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81.致命的な嘘、招くは混乱、そしてリーダーお一人様ご案内!

お久しぶりです。


……こそっと投稿しておきますね。


※自分の記憶喚起もかねたここまでのおさらい


3日目

ショッピングモールであるワールドクエストに挑もう!

赤いクモが弱点らしいよ!

効果的に倒していくために、新しい仮拠点が欲しいな!

でも敷地内のホームセンター、不良君たちが占拠しちゃってるみたい、どうしよう!

何とかして出て行ってくれないかな!(←今ここ)


「あっ、なるほど。他にも君たちの仲間がいるのかい? 生き残りが一人でも多くいるというのは何よりだね!」



 良い感じのお兄さんっぽく会話を続けながらも、慎重に【操作魔法】を使っていく。

 狙うはサダ君・クニ君、二人の死角にある品々。 


 園芸コーナー、未だ破損せず残っていた大きな鉢植えや、ビニールの米袋みたいに包装されている土や肥料だ。 


 ……おうふっ。

【操作魔法】も魔力値も当初より上がったとはいえ、20Lは流石にズシリと来るな。



「……ああ。今は別行動をとってる。外にいるモンスターの監視もしないとだからな」



 もっともらしいこと言ってるけど、サダ君、早速嘘ですか。


 親切な陽キャのお兄さんは、とてもショックです。

 嘘吐かれたショックで闇落ちしますね。

 

 俺はもちろん、残りの3人がホームセンター内にいるということを知っている。

 というか、現在進行形でファムの視界に映ってるし。



 ……まあ、こっちも全部が全部嘘だから別にいいけどね。



「そっか。……まあなんだ、お互い交換し合いたい情報も沢山あるだろう。こんなところで立ち話もあれだし、奥へ行こうか」



 そう言って、残り3人や拘束された人たちがいるであろう方へ向かう仕草を見せる。

 すると、二人は慌てたように目を見張り、俺の前へ立ちふさがった。



「い、いや! ここで話そう」


「あ、ああそうだぜ! 奥なんて行かなくても、全部ここで話せんだろう!」



 普段はやんちゃしてても、やっぱり若さというか、アドリブ力・経験の無さというか……。


 こんなあからさまな態度が出ちゃうって。

 奥に行かれては困りますよと言ってるようなもんだ。


 だが俺への警戒心・意識が更に強まったのはちょうどいい。

 ファムと共有している視界でも、不良3人が下を、拘束された人たちを見ている光景が映った。


 仕掛けを進めるタイミングは今だと、浮かしていた鉢植えや土などを一気に上昇させる。



「えっ? いや、まあそうだけど。……奥に、何かあるのかい?」


  

 奥には10人以上の拘束された人、そして実行犯の仲間がいますもんね!

 そりゃ俺をここにとどめたいだろうさ。


 二人の様子を窺う仕草をしつつ、ファムの視界では着々と【操作魔法】を続けていた。

 鉢植えや肥料などが天井付近まで到達したことを確認。

 他のホームセンターと比べて高めの天井は、重い物や割れ物を上昇させて落とすための空間としてうってつけである。

 

    

 ファムのおかげで、俺の肉眼を動かすことなく作業を進めることができた。

 視線の動きで相手の意図とか思惑が分かるってことはよくあるしね、本当助かる。



「え、えーっと……あっ、そうそう! 倒したモンスターの死体があるんだよ!」



 クニ君が、まるで妙案を思いついたとでも言いたげに告げてくる。



「結構ボコボコにしたし、腹もかっ(さば)いてるから、汚くてグロいぜ? 誰かに見せるもんじゃねえんだよ!」



 思いついた自分はもしや天才なのでは、と思っていそうなハイテンションさ。

 リーダーに怒られて、さっきまで青い顔してたくせに。 


 まだサダ君の方が嘘つきの才能はあるだろう。

 可能性としては有り得るかも、と思わせる内容だったし。

 

 はぁぁ……。

 君がリーダーから信頼されない根本の理由、本当、そういう雑なところだよ多分?



