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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十章:人と悪魔の争奪戦
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竜の荒野へ

『……屍王の居所か…生憎と、それは分からぬ…この世には何億の御魂が有る故に、その中から探す事は難しい、砂漠の中から砂金を一粒見つける様な物だ』

「え〜…残念です……」


あ、危ねえぇぇ〜!?…いきなりトンデモナイ質問をぶっ込んで来たよこの娘!…いやまぁ良く考えたら転生してからこの子達に会ってないし、知らなくて当然だけど。


『ふむ…問に答えられぬ詫びだ、受け取るが良い』


と、俺がそんな事を考えていると蛇神がまた何かを吐き出す。


――――――

大地ノ巨蛇(アース・クリーパー)の始鱗】


幾百の年月を生きた旧き蛇、その始まりの鱗、膨大な生命力と魔力を帯びた肉体から剥がれ落ちたその鱗もまた、凄まじい魔力を帯びている。


ソレは万物を呪う呪鱗で有り、汎ゆる呪いを破却する祓除の清鱗で有る。


――――――


『我の最も旧き殻の最も硬い鱗だ…腹の中に納めていたが、貴様にくれてやる』

「……」

『……何だ、不満か?』

「……ハッ!?――いやいや、不満何て無いですよ!…え、でもこんなの貰っても良いんですか!?」

『構わん、我には無用の物よ…ソレには劣るが、汝等にも近しい物を与えよう』


そうして我々は【大地の巨蛇の魔鱗】を受け取った…どうやらコレはリリーの物よりも一段下の素材らしい……いや、100が90に変わった位の差だけど。


『久しい来訪者よ、取引は終わりだ……また何かを欲するならば供物を持って来るが良い、相応の対価を与えよう』


そう言うと蛇は瞼を閉じる。


「蛇さん、眠ったみたいですね……それじゃあ、起こすのもアレですし、静かに外にでましょう!」

「「あぁ、そうだな」」


リリーの言葉に、リヒトとウェイブがそう言い、追随する。


「先に行っておいてくれ、私は少しこの鱗を調べて見たい」

「?…分かりました」



リリーとリヒト等が外へ出たのを視認して、私は蛇へ向き直る。


「やぁ、■■■……久しぶりだね」

『……ッ、まさか……主か…?……随分と縮小したな』


そして、その子へ声を紡ぐ……閉じられた眼は開き、その顔は蛇の顔にしてはかなり表情が豊かだ。


「まぁ、世界を壊した代償にね……器の破壊はされなかったから良しとしよう…出来なかっただけだろうけどね」


あの中には千年物の淀みが燻っているからな、下手に続けばその時点でパリーンだ。


「ま、何はともあれこうして私は生きている、今は器の復活を目的にしている訳だ♪」

『成る程…しかし、主よ』

「嗚呼、知ってるよ…〝君の性質〟の事だろう?……問題無いよ」


私の仕込んだ〝対価の蛇〟達……この子の言っているのはその特性の一つ〝公平な取引〟と言う縛りに対する危惧だ。


「〝代償に対する対価への確実性〟…求められた願いに対して、世界を保証人に確かな対価を与える……言わば人と君と世界による〝取引〟……君が言っているのはハデス=私と言う〝情報〟を得てしまった事なのだろう?」

