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37.代価に見合った精度、ここが【マナスポット】のある場所? そして一つだけ調べてないスペース

37話目です。


ではどうぞ。



[施設 酒場:○○新聞販売店]


①情報 下:100Isekai ……売却済み SOMA


②情報 中:500Isekai ……売却済み TOKI


③情報 上:1000Isekai ……売却済み TOKI 




「よしっ、買ったぞ――」



 1000Isekai分を注ぎ込み、“情報 上”を購入。

【施設利用カード1200Isekai分】の残額50、そして2350Isekaiあった現金から950Isekai使った。


 カードはその役目を終えて消滅し、手元のお金も1400Isekaiにまで減る。


 これでどうでもいい情報だったら、マジでキレるからな! 



[情報 上:詳細]



 あんっ?

【マナスポット】の具体的な場所?


 んなの自分で探して……えっ、お前、何だよこの金は?

 っ!?

 どこで妹の病気のことを……。



「病気? ……いや、んなこと言ってないんだけど」

 


 さっきと同じように、出現した画面には異世界の酒場風の壁紙が貼ってあった。

 そして顔無しの冒険者には、上手いこと驚愕したような表情が表現されている。


 ……そんなところ、力入れなくていいから。



[情報 上:詳細]


 ・

 ・

 ・

 


 チッ、バカ野郎……。

 ……俺は、何も知らねえ。



 ――っと、いっけねぇ。

 


 酒に酔いすぎたかな。

 ついうっかり【マナスポット】の場所が記された地図を、どこかに落としちまったみたいだ。


 他の誰かに見られたら厄介だな……。

 おいあんた、見つけたら、それ、処分しといてくれ。

 頼んだぞ?


 あと……礼は、言わねぇぜ。



「なるほど……」



 要するにこの名も顔もないオッサンは妹さんが病気らしい。

 で、俺が払った1000Isekaiはその治療代みたいだ。

 

 オッサンはそれに対するお礼として情報をくれる、と――



「――うぉっ!?」 



 オッサンの言葉が終わると、目の前にまた別の画面が現れた。

 それは、この市内を映した地図だった。


 ……そして1点、ピコンピコンと強く明滅する場所がある。



「どうでした、分かりましたか!?」

       

「ああ……――どうやらこれは、答えを教えてくれるものだったようだ」 


「本当!? 良かったじゃない! でっ、マスター、どこだったの?」

   


 無意識にか、喜びのあまりアトリが笑顔でグイっと近づいてくる。

 うわっ、ちょっ、近い近い谷間見えてる顔可愛エロいぃぃ! 



「おっ、おぉ……ちょっと待ってくれ――」



 確認するフリをして、巧妙にアトリから視線を逸らす。

 ……フッ、こちとらソルアさんのおかげで昨日から色々と体験済みよ。


 その程度のドエロいサキュバスボディーで無自覚誘惑されたところで、ちょっと心揺れるくらいにしかならないぜ!



「……あれ?」 


「えっ、どうかしたの?」


「何か問題でもあったのでしょうか?」



 二人の声に相槌を打ちながらも、地図に映った点滅ポイントをもう一度ちゃんと見る。

 ここは……。



 ――えっ、どこ? 



 そこは、ある意味では俺の予想通りの所で。

 しかし同時に俺の知らない場所でもあった。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「っぶねぇ……こんなところにももう一つあったんだ」


 

 それから再度【マナスポット】を目指して、地図が指示したポイントへと向かった。

 新聞の販売店から距離にして約2kmくらいか。


 だが休憩地点として使ったネットカフェの方向だったので、そこまで苦労はしなかった。

 行った道を戻る感覚だったしね。 


  

「もう一つ? ……同じ店が複数あったのですか?」


 

 ソルアのその素直な質問に、直ぐに頷くことはできなかった。



「ん~っと。同じ店……同じ“業種”の店が複数あったってことだろうな」



 お互いの認識に食い違いが生じないようできるだけ丁寧に、そして詳しく言葉にする。

 目の前ではためく(のぼり)を見ながら、“情報 上”を購入して良かったと改めて思った。



“新作2泊3日 準新作・旧作7泊8日”


“10本同時レンタル キャンペーン実施中!”


“新作続々入荷!”

