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63.ホテルで一息……!? 新たな称号と貯まるIsekai、そして【パーティー】と認識のズレ

63話目です。


ではどうぞ。




「えーっと……鍵は、っと――おっ、これか」



 フロント、受付内部に入る。

 モニター画面の破壊されたパソコンが先ず見えた。


 その横、いくつもの四角い穴でできた入れ物。

 そこに、部屋のキーがまとめて保管されていた。


 ……ラブホの部屋の鍵って、こんな感じで置かれてるんだな。



「よいしょっと――ほいっ」 



 人数分の鍵を手に取り、戻る。

 一人一人に手渡そうとすると、全員から微妙な表情が返って来た。


 ……何で?



「あの、一緒の部屋ではないんですか?」


「そうそう。私も、マスターと一緒の部屋で良いんだけど」


 

 いや、ソルアさん、アトリさん。

 ここ、ラブホっすよ?


 流石にネットカフェと同じようにはいかんでしょう……。


 

「とりあえず、先に移動してから決めませんか? ……多分エレベーターは使えないでしょうから」 

    

 早々に話し合いが決着しないと感じたのか。

 水間さんが間を取り持つように言ってゆっくりと歩き出した。


 確かにと納得し、念のため先行してエレベーターを確認する。



「……うん、階段だな」



 ボタンを押してもうんともすんとも言わない。

 そもそも照明だってついてないんだ。

 

 電気系統はどれもダメだろう。



「よいしょっと――」



 無心で階段を上がっていく。

 部屋と部屋との間隔も広いので、4階に上がってからも少しだけ歩いた。

 

 鍵の後ろ、アクリル樹脂でできた直方体部分の部屋番号と見比べる。

 ……ここか。



「ゴクッ……」


「わ、私、こういうところ、男の人と来るの、初めて……」



 鍵穴に差し込みガチャリと回す。

 その間にも後ろの外野が、それぞれにそれぞれのリアクションを示していた。

 

 ……いや、久代さん、生唾飲み込まないで。

 こっちまで緊張するから。

 

 

 それに来宮さんもそういう事呟かない!

 


「なるほど……つまり、(はるか)さんの初めての相手はお兄さん、ということですね?」


「わっ、わっ!? か、(かなで)ちゃん!? あっ、いや、そうじゃなくてね!? 滝深さんとは――」



 水間さんがニヤニヤ顔で言ってくる。

 ほら~。


 ってか、君本当に中学生? 

 オッサンレベルで下ネタ大好きじゃん。



「うわぁ~! 素敵なお部屋ですね!」



 部屋に入ると、女性陣から似たような感嘆の声が漏れる。

 電気がついていないため薄暗さはあるものの、休憩場所として一時的に使う分には支障なさそうだ。

  


「……あら? これは何かしら。――ハルカ。これって何なのかわかる?」


「あっ、アトリちゃん!? え、えーっと……」



 室内を物色してアトリが見つけた物に、来宮さんは顔を真っ赤にして動揺しまくっていた。

 ……こういうホテルにあるものだから、そりゃぁ、えっちぃことにも使われうる道具だと思う。

 

 だが恥ずかしさや羞恥心もある一方で、来宮さんもなんだかんだ興味自体はあるのか。

 視線を逸らすフリして、チラチラとその“物”を見ていた。


 持ち手が円錐(えんすい)・コーンのようになっていて、スイッチのON・OFFを入れる部分がある。

 そして先端はマイクのような丸形になっていて――



「――アトリさん。それはマッサージ機よ。でも残念ながら“電動”だから。電気が使えない以上は出番はないと思うわ」



 久代さんが見かねたように助け船を出していた。

 ……おぉ。


 ということは来宮さんはもちろんだが、久代さんもこれが何かはちゃんと知ってるんですね。

 ……へぇ~。 



「……何?」


「いや、何にも?」



 本当、何でもないですから。

 そんなぐぬぬと言いた気な目で睨んでこないで!



