48.報酬、遠慮はいらない、そして好みとヒント?
48話目です。
ではどうぞ。
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14 差出人:【異世界ゲーム】運営
件名:ワールドクエスト“一番最初にパーティーランクG+到達”のクリア報酬贈呈
おめでとうございます。
【異世界ゲーム】開始後、一番最初にパーティーランクがG+に到達されました。
クエストのクリア報酬を贈呈します。
ゲームでの生き残りにご活用ください。
選択報酬:
①1000Isekai
OR
②1レベルアップ
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「うわっ、凄い……」
「こんな、えっ、良いんですか?」
パーティーランクが上がった後。
またもや送られてきたメールを見て、久代さんも来宮さんも大きく驚いていた。
まあ、最初はビックリするよねぇ。
「えっと、滝深君、どうする? 皆で合わせた方がいいのかな?」
同じ内容のメールが来ているので、選択報酬でどっちを選ぶかという話だろう。
「いや、それはもう各人が自由で良いと思う。それぞれが欲しい方、必要だと思う方を選べば」
【パーティー】機能に関係する報酬だからと言って、パーティー全員で揃えないといけない理由はない。
むしろこういう時に無言の同調圧力で自由に選べないなら、それはなんかパーティーとして違うと思うから。
「そうですか? じゃあ……遠慮なく。私はレベルアップにします」
来宮さんが先に選んだことをきっかけに、久代さんも選択報酬を決めて受け取っていた。
「……あれだけ上げるのが大変だったレベルが、報酬として上げてもらえるなんて」
久代さんもレベルアップを選んだのか。
二人はついさっきまで、モンスターだけでなく。
同じ生存者であるはずの男どもから、その体を狙われるという脅威を直に感じていた。
だから、今以上に抵抗できる力を少しでも得たいという想いが、強く働いているんじゃないかと思う。
「俺は……うん」
<――選択報酬 ①1000Isekai に決定しますか?>
【マナスポット】のおかげで、昨日一気にレベルアップしたばかりだ。
お金なら、自分だけでなくソルアやアトリ、それにファムのためにも使える。
やはりお金の方が自由度が高い。
だからどっちかというと今欲しいのは、レベルよりお金である。
現在保有Isekai:3639
わ~。
今、1000Isekaiを頂きましたぁ~!
こんなんなんぼあっても良いですからねぇ~!
まっ、今日の12時以降はワールドクエストもあるし。
何より【異世界ガチャ】のイベント開始時刻でもある。
後で一度くらい……ランク②のガチャ10連、試しに回しておこうかな?
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[【パーティー】]
●生存者ネーム:TOKI
●パーティーLv.3
●パーティー申請
●パーティーメンバー:
①TOKI:リーダー
→パーティーLv.3
全メンバー:MP+2 魔力+2 容量+2
②CLEAR CASTLE:メンバー
→パーティーLv.2
全メンバー:筋力+1
③Spring Nuts:メンバー
→パーティーLv.2
全メンバー:敏捷+1
④――
計:3/4
●パーティーランク:G+(New!)
【パーティー】機能の画面を確認すると、ちゃんと結果が反映されていた。
ランクが“G+”になっているのは当然として、各メンバーのパーティーレベルなども詳細に表示されている。
「……俺だけ“パーティーレベル”が3か」
さっきの通知から、パーティーレベルを上げるには“パーティーポイント”を貯める必要があることは分かった。
で、リーダーは戦闘の際、より多くのポイントを得られるらしい。
「えっ、私? 1体につき3ポイントだったと思う」
「パーティーポイントですか? 私もです」
二人に確認すると、リーダー補正をする前のポイントでも差があったことが判明した。
「俺はどっちも5で、そこに補正がかかって8だった。……ってことはラスヒか」
つまりラストヒットの差だと推測。
あるいは与えたダメージ比率だ。
モンスターにトドメを刺したのはソルア、そしてアトリだった。
【パーティー】の機能には関与してない二人が倒すと、“パーティーポイント”については俺がラストヒットを取った扱いになるのか……。
「……なんか、全員に対して申し訳ない」
手柄を全部横取りしてるみたいな罪悪感がある。
「いや、そこは割り切っていいんじゃない?」
しかし久代さんが、親しい者相手に浮かべるような柔らかい笑みで言ってくれる。
「むしろ滝深君の行動が評価されなかったら、モンスターの引き付け役を軽視してるみたいで、逆にこっちが申し訳なくなる」
「久代さん……」
まさかあの久代さんが、俺のことを評価してくれる日がくるなんて……。
前までの日常では、誰かに認めてもらう必要なんて感じなかったし、自分一人で完結する世界だった。
それが今じゃ、全く接点などないと思っていた久代さんと、行動を共にしているのだ。
本当、何が起こるかわからないなぁ……。
「あ、あの! 私も、凄くありがたかったですよ? 滝深さんがモンスターとの間に立ってくれて。とても安心できたというか、えっと、とにかく心強かったです!」
来宮さんからも加勢があり、いよいよ罪悪感を放棄せねばならないほど追い詰められてしまった。
くっ!
