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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第一章:獣の厄災と強欲の魔女
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八脚の罠狩人

どうも皆さんこんにちは、作者の泥陀羅没地です


本作を読んで頂き作者としてとても嬉しく思います、拙い文章や設定ではありますがこれからの主人公の物語を楽しんで頂ければ幸いです


また、誤字報告や文章の矛盾について、文章を作っている最中で見落とした箇所を報告して頂きとても助かっています

――パカラッパカラッ――


「ん〜?妙だな、人が居ない」


現在地西方、俺が廃教会で暴れ散らかした元廃墟の残骸跡地、其処の奥、〝サルターンの森〟、その奥に求める者が居る、だが。


「調査に来た人間も、周囲に人の気配が欠片もない……妙な事だ」


――パキャッ――


「あれだけの規模に被害が及べば数日か一月は調査をすると思うのですがね」


――バシッ――


「既に調査を終えたか、或いは調査そのものが中止になったのか」


しかし何故中止に。


――ズブズブズブッ――

――トントンッ――


「「「「――ッ!?!?」」」」


「しっかし虫が多いな、かれこれ100余りは潰したぞ?」


バッタ型の魔物〝跳躍蟲インセクト・グラスホッパー〟、蜘蛛の魔物〝毒吐蜘蛛(ヴェノムスパイダー)〟。


蜘蛛型は其処までの頻度では無いがバッタが多い。


「イナゴの佃煮……見た目は悪いが中々美味かったな」


此処までの数は流石にキショい通り越してグロいが……ふむ、折角だし、何かに使ってみるか。


「主様、どうやらこの先は蜘蛛の縄張りの様です」

「てことはボスエリアが近いと?」

「はい、生憎此処に〝監視者〟は入れない様で確実な情報は有りませんが、食物連鎖、生態系の様相を鑑みるとその可能性が高いかと」

「じゃ、毒と糸と牙と脚、質量による重量攻撃と、援軍の警戒が必要か」


――ガサッ……ガサッ……――

――ピーンッ!――


――バシュンッ――


「ぬぉッ!?」


俺達を襲い来る蜘蛛共を蹴散らす……そんな中、不意に脚に抵抗を感じた、次の瞬間……見た瞬間『俺毒ッすよ! 死ね!』的なノリで飛んでくる飛び道具を弾く、すると。


――ジュウゥゥゥ――


「えぇ、マジか」


弾いた箇所に付着した粘液が死霊剣に触れると、異音を発しながらグズグズに溶けていった。


「酸……腐食毒か、触れた物を溶かす毒液……コレは……さっきの蜘蛛共の殻?」


………此処のエリアボスはかなり狡猾らしい、グルーヴ以来の強敵かな?


「フフフッ♪」



〜〜〜〜〜



「それでは主様、私は此処で」

「はいよ、虫の死骸は集めといてくれ、〝玩具〟に使う」



ベクターへ指示を出し、俺は胸中に湧いた好奇心に従い、最後の長と相対する。


『ボスエリアへ侵入しました!【罠糸黒蜘蛛ブラックスパイダー・トラッパー】、〝賢謀のタラト〟との戦闘を開始します』


「キキキッ」

「………」


互いに複眼と双眸を捉え、立ち止まる……黒い体色、艶々とした堅殻、脚先の爪は鋭く、顎は強靭、複眼による広域視界……なによりも。


「面白い、面白いな、お前」


俺から離れた位置で見続けるタラト、あの猪や、白蛇、グルーヴとも違った〝在り方〟、〝観察〟する様なその姿勢が実に面白い。


「既知の魔物以上の知性、冷静な観察能力、自らの身体能力に驕らず、相手の性能を見極めんとする判断、どれも魔物、獣の在り方を逸脱してる……人間の様だ……と言うのは些か傲慢か、人も獣も肉で構成された魂ある存在、違いは生まれ持って理性と知性を持ったか否に他ならん」