 久代さんが大人な知識をお持ちだと知ったのと引き換えに。

 しばらく久代さんからの視線を浴び続けることになったのだった。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「さて――」



 女性陣が出て行って、ようやく人心地付ける。

 別の部屋から戻ってくる前にやることやっておこう。



 ……いや、水間さんの言うようなえっちいことじゃないから。


 

「GRLLLL……」



 お~よしよし。

 フォンも、慣れない中よく頑張ってたな。

 今の内に休んどいてくれ。



「運営からのメールはっと――」



=====


17 差出人:【異世界ゲーム】運営


件名:クエスト“一番最初に5つ【施設】解放”のクリア報酬贈呈



おめでとうございます。

【異世界ゲーム】開始後、一番最初にモンスターに占拠された【施設】を5つ解放されました。



そんな施設を解放するのに生き甲斐を感じていらっしゃる生存者(サバイバー)様に、ピッタリの報酬を贈呈いたします。

ゲームでの生き残りに大きく貢献してくれることでしょう。



報酬:

①2000Isekai

②称号:解放者(リベレーター)


=====



「おっ! 一気に2000Isekaiも!」



 これはデカいぞ。

 探偵事務所に向かう途中で倒したコボルトやポイズンフラワー。

 それにさっきのモンキーゴブリンたちの分を合わせて、手持ちは2495Isekaiだった。


 コンビニでの出費や情報屋で多少使ったが、これでイベントに間に合う。

 4000Isekai貯まったな。




<“解放者(リベレーター)”:称号。所有しているだけで効果がある。占拠された【施設】を解放した分だけIsekaiが手に入る。手に入るIsekaiは解放すればするほど上がっていく>


「ほぉ~ん……結構良いんじゃね? Isekaiがどんどん手に入るなら、何でもありがたいし――うぉっ!?」



 そうして効果を読み進めていると、いきなり通知が複数届く。



<――【施設 宿屋】を解放しました。称号“解放者(リベレーター)”の効果により100Isekaiを獲得します>


<――【施設 薬屋商店】を解放しました。称号“解放者(リベレーター)”の効果により200Isekaiを獲得します>


<――【施設 魔女の工房】を解放しました。称号“解放者(リベレーター)”の効果により300Isekaiを獲得します>


<――【施設 万屋】を解放しました。称号“解放者(リベレーター)”の効果により400Isekaiを獲得します>


<――【施設 宿屋】を解放しました。称号“解放者(リベレーター)”の効果により500Isekaiを獲得します>

 

 


「うわっ、凄っ!」



 連続して届いた通知が鳴り止み、改めて一つ一つに目を通していった。

 解放1つ分だとお小遣い程度にしかならないが、そこから塵積(ちりつも)で一気に合計1500Isekai分だ。


 次回以降もこの法則性だと予測しやすい。

 次は600Isekai、そしてその次は700Isekaiと、一つ解放するごとに100Isekaiが上乗せされて行っている。

 臨時収入として大変ありがたい限りだ。



 これで当初予定していた4000Isekaiは大きく超え、5995Isekai。

 約6000Isekaiと、目標値の1.5倍になる。


 うっへっへ。

 ガチャが、ガチャが沢山回せるぜぇ……。


 笑いが止まりませんなぁ。




[ステータス]


●称号

 施設の王

 旗を立てし者(フラッガー) 

 解放者(リベレーター)(New!)




「――お兄さ~ん、すいません。私、透子さんと遥さんと一緒の部屋で休むことに……って何て顔してんですか」


 

 そこに、ちょうど水間さんがこの部屋へと戻ってきたのだった。

 


□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□      



「うげっ――……俺、どんな顔してた?」


「“世界で起こる悪行すべての黒幕は、実は俺様なのになぁ、バカな奴らはそうとも知らずに掌で踊っておるわい。グヘヘ”って顔してました」



 どんな顔だよ。 

 というかどんな奴だよ俺。



「はぁぁ。……あんな美人・美少女ばかりを連れてラブホに来てるんですから。もっとエッチな方面で悪人顔しててくださいよ。むしろお兄さん、エロに興味ないのかって疑っちゃいます」



 いや、俺も興味がないわけじゃないよ?

 本当、毎日耐えるのに必死ですわ。


 昨日もその前の日も。

 寝るときなんて薄着のアトリやソルアがいてエグかったんだから。



「――すいません。ちょっと茶化しました。お兄さん、凄く真面目に考え事してたように見えましたよ。皆のことを思って行動されてるってのは、この短い時間でも結構分かったつもりです」


 

 水間さんは改まって真剣な様子になる。

 その変化の振れ幅の大きさに、少々戸惑いがなくはない。



「うーん……評価してもらえるのは嬉しいが、まだまだ至らぬ点がありまくりだからなぁ」


 

 会話をしつつも、水間さんのことを観察する。  

 この子、根っこの部分ではちゃんとしているのかもしれない。


 ついさっき出会った時も、最初はしっかり警戒心を持っていた。

 生き残るためには絶対に必要なことだ。



 オヤジ臭いことを言うのも、何だか場の空気を和らげようとしてあえてやっているようにも思える。

  

