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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十章:人と悪魔の争奪戦
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踊る人と踊る化物

――ブンッ――


「ッ!」

「反応は上々…」


左拳を飛び躱す〝狂い笑い〟…いや面倒だ、〝狂笑〟と呼ぼうか…その女はその笑みを崩さず、ユラリと立つ。


「アラアラ、お元気なのね?」

「さぁ、元気かどうかはお前達次第だ♪」

「ヒィィッハァッ♪」


――ジリィンッ――


狂笑との問答の刹那、横から振るわれた短剣を右手で捌く。


「ありゃりゃ?やっぱ無理かなァ?」

「ンじゃ俺が♪」


首を傾げるブギーの裏からもう一匹、ブギーが飛び出す。


「〝分裂〟か…」

「あちゃ〜バレた?…ってか普通に対応してくんの―」


――ベチャッ――


ブギーの片割れの攻撃を翼で受ける、ソレに怯んだ瞬間、回し蹴りで頭骨を打ち抜くと、ブギーの片割れは黒い液体に成って大地に消える。


「〝赤指〟…〝臓裂き赤瀉〟」


その戯れの横から、魔術師の様な男が接近し、その〝赤い手〟で俺の腕に触れた。


――ゾゾゾッ――


「ッ!」


――ブンッ――


全員を弾き払い距離を取る……、その瞬間。


――ドパァッ――


口から迫り上がる鉄と柔らかな感触、そして口から溢れ出し、腹の中に本来納まる筈の腸の幾らかが無惨な姿と成って地面に撒き散らされる。


「相変わらずエグイのやるねぇ…」

「フフフッ、褒め言葉として受け取っておきましょう」


「ハァ……ハァ……〝呪い〟…か」

「えぇ、その通りですよ効果は見ての通り、私が触れ、そして壊すとイメージした臓腑を文字通りボロボロに引き裂き、吐き出させるのです……あの短時間でしたので、貴方の〝胃〟だけしか壊せませんでしたが」

「成る程――」

「……」


――ドゴォッ――


呪指の言葉を聞いていたその時、背後から仮面の女が俺の事を地面へ殴り付けた。


「ゴフッ!?」

「……」


そして、己の片足を持ち上げ、俺の頭蓋へ振り下ろす。


――ドゴォッ――


何度も、何度も。


――ドゴォッ、ドゴォッ――


何度も、何度も…無慈悲に、淡々と、俺の肉が細切れに跳び、骨の欠片が飛び散る…。


以前も同じ事が有ったな……確か、嗚呼そうだった…あの〝蜥蜴〟の時もだ。


あの時もこんな風に、無茶苦茶に攻撃されて、形が保てなくなって…人の〝形〟が壊れて……コワレテ…ソウソウ、コンナフウニ。


――ガシッ――


「ッ!?」

「ハドメガキカナクナッタナ」


――ドポォッ――


影が溢れる…〝無形の影〟が…。


幾十の耳が、幾百の口が、幾千の目が溢れ出る、悍ましい〝恐怖〟が形を歪めて、蠢き、そして顕現する。


「〝無形の恐怖〟…〝影獣同化〟…』」


俺の身体を、影が這い回り、そして砕け飛んだ骨、千切れ飛んだ肉、大地へ染み付いた血液を集め、そして俺の身体を作り変える、そして影と俺の身体が完全に同化し、まるで影がそのまま浮き出た様に、大地に突き刺ささる。


そして、その人影から――。


「『暴竜ノ影人』」


黒い竜の片翼が生え、そして中から〝俺〟が這い出た。


○●○●○●


――ゾオォォッ――


凄まじい〝力の奔流〟に、四人全員が足を止める……その〝存在〟に明らかな警戒を以て。


ソレは、人と竜の継ぎ接ぎ。


竜の鱗に覆われた黒い腕、その腕の所々にはトカゲの様な眼が浮き、男の顔の七割は悍ましい無形の触手、残る人の顔には3つの眼、人の眼と、竜の眼、そして空洞な黒い、そして中から黒い液体を吹き出す眼。


