表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

現実発、ファンタジー行き。切符はこちらです。

作者: ほんの未来

 今回の短編、主人公の目線で書きましたが、主人公自身の1人称(私、僕、俺など)が最後まで一切出てきません。主語がなくても成立するあたり、日本語って面白いですね! また、性別を示すような表現もなるべく避けたつもりです。

 この物語の主人公は、自分自身でも、友人や家族、大切な人でも、好きな人を思い浮かべて楽しんで頂けると幸いです。

 なお、なんか良い感じのハッピーエンドを迎えますので、嫌いな人をわざわざイメージする必要はないかと思います。でもまぁ、好きに楽しんでいってね!

 がらんどうの駅構内。

 だあれもいない。

 耳をすませば、雑踏(ざっとう)喧噪(けんそう)も……聞こえなくなっていた。


 どうしたんだろう? ストライキかな?


 けっこう大きなターミナル駅のはずなのに、お客さんも、駅員さんも、見当たらない。


 おかしいな。どうしたのかな。


 しかし、日々の習慣とは恐ろしいもので、当たり前に流していく。


 電力会社さんはがんばってたみたい。

 券売機はきちんと動いている。なら問題ない。


 しかし、駅員さんがいないためか、売っている切符はひとつだけ。


 現実発、非日常(ファンタジー)行き。往復券を1枚買った。


 改札を通り、ホームへ向かう。

 電車は既に停まっていて、乗り込むだけだ。


 駅員さんも運転手さんも、だあれもいない。

 電車が動くわけもなく、座席でしばし休んだのち、立ち上がる。


 電車を降りて、改札口へ。


「ありがとう」と印字された切符を、改札機に入れた。


   †


 世界は奇跡に満ちている。


 ただ蒼いだけの空が、ただただ輝いてみえた。

 こんなに眩しかったっけ? そんな疑問も空に()けてった。

 うつむいてなんていられない。気付けば背筋が伸びていた。

 よどんだ空気を吐き出して、清浄を取り込んでいく。

 身体と、心と、思考と。いずれも力が満ちていく。


 人々が行き()う道をゆく。

 すれ違う人たちは、どこに向かうのだろう?

 先ゆくひとりが、道をそれた。

 そう思えば、別のふたりが、この道へやってくる。

 きっと目的は違うけれど、ひとりじゃないことが嬉しくて。


 信号は赤だ。立ち止まる。車が横切る。

 ダンプカー、アスファルトのにおい。近くで工事かな?

 なにげなく踏みしめるこの道も、作ろうと言い出した誰かがいる。

 予算や資材をかき集め、人も集めて、作って伸ばして、痛めば直して。

 その繰り返しの営みの中で、世界の果てまで続きそうな道ができる。


 青信号。前へ。ちょっとしたルールを守ること。

 みんなが上手くやっていくための、さりげない工夫。

 自動で色が変わる仕組み。音が鳴る。目が見えない人への配慮もある。

 視線を下げれば点字ブロック。これも誰かの優しさだ。

 すこしでも、だれとでも、この道をいけるように。


 あ、子供が転んだ。泣いた。母親があせる。

 どうしよう、絆創膏(ばんそうこう)ぐらいならあったかな?

 そう思った矢先、通りすがりの学生さんが駆け寄る。

 カバンの中身におどろいたのか、子供が泣き止む。いたいのいたいの、とんでった?

 消毒薬に綿とピンセット、ガーゼにテープ。どうやら看護学校の実習生らしい。


 かなしいこともあるけれど、いずれはきっと立ち上がる。

 そして、また道をゆく。その道は、交わったり、分かれたり。

 なんだか、無性にうれしくなって、笑みがこぼれる。

 なんてことない奇跡にあふれた世の中が、そこにあることに。

 その中のひとりであることが、妙に誇らしかった。


 用事を済ませ、帰り道。さあ、おうちに帰ろうか。

 夕暮れが世界を染める。また駅に向かう。

 心地よい疲れ、なんか充実感?

 悪くないね、こういう日々。

 行きに比べて、帰りは早い。もう駅に着いてしまった……。


   †


 がらんどうの駅構内。

 だあれもいない。

 財布から帰りの切符を取り出し、改札口へ。


 動かない電車に乗って、降りて、戻って……。


「あたりまえ」と印字された切符を、改札機に入れた。


   †


 くたびれた身体を引きずって、気付けば家に辿りつく。

 ああ、今日は本当に疲れた!

 なんか色々とあった気はするけれど、珍しいことでもないような気もした。

 繰り返されるだけの、当たり前の日々だ。

 夕飯を食べて、風呂に入る。寝るまでに、あとすこし。


 疲れと眠気がない交ぜになる時間。

 気に入りの1杯でリラックス、なんか幸福感?

 ありふれた1日がまた終わっていく。

 水底の(おり)のように降り積もっていく日々だ。

 歯を磨いて、あくびをひとつ。そろそろ寝るとしよう。


 明かりを消して、身を横たえる。

 おやすみなさい。また明日……。


   †


 そして、きっと明日も駅に行く。

 そこは、奇跡が当たり前になる、そんな場所だ。

最悪魔王「何を良い感じのラストにしているのだ!? かくなる上は――」

???「うわなにをするやめ(ry」

最悪魔王「くくく、ふふふ、はーっはっはっは! 残業続きの作者の精神など、乗っ取ることは容易いわっ!」

???「こ、この世は金が全て……?」


 次回、『それいけ!キャピタリズム号』敬老の日、休日を捧げよ!(びしっ ……とのことなので、なるべく近日更新したいと思います、はい。


 あとがき下のところから、評価を頂けると作者のテンションが爆上がります。よろしくね!^^

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