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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十章:人と悪魔の争奪戦
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血に染まる夜①

――ガラガラガラッ――


「――あ!ソロモンさーん!」

「やぁリリー……ちゃんと問題無く帰れたみたいだね?」


プロフェス達との会談の後、リリーの帰還を迎える…ちゃんと〝腕〟は持っているらしい。


「それじゃあ、頂くよ?」

「はい!返します!」


リリーの手に触れる……その瞬間、黒い痣が俺を伝い、そしてまた何事も無かったかのように消える。


「やぁ、お帰りテラー」

「ッ――――♪((≧▽≦)♪)」

「所でソロモンさん、プロフェスさんから連絡があったんですけど……」

「あぁ、今後の動きについてだな…取りあえずはアレだ、我々も戦仕度を整えようか」


彼の本拠地は……ファウストだったね。



●○●○●○


「いやぁ、美味しいなぁ此処のお菓子は」

「フフフッ、ありがとうございます…どうぞゆっくりと寛いで行って下さい、〝ギール〟さん」

「うん、ありがとうね」


其処は〝白鳥の羽休め〟…昼間の人気の無い喫茶店の心地良い静寂の中を、〝小さな〟咀嚼音と、小気味良い金属音がコツコツと響く。


「『(モゴモゴ)…美味しいわねこのお菓子!』」

「そうだね…甘いものはそんなに好きじゃないけど、コレは美味しいな」


舌に溢れる林檎の甘みに舌鼓を打ち、男は店の清掃に勤しむ小さな店主を〝視る〟


「呪われてるね、彼女……〝彼の呪い〟だ」

「『どんなの?』」

「〝不老不死〟…契約を介した強力な呪いだ、〝今の僕〟では解けないね」

「『うわ、悪趣味〜……やっぱり悪魔は嫌いだわ…』」

「まぁ彼女自身にも責任は有るっぽいからねぇ…僕ァ何も言えないかなぁ」


――チリンチリンッ――


「――いやぁ、流石円卓騎士団ッ、アレだけ質の良い薬を貯蔵していたとは…いやぁ、トップクランは流石だねぇ♪」

「にしてもソロモンよぉ、俺をダシに良くもあんだけ毟ったな?」

「ハッハッハッ、いや何私は君の能力を教えただけだよ、そうしたら〝彼が〟私に便宜を図ってくれただけ…それに、商品に見合う金品はすでに払っているしね?」


鈴の音と共に来店した集団は、そう言いながらテーブルに着く。


「お客さんの様だね……私達もそろそろ〝備えよう〟」

「『そう――グフッ!?』」


そう言い席を立とうとした瞬間、彼の隣で果実水を飲んでいた小さな精霊がジュースを少し噴き出す。


「ん?…どうしたのフィリアーナ?」

「『ゴホッ、ゲホッ…な、何でも無いわギル!…ちょっと咽ただけよ!』」

「?…そうかい?」


その言葉にギールはそう言い、フィリアーナを持ち上げる。


「……」

「『ッ』」



通り過ぎる間際、フィリアーナと〝男〟の目が合うも、フィリアーナは直ぐに目を逸らし、ギールにくっつく。


「クックックッ……全く、面白い…」

「ん?…何か言ったかソロモン?」

「いや、いや…何も無いよ……それよりも今は夜に備えよう…〝祭り〟の時刻は直ぐ其処だ♪」


店の中は、そんな楽しそうな声で満ちてゆく。



○●○●○●


夕暮れを過ぎて、夜闇に月が隠されたその頃。


商業都市ブルエナの裏路地、寂れた…と称するにはやや繁盛している、物静かな〝BAR〟の中は上品な空気に満ちていた…。


しかし、一度でも〝ソコ〟に触れた者、一度でも死戦を潜り抜けた者達には、その上品な空気の底に隠された、黒々とした殺意と、香しい芳香の裏に隠された血の匂いを感じ取る事が出来るだろう…。


「――居るね……〝黒の崇拝者〟と、〝ミッドナイト〟、〝ディアボリア〟…他にも傘下、末端、裏の野良犬に一級品の〝化物〟達の揃い踏みだ…」


BARの地下…隠された部屋の中で、〝3人〟の男達の内、理知的な風貌の男はそう言い苦笑する。


「お〜怖、コリャ俺達死ぬかなぁ?」

「あら、そんな事微塵も思ってなさそうな顔じゃない?ブギーちゃん?」


それに、戯けてそう言う男…〝ブギーマン〟と、それに対して楽しそうにそう返す、奇特な男…〝リップ〟


「まぁにゃぁ〜俺等ァ少数精鋭だし、ぶっちゃけた話、〝ハデス〟見てぇな規格外でも無けりゃ、そうそう殺られんだろ?」

「〝黒愛のミア〟はハデスちゃんの妹らしいわよ?」

「血縁が有るからそいつもヤバいって訳じゃねぇだろ、特にあの手の類は〝血縁外〟の異端だろぉ……にゃあボス?」


ボスと呼ばれた青年はブギーマンの言葉に肩を窄め、言葉を吐く。


「〝黒の崇拝者〟達は面倒だが他のも厄介だ…しも全員の狙いは僕達の持つハデスの脚……全く、これだから〝協定〟は宛てにならないね」


己の胸の内に張り付く〝痣〟に触れ…忌々しそうに呟く男……それに対してブギーは薄っすらと笑いながら、また、肩を窄める。


「まぁそうだわな…んでボス?…〝他の奴等〟は?」

「〝ファウスト〟に二人、〝南の大湿地〟に一人……動きはないね」

「部下からも円卓、オケアノス、その他諸々の侵入情報は無いわ」

「んじゃ俺等の相手は〝同類〟だ――」


ブギーマンが言葉を言い終わらぬ内に、事態が急変する。


――ゾォッ――


「ッ――来るぞ!」

「オイオイッ、此処は街の中心だぞ?」



恐ろしい魔力の高鳴り、その魔力の濃さから想定する、破壊の規模にさしもの裏の人間と言えども、そう声をあげる…。


――ドゴォンッ――


そして、己等の空から凄まじい轟音と破壊音が響き渡るのを聞く、そして。


――バゴォンッ――


己等の天井が砕け散る……煙から差し込む月の光が、地下の隠し部屋を照らし……そして、下手人を晒し出す。


「嗚呼愉快……良き警戒心、備えも良し……暗がりで、隠れ潜み、〝静かな戦い〟に限れば…だが…♪」

「ッ――お前、〝特異点〟の―」

「うわ、本気かよ……コイツァ予想外だなぁオイ」

「まさか貴方が直々に乗り込んでくるなんて……」


「「「ソロモン」」」


 三者三様にそう呟く……それに対して、男は〝異形の右腕〟で掴んだ、反守護者の骸を投げ捨て、その顔を狂気に歪める。


「キヒヒッ、ヒハハッ♪…踊れや踊れ、歌えや歌えよ血染め歌、夜の祭りの始まりだぞ?」


そして、静寂突き破る騒乱の〝奪い合い〟が幕を開けた。

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