 ……それで盛り上がるかどうかは別だが。



 ON・OFF切り替えるべき所。

 つまり気を抜いて休むべき所と、生きるために必死になるべき所。

 それらをちゃんとわきまえているということか。



「そうですか? ……中学生視点だからかもしれませんけど。お兄さんはもちろん、透子さんも。遥さんも。それにソルアお姉さんやアトリお姉さんも。行動力があって、皆凄く大人に見えますよ」


 

 ――あっ、そうか……この子、まだ中学生なんだよ。



 本来ならまだ将来のことなんて考えなくていい、自分のことで精一杯の年頃だ。    

 大人の庇護を受けてしかるべき年齢の少女が、一人頑張って生きていたということか……。


  

「――あの、それでお兄さんとこうして1対1で話せるタイミングで来たのは、お願いしに来ました。……私と、【パーティー】を組んでくれませんか?」



 その申し出自体に驚きはなかった。

 一人で行動している以上、【パーティー】機能を利用できていないというのは何となく想像がついたから。



「もちろん、お兄さんの善意に甘えるだけじゃダメだとわかってます。私も働きます。スキルとジョブも持ってますから、上手く使ってもらえればそれなりに役に立つと思うんです」



 必死さもありながら、でも嘘偽りなく。

 真摯に自分の利点・欠点を俺へと打ち明けてくれていた。


 空きもちょうど1人分あるし。

 そこまで言ってくれるなら、久代さんと来宮さんに相談して―― 



「お兄さんが誰とも【パーティー】を組まず、リーダー役をやられてるのも理由があるんだろうって察しはついてます」



 ……ん?  



「なので名義貸しみたいな形でも構いません! 【パーティー】を組むだけでも、検討してもらえませんでしょうか?」



 ……あれ?



「――ちょっと待った。……【パーティー】を組むのはもちろん前向きに考えてもいい。ただ、なんかお互いの間に認識の食い違い、ない?」



 何がおかしいとまではまだ捉えられてないが。

 どこか、今の水間さんの発言におかしい部分があるように感じた。



「へ? えーっと……え? あたしがおかしいこと、言いました?」


「おかしいというか……――あっ!」



 今ようやく、食い違いの可能性があるポイントに思い至った。



「……水間さん。一つ聞くけど、久代さん、あるいは来宮さんは誰と【パーティー】組んでると思ってる?」     



 尋ねると、水間さんはポカンとした表情に。

 とんちか何かを聞いてるのかとでもいうような顔だ。



「そりゃぁ……透子さんは遥さんと。遥さんは透子さんと。で、そこにソルアお姉さん・アトリお姉さんが入って4人。――つまりこの部屋にはいない4人パーティー、じゃないですか?」



【パーティー】機能でメンバーになれるのは合計4人。



 それは要するに。


 客観的に俺たちの関係を他人が見れば、だ。

 俺が誰ともパーティーを組んでいない中で一緒にいる、とても特殊なグループというように見えてたらしい。



 ……そうかぁ~。


 女子4人男1人だもんな。

 その4人でパーティー組んでるって考える方が自然だよねぇ~。



 ――俺氏、やっぱり集団の中にいてもボッチに見えてた件!



 生存者でないソルアとアトリの立ち位置が特殊なだけに、どう言ったものか頭を悩ませるのだった。



  

えっちい美少女に、ホテルで一緒の部屋が良いと我儘を言われたい人生だった……(白い灰)


ランキングは7位でしたね。

投稿がすでに2か月過ぎた今でもなかなかしぶとく粘れてますね。


これも読んで、そして応援してくださる皆さんのおかげです。

ありがとうございます。


引き続き、ブックマークや広告の下にある★★★★★のボタンの方、していただけますと執筆の際大変大きな励みになります。


よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あー解らんでもない そりゃラブホで男が別行動してたらボッチに見えるし 安全面考えると恋仲か家族以外とチーム組まないだろうから 例外は男がヘタレで女の尻にひかれてる場合ぐらいだね
[一言] 1:4で余り者と思われていたのですかー(笑 そうでなくて、 当然(?)3(1+2):2 で2つの【パーティ】だと認識されていると思い込んでましたけど。 うーん?他メンバとの対面順序などに、そ…
[一言] そろそろパーティーメンバーにガチャ師のスキル情報公開すると思いますが、奴隷ということば使わずどう説明するのか気になります。 異世界召喚? 次の更新も楽しみにしています。
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