86.間を取って、そしてどうしてこうなった!?
お待たせしました。
86話目です。
すいません、いつもよりちょっと短めです。
ではどうぞ。
「うぃっす! ソルア、リーユ!」
二人のただならぬ様子を見て、心配させまいと即座に体へ喝を入れる。
今すぐにでも眠りたいと訴える脳を、全身を。
無理矢理にでも叩き起こした。
「どうした、そんな深刻そうな顔して」
「……ご主人様。とても、お体が優れないご様子に見えます」
しかしソルアは表情を崩さず。
むしろ更に険しい顔をして俺のことを心配してくれる。
リーユも同じく。
口には出さないものの、首を何度も強く縦に振り。
ソルアへ同意を示し、瞳を潤ませてまで身を案じてくれていた。
「……い、いやぁ、その、あれだ。一人であまりにも暇過ぎてさ、ごっこ遊びしてたんだ!」
クッ、そんな顔をさせたいわけじゃないのに……。
……あれか、陽キャ力が足りないのか。
物語の主人公とかなら、ナデポ・ニコポで一発解決なんだろう。
……いや。
俺も闇落ちしたとはいえ、さっきは陽キャお兄さんで通してたんだ。
「……ごっこ遊び、です?」
ソルアは変わらないものの、半信半疑ながらリーユが釣れた。
――行ける!
集中して、イメージをこれでもかと膨らませていく。
……俺は陽キャ。
フェスで踊り狂う男!
そして、キングオブ“わら”の名を我が物にする男!
「テンション爆上げで行こうぜぇ~! お姉さんたちぃ~、ス〇バのフラペチーノ追加でぇ~!」
「…………」
「……ど、どうしましょうソルアさん!? 主さん、やっぱり疲れでおかしくなっちゃってるです!!」
――ダメだったぁぁぁ!!
えぇ~陽キャってあんな感じじゃないの?
〇タバでガブガブと甘いカフェラテ飲んでるイメージなんだけど。
ちなみに久代さんとかも勝手に常連だと思ってるが、言ったら何故か半殺しにされそうなので黙っておこう……。
「――すいません、新しいスキルの実験してたらとても疲れてしまいました」
これ以上の誤魔化しはむしろ状況を悪化させるだけだと判断。
二人へ素直に説明することに。
……リーユには“疲れでおかしくなった”とまで言われちゃってるしね。
「そうでしたか……――あっ、ではむしろお休みなさるところを邪魔してしまいましたか?」
邪魔された、とは全く思ってないけど。
でもタイミングとしては、ソルアがそう受け取ったとしてもおかしくないか。
今度はソルアが。
眉根を下げ申し訳なさそうに、それでいて今にも泣きそうな表情になってしまう。
むぅ……仕方ない。
「いや、ちょうど良かった! 誰か来てくれないかって思ってたところ、ナイスタイミング――」
努めて明るく振る舞いつつ、再び寝袋へ向かう。
今度はしっかりとジッパーを開けて中へ入り、そうしてうつ伏せになってから二人へ告げた。
「スキルのせいで特に体の疲労感が半端なくてさ。マッサージ、頼んでもいいか?」
□◆□◆ ◇■◇■ ■◇■◇ ◆□◆□
「んしょっ、んしょっ……」
「いかがですか、ご主人様。加減の方は大丈夫でしょうか?」
笑顔で提案を受け入れてくれた二人は、献身的に俺の体へマッサージを施してくれていた。
リーユは脚を中心とした下半身を。
ソルアは腕や背中などの上半身を担当してくれている。
してくれている、のだが……。
「う、うん……えっと、良い感じ、だよ?」
新たな状況に頭を混乱させつつも。
ソルアの太ももと太ももの間から返事をする。
――そう、今ソルアの膝枕に、なんとうつ伏せで顔を突っ込んでいる体勢なのである!
