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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十章:人と悪魔の争奪戦
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争う者達

どうも皆様泥陀羅没地です。


多分次の話は掲示板に成る…かもしれない。

「ン〜……うん、そろそろじゃないかいアーサー?…」

「そうだね、瘴気の濃度が濃くなっている…あの先だ」


――………――


薄暗い道の先、か細い灯りに僅かに照らされたその扉から、隠しようもない悍ましい黒い瘴気が漂う。


それにアーサーと四人の仲間は顔を引き締め、或いは緊張の面持ちで冷たい石畳の通路を進む。


――※※※※※※※※――


周囲から響く…姿なき嘆きが、命無き慟哭が、彼等を歓待する様に、或いは救いを求めるように蠢く。


進む度、進む度強くなるその瘴気に余裕は徐々に蝕まれ、張り詰めた緊張に包まれる。


――ギィィィィッ――


そして、扉が開く……それと同時にアーサー達が中へ駆け込んだ…そして。


彼等は見た。


「ガ…ハァッ…」


――ボトボトッ――


『ッ!?』


ソレは四肢を握り潰され、骨を剥き出しに脱力した、太い丸太の如き大腕に首を捕まれた…〝老人〟と。


「『嘘だろォオイィ……テメェ〝骸〟持ってねぇのかよ……ん?』」

「ッ〝バリッド〟…!」


その腹を弄り、心臓を抜き取る……野蛮な牙を生やした大男の姿……その男はアーサー等の存在を認めると、数度瞬き…そして、数度目を閉じ、そして。


「ハアァァァッ」

『ッ!?』


大きな、それはもう大きな悲壮感溢れる溜息を吐いた。


「アーサー来てんじゃん……このクソ爺、無駄に時間ばっか稼ぎやがって…絶対コレ姐さんに締められるよなぁ――」

「ッシィ!」


――ドゴォンッ――


その男の嘆きにも似た独り言を待たずして、ガラハドが大剣を振るう。


「――ハァ、ヤダヤダ」

「ッ!?」


土煙が晴れる…其処には巨大な大剣を片手で受け止め、もう片方の腕で悪魔の骸を掴んだままのバリットが居た。


「ッ硬えッ――」

「当たり前だ、この数百年俺等がただボケーッと生きてきたと思うのか?…冗談だろ…コレでも毎日鍛えてんだよ、時偶来る姐さんに締められてるからなぁ……で、だ…」


――ギチギチギチッ――


大剣を握り、軋ませながらバリッドが続ける。


「このままお前等と殺り合うのはどうでもいいが……主の骸集めるのに下手に傷を負うのは困る……良し」


独り言を呟き、ふとニィッとバリッドが口角を歪める、その瞬間。


「逃げよッ」


――ブゥンッ――


「ッ――グォォッ!?」

「ガラハドッ!?」


凄まじい剛腕によってガラハドが無造作に投げ飛ばされる。


――ドゴォンッ――


『ッ!?』


そして土埃が一室を覆う、その意図に気付いたパーシヴァルが槍を振るい、土埃を払う…その瞬間。


「引っ掛かったな?」

「ッは――」


――グシャッ――


バリッドの巨大な掌がパーシヴァルの顔を打ち抜き……壁におびただしい赤い血を撒き散らした。


「グゥッ…カハッ…」

「「「ッ!」」」

「〝警戒〟…眼の前の脅威にゃどうしても気が向いちまうよなぁ?」


――ゴポッ、グチャッ――


『ッ!?』


土埃の奥から、泡立つ様な音が響く……其処には、屍肉が蠢き、巨大な〝口〟を創る。


「コイツは土産だ、精々楽しめや」


――ダンッ――


バリッドはそう言うと、目にも止まらぬ速さで地面を踏み砕き、巨大な口へ飛び込んだ。


「ッ待て――」


――カランッ――

――ゾォッ――


叫び一歩脚を踏み出したアーサーだったが、その悍ましい気配に脚を止め、瞠目しソレへ目を向ける。


――ズリッ……ズリッ…――


「アガッ……ァ…ヒッ…?」


それは、先程無惨に殺られた悪魔の骸、ソレを中心に、黒い悍ましい泥の様な〝何か〟が口から、鼻から、目から、耳から入り込み…死骸と成った仲間の躯と混ざり合っていた。


「『メイ…レイ……眼前…テキセイ…生メイヲ、廃滅…撃滅…蹂躙…鏖サツ…コロス…』」


やがて1つの、人と肉塊の中間の様な見た目へ変わり、仲間の槍を奪い…そして立ち上がってコチラへ憎悪と殺意の籠もった眼で睨んでいた。




●○●○●○



「『クソッ、何だ此奴はぁ!?』」

