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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十章:人と悪魔の争奪戦
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奪い奪われ

どうも皆様泥陀羅没地です。


ギリギリの本日投稿どうぞ…。


早く調子が戻らないかなぁ…。

――ギィィィッ――


「ッ見つけたぞ…」


陽の光も届かない深い地底、其処に存在する石扉の先に座する人影を見て、アーサーがそう告げる…。


「――〝不愉快〟だ」


――ギィンッ――


その言葉に冷たく返しながら放たれた、瘴気の刃を斬り裂き、全員が構えるのをその影が睥睨しながら悠々と立ち上がる。


――カンッ――


その姿は荘厳な〝冥王〟の様な…骸骨の身体に黒いローブを纏った姿だった。


「〝骸〟の気配が直ぐ側まで来たと思うたら……成る程、私の骸を奪おうとしていた訳か」


そして、その空洞の奥に見える…紫の炎を揺らしてそう告げる死霊の腹には、未だ〝生きた脚〟が脈打っていた。


「――そして、〝貴様〟も」

「―何?」


アーサー達がその言葉怪訝な顔をする……そして、それらを無視して冥王が杖を振るうと、瘴気の黒い刃が何も無い空間を斬り裂く……一瞬の静寂、そして。


「――危ないねぇッ!?」


その声と共に、空間から滲み出るように〝ソレ〟は現れた。


「――ッ〝タラト〟!?」


その因縁の名を叫び、警戒を最大に引き上げるアーサー達を見て、タラトは面倒臭そうに溜息を吐く。


「ハァ、君達を潰し合わせるつもりだったのに何で気付くかなぁ…」

「我が目から逃れられる〝魂〟は存在せぬ……それが我が内の骸より与えられた〝力〟の一端よ……さて、それで?…どうするつもりだ〝骸の従属者〟よ」

「ん?……そーだねぇ…君と私と彼等の三つ巴に成ると思っていたけれど…もしかして他に方法が有ったりする?」

「我とて片手間に貴様と奴等を相手取るのは手間であろう…であれば貴様と我が手を組み、目障りな蠅共を叩き潰すと言うのも選択の一つ」

「へぇ?…私の狙いを知ってて手を組むの?」


骸骨の言葉に、タラトは面白そうに問いかけると、骸骨の男は無い鼻を鳴らして告げる。


「奴等と貴様とを後に相手取るならば貴様の方がまだマシと言う話よ……で、どうする?」

「ん〜……断ったら私が袋叩きに遭うでしょ?…アーサーと共闘するのも無理だし……オーケー、良いよガイコツ君!」

「では、決まりだな……」


そう言うとガイコツとタラトはアーサー達に武器を向ける。


「あ、ね〜ね〜君は何て呼べば言いの?」

「我は〝プルート〟…冥府を冠する者で在る」

「ふ〜ん……じゃ、宜しくねプルート…ヤバくなったら言ってね後ろから刺すから」

「フン、やれるものならな」


そして、ガイコツ改め〝プルート〟と、タラトとアーサー達による争奪戦が始まった…。



〜〜〜〜〜



「――までは良かった…と」


――カチャッ――


其処はとある生産者組合の片隅に在る会議室…普段使う所よりも手狭な会議室で、合流したプロフェスと、東の面々、そして西の〝敗北者〟達と俺は情報共有という名の尋問をしていた。


「所で…普段よりも手狭な会議室を用意した理由は?」

「日当たりが良く景色が綺麗だからね」


それに近場にある〝白鳥の羽休め〟から香る焼き菓子の香りが大変素晴らしい…それはさておき。


「それで?…私としては、タラトと、そのプルート…双方と戦い、そしてどういう風に反守護者から奇襲を受けたのか聞きたいね」


ティーカップに紅茶を淹れ、面目なさ気な彼等へ問い掛けると、アーサーが目を伏せて続ける。



〜〜〜〜〜〜


「――〝冥府の住民〟」


――ゾゾゾッ――


『※※※※※※!?!?』


叫び後を上げて、幾十匹の死霊が飛び出す……迷宮に無限に湧き出す模造品とは理由が違う、プルートの魔力が多く染み込み変化した、冥府の〝兵士達〟がその赤濡れた剣を振るう。


「お〜凄いね〜……長年悪魔を見てきたけど、死霊の扱いで言えば君の右に出る者はそう居ないんじゃない?」

「フンッ…我に比類し得るのは〝コウシス〟だろうな…奴は我と違い、死霊の術理を己の強化に注いでいた…単独、少数精鋭による連携で有れば、我をも凌駕し得る〝王〟で有った」

