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ネイのまごころ屋台  作者: もあいぬ
第二章:疑心のエルフ
10/41

名もなき小劇場

【へんきょう の まち】

【ぼうけんしゃギルド】

【じこく:あさ】


土精(ノーム)の受付嬢:

「(溜め息)」


老年の騎士:

「どうしたい、浮かない顔して。」


半人(ハーフリング)修道士(モンク)

「クロムさんが冒険団(パーティ)を組んだのが、気に入らないみたいですよ。」


土精の受付嬢:

「いえ、気に入るとか入らないとか、そんなんじゃないです。はぁ(溜め息)。」


老年の騎士:

「ほぅ、なるほど、あこがれの赤毛(クロム)ちゃんを横取りされちまって御冠(おかんむり)ってぇ訳かい。」


半人の修道士:

「そうそう。これまでみたいにクロムさんが単独行(ソロ)なら、受付担当と冒険者とは一対一の親密な関係、ですからねー。」


土精の受付嬢:

「ちーがーいーまーすー。パーティの構成がアンバランスで、あれじゃ足手まといになって戦力ダウンじゃないかって、それを心配してるだけですー。」


老年の騎士:

「赤毛のドワーフ娘と、黒髪の()っちゃいのと、だろ? 面白(おもしれ)ぇ組み合わせだよな、あれ。」


半人の修道士:

「あの子じたいも面白いですよ、お悩み相談の屋台やってるんです。」


老年の騎士:

「なんだいそれ。(つじ)占いみたいなもんかね。」


半人の修道士:

「どちらかというと、教会の告白室コンフェッション・ルームに似てるようです。秘密厳守で悩みを聞いてくれて、追加料金で精神魔法を掛けてもらえる。」


老年の騎士:

「へぇ。教会は敷居が高いと思うような連中なら、そっちのほうが気軽なのかもなぁ。(土精の受付嬢に向かって)じゃあ、悩めるノームの嬢ちゃんも、お話を聞いてもらっちゃあどうかね?」


土精の受付嬢:

「もう、だから違いますって。クエストの依頼を(さば)く当方の立場としましては、ですね、冒険者(こうせいいん)の方々の戦力強化も、大事な(つと)めのひとつなんです。貴重な戦力が足手まといを抱えてるのは、困るでしょう?」


老年の騎士:

「若手の育成、って考えても、いいんじゃねぇの? 誰しも始めは若造なんだ。ベテランと組むのは悪くない、長い目で見りゃ、ちゃんと戦力強化になるだろうに。」


土精の受付嬢:

「それは、そうですけどね。できれば今ほしいんですよ、荒事(あらごと)を任せられる戦力が。」


老年の騎士:

「えっ、それ、さっきの話に繋がるのかよ? いや、いくら屠竜経験者(ドラゴン・スレイヤー)だっつったって、ありゃあ単独(ソロ)じゃ厳しいだろう、そもそも。」


半人の修道士:

「ぼくたちが戻るのを待てないんです? ひと月もかからないと思いますけど。」


土精の受付嬢:

「やっぱり、それしかないでしょうかね……。ただでさえ遅れてしまった案件(クエスト)だから、なるべく早く片付けたいんですよね、なにか目に見える被害の出ないうちに。」


()(ぶと)りの従者:

「(入り口から首を突っ込み、声をかける)旦那様、そろそろ出発なさいませんと。(半人の修道士に向けて)ヒギンズ様も、お早く。(顔を引っ込める)」


半人の修道士:

「あ、はーい。……ま、いま町には他にも冒険者がいるでしょ? 即席でパーティに追加のメンバー入れてもらうとか、クロムさんに頼んでみたらどうです? じゃ、ほら行きましょ騎士さま、遅れますよ。(退出する)」


老年の騎士:

「すまんの嬢ちゃん、またな。ご両人の幸せを祈っとるよ。」


土精の受付嬢:

「怒りますよ!」


老年の騎士:

「(笑い)(後ろ手に手を挙げて挨拶をし、退出する)」


土精の受付嬢:

「もう。」


土精の受付嬢:

「(独り言を(つぶや)く)いーじゃないですか別に、あこがれても。クロムお姉さま、すっごく素敵ですもの。」


土精の受付嬢:

「(どこか遠くを見ている)(りん)とされてて。めっぽう強くて。でも時折(ときおり)かいま見せる(さみ)しげな表情。そして、あの低い甘い声(ハニーボイス)……。」


赤毛のドワーフ娘:

「(ずかずかと入ってくる)よう、さっきそこで騎士さまとすれ違ったよ、受付嬢によろしく言っといてくれとさ。」


土精の受付嬢:

「はにゃあぁっ?!」


赤毛のドワーフ娘:

「……?」


土精の受付嬢:

「あ、うぇ、え、いえ、えと、失礼。……こほん。」


赤毛のドワーフ娘:

「なんか、取り込み中だった? 出直そうか?」


土精の受付嬢:

「いーえぇ、とんでもない、丁度(ちょうど)ご相談したいことがあったんです、ご本人が急においでたものだから、わたくし申し訳ございません吃驚(びっくり)しちゃって(笑い)」


黒髪の魔導師(ウィザード)少女:

(後ろから二人の様子を見ている)


エルフの魔剣士:

「(するっと入ってくる)まいどー。あらー、クロムちゃーん! ネイちゃーん! おはようさんですー。」


赤毛のドワーフ娘:

「げ。」


黒髪の魔導師少女:

「あっ。先日はありがとうございました。」


エルフの魔剣士:

「いいえーこちらこそー、って、いやんネイちゃん、早速その小剣()使(つこ)うてくれてるんやー。うち、嬉しいわぁ。」


黒髪の魔導師少女:

「恐縮です、すいません、結局いただいてしまって。この剣に見合うよう、努力します。」


土精の受付嬢:

「(なにか考えている)めいっぱい魔力付与済み(エンチャンテッド)の、エルフ造りの(エルヴィッシュ)直刀小剣(ショートソード)、しかも真銀製(ミスリルメイド)。それ、ランクさんのですよね?」


エルフの魔剣士:

「あら、受付嬢(サッファ)ちゃん、さすがお目が高い。うん、うちがプレゼントしてん。お悩み相談のお礼。」


黒髪の魔導師少女:

「釣り合わないと、お断りしようとしたんですが……」


エルフの魔剣士:

「(割り込んで)なーに言うてんのん、神業(かみわざ)やったで、ネイちゃん。百年来の悩みが、吃驚(びっくり)するほどすっきりしたわよ。うちにしたら、それでも足りひん(たりない)て思うくらいや。大丈夫よ、あんたはん剣も筋がええから、すぐに使いこなせるよ。」


赤毛のドワーフ娘:

「エルフの言葉には気を付けなよネイ、エルフの『すぐに』は只人(ヒューマン)の一生、っていうからね。まぁ、けど、似合ってるよそれ、本当(ほんと)に。」


黒髪の魔導師少女:

「ありがとうございます、そう言って頂けると嬉しいです。」


土精の受付嬢:

「お三方、ずいぶん仲良くなられたんですね。」


エルフの魔剣士:

「うん!(いい笑顔)」


赤毛のドワーフ娘:

「(エルフの魔剣士を見て、少し顔をしかめる)」


黒髪の魔導師少女:

「えぇ、おかげさまで、仲良くさせてもらってます。」


赤毛のドワーフ娘:

「(土精の受付嬢に向かって)それで、あたしに相談って、何?」


土精の受付嬢:

「ええ、クロムさん。それに、ランクさん、ネイさんも。ちょっと、一緒に話を聞いていただけませんか?」


【あたらしいクエストがあります▼】

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