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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第一章:獣の厄災と強欲の魔女
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お散歩と実験

――カチャッ――


「ん〜……やはりパイは焼き立てに限りますねぇ〜」


イベント告知からはや3日、俺は玩具作りと素材集め、そしてファウスト観光に精を出していた……え?不純物が混じってる? 何言ってるんだよ、観光(偵察)だから問題無……え?〝監視者〟つかえ?黙れ、以上閉廷。


此処〝白鳥の羽休め〟も落ち着いた雰囲気で出される食事は一級品、紅茶もベクターに引けを取らないと素晴らしい価値を持っている……こうした穴場を見つけるのも観光の醍醐味だよなぁ〜。


「ふぅ……美味しかったですよリーアさん」

「ありがとうございます!……って何時も多いですよ!」

「なぁに、正当な対価ですよ対価、ではコレで……御馳走でした」


リーア嬢をからかいながら店を出て街をふらりと歩く……いやぁ、愉快愉快。


――〝歓喜〟、〝恐怖〟、〝絶望〟、〝緊張〟、〝焦燥〟――


こういった大規模なイベントはこういった〝色〟で溢れ返って見ごたえがある、勿論リーア嬢も……フフフッ♪


『主様、〝監視者〟達が獣災の位置を発見しました』

「でかした」


ベンチに腰掛け、目を閉じ監視者の視界を覗く。


――ゾロ……ゾロ……――


一、十、百、千……万は超えそうな数だ、しかも。


(四方八方、全方位から同規模の数……殺る気マンマンだねぇ)

『主様、空からの偵察の結果、ファウストを囲う様に進軍し、かつ東西南北に一体の〝ボス〟が居る様です…が』

(通常の個体とは違う……だな?)

『はい、明らかに何者かの手が加えられています』


四方の監視者に接続すると……〝居た〟。


(ほうほう……コレはコレは……)


獣災の後をかなり離れた場所からゆっくり、ゆっくりと街へ向かう〝ソイツ等〟、見た目は遠目で動物だが……その姿は悍ましいモノだった。


(何だコレ、キモッ)


ソイツはドロドロとした黒い液体を溢れさせ、まるで皮を着る様に動物皮で作った継ぎ接ぎの着包みを纏っていた。


(この4匹が遠くから此方に向かって来た事が規模拡大の原因か?しかもこのドス黒い魔力……すっご〜い見覚え有るんだが……)

『はい主様の持つ魔力に非常に酷似しています……しかし死霊の瘴気とは違った気配から考えるに』

(〝悪魔的(種族的)〟な類似点……ねぇ……どっかの悪魔が黒幕か?)

『恐らく』

(ほ〜ん……そんじゃベクター、この事を報告書にして纏めといてくれ、そんで写本をファウストの連中に送れ)

『よろしいので?』

(構わんよ、最初は此処の連中がどれだけ抵抗出来るか見る、で防衛が駄目なら尻拭いで行こう)

『了解しました、各自に伝達します』


(悪魔……悪魔、ねぇ……あの〝鈍ら〟が使えるなら造作も無いだろうが)


