善を掲げる狂気
どうも皆様泥陀羅没地にございます。
投稿が遅れてすまぬ…すまぬ…。
諸事情で少し遅れました。
「ハァァッ♪……良いね良いね、血の匂いだ」
大地を踏み砕く音色、猛り騒ぐ歌声、そして熱く身悶えする様な情熱的な〝視線〟。
獣との戦いとはまた違う、打算と欲望に塗れた薄汚れた〝意思〟……何と素晴らしい♪
「が、しかし……」
今尚猛進する彼等を見る……彼奴も、彼奴も、彼奴も彼奴も彼奴も…目に映る全ての人間に少し落胆してしまう。
「駄目だなぁ……どいつもこいつも三流二流の混合部隊、計画性の欠片もない烏合の突撃だ……折角の〝殺し合い〟と言うのに、些かつまらない」
しかし、如何に雑魚とは言えどこの数だ…リリー達が緊張と焦燥を抱くのも仕方ない。
「焦りは本来起き得ないミスを生む、少しは落ち着けよ、人との殺し合いは冷静さが物を言うんだぞ?」
ま、時に感情の決壊が役に立つ時も有るが。
「リリーとウェイブ、お前達は対人経験が足りて居ない…丁度いい機会だ、この機会に学んでみろ」
そう言うとリリーとウェイブは微妙な顔をする…理解は出来るが、しかし。
「何か嫌だなぁ」
「人と戦うゲーム何て山程有るだろう、こういう時は割り切って対応しろ、幾分楽になる」
「……それもそう、だな」
「狙うなら胸か下腹部、頭を狙え…来るぞ」
大地を駆ける音が直ぐ側まで聞こえる、音の先には爛々と目を輝かせる〝人間〟が居た。
「〝腕〟寄越せやぁ!!!」
そんな奇声に近い叫び声を上げて、大きな鉈を振り上げる男…。
「〝肉――」
――ブチッ――
「踏み込みも振りも、何もかもが遅い…三流だな」
――ドシャッ――
頭を喪い、地面に崩れ落ちる骸を踏み、未だ顔に笑みを張り付けるその顔を適当に投げ捨てる。
「〝参集せよ、隷属せし影の戦士よ〟」
祝詞と共に影が脈打つ、俺を中央に泡立ってゆく……俺の周りに起きる異様に、反守護者の連中が足を止める。
「〝我が声に集え、骸無き者よ、命無き者共よ〟」
――チャプッ――
泡立つ影から手が伸び、〝ソレ〟は現れる。
「〝お前達に与えよう、獣の性を〟」
ソレは人の形をした獣の群れ、人狼、牛人馬、妖精…の様な〝影〟。
その影が、男の背後に現れ…静かに佇む。
「貴様等に与える命はただ一つ」
――ゴプッ、ズブッ――
そして、その男もまた…その形に〝竜〟を宿し狂気と妖艶さを入り混じらせた笑みを覗かせる。
「〝蹂躙〟せよ」
その言葉に返答は無く……異形の影達は動き出す…彼等の獲物へ。
頭蓋を切り裂き、腹を蹴り破り、肉を貪る……その光景は、善と呼ぶには余りにも惨く、悍ましい光景だった。
「おいおいおいおい…どっちが悪だよ――」
「無論、お前達だ♪」
そして、その最前線で散々たる地獄絵図の主は、引き裂いて作られた笑みの様に頬を吊り上げ、生命を貪り喰らっていた。
○●○●○●
「うわぁぉ…何アレ、守護者がしていい攻撃じゃ無いでしょ…」
顔を引き攣らせてタラトが呟く、その目は魑魅魍魎…引いては魑魅魍魎の長に向けられていた。
「―――!!!」
首を千切り飛ばし、剣で切り裂き、足で踏み砕き、顎で喰い破る……凡そ人の…〝正義〟の戦い方と呼ぶにはあまりにも邪悪な〝蹂躙〟だった。
「……彼奴等じゃ話になんねぇな」
魑魅魍魎と守護者の兵達に蹂躙される彼等を、冷めた目で見ながらそう吐き捨てる美女に、タラトは苦笑いしながら言葉を紡ぐ。
「まぁねぇ、裏の有象無象を集めただけだし仕方ないよ…それでも、十分な役割は果たしてくれてるよ…うん……〝セレーネ〟」
「良しッ♪」
タラトの声と共に、赤髪の美女が消える……そして。
それから数秒後…戦場の中心で〝爆音〟が響いた。
●○●○●○
「ハッハハハァーッ♪」
「クソッ、コイツ止まんねぇぞ!?」
「大将首が前に出てんだッ、チャン―」
――ドサッ――
ハッハッハッ♪…ホントこいつ等面白いなぁ。
「チャンスだって?…あまり笑わせるなよ、腹がよじれる」
――ゴポッ――
「「「ヒッ!?」」」
「この程度で怯む奴等にチャンスが来るとは笑わせる」
後退り反守護者達の目を見る……〝恐怖〟が見える、昏い暗い恐怖が良く見える。
「お前達にチャンスをやる気等毛頭無い♪」
恐れ慄き、片膝組んで神に祈れ――ッ!?
「――ハハハ♪」
「ッ!」
耳鳴り、いや…風の音色と微かな笑みから反射的に飛び退く、俺の行動に疑問符を浮かべる〝馬鹿〟達は、その瞬間――。
――ドゴォォンッ――
空から大地へ飛び込んで来た、黒い弾頭によって…肉片に変わる。
――パラパラパラッ――
土の雨が降る……それを厭わず、俺はただ眼の前の〝ソレ〟を見ていた……いや、違うな。
〝見惚れていた〟が正しいか。
風に紛れて聞こえた声に、微かに見えたあの〝色〟、纏う気配……その全てに。
「中々勘が良いじゃねぇの?」
「……」
忘れた事など一度もない、その〝顔〟を獰猛に染めながら、緋色の髪を靡かせて……〝彼女〟は現れる。
「どうしたぁ?……私の顔に惚れたってか?」
骨を鳴らしながら、勝ち気にそう言う〝セレーネ〟…その纏う気配が以前、記憶するあの時よりも遥かに膨れ上がっている。
「――ハハハ♪…あぁ、そうだろうな、きっとそうだ…確かに、〝惚れている〟よ」
それが堪らなく…面白い。
「雑魚ばかりで、退屈していたんだ……〝付き合ってくれるか〟?」
「ハッ、私も〝彼奴の腕〟が要るからな……遊んでやるよ♪」
そして、構える……全く…。
「以前とは逆だな…」
今度は、俺がセレーネに挑む番か…フフフ♪
数奇な巡り合せだ。
「「―――ッ!」」
何の合図も無く……俺とセレーネは駆け出し、その拳を合わせる……。
――ドゴォッ――
鈍い打撃音に、震える大気…〝軽い試し打ち〟を互いに交わし……最初に砕けたのは。
――ボキャァッ――
〝俺〟の右腕だった。
骨が砕け、血肉が飛び散る……全く。
「ハッハッハッ♪」
「ッへぇ?」
――ズブズブッ――
何て〝楽しいんだ〟…。