「そうですか、良かった……よいしょ、んっ――」
頭上から降ってくるソルアの一所懸命な声。
それに合わせて肩甲骨辺りが、柔らかな手で揉み解されているのを感じた。
……そして体がズレ落ちるのを防ぐため、両手は掴むように、ソルアの至高の太ももへと置かれている。
膝上までを覆うサラサラした長いソックス。
その先で露になっている、柔らく温かな素肌。
それらが直に掌へと伝わってきて……。
余計に今すぐにでも手を放して頭を抱えたくなる。
「…………」
伸ばせばソルアのタイトなミニスカート、そしてその先の桃源郷へと容易に辿り着いてしまう。
白い紐で編まれた布にシュートしてしまわぬよう、左手ならぬ両手は太ももに添えるだけ、である。
……いや、何言ってんだ俺は?
疲労感ももちろんあったが。
それをまるで狙い撃って溶かすよう、俺のためを思ってマッサージしてくれているのが伝わってきて。
全てを二人に任せてしまいたくなる心地よさがあり、思考も一緒に溶けて手放されようとしているみたいだった。
「――んしょっ、んしょっ……主、さん。一杯、一杯、気持ちよくなって、ください!」
ソルアだけでなく。
この状況を作り上げているもう一人、リーユも健気に頑張ってくれていた。
「えーっと、リーユさん? あんまり動かれると、その、“真下にいる”俺がちょっと、あれと言いますか――」
だがソルアの脚に挟まれ声が下へとくぐもったためか。
残念ながら、俺の言葉は寝袋内にいるリーユには届かず。
――そう、リーユさん。通常は一人用の寝袋に俺と一緒に入って、“直に”俺の体を触っているのだ!
……何でこんなことになってんだ。
君は“マッサージしないと出られない寝袋”にでも潜ってるの?
「――あっ、んんっ! ……あの、ご主人様? その、横を向かれると、脚が、その、くすぐったいですので……」
すいません!
横を向いてもう一度声をかけようとしたために、息が太ももにかかってしまったらしい。
ソルアさんにグッと来るような声で、じっとしてろとお願いされた。
店員さん、ここって健全なことしかないマッサージ店で合ってますよね?
「よいしょ、んしょ――」
……とはいえ、やはり二人が純粋な気持ちで頑張ってくれているのは、しっかりとこちらにも伝わって来た。
だからこそ無下にし辛いというか、途中で遮り辛いのもあるんだけど。
癒しの力に秀でるリーユは特に、直に体へ触れることに意味があるらしい。
脚にある凝り固まった疲労が、リーユの触れる先からジワーっと溶けて消えていく感じがした。
「リーユ、苦しくないか? 脚側もジッパー開けてるとはいえ、息し辛かったら無理せず出てくるんだぞ?」
今度はソルアの脚に当たらぬよう注意し。
顔は動かさず、気持ち大き目にして声をかける。
「あっ、はい、大丈夫、です! ……でも出る時、その、主さんに色々、当たったらすみません」
配慮したこともあり今回はちゃんと聞こえたらしく、返事があった。
恥ずかしそうにちょっと曖昧な言い方をしているが、何を言いたいのかは……うん、分かるよ?
……これ本当、色んな意味でうつ伏せでよかったよ。
「…………」
――いや、そもそも俺が最初から寝袋に入らず頼めば、もうちょっとマシな状況になっていたのでは?
マッサージを頼むのだから。
男に直接触らない方が、女性としては気が楽かなという配慮だったんだが……。
疲れの多くがようやく抜け、頭も次第にクリアになって来て。
疲労で思考に霞がかった自分のダメさ加減に、やはり頭を抱えたくなったのだった。
タイトなミニスカ美少女にドエッチ太ももを枕にしてもらって、なおかつ別のビキニアーマー美少女に狭い寝袋で密着されたい人生だった……(灰)
すいません、短めで。
最初からイチャイチャ回と決めていたのもあり、あまり話を進める気になれず。
明日、というか今日?もまた1話、多分頑張って書くので勘弁してください。
話は変わりますが、ブックマークが確認した段階で9000件を突破しました。
大台の10000件まで、とうとう残り1000件ですね。
更新、頑張ります!
感想も、日々とても嬉しい内容を送っていただき、本当にありがとうございます。
ブックマークや評価など、数字上の増加ももちろんですが。
感想やいいねなどの反応も、確実に執筆のための原動力になっております。
今後とも当作品をよろしくお願いいたします。




