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デュラハンラース ④

家に向かう道。


「5ゴールド5シルバーか…」


交易所に入る前に比べて閑散とした街を歩きながら、ラースはポケットの中でジャラジャラする金貨をぎゅっと握った。


「悪くはないけど、まだ足りないね…。ふぅ」


日当で言えば、村でもかなり上位に属する金額を手にしながらも、ラースは満足できないかのように深いため息をついた。

複雑な気持ちほど重くなったラースの足取りはやがてある店で止まった。

外部の人々の注目を集める他の建物のように華やかではないが、よく管理されているきれいな外観の店。

内部では金属を叩く音が一定の間隔を置いて聞こえてくる。

この辺で唯一の中級亡者であるデス·ミノタウルス·タイトさんが運営する鍛冶屋だ。

ラースは斧とハンマーが描かれた立て看板の横に慎重にカートをもたせかけ、自分の姿がそのまま映るほどきれいな窓ガラースに向かって近づいた。


透明な窓越しに展示されているものたちは実にまぶしかった。

美しい比率で斧の刃から柄まで金色に輝く黄金の斧、装飾で素敵な角を二つも付けている兜など。

武具の良し悪しに対して門外漢のラースがぱっと見るだけでもすごい作品が血のように赤いシルクの上でその姿を誇っていた。

しかし、ラースが注目しているのは人々の視線があまり届かない最下段のマスだ。


「すばらしい…」


そこには他のマスとは違って単純な金属片だけが置かれていた。

途中でかなり空いていたが,金属片はできるだけ元の形を取り戻そうとしたかのようにパズルのようになっていた。

そして、それは世間で剣と呼ばれる物の形をしていた。

粉々に砕けただけでは足りず、取っ手もなく刃だけが残ったその片は、もはや剣とも呼べない状態に違いなかった。

だが、刃に包まれた冷しさだけははっきりと残っていて、それを包み込んでいるきれいな絹のかけらをすぐにでも一気に切ってしまいそうだった。


「おい!ガラース汚れるぞ。 手を離して」

「ああっ!ごめんなさい」


ラースが剣刃に全身が集中している間、展示場の後ろにあったカーテンが反り、タイトが赤い眼光を灯して現れた。

中級亡者らしく、肉一つなく黒色に染まった骨格だけで構成されているタイトの姿はとてもしっかりしているように見えるので、「強大だ」という表現しか思い浮かばない。

頭上に生えている二つの角のうち一つは中段部がきれいに切られているため、凶悪ながらも鋭い印象が目立つ彼がぶっきらぼうに吐き出した中低音のけんつくにラースは急いで窓から手を引いた。


「ふん。それで何か買うものはあるか?」


鼻息を強く吐きながら近づいてくるタイトの威勢にラースは思わず後ずさりした。


「いいえ…。ただ見物だけしました。で、では…また来ます! さようなら」


急いでカートの取っ手を拾っている間、背中からタイトの神経質な鼻息がもう一度聞こえたようで、ラースは後ろも振り向かず逃げるようにそこを去った。


◆◆◆◆◆


「はぁ…」


鍛冶屋が位置する中心街から遠く離れた村の外郭地域に入ってから、ラースは足を動きを止めて一息ついた。

心の中には先ほど見た剣の破片がまだちらついていた。


剣。

それがまさにラースが毎日エレインを通じて交易所に入ってこなかったかを確認する品物だ。

でも、童話の中で絵に描かれていたものとタイトの鍛冶屋で見た半分にもならないもの。

その2つを除けば、ラースは剣というものと縁がなかった。

剣を探していることを率直に打ち明けて相談をするようになったエレインの 推論によると、亡界(レア)に剣を見つけるのはかなり難しいだろうという。

最も大きく根本的な理由は、剣を鍛造できるのはドワーフ、その中でもただ一部の職人だけだという点だ。

天賦の鍛冶屋の才能を持って生まれたドワーフ一族は、その才能を磨き、様々な神秘的な発明品と武具を作り、それらの製作法も適当な代価をもらって他の種族に快く知らせたりした。


しかし、たった一つ。

剣の鍛造法だけは誰にも教えない。

同じドワーフであっても、剣鍛造の知識が許されない者の前では、それに対する沈黙を守る。

なぜよりによって剣だけがそのような例外扱いを受けるのか理由は分からないが、鍛造法の秘密を守ったからといって購買と販売行為まで禁止されているわけでもないので、本来ならラースが剣を手に入れるは大きな問題ではなかっただろう。