 

“レンタル ビデオ・DVD・CD”           



「レンタルビデオ屋かぁ……」



“情報 中”の時点での俺の予想はその通り、レンタルビデオ店だった。

 だが全く素直に喜べないでいる。

 

 ……いや、あの全国展開してる店、つまりこことは違う別の店だとばっかり思ってた。


 こんなところに地域密着の、別のレンタルビデオ店があるなんて全く知らなかったのだ。

 ……陰キャのボッチ大学生の行動範囲なんてたかが知れてるんですよ。


 つまり、あのまま俺の推測のみを頼りに行動していたら、大変なことになっていただろう。

 正解なのに、店というか店舗が違うというエグいミスになっていた。


 

「まっ、でも結果オーライだな。買うことにしておいてよかった」 



 危うい未来を何とか回避できたと冷や汗を誤魔化すように、努めて明るく進んでいく。

 


「うん、ちゃんと場所が分かったんなら良いんじゃないかしら。ねぇ、ソルア」


「そうですね。どっちにしろ私もアトリも。地理的なことについては全くお役に立てないので」   


 

 うぅっ、ありがとう……。

 そう言ってくれるといくらか心も軽くなる。

 

 ……今後、こういう謎解き系の対策ができるスキルとか、あったら欲しいなぁ。


 いや、ちゃんと謎解き自体は出来たけど、次からも正解できる保証はないから。

 念のためね。 



「ん~……地震が起きた後みたいな散らかり様だな」



 入口は例に漏れず、何者かが侵入した後のように破壊されていた。

 入って直ぐ、床に落ちた大量のビデオや空ケースが目に入ってくる。


 まあモンスターの仕業だろう。



「……でも妙じゃありませんか?」



 ソルアが店内の惨事を目にして、真剣なトーンで口にする。



「……何がだ?」


「確か【マナスポット】は生存者(サバイバー)の皆様だけでなく、モンスターも探している場所なんですよね?」



 続くソルアの言葉で、俺も何となくその違和感を共有できた気がした。


 ここには【マナスポット】があるはずなんだ。

 そしてモンスターが既に入った形跡がある。

 

 つまり……。



「?」 



 今朝に【マナスポット】に関するメールが運営から来た。

 そしてそれを元にしたやり取りが、俺とソルアの間であった。


 その時アトリはいなかったので、未だ情報が足りないのか一人ピンと来ていないらしい。



「ん~っと……もしかして“もうここに先に来たモンスターが【マナスポット】を取ったんじゃないか?”って話だ」


「えっ? っ! それ、大丈夫なの!?」



 アトリもその危機感自体は共有できたようだ。

 だが一方で、俺はそこまで悲観的には見ていない。



「もしそうなら大丈夫じゃないだろうな。……でも【索敵】には今の所何もない。――ファム、様子はどうだ?」


≪ん~モンスターはいないよ? ついでに言うと人もいないね。……死体はあるけど≫    


 最後の情報は……うん、仕方ない。

 だがこれで“【マナスポット】は既にモンスターに取られてて、その凶暴化した奴に待ち伏せされてる説”はかなり低くなった。


 だから少なくとも、ビクビクしながらここの探索を続ける必要はないわけだ。



「――ってわけだ。とりあえず(しらみ)潰しに行こうか」 

 


□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「ない」



 ドラマ・映画コーナーも。



「ない」



 アニメコーナーも。



「ない」


 

 海外作品コーナーも。



「……ないなぁ」



 CD・アルバムコーナーも。


 どこを見ても、【マナスポット】なんて全然なかった。



「……おっかしいなぁ」

 


 購入した情報が嘘という可能性は全く考えてない。


“ドラマや映画のDVD・ビデオ”はつまり、老若男女問わず、人々が映像として固定化され囚われているといえる。

 それぞれに物語があり、登場人物たちは自分たちの物語を生きていると信じて疑ってないだろう。   


 そしてレンタル店はレジ付近のガムや飴以外に、食料は基本置いていない。

 戦うための武器なんかもないから、生存者・モンスターともに普通は近寄らない場所だ。


 だからやっぱり“ここが【マナスポット】がある場所だ”という情報に虚偽はないと思う。



「……では、さっき話したようにモンスターが既に発見して持って行ってしまったのでしょうか?」


「そうかも。モンスターは【マナスポット】を奪った。だけど既にこの場にはいないってことなら、辻褄(つじつま)は合うんじゃないかしら?」 



 二人の言い分もわかる。

 俺ももうその説に乗っかってしまいたい気持ちが強くあった。


 