――バシュンッ――


話しながら、槍を投げ飛ばす……偽りとは言え悪魔の名を冠する俺の筋力が放った豪速の槍は、凄まじい勢いでタラトへ突き進み。


――バチャンッ――


「……鏡か」


タラトへ触れると水飛沫と化して弾け飛んだ……〝水で創られた鏡〟、魔術を用いて創られたソレを、魔力察知に引っ掛からず作る、凄まじい練度と言える……そして。


――ヒュンッ――

――ヒュヒュヒュンッ――


「ほんの少しの行動でこの数の罠……〝本当に面白い〟」


天井から、木の隙間から、地面を掻き分けながら6の罠、二桁の毒混じりの攻撃が放たれる。


――ドドドドドドドッ――


「キッ……」

「〝罠の連結〟、一つの罠で複数の罠を〝起動〟させる配置、魔力を用いないが故に魔力察知に触れず、無機物故気配察知にも掛からない、盗賊の用いる〝罠探知〟、コレの対策はお前が施した隠蔽でやり過ごす……お前初期エリアのボスにしては強すぎないか?」


肉の壁を解き、見据える……タラトに〝好奇〟が見えた、やはりコイツは獣と違うな。


「……フフッ♪ あぁ、楽しいな……長との戦いで、此処まで興味を唆られるのはグルーヴ以来だ」


こいつの二つ名は……〝賢謀〟だったか、クフフ♪


「賢き蜘蛛、謀る事がお前のやり方で在るならば、是非とも、この俺を殺してみろ」


「キッ」


――ピンッ――

――ボトッ――


「刺激臭?……〝鑑定〟、――ッ!?」


――ザッ――

―――ボカンッ!――


「チッ……〝臭毒茸〟と〝火草〟の粉末……〝手榴弾〟とは随分と現代に生きた蜘蛛だことで」


――ビッ……ブツンッ――


「ッ!面倒臭い!」


――ズルゥッ――

――バキンッ――


(全く、何十、何百罠を張ってるんだ!?身動一つ取れやしないッ)


――パキッ――

――ジャァッ!――


「グッ!本当に面倒臭い」


手榴弾の衝撃で、破片で幾つもの罠が、一つの糸を切れば百の罠が、大地を踏めば土の槍、魔術の罠、この場所は完全に〝彼奴〟の領域だ。


――カランッ――

「ッシィ!」


また落ちてきたお手製手榴弾を弾き飛ばし、連動した罠を躱す……とんでもない用意周到さ、とんでもない状況判断、合理の獣とは恐れ入る。


「一が十を動かし、十が百を呼ぶ、百は千を、千は万を、この領域は対象が死ぬまで罠による奇襲を強制する、厄介な空間だ」


本当に面倒で、実に面白い。


「一体幾つの罠を用意したんだ?」


久しぶりの〝不利的戦況〟、此処からどう覆すか、少し楽しくなってきた。



――ズロォ――


「さて、此処は1つ、相手の土俵に乗ってみるか?」




●○●○●○


何なんだコイツは?


――ビッ――

――ジャララ――


アレから十数分、只管繭に籠もった〝獲物〟へ攻撃する……あの柔らかく、〝硬い〟護りに、少なからず興味が湧く。


――ブスブスッ――

――ギュチギュチ……――


〝取り込んでいる〟、剣が通る程柔らかい繭、その損傷を補う様に蠢き、また元の形へ変わる……不思議な奴だ。


――ビッ――

――ズババッ――


一体どれだけ取り込めるんだ?