「モンスターの、死体? ――この【異世界ゲーム】で、モンスターの死体って、残るの?」



 俺の指摘で二人の、特にクニ君の表情が(ゆが)む。

 ピシリと、この場の空気に亀裂が入ったような気がした。

 


□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「……さっきから様子が変だよね? もしかして、何か隠してないかい?」



 友好的な雰囲気から一変。

 今の嘘で疑念を抱いたというような、そんな表情で二人を追及する。


 もちろん、俺は全部知ってるけどね。

 

 君らが【施設】利用者を割り出して殺そうとしていることも。

 場合によっては、俺を殺してもいいという指示を受けていることも。



「そ、それは……」


「…………」 



 で、当然ながら彼らは“俺が知っている”ということを知らない。

 必死になって奥にある光景を、状況を、俺から遠ざけたいと思っている。


 当初は俺から外の情報を聞き出すことが目的だったはずが、今では尋問役が逆転しているのだ。

 そして俺は、別に君らから奥に何があるか聞き出したいわけじゃない。



 ――欲しいのは“混乱”だ。



「“嘘は真実の中に紛れ込ませる物”……。モンスターを殺して死体――はっ、まさか!!」



 それらしい格言っぽいことを独り言で口にした後、何かに気づいたというように目を見開く。


  

「君ら、殺したのか!? 人を、生存者(サバイバー)を! その死体があるんだろ、なぁっ!!」



 どこかの眠りの名探偵のように。

 的外れのようでいて、どこかかすってもいて。

 

 そんな推理をあたかも真実だと確信したように、断言して責め立てる。


  

「なっ、ち、違っ」


「んなっ!? し、知らねぇってそんなこと!」



 そう、まだ違うのだ。

 でもこれから殺そうとしているのだし、完全に間違いでもない。

 

 だからどう否定すれば、何をどのように訂正すれば誤解が解け状況が改善するのか。

 二人は分からず。


 見るからにその表情を混乱・焦りで満たしていた。



 よし、今だっ!



「じゃあその焦ったような態度は何だ! 俺の言うことが正しいから――」



 言葉が中断されるようなタイミングで。

 維持し続けていた【操作魔法】を打ち切る。


 天井まで上がっていた20Lの土、肥料。

 そして30㎝を超える素焼きの鉢が、重力に従って落下してくる。



 ――真下にいる、俺に向けて。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「っ!!」



 ふと何かに気づいたというように、とっさに顔を上げた。

 直ぐ近く、頭上にまで迫っていた落下物を、前転するようにして回避。


 ……っぶねぇ。


 自分でやっておきながら、結構ギリギリのタイミング。

 転がった真後ろで、土や植木鉢が床に衝突する激しい音がした。


 ファムの視点って真上から見下ろす感じだから、落ちてくる物と俺との距離はあんまり測れないんだよなぁ……。



『!? 凄い音、しましたね、千種(ちぐさ)さん。サダとクニの奴ら、大丈夫かな?』


『…………』



 ファムからもたらされる映像。

 あちらにいるリーダーも、流石に今の音は気になったようだ。

 床に転がされた人たちから視線を切り、音がした方へと体ごと向ける。


 ……気にしてもらえるよう特に割れ物の鉢を選んだので、その反応は嬉しい限りだ。



 さて。

 ソルア達が動きやすいよう、こっちに来てもらおうか――



「――っ! やっぱり俺の言った通りなんじゃないか! それがバレそうになって、俺を殺そうとしたんだろ! 死人に口なしってか!?」 



 できるだけヒステリックに。

 自分たちでは話が中々通じない相手だと思ってもらえるように。

 怒りの激情があちらにちゃんと届くように。


 大学入って一番くらいの大声で叫ぶ。


 ……やっべ、喉しんど痛いぃぃ。

 ボッチは声を張っての日常会話はもちろん、一人カラオケとかも全くしないからね、うん。

  

 リーユさぁーん、早速癒して欲しいんですがぁ!  