「へぇ……――」


――ギィンッ――


「チッ糸が―」

「おっと、いやぁ危ない危ない、相変わらずの隠密性能だねぇ…〝ジャック〟?」


――ピィンッ――


背後から投擲を糸が留める、それを見てタラトが糸を引くと。


――ヒュンッ――


天井から剣がジャックに迫る…しかし、それがジャックに触れることは無い。


――カラーンッ――


「へぇ、〝影移動〟…久しぶりに見たねぇ」

「タラトの周りに罠の糸!皆注意して!」

『了解!』

「――〝裁定者の鉄槌〟」


短い会話の後に放たれるクオンの〝十字架〟が死霊の群れを蹴散らす、破壊に生じた煙からガラハドとガチタンが肉薄する。


――カランッ――


「〝災禍の忠臣〟」


――ダンッ――


「チィッ、んだこのデカブツ!?」

「「GURURURURU…」」


しかし、肉薄する二人に巨躯の死霊が立ち塞がり王への進軍を阻む……。


「クオンさんはタラトの方を!」

「了解した」


拮抗した戦線にアーサーが難しい顔をする…。


(無尽の兵に何百何千の手札…消耗戦は不利…)


僅かばかりの思考、その中からアーサーは最適解を導き出す。


(僕の〝光条〟を二人にぶつける……短期決戦…しかない)

