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ネイのまごころ屋台  作者: もあいぬ
第五章:銀砂の海
32/41

名もなき小劇場(2)

【みなみのしゅくばまち】

【やどや「はくろう」てい】

【じこく:ゆうがた】


黒髪の魔導士(ウィザード)少女:

(ベッドの中で目を閉じ、小さな寝息を立てている)


半人(ハーフリング)修道士(モンク)

(眠る少女の上にかざしていた手を、もとに戻す)


赤毛のドワーフ娘:

「どう、なにか分かったかい?」


半人の修道士:

「いえ……見た目どおりですね。ネイさん、今はただ、疲れて眠っているだけのようです」


エルフの魔剣士:

「うん。顔色も戻ってるし、脈も呼吸も平常どおりやね。魔力の流れも、おかしなとこはないみたい。まぁ、よかった、まずは心配は要らなさそうやねぇ」


赤毛のドワーフ娘:

「けど、ぶっ倒れたときのあの様子は、ちょっと普通じゃなかったよね?」


エルフの魔剣士:

「うーん……。ネイちゃんって無茶な魔法の使い方するから、わりとしょっちゅう魔力切れでへばってはるけど。今回のは確かに、今までのとは違うてたわね」


半人の修道士:

「オッペさんの講義の途中から、ネイさん何だか様子が変だったんですよ。見えない何かがいるみたいに隣の席を振り返ったり、何か(つぶや)いたり」


赤毛のドワーフ娘:

「そうそう。そのあとすぐ、この子まっさおな顔して、椅子から滑り落ちてったんだよね」


半人の修道士:

「……あのー、異邦人(エイリアン)って、彼女にとって何なんでしょう、知ってますか?」


赤毛のドワーフ娘:

「それがねぇ、内緒なんだって。あたしにも教えてくれないのよ」


エルフの魔剣士:

「(何か考え込んでいる)」


赤毛のドワーフ娘:

「ランク。あんた、なんか知ってんでしょ?」


エルフの魔剣士:

「ふふん。ひみつー」


赤毛のドワーフ娘:

「ふん……。まぁ、いいんだけどさ。秘密のひとつやふたつ、誰にでもあるよね」


黒髪の魔導士少女:

「クロムさん」


赤毛のドワーフ娘:

「あ! ネイ、起きたの? ……大丈夫?」


黒髪の魔導士少女:

「ランクさん」


エルフの魔剣士:

「はいな」


黒髪の魔導士少女:

「フオコさん」


半人の修道士:

「え、はいっ、ここにいますよ」


黒髪の魔導士少女:

(ぼんやりとした表情のまま、のっそりとベッドの上に半身を起こす)


半人の修道士:

「……ええと、ネイさん? ご気分、いかがですか?」


黒髪の魔導士少女:

「ネイ……。私、は、モージとララの子、ネイ。……です、よ、ね?」


エルフの魔剣士:

「せやで。あんたはんは、剣士モージと魔導士ララの子、まごころ屋台のネイちゃんや。間違いあらへんよ」


黒髪の魔導士少女:

(大きく息をつく)


エルフの魔剣士:

「(小さく笑って)どしたん、まだ寝ぼけてるん?」


黒髪の魔導士少女:

「ランクさん、あの。■■ ■■、って、聞き覚えありませんか?」


エルフの魔剣士:

「……ほへ? ごめんちょっと、よう聞こえんかってんけど……っと、って、え、いやいや、ちょい待ち! ネイちゃん、それって、あんまし口にせんほうがええやつやないのん?」


黒髪の魔導士少女:

「……はい、そういうやつ、かもしれないです」


エルフの魔剣士:

「ふぅん……。うち、むかし聞いたことあるわ。無理に分かろうとしたら頭おかしぃなる言葉っていうのがあるんやって。異邦人とか魔神とか御使いとか、その手の外なる者たち(アウター・ワンズ)の使う言葉なんやとか。そういうもんには、深入りせんほうがええんや、って」


