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ネイのまごころ屋台  作者: もあいぬ
第六章:東の森
39/41

名もなき小劇場(3)

【ひがしのもり】

【しんこうど:2】

【じこく:ゆうがた】


黒髪の魔導士(ウィザード)少女:

(木の根元に座って、ぼおっとしている)


半人(ハーフリング)修道士(モンク)

「……お疲れですか?」


黒髪の魔導士少女:

「あ、いえ、大丈夫ですよ。……この前に行った小鬼(ゴブリン)退治のクエストの時は、クロムさんとランクさん森の中を駆けていくから、付いていくのに精一杯でしたけど。今回は、私にもまだ余裕がありますね。」


半人の修道士:

「今回は、調査が目的のクエストですからね。むしろ余裕を持って進まないとっ(話しながら少女の隣に座る)、意味がないですから。……(小声で)僕たちにうってつけのクエストですよね、大森林の深部まで進んで、何かおかしなことがないか調べる、だなんて。」


黒髪の魔導士少女:

「(小声で)ええ、うってつけすぎるくらいです。」


半人の修道士:

「これって『彼女』の意思なんでしょうか?」


黒髪の魔導士少女:

「どうでしょう……。彼女の、というよりは、世界の意志のように思えます。あの真銀(ミスリル)の海と、同じように。」


半人の修道士:

「なるほど。」


黒髪の魔導士少女:

「実際どうなのかは、わかんないですけどね。」


半人の修道士:

「……あの、もしよかったら、彼女の、というかその、『前世』のネイさんのこと、聞かせてもらえますか?」


黒髪の魔導士少女:

「ええ、いいですよー。何が聞きたいです?」


半人の修道士:

「(あ、そんなにあっさりなんだ……)そうですね、じゃあ、どんなところで生まれ育ったのか、聞きたいです。」


黒髪の魔導士少女:

「わかりました、そうですね(言葉を探す)……。私の町は、大きな港から山をひとつ越えたところにありました。港といっても軍港で、鉄の軍船がたくさんいます。砦くらい大きなものとか、海の中に潜れる船とか、色んなのが居ました。」


半人の修道士:

「へぇ。じゃ、ネイさん船旅は初めてじゃなかったんですね。道理でなんだか、馴染んでるような気がしましたよ。」


黒髪の魔導士少女:

「ふふ、ばれてましたか。……あとは、そうですねぇ、山の中に広い公園があって、小さな頃はよく祖母に連れられて遊んでました。花畑とか、大きなゴジ……んっと、(ドラゴン)(すべ)り台とかがあって。」


半人の修道士:

「え、ドラゴンも居るんです?」


黒髪の魔導士少女:

「いいえ、造り物ですよ。私の居た世界には、迷宮(ダンジョンズ)(ドラゴンズ)も、おとぎ話の中にしか居ませんでした。」


半人の修道士:

「ふうん……。あの、ネイさん。」


黒髪の魔導士少女:

「はい?」


半人の修道士:

「……戻りたい、とか、考えますか?」


黒髪の魔導士少女:

「え? あぁ、『前世』に戻りたいかってことですね? んー、どうかなぁ……。戻る、っていう発想が、そもそも無かったですねー。この世界は何もかもが新鮮で、知らないこと知りたいことが沢山あって。そりゃあ、不便なことも大変なことも沢山ありますけど、うん。」


半人の修道士:

「うん。」


黒髪の魔導士少女:

「まだまだ、この世界で冒険してたいですね。戻りたいとは、特に思わないです。」


半人の修道士:

「そうですか。……良かった。」


半人の修道士:

「(少し近付く)」


黒髪の魔導士少女:

「(驚く)」


半人の修道士:

「あなたのことを、もっと知りたいです。僕も、……僕もまだまだ、あなたのお側にいられたら、嬉しい、ですね。」


黒髪の魔導士少女:

「(少し離れる)んー、どうでしょうね? がっかりさせちゃうかもですよ、知ってみたら別に普通だったなぁ、って。」


半人の修道士:

「いえいえ。『凡庸(ぼんよう)で居られることの貴重さを心せよ』って、僕たちの信仰する神の教えにもあるんですよ、実際。」


* * *


老年の騎士:

「なぁ、あれってさ、あの二人。あれなの?」


赤毛のドワーフ娘:

「何よ、あれって。」


エルフの魔剣士:

「何でもないわよー。今はまだ。」


老年の騎士:

「ほーん。……まぁ、あれだな。青春だな。」


エルフの魔剣士:

(微笑む)


赤毛のドワーフ娘:

(顔を(しか)める)


老年の騎士:

「で、あんたらはどうなんだい。ずいぶん古馴染みなんだろ?」


赤毛のドワーフ娘:

「……はア?」


エルフの魔剣士:

「(大口を開けて、声を出さずに笑う)」


赤毛のドワーフ娘:

「うーわ。なにそれ。あたしら皆んなに、そんな目で見られてたの? うわ。気持ち悪。無理、無理。」


エルフの魔剣士:

「ふふーん。何でもないわよぅ、い・ま・は・ま・だ、ねー。(ドワーフ娘に手を伸ばす)」


赤毛のドワーフ娘:

「(無言でエルフの手を払い除ける)そんなんじゃないわよ、腐れ縁よ。ザイク、あんたが生まれるより百年も前から続いてるような、しつこい腐れ縁だよ。」


老年の騎士:

「そうかい、そうかい。俺ァてっきり、あんたら昔いい仲だったとか、そういうのかなって思ってたよ。」


赤毛のドワーフ娘:

「勘弁してよ……こんな優男なんかより、樽いっぱいの蒸溜酒(ウィスキー)と添い遂げるわよ、あたしは。」


エルフの魔剣士:

「この子、自分と同い歳のウィスキー樽もってはんねん。高山(ハイランド)に預けてんの。うち、昔ちょこっとだけ貰ってんけどな、ほんま絶品やねん。あぁ天国は此処(ここ)にあり、ってくらいの。」


老年の騎士:

「ふぅん……。(やっぱりこいつら、いい仲なんじゃねえのか?)」


* * *


小肥(こぶと)りの従者:

「夕餉の支度ができましたよー(すりこぎで鍋の裏を叩く)」














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