「……なるほど。つまり久代さんも来宮さんも。俺のあの害悪ゾンビ戦法がお気に召したと。性質の悪そうな陰キャの雰囲気、そんなに出てた?」
どうも、こんにちは。
殺しても殺しても死ななそうな、死んだ目の肉盾ゾンビボッチです。
「えっ? あっ、いや、そんなことを言いたかったわけじゃ――」
「そ、そうです! あの、ですから、伝えたかったのはそうじゃなくて――」
「……フフッ。大丈夫ですよ? ご主人様なりのご冗談でしょうから」
慌てて言葉を付け加えようとした二人に、なんとソルアが優しく微笑みかけたのだった。
……えっ、ソルアさん?
「ですよね、ご主人様?」
何ですか、その全部わかってますよと言わんばかりの慈悲深い笑みは!?
ぐぬぬぅ。
そうだけども……そうだけどもっ!!
「あっ、そうなの? 良かった……誤解を与えたわけじゃないのね?」
「ふぅ~。一安心です」
ホッと息を吐く二人。
……すいませんね、捻くれ者のボッチで。
「むぅ~……流石はソルアね。悔しいけど感じちゃうわ、ソルアの方がマスターとわかり合ってるのを」
……アトリさん。
とりあえず“悔しいけど感じちゃうわ”は止めておこうか。
ソルア達にもまだ色々と言いたいことはあったが、とりあえず。
サキュバスさんが無自覚でエロくも聞こえる言葉を発するので、心の中でツッコんでおいたのだった。
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●ワールドクエスト“ボスモンスターを討伐しよう!”
■クエスト詳細:
【異世界ゲーム】3日目 12:00以降に通知
※それ以前の詳細獲得の可能性について排除せず
方法は【マナスポット】の探索過程に準ずる
「『※それ以前の詳細獲得の可能性については排除せず』……つまり、12時になる前でも、ワールドクエストの詳細が分かる方法は準備してあるってことだよな?」
再びドラッグストア内へと戻り、気づいた点について言及する。
喉も乾いていたので、未だ無事だった飲料コーナーから缶コーヒーを持ってきた。
「つまり……やろうと思えば、事前にどんなクエストになるか分かるってこと?」
久代さんは缶のおしる粉を大事そうに両手で持っている。
俺みたいにブラックコーヒーとか飲んでるイメージだったが、意外だ。
会話しながらプルタブを開けると、香ばしい匂いがスーッと鼻を抜けていく。
……あぁ、なんかこの感じ、懐かしい気がする。
「でもマスター。結局はボスモンスターを倒すことがクリアの条件なのよね? なら事前だろうと12時の通知だろうと、大差はないんじゃないのかしら?」
アトリも、久代さんと同じくおしる粉を飲んでいた。
最初こそ久代さんへの対抗意識で手に取ったようだが、その甘い汁の味に直ぐ魅了されたようだ。
アトリめ……美味そうに飲むなぁ。
「でも、わざわざ書いてる・言及してるってことは、意味があるんだと思う。……すいません。勘というか、ほぼ見た印象だけなんですけど」
申し訳なさそうに少し俯き、来宮さんはチビチビと缶コーヒーを口に含んでいた。
……むしろ来宮さんこそ、おしる粉を飲んでそうなのにね。
とことん逆だよなぁ……。
「いえ、ハルカ様。直感や思った素直な印象は案外大事なことも多いです。ですから、気にせず言葉にされたら良いと思いますよ」
うん、それはその通りだと思う。
俺も、唯一尊敬するゼミの教授によく言われた。
“違和感を覚えたら、一度立ち止まって考えてみるべきだね。そこに、何かしらヒントが隠れていることが結構多いよ”と。
……ちなみに、ソルアさんが抵抗なくゴクゴクとエナジードリンクを飲まれていることに、丁度違和感を覚え中です。
教授、この場合はどうすればいいですかねぇ?
「ソルアちゃん……うん、ありがとう」
そして来宮さんとソルアは馬が合うのか、本当にとても仲が良いように見えた。
もう親友同士と言われても不思議じゃないくらいの壁の無さだ。
……美少女同士のユリユリか。
いいぞ、もっとやれ!
「『方法は【マナスポット】の探索過程に準ずる』ってことは、【施設】が絡むかもしれない。つまり、そう簡単には見つからないってことだろう」
来宮さんの【読心術】が俺には通じなかったと言われても、何かのきっかけで邪な思考が見抜かれないとも限らない。
早々に真面目な話へと頭を切り替えておく。
「ということは、だ。逆に言えば“詳細”を見つけた場合、その情報の価値は【マナスポット】に匹敵するんじゃないか?」
言いたいことが伝わったのか、全員の表情に理解の色が広がる。
「なるほどね。それだけ価値のある情報だとすると……じゃあ何だろう? モンスターの弱点とかかしら?」
何気ない、アトリの呟き。
ただ思ったことを口にした、そんな言葉だった。
だがその当人、アトリ以外は皆。
それが、核心を突いたのではないかとハッとする。
「……全然あり得ますね。ワールドクエストをクリアする意志のある生存者へは、攻略のためのヒントが事前に用意されている、と」
ソルアが、アトリの思い付きを、詳細な言葉に直してくれた。
それでより具体的なイメージが湧き、納得する。
「……よし。じゃあこれから。つまり12時までの具体的な方針に、その詳細を探すことも入れよう」
それに異論が出ることはなく。
休憩時間を使っての話し合いも、有意義に過ごすことができたのだった。
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文字数も20万字を超えていたようで、この作品を書き始めた当初はここまでになるとは全く想定していなかったです。
私ももちろん努力はしていますが、それだけでは決してここまで継続することはできなかったと思います。
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