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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第一章:獣の厄災と強欲の魔女
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白く暗い毒蛇

――ベチャッ――


「………なぁ、ベクター」

「………何でしょう、主様」


場所は南の湿地帯、俺達は此処の長を殺しに此処まで来た……までは良かったんだが。


「俺今すっごい不愉快」

「私も同感で御座います」


歩く度に泥が染み込む、重い足取り、砂まみれの靴の中、断言できる、此処は過去最悪のエリアだと。


「シィィィ!」

「………」


木の上から襲い来る蛇の頭を打ち抜く……あ。


「やべ毒牙毎砕いちまった」


駄目だ、苛つき過ぎて加減忘れてた。


「――主様、此処から先に大きい気配が有ります」

「オーケー、じゃ行ってくる……直ぐ終わらせるから、洗浄頼むわ」

「お任せを」


――ドプンッ――


『ボスエリアへ侵入しました!【白毒蛇ホワイト・ヴェノム・サーペント】、〝白暗のディヴォン〟との戦闘を開始します』


「………おや?」


開けた沼地に侵入すると、ちゃんとボス戦のアナウンスが響いてきた、しかし何処を見ても主が居ない、静寂だけが辺りを支配している。


「ふぅむ……隠れてるんだろうなぁ」


沼地を動き回る……嫌だ、ただでさえストレスなのに下手に動いて見つからなければ多分俺は憤死する。


「かと言ってこのままというのも不愉快だ、さて……〝何故気配が感じられない?〟」


気配察知にも、魔力察知にも引っ掛からない、妙だ……俺の能力の水準は高い、多少違和感は見つけられると思ったが、ふむ。


「仮説1、俺の探知能力をすり抜ける隠蔽能力」


「仮説2、俺の探知能力の許容量を超えた大化物が居る」


初級エリアのボスだ、少なからずある程度の実力が有れば潜り抜けられる難易度だと思いたいが、後者の場合は少し厄介だ……面白そうではあるがね。


――……――


空が陰った、その瞬間。


――ドパアァァァンッ――


「オーケー、仮説1ね」


空から、より精確には木々の上から、白い赤目の蛇畜生が降ってきた。


「アルビノ……いやあの蛇の正統進化とは言い難い、多分変異種か特異個体か?」


気配が薄い、其処にいるのに雑魚蛇と相対してる気分になる、気色悪い感覚だ。


「隠密&猛毒の暗殺型と見た」


――キリキリキリッ――


「〝疾き者よその風の脚は鉄と成れ〟、〝鈍足の呪詛〟」


弓を引き、呪詛を吐いて白蛇を留める……久しぶりに呪術君を使ったな?


――バシュンッ――


「ギッシィァァァ!?!?」

「ふむ、見立て通り柔いな」


その分速さと隠密が面倒極まるが、見えているなら――


「ギシャァァァ!!!」

「お〜、頭良い〜」


叫び声を上げ蛇が鎌首を上へ伸ばす……そしてその身体を沼へ叩き付け、沼の濁水で視界を遮った。


「状況判断は十分、自身のフィールドを最大限活用する合理思考、何処其処の阿呆猪より十分に強い」


――ただまぁ――


「相手の〝物〟くっつけた状態で隠れるのは下策だぞ?」


――バスンッ――

――ザパァッ――


「――ッ!?!?」

「そりゃ隠れるのが得意って分かりゃ対策するだろうさ……その矢は単なる攻撃じゃ無い、薄く薄く、俺の魔力を帶びた俺の〝物〟だ、コレさえ有れば無くしても辿れるってこった」


――ドスッ――


「さぁて、お前のその隠密性能の絡繰り、俺に見せてくれよ……そういや蛇ってささみに近い味だったか……? あぁ怖がるなよ、俺不死者だから飯食わんでも大丈夫だからさ、鱗とかは剥ぐけど(ボソッ)」


鈎爪で白蛇の身体に刺し掴み、背後に登る。


「〝堅牢たる者よ、汝の鋼は柔き紙の如く〟、〝防御低下の呪詛〟」


――チャキッ――


「さぁて、行ってみようか!」


防御低下の呪術を吐き、壊れかけの大剣を手に握る……この一撃で完全に砕けるだろう、だがソレで十分だ。


――スウゥゥゥゥゥ……――


「首置いてけェェ!!!」


身体を捻り、力一杯の横薙ぎを放つ。


「――」


――ザンッ――


蛇の声を掻き消して余りある絶叫、そして放たれた大剣は蛇の首を捉え……蛇と俺の反対方向に弾き飛ばした。


「フゥゥゥ……スッキリ!いやぁ全力で攻撃するのは気分が良いな!アッハッハァ!」


フッ、この俺の一撃を受けて生きてる者など居まいよ、しかも相手は防御クソ雑魚の毒蛇畜生、万に一つも生きて居まい!


――ボタッ……ボタッ……――


「………え〜、死んで無いのかよ」


まさかコイツ〝不死蛇(ウロボロス)〟の類じゃあるまいな?……おん?あの如何にも毒々しい赤黒い粘液は……。


「おぉ〜毒だ毒、しかもそんじょそこらの蛇以上にヤバげだ」


沼全体に広がる毒を掬いながらそう言うと、蛇は殺意と妄執の瞳に、困惑を宿す。


「いやぁ、すまんね白蛇!俺不死者だから毒効かねんだわ!」


『は?』



――バスンッ――


俺は首の皮1割繋がった蛇の首を死霊剣で千切り断つ……最後に白蛇が妙な顔をしていた気がするが気の所為だろう!


『ワールドアナウンスを通達致します』

『〝白暗のディヴォン〟が討伐されました!』


「さ、帰るべ帰るべ……早く泥落としたい」



死体をインベントリに詰め込みそそくさと俺は立ち去るのだった。



「んん?卵?蛇共のか?……でも巣っぽく無いし、寧ろ捨てられてる? ナニユエ?」


――・・・――


「良し、持って帰るか!」


遠くに見えるベクターとスレイ達の方へ向かいながら、俺は面白い物が無いかフラフラ寄り道するのであった。






○●○●○●



「うっわぁ……ディヴォンが二撃で」

「黒魔術師が防御低下の術、神官が強化盛って、タンクが足止め、其処に戦士か剣士がクリティカルで攻撃すれば倒せる範囲だな、ディヴォンは毒と隠密が強いがその分防御や真正面からの殴り合いに弱いし、妥当だろ………一人でやるのは俺も予想外だが」

「俺ベクター君とディヴォンの暗殺勝負見たかったスよ〜……本当に着々と裏ボス化進んでません?悪性プレイヤーが少ないとは?」

「……いやコイツが異常なだけだ……うぅむ……一応このままでもプレイヤー的には問題無いんだが……ちょいと厳しくなるな」

「そうッスか?〝物量〟に関してはプレイヤーと〝アレ〟でドッコイ、後は機転と、判断と覚悟が有るなら問題無いでしょ……滅んでもリスポーン地点を別の街に移したら良いし、〝世界〟的には寧ろオールオッケーでは?」

「〝アイツ〟が自浄作用ブチ壊した皺寄せだが、プレイヤーにしてみれば知らん事だ、しゃーない、ちょっと準備期間にボーナス付けるか」

「そうっすね、それなら6割勝てるでしょう」





「ハッ!何か面白い事が起きそうな予感!」

「主様? そんな事していると卵が落ちますよ?」

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