「何だとは随分な物言いじゃないか、私は自己紹介したろう〝冷麺〟君、ホラそんな言葉は良いから君の術を見せておくれよ、まだサンプルが足り無いんだ」

「チィッ、舐めるなァッ!」


プロフェスの言葉に青筋を隆起させ、怒号と共に巨大な触手を持った悪魔…〝レーメン〟が暴れ回る。


――ドドドドッ――


「ふむふむ……君の死霊術は肉体改造だけかな?…うん、その分練度は良い様だね、死霊兵の指揮は苦手かな?」

「ッ〜!?」

「いや言わなくても良いよ大体分かる……それじゃあサンプルは頂いたし……後は―」


――キュィン――

――キュキュキュィンッ!――


「〝彼の四肢〟を回収するだけだ」

「ッ!?待――」


己の周囲に現れた幾つもの魔術陣、其処から放たれる並々成らぬ魔力に、悪魔が命乞いをしようとするも、それは無意味に掻き消され――。


――ドドドドドッ――


幾十の光条が悪魔の身体を貫く。


「グアァァァッ!?!?!?」


悪魔の悲鳴は光条の破壊音に掻き消され、巨大な触手は見る間に無惨な残骸と化す。


「「「ヤダ怖い」」」

「う〜ん、やはりこの術は良いねぇ、火力も高く、応用も効く…魔力消費が悩みの種だが、それさえ補えればハデスでさえ殺せるだろう」


プロフェスの独り言と同時に光条は鳴りを止ませる……其処には。


「ガァ……グゥゥゥッ…!」


上半身だけと成り、死を受け入れられない、哀れな悪魔が居た。


「おや、コレは運が良いのかな…それじゃあトドメは――」

「僕が貰うよ?」

『ッ!』


ふと響いたこの場の誰の物でも無い声、その瞬間黒い影が悪魔の眼の前に現れる。


――ドスッ――

――ズボッ――


「お!有った有った〜運が良い〜♪」

「君は…確か〝ディヴォン〟君だったかな?」

「そ〜そ〜、お久〜プロフェス、大体500年振り〜」


プロフェスの言葉に白い肌と髪をした赤い目の少年〝ディヴォン〟は手をヒラヒラさせて、そう返す。


「相変わらず馬鹿げた魔術だね〜」

「褒め言葉として受け取っておこう」

「ファイア――」

「あ、ちょっと不味いかな?」


――ドパァッ――


プロフェスの背後から、一人が詠唱した瞬間、ディヴォンのしたから屍肉が覆う。


「ほぉ……転移…以前も見たがやはり素晴らしい魔術だな」

「じゃ〜ね〜プロフェス〜、今度は遭わないことを祈ってるよ!」


そして術が発動するよりも早く、ディヴォンが消える。


「……良かったんですか?」

「いやぁ、アレはもう止められないよ、僕達の前に来る時点で八割方完成してたし、まぁ貴重なデータが取れたとプラスに考えておこうか」

(やっぱりハデスの部下も動いていたか……コレはアレの作成も早めておかねばな)

「……取り敢えず一度戻ろうか、色々と収穫が有ったし、それを整理しなければ」

(あの二人にも色々聞いて見ようかな)




○●○●○●



――カチャッ――


「ン〜やはり紅茶は淹れたてが香り立っていて良いですね〜」


其処は何処かの空間、小洒落た調度品で美しく飾られた部屋の中で、白いスーツを身に着けた男が、にこやかにそう告げる。


「甘味も、甘過ぎず大変美味です…やはり、人間の発展は素晴らしい」


カチッ、カチッ…と壁にかけられた振り子時計が音を鳴らす…現在は午後3時、ティータイムの時間だった。


――コンコンコンッ――


「む?…こんなにも辺鄙な場所での来客とは珍しい…龍の皆様でしょうか?…それとも、下品な〝お仲間〟でしょうか?」


木製の扉を3回、ノックが響く……少しの疑問と多大な興味を顔に映し、紳士的な男はその紫髪をユラユラ揺らす。


「今開けますので少々お待ちを」


居住まいを正し、ステッキを手にその男は扉へ手を掛け、開く……そして、その目を驚愕に染める。


「おやおや、おやおやおや…貴方は…」

「やぁ、久しぶりだね〝メフィ〟…元気にしていたかな?」

「コレはコレは、〝御父上〟…立ち話も何ですし、中でお話でも如何ですか?」

「おぉ、ソレは良いね…丁度ティータイムだ♪…アップルパイは嫌いかな?」

「好き嫌いなど有りませんよ」

「なら良かった、私のお気に入りのアップルパイを茶請けにしよう、美味しいよ」


扉の外には、彼の…〝メフィ〟の予想を超える存在が、にこやかに立っていた。


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バリットミスあります。
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