ここが亡界(レア)でなかったら。

魔神の消滅とともに大戦争時代の幕が下ろされ、17年という歳月が流れた。

だが、世界は依然として橋一つを挟んで、魔神の眷属と彼らから生き残った人々が亡界(レア)生界(ネラ)に分かれて対峙中だ。

ただでさえ世界で多くない職人たちなのに、その中で亡者になって世界の半分にしかならないこの亡界(レア)をさまよう人が果たして何人いるだろうか。


たとえ亡者たちの中にそのような技術者がいたとしても剣の鍛造が可能なほどの職人を魔王たちが放っておかないものは当たり前だから、この亡界(レア)で新しく鍛造される剣は存在しないという。

少なくともこの「中立区域」では。


故に、もし交易所に剣が物品として接収されれば、それは大戦争時代当時の物であり、それが今この日まで無傷の状態で保存されたという天文学的な確率を突破した非常に珍しいものであるため、想像以上の高価な金額に策定されることは明らかだった。

いくら高い価格でも現れてくれれば希望はあるだろうが、運がなければ剣に向き合う瞬間さえ来ないかもしれない。

しかし、いつか訪れるかもしれないチャンスをつかむためにラースは準備しているのだ。


「いつか僕も僕だけの剣を…」


偶然の機会に持つようになった夢。

それを必ず成し遂げると誓って、ラースは風車が平和に回っている丘に登り始めた。

村全体が一目で見下ろせる丘の頂上には古い風車一つだけがぽかんと立っているだけで、人の気配なんかは一つも感じられなかった。

歩いただけなのに息が荒れるほど急な傾斜、村の外郭地域でも特に離れた地域であるため坂道を照らす灯火一つもない点が数多くの理由の一つだろう。

敢えてこんなに険しいところを家にした人がいるならば、その者はきっとわざわざ苦労するのが好きな変な奴や家の外に出ることのないひきこもりだけだよ、ラースは確実に断言できる。