黒髪の魔導士少女:

「……そう、ですよね……。(黙り込む)」


エルフの魔剣士:

「……ネイちゃん?」


黒髪の魔導士少女:

「ごめんなさい、皆さん。ここから先はもう、私ひとりで進んだほうが、いいんだと思います。これは、私が想像していたよりも、ずっと危険なクエストになりそうですから」


赤毛のドワーフ娘:

「え、嫌だけど」


黒髪の魔導士少女:

「えっ」


赤毛のドワーフ娘:

「危険だから止めておけ? それ、冒険者には(あお)り文句よ? あたしは、あなたと一緒に行くよ。ドワーフのご先祖さまの関わる話でもあるみたいだしね、もう他人事(ひとごと)じゃないわよ」


黒髪の魔導士少女:

「でも、私じゃ何の報酬も出せないですし、それに、ええと、たぶんきっとほんとに危険ですよ? あの、ランクさん、そうですよね? 深入りしないほうがいい、って」


エルフの魔剣士:

「うん、わくわくするねぇ。うちにも付き合わせてぇな、ネイちゃん。そういうのんこそ、冒険者冥利(みょうり)に尽きるっちゅうもんやわ。あぁー、退屈さに耐えかねて里を飛び出したウン百年前のあの日のわくわくを思い出すわぁ。あの頃うちは、まだ若かった……」


黒髪の魔導士少女:

「えっ」


半人の修道士:

「僕もご一緒させてください、ネイさん。あなたのクエストに同行できることだけでも、僕への報酬としては充分です」


赤毛のドワーフ娘:

(あぁそうか、こいつ、そういう理由か)(微怒)


エルフの魔剣士:

(あぁやっぱり、そういう理由なんやね)(微笑)


黒髪の魔導士少女:

「皆さん……。(涙ぐむ)ありがとうございます。私、異邦人の居るという東の森に行きたいです。皆さんと、ご一緒に」


半人の修道士:

「(にっこり)じゃ、北回り航路が通常コースでしょうね。最近の航路の様子、今からギルドで聞いてきますよ、僕」


エルフの魔剣士:

「ほな、うちも今から、オッペともう少し話してくるわ。聞き足りへんこともあったし」


赤毛のドワーフ娘:

「あたしは残るわ。ネイ、まだ本調子じゃないだろ? お腹すいてない? 何か食べるもの(もら)ってこようか?」


黒髪の魔導士少女:

「あ、はい、言われてみたら、おなか空いてきました。パンとスープ少しあると嬉しいです。……大丈夫ですよ、どこも怪我してないんですし、食堂まで自分で歩けますよ」


赤毛のドワーフ娘:

「あのね……。ネイ、あなた、まる三日間ずっと眠ってたのよ?」


黒髪の魔導士少女:

「……えっ」


赤毛のドワーフ娘:

「いーから休んどきな、パンとスープね? 持ってきたげるわ」


半人の修道士・エルフの魔剣士・赤毛のドワーフ娘:

(連れ立って部屋の外に出ていく)


黒髪の魔導士少女:

「……。」


黒髪の魔導士少女:

「まる三日? あぅぅ、皆さんには迷惑かけっぱなしですね……。」


黒髪の魔導士少女:

「……■■。……うーん。書き留めとくのも、やめといたほうがいいんでしょうかね、これって……。あとでランクさんに聞いてみましょうか」


赤毛のドワーフ娘:

「(片手でドアを開ける。もう片手には山盛りの皿とカップふたつを載せた盆)チーズもあったよー、あと蜂蜜いれた薬草茶、これあなた好きだったわよね?」


黒髪の魔導士少女:

「わぁ! ありがとうございます!」


赤毛のドワーフ娘:

「ふふ、良かったわ。食欲あるならまぁ、大丈夫だわね(ベッドの上に盆を置き、自分のぶんのカップに口をつける)」

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