 ――でも、一点、“とある箇所”だけ。まだ探していないのである。



[情報 中:詳細]


 ・

 ・

 ・


 それと……これは暗い心を持つ男にとっては良い話かもしれないな。

 あそこには女だけを分けて捕まえておく空間もあった。


 女たちはその多くが、露出した肌を見せたまま囚われている。

 こいつらもずっと身動きできないようになっているんだ……恐ろしいと思わないか?  



「…………」



 まだこのレンタルビデオ店には、この説明文と合致するスペースがある。

 そしてここまでくると、俺の直感が告げるのだ。



 ――多分、【マナスポット】はある。……でも、そこにソルアとアトリを連れていくのは!



 ぐぐぐっ、どうしよう!?



「えっと……」


「――あっ! ご主人様っ、ファムが戻ってきましたよ!」


「……あれっ? ファム、今どこから来たのかしら? ……もしかして、まだ私たちが調べてないスペースが?」



 ギャァァァァ!



 ファムは、黒い暖簾(のれん)がかかった別の場所から出てきたのである。 


 その暖簾は黒い布地、そして真ん中に赤い丸印があり。

“18”という数字に斜めの線が入っているとても特徴的なものだった。


 

 ――そう、【異世界ゲーム】が始まる前までは“18歳未満立入禁止エリア”だった場所であるっ!! 

 


≪うっ、うぅぅ……なんか、よくわかんないけど。凄くアトリお姉さんに似た空気を感じる場所だった。――あと、あるよ。【マナスポット】≫ 



 ――凄くエッチな雰囲気を感じる空間!!




「ってかあるの!? 【マナスポット】!」



 凄いついでに言った感!!

 当初の目的である【マナスポット】が添え物になる程の場所だったらしい。


        


「えっ!? あったのですか!」


「やったじゃない! さっ、マスター、早く行きましょう!」 


 

 キャッ、ソルアさんのエッチ!

 異性の手を掴んでこの中に連れ込もうだなんて!  



 あっ、ちょっ、アトリさん、押さないで、やめて……。

 俺に乱暴するつもりなんでしょう?

 エロ同人みたいに!



「この先は、ちょっと、あれでそれがこれだからダメで!!」



 だがモンスターがおらず【マナスポット】がちゃんとあると分かったのに、なぜダメなのか。

 それを上手く説明することもできず。

 

 ズルズルと押され、引っ張られるままに中へと入って行ってしまったのだった。


 

 あ~れぇ~。   

凄く沢山、予想の感想をいただいて。

とても嬉しいのと同時に凄く恐縮です。


当初、そこまで反応を頂けるとは思ってませんでした。

ああいうクイズというか謎々みたいな形式はこの作品内では新鮮(?)だったからかな、と勝手に考えてますが、どうなんでしょう?


当たり外れはそれぞれあるかと思いますが、楽しんでいただけたのでしたら幸いです。


日間ランキングは5位に行ったり4位になったりと忙しい日々が続きますね。

中々厳しい日が続くかもしれませんが、またここが頑張り時だと思って、今日もなんとか書くことができました。


ランキングで気疲れする以外に、普通に花粉症の疑惑があって、身体面でもちょっと辛い日でした。

心身両面で振るわない中頑張れたのは、やはり変わらず読んで応援してくださる皆さんのおかげです。


書き出しで凄くダラダラと滞っていたのですが、実際に感想や増えるいいね・ブックマークや評価を目にして力を沢山もらいました。

本当にありがとうございます。


今後も是非、ブックマークや広告の下にある★★★★★のボタンの方、していただけますと執筆の際とても大きな励みとなります。


よろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] おっと残念、ハズレだった
[良い点] 謎解き [一言] 負けました 「囚われた」を狭く捉えすぎた またやってください
[一言] その可能性も頭の片隅にあったけど "女だけを分けて捕まえておく空間" この一文で、例の物には男優さん出て来るから女性専用の何かに考えが固定されちゃったなぁ 一生の不覚
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