その好奇心と共にまた1つ糸を切る……また繭へ取り込まれたその時だった。


――ブルンッ――


肉の繭が震えた……思わず動きを止め注視する。


――ギュチギュチギュチギュチ――


繭は収縮し、小さく、小さくなり始め、凡そ半分に満たぬ程に小さくなったその瞬間。


――パァンッ――


骨肉、鉄の武器を周囲に蒔き散らした。


「キッ!」


咄嗟に壁を造る……だが、その隙間を縫うように短剣が脚を一本刺し千切った。


――ボタッ……ボタッ――


中から緑の血液が木の幹へ垂れる……丁度音が止んだその時。


――ガコンッ――


何かと何かが打つかる音と空気を切る音が聞こえ。


――バコンッ――

――パラ……パラ……――


「よぉ、さっきぶり♪」


顔を歪めたソイツが壁を打ち抜いて手を伸ばしていた。


――ブンッ――


反射的に脚を振るう、するとその男は身体を分断させて……〝肉塊〟に変わり、木の幹に落ちた。


「キ……キ?」


安堵から一瞬、疑問が湧く〝柔らか過ぎる〟、と。


――フッ――


「はいハズレ」


その声が聞こえた瞬間、凄まじい衝撃と共に、身体が幹から落ちる。


――ブチッ――


そして、その地面の先には……起動してその場に留まった、土の槍が待ち構えていた。


「……キッ」



――グサッ――


○●○●○●


「……ハハハッ、マジか」


落下しながら、その目前の光景に俺は思わず声を漏らす……空中で、身動きの取れないあの状態で頭から槍へ落ちていったろうに。


――ベチャッ――

「ギ……ジィ……」


右顎の辺りを削り取られた状態で俺を見つめるタラト……しかし、その状態でありながらその色に憎悪や殺意はなく、純粋な興味と疑問が在った。


「怒るでも、憎むでも無く、疑問、興味を抱く……やはりただの獣とは違った在り方か、つくづく面白い奴だな」

「キ……」

「あ〜良い、応えてやる、”何故増えたのか?”だろう?……概ね理解はしていても確信は持てない、そんな所か」

「キィ」

「結論から言えばアレは〝模倣体〟、ドッペルゲンガーと言えば良いか、本体に限りなく近い肉人形だ、で、その特性は対象の模倣と意識の共有、壁を打ち抜く直前に意識を模倣体に移して本体と誤認させ、本命を気付かせなかった……あの一瞬だけの罠、故に判断が遅れただろう?」

「キィ、キィ……」


答え合わせを済ませ、タラトが吠える……すると土の槍が中に浮かび、俺へ飛来する。


「速度は遅いな――」

「キィ」


――バシュンッ――


「………あ、忘れてた」


タラトが鳴いた瞬間、地面から勢い良く突き出た槍に腕をもぎ取られる。


「そうだった……お前を落とした時に使うから地面の罠は無視してたんだった……」


――グチュチュ――


腕を鈎爪にして生やし、土の槍を千切り取る。


「まぁ良いか、十分楽しめたし……そろそろラストゲームにしようか、タラト」


――ビュンッ――


「キィ」


土の槍を投げ飛ばす……それは土の壁に打つかり対消滅する。


「キキィ」


タラトが声と共にまた壁を造る、そしてその後、面白い行動に出た。


「キッ!」


――バコンッ――


「ッ!?」


自ら壁を破壊し、その礫を散弾の様に攻撃と変えた、何とも恐ろしい発想だ。


「…が、温い」


壁を破砕した瞬間、土槍を投げ飛ばす……そして。


――ズガァン――

――ブッシャアッ――


タラトは腹を、俺は左肩をミンチに変えて、戦闘は終った。


「全く、厄介な罠とそれを処理する頭、その上本体は大胆な動きも厭わない……厄介極まる敵だったなぁ」


「ギィ!」


――ブシャァ――


「諦めが悪いのも気に入った」


吐き出された毒を、土槍で振り払い、タラトの腹へ登る。


「じゃあ、また後で会おうか!」


――ズガッ――




『ワールドアナウンスを通達致します』

『〝賢謀のタラト〟が討伐されました!』


『レベルが上がりました!』

『〈鑑定〉のレベルが上がりました!』


「ふぃ〜……漸く長旅が終わったなぁ……丸一日位掛かった」


ボス戦なぁ、楽しいけど疲れるんだよな、あと移動が退屈だ


『――ワールドアナウンスを通達致します』

『第一エリアの長が討伐されました』


「あん?」


『第一イベント〝飢え狂う魔物の軍靴〟が開催されます』


「ほほほぉ?」


イベント……イベントかぁ♪




「次の玩具は決まったな♪」



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