『うむ』


先程は私と言う存在がハデスだと理解していなかったが故に潜り抜けられた難関だ、故に次また同じ質問をされた場合、この子は俺の情報を与えねばならない――だが。


「ソレに対しては問題無い、君はハデス=私だと理解しているが、私が今何者かは分からないだろう?」


名前も、性別も、特徴もだ…いや性別は分かるか。


「つまり抜け道は幾らでも存在する、〝ハデスは守護者の人間〟で有る…と言う風に」


その為に俺は名を明かしていないのだ。


「その辺は割と誤魔化しが効く、悪魔は抜け道を探るのが得意なんだ♪」


〝世界〟の想定が甘いだけでも有るが。


「それじゃあな、次に会うのは俺の器が戻った時だろう、その時は〝茶〟でも一緒に飲もうか?」

『ふむ……久方振りの陽の光も悪く無いか、弟達にも伝えておこう』

「あぁ…」

『そう気に病む事は無い、主よ…コレも主の想定通りであろう?…我は主の役に立てて嬉しいのだ、それは弟達も同じだ』

「……そうか…素晴らしい子を持てて、嬉しいよ」


器が戻れば、彼奴等も労ってやらねばなぁ。


「それじゃあ、引き続き頼んだぞ」

『うむ…あぁ、それと』

「?」

『その、い、言い難いのだが主よ…』

「何だ?」

『ひ…久方振りに、撫でては貰えんだろうか?』

「ッ!……嗚呼、良いとも…幾らでも撫でてやるさ」



そして、俺は暫くの間愛しい部下の頭を撫でて居た。




〜〜〜〜〜〜〜



それから2日後、持ち込んだ素材を使い、職人に魔導具の作成を依頼したり、旅の支度を終えて現在、目標に向けて馬車を走らせていた。


「さて、旅の路銀も食料も、薬も装備も万全……いよいよ以て我々は竜の荒野で竜を狩る事になる」


緊張に顔を強張らせる3人、まぁそうだろうな、竜と言う言葉から想像するソレは、確かに恐ろしいだろう。


「安心すると良い、先ず我々が討伐するのは竜の中でも下級の下級…即ち〝飛竜(ワイバーン)〟だ」


丁度いい機会だ、荒野から此処まではかなり遠い…この機会に説明しておこう。


「飛竜の姿は…まぁ簡素なイメージだが、4m…いや、5m弱の蝙蝠の翼を生やした蜥蜴をイメージしてくれると助かる」


影からイメージした飛竜を創造する。


「で、先ず君達は竜について知らなければならない……それは竜種に存在する〝魔力炉〟だ」

「〝魔力炉〟?」

「そう、魔力を捻出する器官であり、竜の心臓部……通常の魔物達はシンプルな〝魔石〟と言う魔力炉を持っているが、事〝竜〟或いは〝龍〟のソレは他よりも比較にならない…特に龍は竜よりも遥かに膨大な魔力を生み出す為、その魔力炉も一味違う」


散々調べ弄ったからな、その辺りの構造は恐らく誰よりも理解している。


「先ず、単純に魔力の生成効率がヤバい、エネルギー:魔力の生成率で表すなら、通常の魔物が1:1〜1:2…特殊な個体達でも1:5…と言った所だが、竜は1:30〜1:50……龍に至っては推測から1:100〜……と言う感じだ」


コレがえげつない、その気になれば魔力炉をフル稼働させる事も出来るから総合戦闘能力は更に上がる。


「先ず単純な魔力勝負は負ける、物理面でも、強靭な鱗によって斬撃、刺突、打撃は効果が薄い……生物としては遥かに上位種だ」


故に竜殺しは栄誉の証なんだがな。


「と、此処まで聞けば無理難題に思えるだろうがソレは通常の冒険者ならの話だ」


通常の冒険者なら先ず竜を殺すのは厳しい、汎ゆる面で準備が足りないからな。


「俺達は通常の冒険者と違い、異質な場で死闘による強制強化を行った、竜を相手取るには不足ない実力だよ、飛竜と荒野中域に生息する〝火吹竜〟に対する備えとして、〝炎耐の首飾りも拵えている〟…思った以上に戦いやすいよ」


空に対しては私とリリーで叩き落せば問題無いしね。


「深域は上位竜種や、〝龍〟の縄張りだから立ち寄らない、竜は縄張りから余り出たがらないから遭遇も心配しなくて良い」


イレギュラーが無ければ、ね。



それから一度夜を超えて午後1時、雲の無い快晴の中、遂に我々は到達した。



恐れ多き、畏怖の象徴たる〝竜〟の住処、そして、その奥に眠る龍達への道筋へ。



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