正直、期待は出来ん……が。


「精々足掻いてくれると助かるねぇ」





〜〜〜〜〜


場所は変わって屍御殿、その地下の俺の実験室にて。


「〜〜♪」

「失礼するよ主……おや?」

「失礼します、主様……ソレは?」

「ん、ベクター…とタラトか……グルーヴ達は?」

「セレーネと一緒に魔物の死骸集め……自分の配下を創りたいらしいよ」

「セレーネは?」

「君が研究所に籠もってるからね、暇つぶしに付いていっただけだよ、相手して上げたらどうだい?」

「ん〜……コレの調整が終わってからな」


研究所に入り込んだ二人と会話をしながら、俺は作業を続ける。


「……気になっていたんだがそれは?」

「〝災害を呼ぶ笛〟、少し前に閃いて作った呪物だが……中々上手くいかん、コレで最低限使える程度……もう一個は……当分使えん、やはり素体が悪くてな」


俺はタラトに失敗作の2つを投げ渡す。


「好きに弄れ、失敗作だが機能自体は完成してる」

「有り難く拝借するよ、それよりベクター殿、主にアレを渡さなくて良いのかい?」

「そうですねタラト殿、主様コチラを」


ベクターから紙の束と……〝物〟がインベントリに運ばれる。


「ほうほう……へぇ?」


インベントリから送られたサンプルを取り出し、確認する。


――――――――

貪食寄生蟲獣グラトール・パラサイト・キメラの触腕】

何者かが創ったキメラの触腕、硬く靭やかであり、傷を瞬時に再生させる程の生命力に溢れ、この状態でありながら未だ活動を止めていない

――――――――


――スパッ――

――ジュウゥゥゥ――


「強度の再生能力……死に難い生命、貪食、食事……喰らう……栄養……成長」

(成長……つまり進化? あの個体は未だ成長途中で、進化個体が本命……だろうな)


――ウネウネ――


(ならその個体が街殲滅に使われる……? あの規模の街を破壊する事を考えると、あの大きさで再生能力と防御に振り切っているであろうアレでは火力不足……成長個体を把握していての事……ならソイツを使えば良い、だが使わないと言う事は、〝使えない理由が有る〟か〝成長段階の個体を知らない〟……使えないならばその幼体を不用意に扱うのは危険だ、知らない可能性が高いな、つまりコレは実験段階に有る不完全な個体だ)


「ベクター、タラト、街の破壊……人間の殲滅と言う目的に合致した方法は?」


「「……物量による包囲殲滅……?」」

「だな」


獣災は其の為の物……では無いな、このサンプルの性質から再生は自己のエネルギーを消費する筈だ、ならソレを補う為に絶えず喰い続けなければならない……アレの移動能力を考えて見ると完全に欠陥品……あぁ。


――ドスッ――


「そういう事ね」

「ん?何か分かったのかい?」

「あぁ、結論から言えばこの獣災は〝餌〟だ、アレの成長を補助する為のな」

「ッ!成る程!そういう事か!」

「人間と獣災が衝突し互いに死体を積み上げる……ソレを〝本命〟が捕食し成長を続け成体へ……確かに中々悪辣な作戦ですが、それだけでは無いかと」

「それなら態々蟲をキメラの素材にしなくても強い魔物は居るよ?」

「だろうな、だから街壊滅の直接原因はコイツじゃない……お前達、虫の特筆すべき部分は何だと思う?」

「「……数、繁殖力ですか(だね)」」

「正解、態々虫にしたのは成長個体の繁殖だ、戦場に転がる獲物を養分に配下を増やし、無尽蔵の兵力で圧殺する……俺が相手の位置ならそうするだろう」



流石は悪魔製と言った所かな?


「ベクター、写本にこの情報は乗せるな」


ベクターへそう言うと、その言葉にタラトが不思議そうに首を傾げ、俺へ問う。


「ん?良いのかい?」

「良いんだよ、俺達は別に彼奴等の味方じゃ無い、その方がより〝削れる〟からこそ余分な情報は削る……なに、ヒントは与えたんだ、自分で答えに辿り着けなきゃどの道滅ぶ……それに、想定外の行動で戦場が乱れるのを見るのも楽しいだろう?」

「「ゲスい(ですね・ね)」」

「ハッハッハッ!」




さて相手の情報は粗方見たし、丁度セレーネ達が帰ってきた……少しセレーネに付き合うか。





○●○●○●


『※※※※※!?!?!?』


獣の気配1つ無い草原を、森を、湿地を、山林をソレは移動する……ゆっくりとゆったりと。


『※※※※!!!』

「………」


半ば死骸と化した餌を内側から喰らいながら運ばれるソレは〝餌〟の匂いがする方角を見て、甲高い叫びを上げる。


『※※※※!』


貪食の”化物”………それが進むのを、上から眺める影が居た。


「クッヒャッヒャッ!もうすぐ、もうすぐだ!あの街の全ての魂が手に入る!」


ケタケタと笑い転げ、影は続ける。


「アレだけの魂が有れば……爵位持ちも夢じゃない、ゆくゆくは僕が〝王〟になって……クヒヒッ♪」





――僕の糧になる事を光栄に思うと良い♪――




獣の厄災、それが街へ到達するまで。



後3日。

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「ベクター、写本にこの情報は乗せるな」 「ん?良いのかい?」 ベクターも口調崩れてきた… キャラ出しすぎた結果口調が混ざるのなら控えめにした方がいいのでは
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