 今からでも入れるリーユ保険ってありますかねぇ!?


  

「なっ、だから何度も言ってるだろ! 今のだって、俺たちは何も知らない!」



 リーダーからの信頼厚いサダ君が、必死に無罪を訴えてくる。

 うんうん、俺もそう思ってるよ。

     

 ……でも、君らが細かくされた指示に、こんな状況は全くなかったでしょ?

 な、さっさと諦めてリーダー呼んじまいなよYou!

  


『凄い揉めてるな……。サダたちの方から何か仕掛けたんすかね? 相手、大分怒ってるみたいですけど』


『……チッ。――おい、こいつらを見てろ。俺もあっちに行ってくる』


『えっ? あっ、わ、分かりました千種さん!』

   


 リーダーの男、千種が苛立たし気に重い腰を上げた。

 残りの二人に拘束した人たちの監視を命じ、ゆっくりとこちらへ向かってくる。


 それをファムの目を通して確認し、思わず心の中でガッツポーズした。

 っし!



 そりゃそうだよね。

 自分が出した指示に、不良達(ふたり)から攻撃を仕掛けた場合なんてなかったもんね。


 なのに耳に届いてくるのは、サダ君かクニ君のどっちかがどうもやらかした感ある内容だ。

 自分(リーダー)じゃないとダメそうだって、早々に判断してくれて助かるよ。


 即決即断、上に立つ者にとって非常に重要な能力だ。

 君への危険度評価も、ちゃんと上げとくから安心してね!



『……クソがっ。面倒事を持ち込みやがって』


 

 独り言を呟きながらも、リーダーの脚はしっかりこちらへ向かって動いている。

 再度それを確認してから、ようやくファムに新たな任務を指示した。



 ――ファム、ソルア達に突入の合図を頼む!



《んっ、了解! ご主人も気を付けてね!》 



 ファムは軽快な動きで、ソルア達が待機している場所へと飛んで行った。


 これで、一時的にホームセンター内の全体状況を把握できなくなるが、それでいい。



『――あっ、ファムが来ましたよ!』


『ファムさんが、手を、こう、激しく上下にしていますね!』


『これは……マスターから“突入”の合図!』



 良かった、皆にもちゃんと伝わってるようだ。


 俺の役目は人数比の逆転。

 拘束された人たちの監視人数がこれで3人から2人に。

 

 そして一番厄介だろうリーダーを監視から引きはがし、こちらへと誘導できたのだ。

 それだけで別動隊であるソルアや久代さんたちはグッと動きやすくなるはず。

      

 後は拘束されている人々を解放できれば、不良君達の目的は完全に潰せる。



 さあ、こっちは早くワールドクエストの続きに取り掛かりたいんだ。

 とっととホームセンターから退場してもらおうか。




大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

年も明けて、既に2月が目と鼻の先まで迫っちゃってますねぇ。


これまで何してたかなどの詳しいことは、余裕があれば夜にでも活動報告に書くかもしれません。

また、設定を思い出しながらの遅筆ですのでペースは上がらないと思いますが、ゆっくりまた投稿していきたいと思います。


返信などはしておりませんでしたが、作品の続きを待っていて下さるお声を未だにいただけたことが間違いなく再び執筆、そして投稿を頑張ろうと思える動力源となりました。

本当にありがとうございました。


今後ともよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] キターーー! 投稿お疲れ様です! 待ってました! ありがとうございますm(_ _)m [一言] ハーレム主人公のボッチとは!?|_ ̄))ジー
[一言] 何はともあれおかえりなさい。 続きめちゃくちゃ気になっていたので良かったです。
[一言] お待ちしておりました! 更新ありがとうございます!
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