50.一時帰還、アトリと二人、そしてランク②ガチャ10連 ……★
50話目です。
ではどうぞ。
「お、お邪魔します」
「う、うわぁ……」
アパートへと到着した。
初めての入室となる久代さん、そして来宮さんはやや緊張気味だ。
そういう雰囲気を出されると、部屋の主も硬くなっちゃうので気楽にお願いします。
……あっ、いや、“硬くなっちゃう”って、そういうエッチな感じの意味じゃないから。
体が硬く――ってその表現でもダメか。
うん、とにかくリラックスして行こうよって話です!
「んっ、んん~! はぁぁ。なんか帰ってきたって感じがするわね」
「フフッ。ですねぇ~。すんすん……ふぅ~。落ち着きます」
一方のアトリさんとソルアさん。
まるで故郷に戻って来ることができたと言わんばかりに、とても幸せそうな表情をしている。
……そ、ソルアさん?
恥ずかしいから、部屋の匂いあんまり嗅がないで!
「っしょっと――」
ドラッグストアで再調達した物資を、適当に部屋へと置いていく。
チェックもかねて、台所にある蛇口の栓を捻った。
……うん、まだ出てくれるようだ。
水を一杯飲んで、一息つく。
これで俺がやるべきことは終わりだ。
後は他のメンバーの準備待ちだが……。
「…………」
「…………」
久代さんと来宮さんも、表面上は出発を待つまで体を休めている……だけのように見える。
しかし先ほどから頻繁に、チラチラと浴室へ視線を向けているのだ。
――はっ!?
ま、まさか。
久代さんと来宮さんも、実はお風呂で行われるえっちぃことに興味が――
……なんて話では、決してないだろうな。
「えっと。俺、ちょっとやりたいことがあるから。少しだけ時間取ろうか」
そうして【異世界ガチャ】を発動し、目の前に出現させた。
何とかして自分の意図を伝えようと、ソルアへとアイコンタクトを図る。
久代さん・来宮さんを見た後、チラッと浴室へ視線を向けた。
……変な意味に捉えないで欲しいが、どうだ?
「あっ――分かりました。ではハルカ様、トウコ様。丁度いいですから、休憩に一つ、シャワーはいかがですか?」
どうやらちゃんと伝わっていたようだ。
同性のソルアが気を利かせたように言い出したこともあって、二人は分かりやすいくらいに反応した。
「えっ、シャワー、いいの!?」
「水でも、全然、私はありですけど! で、でも、本当にいいんですか!?」
グワッと音がしそうな程の鋭い首の動き。
二人はまるで獲物を前にした猛獣のような目で、こちらに確認を取ってくる。
……いや、どんだけシャワー浴びたかったの。
まあ百均に便利道具や代替物は沢山あっただろうけど、シャワーとその空間自体はなかっただろうからなぁ。
「……シャワーからまだちゃんと水が出るんなら、だけど。で、言ったように俺はこれでやることがあるから。その間ならご自由に」
ソルアのサポートの元、二人が嬉しそうに浴室へと向かう。
時間の節約も意識してか、一緒にまとめて入るらしい。
タオルは……スポーツ用ので我慢してもらおう。
「じゃあ、本当に俺、ガチャやっておくから」
声をかけながらすりガラスの戸を閉める。
ファムはずっと飛び回り続けて疲れたと、仮眠についた。
なので一時的にだが、アトリと二人で待つことに。
何だか不思議な組み合わせだなと思いつつ、アトリと時間を潰すのだった。
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「ガチャって……私がマスターに買ってもらった時のよね?」
アトリは珍しそうに、大きな赤い麻袋をまじまじと見ていた。
「そうだな。……で、12時から、またイベントがあるっぽい」
「あっ、つまりまた新しい仲間の子が増えるかもってこと?」
うぐっ。
ま、まあそうです。
「……アトリは、反対か?」
「いいえ。良いんじゃないかしら。信頼できる仲間は一人でも多い方がいいから」
ソルアは2人目、つまりアトリを迎える際に相談した段階で、3人目4人目もOKだろうとはわかっていた。
なので、どういう反応か読めなかったアトリのOKが出てホッとする。
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~通常ガチャ~
毎日1回ガチャ無料!
