が始まった。



○●○●○●


「アーアー……痛え痛え……流石にこんだけの数を相手にしちゃ如何にブギーマン様と言えどもしんどいねぇ…」


瓦礫に壁に、屋根の上に転がる数多の骸の上に立ち、ブギーマンがそう呟く……その言葉は余裕からの軽口では無く…いや、軽口こそ混じって入るが、その言葉が比喩では無い事を告げていた。


――ポタッ…ポタッ…――


「流石〝血染歌〟でリップに並ぶ筆頭幹部…やはり有象無象の派遣兵では力を削ぐ事しか出来ませんか」


黒衣では覆い隠せない程の夥しい血液を流して、そう荒い息を吐くブギーマンを見て、ミミの変化の無い貌にも僅かな驚きと敬意が見て取れる。


「いやぁ、あんだけ攻撃したのに欠片の傷も付いちゃいないミミちゃんも流石としか言えねぇにゃあ?」

「お褒め頂きありがとうございます」


ミミはブギーマンの言葉にそう返して、ブギーマンに駆ける。


「――ですが、コレで終わりです」


そして、その剣を動かないブギーマンに振るう。


――ドシャァッ――


それは見事にブギーマンの首に触れた……〝筈だった〟


「痛え、痛え痛え痛えイテエイテエイテエナァ?」


倒れ伏すブギーマンは、その瞬間、壊れたラジオの様にそう言葉を吐き、その瞬間。


――ズルッ――


「カヒャッ♪」


何かに引き摺られるように、〝闇〟へ引き摺り込まれた。


「ッ!?――何が……ッ!」


その瞬間、ミミが目を見開き、初めて狼狽を口にする……そして気付いた……己の立つ場所の感触が無い事に。


「コレは……ブギーマンの術…でしょうか?」


暗闇、黎明、深淵…名は違えど人の心を蝕んで止まない闇がミミを包む。


「『恐れたナ?』」

「ッ!?――」


その言葉が直ぐ耳元で響く。


――ブンッ――


しかし、確実に触れたと思った剣は空を切る……それに、暗闇からクスクスと言う笑い声が響く。


「まタ恐れタ…俺ハ此処だゼ?」


――トントンッ――


「ッ…何故、攻撃して来ないのです?」


内心の動揺を押し殺して、ミミが問う…暗闇、位置を見失い、奇襲の絶好の機会と言うのに、ブギーマンからの攻撃らしい攻撃が無い……それが不気味でならないから。


「ヒャヒャヒャッ♪…何でカナァ?…どうしてカな?」


しかし、その不安感を見透かした様にブギーマンは笑う…ミミの〝警戒〟が限界まで高まったその時。


――ベチャリッ――


其処に、〝ソレ〟は現れた…。


「ッ何……ですか…ソレ…」


それは悍ましい肉の塊、蠢き脈動し、カチカチと骨を鳴らす肉の化物、そして、その顔は彼女のよく知る、〝ブギーマン〟の顔が、無表情に貼り付けられていた。


「ヒャッヒャヒャヒャッ♪…ヒデェじゃ、ネェのミミ、ちゃんよォ…俺をコンな姿にしたノはお前、だぜ?」


その顔に反し、当のブギーマンは以前と変わらぬ飄々とした声で、カタコトな言語を紡ぐ…ソレを聞いていたミミは、その言葉に眉を寄せて、問いかける。


「……どういう事です」

「サァ、ソレはお前デ考えロ?」


その言葉と同時にその身体から幾百の肉の槍、骨の棍棒が飛び出し、ミミを襲う。


――ギィンッ――


ミミの妙剣がソレ等を弾き飛ばす。


――ギィンッギィンッ――


弾き飛ばす。


――ギィンギィンギィン――


弾き飛ばす、弾き飛ばす。


――ギィンギィンギィンギィン――


弾く、弾く…無限の様な攻撃の刃を。


――ギギギギギッ――


弾けば弾く程に、攻撃は苛烈に濃く成ってゆく、何時までコレを繰り返せば良い、何時までやれば終わる?…いや、もしかして、〝己〟が死なねば終わらないのではないのか?…。


――ギリィンッ――


ミミは、そう…〝認識〟してしまった。


――ギンッ――


「ッ――!?」


己の剣が弾かれ、虚しく地面に放り捨てられる…。


「チェックメイトだミミちゃン?」


そして突き付けられる幾千の骨肉の武器、気がつけば己の身体は黒い触手に縛られ、身体は動かせず…〝磔〟の様に固定されていた。


「オッサンに、宜しくナ?」


――ドスッ、ドスドスドスッ――


そして降り注ぐ、武器の応酬が……肉を削ぎ、骨を砕き、磨り潰し細切れに血肉をばら撒いてゆく…骸と化した後も暫くは続き……闇が晴れたその跡には。


「んん〜♪…俺、完全復活♪」


周囲に散りばめられた、肉塊とも呼べない血と、すり潰され泥の様に変わった肉の海だけが広がり、その上には五体満足で〝無傷〟なブギーマンが歪な笑顔で嗤っていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公がずば抜けて人間不適合者なだけでトップ勢は皆んなぶっ飛んでるんだよなぁ
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