残念な点は、その両方に該当する変わり者が自分の同居人であるという事実だ。

寂しく立っている風車を守るように包んでいる垣根の内にラースはカートを縛った後、力なく腕を回している風車の内部に入った。


みすぼらしい外観ほどきれいでない内部。

ラースはそれらに何の視線も与えずにまっすぐ床の片隅にぽつんと突き出たロープを力いっぱい引っ張った。


ギッコ。

機械装置が稼動する音とともに風車の床が開き、地下に下る螺旋状の階段が現れた。

少しの明かりもない真っ黒な闇に閉ざされた階段をラースは慣れて進んだ。

長くて深い石段を通って、ついに端にたどり着いたラースは、敷居の間からか弱い光の流れが漏れる木門と向き合った。


ガラガラ。


引き手を押しのけて内側に入ると、ドアの上部にかかっていた小さな銀色の鈴がラースの帰宅を知らせるように静かに鳴った。

家の内部は決して広いとは言えない大きさだった。

台所と居間の区分が別になく見える空間は、小さな食卓とソファー一つだけでいっぱいの状態だ。

居間の左側と右側に別の部屋につながるドアが一つずつあるが、それを考慮してもかなり狭いのは明らかだ。

それにもかかわらず、この場所は家という安らぎと居心地の良さを与えていた。

それは多分、天井にぶら下がった小さなシャンデリアから流れ出る暖かい熱気のおかげかもしれない。


「ただいま」


返ってくる返事がなくて独り言になってしまった。

でも、それが一度や二度とあることでもないかのように、ラースはそれを気にせず、奥に置かれた食卓に向かって大股で歩いた。


「ムーム!」


テーブルの上に腰につけていた包みを置きながら、ラースは自分の唯一の同居人であり友人である彼女の名前を呼んだ。


「……」


しばらく待ってみるが、返ってくる返事はない。


「ムーム!!」


前のよりももう少し大きな声の二番目の叫び。

この程度ならいくら作業にはまっていた彼女も聞くしかない音量だ。

やはり効果があったのか、居間から右側にあった部屋のドアの奥からゆっくりとした足取りの振動が感じられた。


「……おかえり」


こっそりとドアが開き、その隙間から全身を包帯で巻かれている包帯亡者(ミイラ)ムームが姿を現した。

身長は頭のないラースにほぼ似ている。

包帯でも抑えきれない屈曲した女体がかなり特徴的だが、口蓋が見えるほど大きくあくびをしながら指で体のあちこちを掻きながらうろうろする姿は妖艶どころか情けないだ。


「今日はちょっと遅いね」


居間の隅にかかった小さな掛時計の針を読みながら、ムームが軽く伸びをした。

やはり今日一日も曲がった姿勢で作業にだけ没頭したのか、ぽきんと骨の音がムームの関節のあちこちで響く。


「まあ、新しい取引をしたが、相手が少し気難しい方なのでいつもより遅れた。 でも、それだけお金はたくさんもらったから不満はない」

「おお!!いくら?」


ムームの青い瞳が期待感できらめく。


「フフッ。なんと6ゴールド!」

「本当?それでは今日こそ美味しい夕食を! ちょっと…どうしてまた黒月桂樹の葉なの?」


興奮で沸き立っていたムームの声が、食卓の上に上がっている見慣れた青黒い葉を発見したり、一気に冷たく冷めた。


「なんで?問題ある?」


夕食のメニューはラースが今日の作業途中に採取した木、黒月桂樹の葉っぱだ。


「問題あると?」


ラースが言った言葉が信じられないかのように、ムームはそのまま繰り返し問い返した。


「うん。魔力豊か。無料。 これより良い食料がどこにあるの?」


拳を握ったままぶるぶるするムームを無視し、ラースは平然と片隅に片付けておいた魔導具である混合器を手に取り、その中に自分の分の葉っぱを入れた。


黒月桂樹の葉。

色は黒ずんでいてところどころ変な産毛も生えていてかなり食欲を低下させるが、含んでいる魔力の量は原木ほどではなくてもかなり豊富な方なので良い食材だ。

もちろん、ラースには無料という点が最も大きく作用した。


「よいしょ。」


ガラースの混合機内の刃が静かに回り、黒い葉ハエを細かく汁を出す音だけが居間を埋める。

一見平和そうな光景だが、それは怒りで身震いしているムームが風景に混じっていなかった時の一面に過ぎない。


「ううううっ!」

忍耐心が限界に達したムームが奇異な怪声を上げながら、自分の皿に置かれていた葉っぱを一握り大きく取って床に投げつけた。


「いくら亡者たちが肉体を動かすのに必要なのは魔力だけだとしても、毎日! 毎日毎日!こんなまずい草だなんて!!! お金もたくさん稼いで、このケチが! 食べない! いや、これ以上は食べられない! えいっ!」

「なんだ。食べ物の大切さを知らないね! 文句を言うなら外に出て仕事をしなさい! 何もしない人にあげるご飯はない! このおいしいものを、うっ」


愚痴をこぼすムームに勢いよく怒鳴りつけたが、ねっとりした黒い液体を注いだコップを喉にそのまま注ぐ瞬間はやはりラースとしても耐えられなかった。


「お前、今身震いしたんだろ? 私が全部見たよ! 味覚もないデュラハンがまずそうなのを私に食べろって? !」


その瞬間を逃さず、ムームが意気揚々と意見を述べると、ラースも戸惑いを隠すことは難しかった。


「魔力を使って見たり聞いたりするように、デュラハンも味は感じるよ! まあ…… 少しだけど」

「その少しでもおいしくなかったら、完全な味覚を持ったこの私にはどんなに最悪の味か想像してみなさい!」


髪がないから目鼻立ちの中で何もないデュラハン。 そのため、触覚を除けばいかなる感覚も感じられないようだが、デュラハンにも視覚、聴覚などのその他の感覚は存在する。

ただし、その感覚は魔力を通じて広範囲な触覚の形態に変換されたものである。

もちろんそれは生存に脅威を与えない水準に過ぎないため、他人と比べてかなり鈍い方に属すると言える。


だから、五感の中で触覚を除いた残りの4つが他の人に正確にどんなものなのか、生まれつき頭がなく生まれたラースは基本的に理解できない。

そのように感覚に欠陥があるラースにも、実は黒月桂樹の葉をすりおろして作った黒ずみずしい液体は深刻においしくなかった。

空腹感がおかずという言葉もあるが、黒月桂樹の葉が内包するこの不味は、単なる空腹で補正できるような味ではないことを本音では認めている。

ムームが激怒するのも無理はないわけだ。


「まったく、そんなに食べたくなければ僕が食べる」


訳もなく本音がばれた気がして恥ずかしくなったラースがムームの皿に残った葉に向かって手を伸ばしてみるが、


パチッパチッ。


火花が散るように荒々しい猫のようにムームの瞳が鋭く急変した。


「私のものに触れるな。ペッ ペッ!」

「あ!何してるんだよ! 手に唾がついたじゃん! 汚い!」


日本の作家になりたくて小説を書く外国人です。 誤字または間違った文法を教えていただければ幸いです。

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