「ジャックさん!」

「ッ!何アーサー!?」

「〝敵を集めて〟!」

「ッ――了解!」


タラトがクオンに意識を向けた瞬間、ジャックへそう告げるアーサー…に対して、ジャックは数瞬の間を置き承諾する…。


「ッガラハド!ガチタン!」

「「ッ!」」


――ダッ――


アーサーの呼び掛けに対して、二人が即座に飛び退き、巨躯の屍人と距離を取る。


「どしたい大将、何か考えたか?」

「あぁ、このままじゃジリ貧だ…〝短期決戦〟を狙う」

「よし来た、何すれば良い?」

「タラトとプルートを一箇所に集めて、注意を惹いてくれ……君達を〝囮〟にする事に――」

「オーケー理解、そこから先は何も言うな」

「応、後はやって勝つだけだな!」

「ッ――ありがとう!」


二人の言葉にアーサーはそう言う、それに二人は笑って頷き、また巨躯へ迫り、盾と剣を振るった。



「――ッう〜ん……相も変わらず、厄介な聖剣だねぇ…それ?」


――ギィンッ――

――ブチブチブチッ――


糸を雑に切り払い、コチラへ猛進するクオンをタラトは眉を顰めてそう呟く。


「聖剣の力を過信した突撃…それで何とか成るんだから、聖剣はチートだねぇ」


――ズドッ『バキンッ』――


クオンの纏う、白金色の魔力の鎧が地中から突き出た槍の罠を砕く…愚直で無策な突撃、単純ながら厄介な攻撃に、タラトは追い立てられる。


「ちょこまかと……」

「そりゃ君と殺り合うのは下策でしょ…単細胞だねぇ――」

「―貰った!」


クオンへタラトの視線が集中したその瞬間、その背後からジャックが短剣を振るう…だが。


――シュルッ――


「ッ!?」

「残念、惜しいね」


それはタラトの首筋に届く直前に糸によって絡め止められてしまい。


――ブチッ――


「グゥッ!?」


そのまま切断される、己の身体の一部が消失した混乱と痛みにジャックがうめき声を上げ、タラトが楽しげに笑う…。


「――クオンさん!」

「ッフン!」


そして、ジャックの声とほぼ同時にクオンが剣を振り下ろす…しかし、それに対しても、タラトは冷笑を浮かべ、嗤っていた。


「〝ソレも見てるよ〟」


飛び退くタラトは、冷笑を浮かべ……そして、その違和感に気付く…。


彼女達の立ち位置と、己の立ち位置…。


数多の〝罠〟に囲まれた彼女達と、〝罠〟の無いエリアに居る〝己〟…もっと言えば、その十数歩先には〝プルート〟が居て…。


――ドゴォォンッ――


その時、タラトの視線を巨大な土煙が遮る……〝処刑人の盾〟と〝騎士の剛剣〟によって。


「何か妙だ」


タラトの脳に情報が積み重なる、己の位置、プルートの位置、ジャックとクオンの動き…アレは本当に私を狙っていたのか?…。


何よりも、あの瞬間、ほんの一瞬土煙の奥に見えた〝影〟は――。


「ッしま――」


タラトはやがて気付くだろう……その賢さ故に、己が〝誘い込まれた〟事を。


そして、何とか逃げようと足を踏み込んだ瞬間。


――ズォッ――


砂煙を貫いて、〝光条〟がタラトを貫く……プルートとガラハド達と共に。



その光条が大地を突き進み、やがて壁をも穿ち、そして止まる……。


余韻の崩落と、粉塵にアーサーが言った。


「コレで……」


『倒せた』と…しかし、それは〝正解〟で有り、〝不正解〟でも有った……。


――ゾゾゾッ――


「「「ッ!?」」」


大地の多くを〝黒〟が覆う…粉塵が晴れた、その中心には。


――ボロッ――

――ピキッ――


身体の半分を朽ち欠けさせた、プルートと、同じく半身を蒸発させたボロボロのタラトが居た。


「やりなよ…プルート…!」

「――〝不浄の崩威〟」

「――――」


そして、放たれる……プルートの〝殺意〟が……。


――ゴォォンッ――


不浄の魔力が爆ぜる……それは天井を穿ち、黒い光の球体と成り、アーサー達を飲み込んでゆく。



そしてまた、静寂が訪れる……汚れた大地の上に、残る影は4つ……。


「ハァ…ハァ……」


一人はアーサー…その身体から呪いと破壊の痕を流し、荒い息を吐く満身創痍の勇者。


「ッまだ…生きるか……人間…」


一人はプルート……魔力の大部分を消費し、身体の七割が既に崩壊し始めている、冥府の長。


「クゥ……ゥ…」


一人はタラト、その身体はプルート同様壊れかけ、痛ましい……しかし、その目には執念を宿し、這うように〝プルート〟へ向かう、冥王の眷属。


そして残るはクオン……黒の破壊に飲み込まれて尚、聖剣の力により重傷に留めた、アーサーと同じ、聖剣の勇者。


三者三様にプルートへ迫り、プルートも3人へ術を行使しようと魔術を作る……そして、勝者は――。


「いやぁ、ラッキーラッキー♪」


――ドシュッ――


「ガッ…!?…ァァッ…」


プルートの頭蓋に短剣を突き刺す……5人目……アーサーとプルート等の戦いをずっと伝え聞いていた、〝黒い男〟


「いやいやごくろーさん皆の衆、お陰で俺ちゃん超楽にコイツから奪えたわ♪」


「〝暗闇の伝承(ブギーマン)〟……」

「イエーッスそのとーりにござぁい…中々の奇襲タイミングだったろ?」


そう言いケタケタと笑いながら、ブギーマンはプルートの腹から〝脚〟を引っ張り抜く。


「ウヒョ〜スゲェなコリャ、見てるだけでブルっちまいそうだ♪」


――ズブズブズブッ――


その脚は、ブギーマンの身体に入り込み、そして消える、そしてブギーマンは何事も無かったように、全員を見下ろす。


「んじゃ、後はお前達を殺して――」

「『―――』」

「ッ―分かってるわぁかってるって、冗談の通じねぇボスだなぁ…」


ブギーマンの肩に昇る、小さなトカゲにそう言いながら、ブギーマンは己の影に沈んでゆく……。


「じゃね〜アーサーちゃんに、タラト君…一応みんなに伝えといてよ、〝次は派手に殺ろう〟…って、そんじゃぁな〜♪」


――チャプンッ――


そして、言いたいことだけを言い捨てると、ブギーマンは消えてゆく……。


「ックソ――」


――ザクッ――


アーサーの慟哭は、次の瞬間地面から突き出た槍によって喉元を貫かれ消える……。


「――アァァ……参ったなぁ」


何時の間にやら死んでいたクオンの身体を取り込みながら、そう言うタラトの声を聞き、アーサーは意識を落とした……。


〜〜〜〜〜〜



「――成る程、大体分かった」


要は油断した挙げ句に、相討ちに持ち込まれて、挙げ句横から掠め取られたと……。


「……言っちゃ悪いが詰めが甘いな」

「…申開きは無い」

「だろうね……しかし、まぁそうか……コレでハデス側1、反守護者1、そして我々が2つ保有していると……」


成る程成る程……うん。


「――〝面白くなって来た〟な♪」

『ッ!?』


これでこそ奪い合いと言う物だ、コチラとアチラにちゃんと奪う物と奪う理由が有り、より深く戦いは転げ落ちるだろう。


「過ぎた事は責めるつもりはない、それよりも今は、この〝イベント〟に勝つ事を考えるとしよう……より具体的には――」


――トンッ――


「――どうやって〝四肢持ち〟を戦場に引き摺り込むかを…♪」


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