●ランク①
通常1回:20Isekai
10連:200Isekai
※10連ガチャの場合、★3以上が1つ確定
●ランク②
通常1回:40Isekai
10連:400Isekai
※10連ガチャの場合、★3以上が2つ確定
※ランク②ガチャライセンスが必要
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現在保有Isekai:3649
「うーん。ランク②の10連を1回引いておくくらいにしておくか」
今の手持ちだと、ランク②でも9回は10連を引ける計算になる。
アトリの時は10連10回分を目安に貯めていた。
今回もそれを目標に、つまり4000Isekaiは目指したい。
ただ今のうちに、ランク②の方の10連も一度は試しておきたいと思う。
それでも3200Isekaiだから、また800Isekaiを貯めるだけでいいしな。
「あっ、やるんだ。……ねぇ、何が出たら当たりなの?」
むむっ。
ちょいと哲学的な問いが来たな。
「レア度の違いはあるが……明確に当たりとハズレとして区別されてはいないな」
もしもそうした分け方がされるのなら。
それは必要度に応じて頭の中で、勝手に振り分けて決めているのだろう。
「物凄くレア度が高くても、今全く必要のない物だったらそれはハズレだと思うし」
逆に★1だとしても、今正に欲しいと思っていた物だったらそりゃ当たりだ。
「ふぅ~ん。何だか楽しみだわ」
「そうか。……じゃあとりあえず回すな。その方が早いだろう」
★1が白、★2が銅色という風に、レア度と結晶の色の対応を説明。
「まあ一つランクアップしたってことだから。二つ銀色は確定なんだ。他は白か銅が多いだろうな」
そうして予測を述べつつも実際に引くため、ガチャへとIsekaiを投入したのだった。
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「あっ、マスター! 出てくるっ! 一杯出てくるわ!」
アトリの興奮したような声に合わせ。
鮮やかな赤色をしたマジックバッグから、10個の結晶が飛び出してくる。
「おう、そうだな」
アトリはその様子が気に入ったのか、とても嬉しそうにはしゃいで見ていた。
まるで、初めてサーカスのショーか、マジック・手品でも目にした子供のようだ。
“星絆”が見せてくれたアトリの過去を思い出す。
他者を遠ざけて過ごしてきたアトリにとって、こうした華やかな演出を見る機会はそう多くなかったのだろう。
……こんなことで楽しんでくれているのなら良かった。
「凄いっ、沢山――あれっ? マスター、もう終わり? えっ、白いの、全然出ないわよ?」
今しがた白か銅が多いと言ってしまった。
だが出た結果がそれに反していたからか、アトリは戸惑いの表情を見せてくる。
いや、その前に、なんかアトリさん。
君、セリフ、ちょっと……えっちく聞こえませんこと?
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ガチャ結果
①パーティーポイント+7 その他 ★★
②空のスクロール アイテム ★★
③レザーベスト 装備 ★★
④容量+1 能力値 ★★
⑤13Isekai その他 ★★
⑥全パーティーメンバー 器用+1 能力値 ★★★
⑦魔力ポーション アイテム ★★
⑧MP+1 能力値 ★★
⑨普通の剣 装備 ★★
⑩【耐久上昇】 スキル ★★★
計:★2×8 ★3×2
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やはり400Isekai分なだけ、そしてランクが②に上がったガチャなだけはある。
下限が★2なのだ。
星の合計数だと20を超える。
確かソルアに来てもらった初めてのガチャでさえ、20は越えなかったはず。
――だがそんな内から湧いてくる興奮も、直ぐに脇へと追いやられてしまう。
なぜならこの状況と、アトリのセリフとが。
違う意味にも捉えられそうな、絶妙な内容になってしまっているからだ。
「白いのも、沢山出るんでしょう? 本当はもっと、もっと出るんじゃない?」
いや、もう全部出たから!
これで打ち止めだから!
「――あっ、ほらっ! マスター、まだ出るじゃない!」
えっ!?
……あっ、そうか、10連だと1回分無料なんだ!
【ガチャ師】のジョブレベルが上がった効果を忘れていた!
「あっ、やった! マスター、白いの出たわよ!」
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ガチャ結果
⑪カジュの実 その他 ★
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「……本当だね、出たね」
★1が出たところを見ると、ランク②に上がったとはいえ下限が★2に保証されるわけではないようだ。
説明文で保証されているのは★3×2のみだからな。
だが10連での結果が、★1より★2の方が圧倒的に出やすいということを示している。
やはりランク②はランク①と違って、レア度が高いものが出やすいんだ。
「フフッ。白いのは特に、出てくるところを見るとやっぱり綺麗ね……」
アトリは銀・銅・白と三色ある中で、特に最後の一色を気に入ったようで。
ウットリと見惚れるようにして眺めていたのだった。
……まあ、ランク②のマジックバッグは鮮やかな赤色だったから。
その対比で、白が目立ったんだろうね。
本当、さっき自分で言った通りの状況になっている。
★1でも、こんなに当たりが出たような反応をするんだなぁ。
「そっか、それは良かった」
ただ、さっきのアトリのセリフだけ聞いてるこっちとしては、凄い変な気分にさせられたけどね!
「――あっ、あの。ごっ、ご主人様、それにアトリも。……が、ガチャを回されてたのでは? なのにい、一体、何をされていたのですか?」
すりガラスの戸がそーっと開けられる。
そしてソルアがチョコッと覗き見るようにして、真っ赤になった顔を出した。
「えっ? どうしたの、ソルア。……マスターのガチャだけど?」
「えっ? あっ――」
何を当たり前のことをというようなアトリの言葉を受け、ソルアは室内を確認。
……その後。
顔中が鮮やかな赤色に染まったソルアの姿が確認されたのだった。
……アトリさんも勘違いに気づいたら、ああなるだろうなぁ~。
日間ランキング、6位でしたね……。
まあ、50話も書いてれば、そういう日もありますかね。
むしろ、未だ上位のランキングに居続けられることの方がありがたく、感謝の気持ちで一杯です。
本当にありがとうございます。
今後も是非、ブックマークや広告の下にある★★★★★のボタンの方、して頂けますと執筆の際のとても大きなモチベーションになります。
よろしくお願いいたします。