四人はその姿に、アレは本当に人なのか?…という疑問を浮かべる。


それは人から生まれた人で無い者、悍ましく醜く、人を真似ようとする様な、〝異形〟の姿だった。


●○●○●○


「「素晴らしい、スバラシイ…警戒こそスれド、恐怖ハ無い…」」


3の眼で四人を見る、恐れはなく、殺意は有り、しかし冷や汗から読み取れるかすかな動揺、困惑が、四人の心情を有り有りと俺へ見せつける。


「愉快だ、愉快だトも…此処までの〝大敗〟は久しく、此処まで沸き立ッた血を感じルのも、マた久しイ」


甘美だ、とても心地よい…この衝動、この殺意、この熱く滾る〝愉悦〟の炎を、今はただ貪ろう。


「続きダ――クヒッ♪」


また駆け出す、先程以上に軽くなった身体で、先程以上に鋭く重くなった拳を、〝狂笑〟に振るう。


――ギィ『バキッ』――


掌に刃が触れる、一瞬の火花が塵、無常にも刃は砕け散る。


「ガハッ!?」

「ドうしタ〝狂笑〟…嗤エよ、ホラ、引き攣ってイるぞ?」

「グゥッ!?」


――ギチギチギチッ――


脂汗と冷や汗を流す〝狂笑〟の首を締める…空気が掠れ、掠れた悲鳴を響かせる、口端から赤く染まり、泡立つ唾液が首筋を伝う。


「〝黒指〟…〝腐り落ちる屍肉〟」

「――ハァ♪」


――ガシッ――


片腕を締め上げながら、横から迫る〝指男〟の腕を掴む…。


「お前ノソれは〝指が触れる事〟が条件ダろう?…そシて、効果を与エルにハ、範囲を想像シなければ、ナラナい…」

「ッ!?」

「面白イ、術だガしかし…お前のソレは〝肉体〟にしか効かナい、〝生きた肉〟にしか、ナ?」


だから、この影の、生きると言う概念の無いこの身体では効果は無い、人間の部分なら別だろうが。


「ァ 」


――ボキッ――


狂笑の方で、骨の折れる感触が掌を伝う、そして、手を離すとグッタリと倒れ伏す〝骸〟。


「残りは、3人……サァ、サァッ、マダマダ楽しませてオクれ、遊び足りナイんだ」


そうして、俺が3人を睥睨した瞬間。


――ブンブンブゥンッ――


3人を囲う魔術陣が現れ、其処から伸びる淡い白の鎖が3人を雁字搦めにした。


「「「ッ!?」」」

「助太刀に来たよ〜……と、言いたい所だが…私は何方へ参戦するべきかな?」


そんな何処か態とらしい声を響かせ、二人の影がその場に現れる。


「オォ、プロフェス…と、アーサーか……遅カッタな……」


プロフェスとアーサー……予想よりも少し遅く、二人が参戦する。


「ふぅむ……コレは瘴気……大方〝骸〟の力を使ったと言った所か…大分削られた様だね?」


そう言い此方を見るプロフェスに、俺は軽く肯定する。


「マァな…後は任せてモ?」


まだ魔力には余裕は有るが、何時までもこの姿を維持するのは疲れる。


「分かったよ」

「そうか、そレじゃあ頼ん――」


――ベチャァッ――


そして、術を解いた瞬間…俺の身体は崩壊した……まぁアレだけ削られていたんだ、さもありなんと言った所か……。




○●○●○●


「ふむ……どうやら〝腕〟の所有権は〝魂〟と紐付いている様だね」


見るも無残な形と成った、ソロモンの血肉を弄り回しながら、プロフェスは言う。


「つまり、〝所有権〟が正当であると認識した場合のみ所有権の移譲が起こるのか…今回のは〝ソロモンは継戦可能〟であったから所有権の移譲は無かったと…〝腕〟自体が判断しているのかな?」


そう呟き、プロフェスは立ち上がる。


「いやぁ、処理を任されてくれて助かったよアーサー君」

「いえ、全然気にしないで下さい……しかし、驚きましたね…ソロモンさんがあんな〝隠し玉〟を持っていた何て…」

「そうだねぇ…まぁ、その辺りは彼に直接問い詰めよう♪」

「はい…それにしても」

「あぁ……コレはイベントの本質が見えて来たねぇ?」


まさか、〝迷宮〟が前座だったなんてね。

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