表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/115

36.再出発、他の生存者(サバイバー)の足跡、そして【マナスポット】のある場所はどこ?

36話目です。


ではどうぞ。



「さっ、さぁ! 休憩もとったことだし。元気一杯、【施設】に向けて出発しましょう!」


 

 ネットカフェでの休息後。

 アトリは不自然に感じるほど明るく振る舞っていた。 


 ……俺は何も見てないし、知らない。

 それでいいね?



「あ、アトリ? 大丈夫ですか? ――はっ! もしかして体調でも悪かったり!? 無理して元気に見せようとしたりしてませんか!?」


「えっ!? うっ、ううん! 全然っ、そんなことないわ! むしろ補給は凄く出来たけど……――って違うの! 私は何もしてないわ、えぇ!」



 ……凄い食い気味な否定ですね。

 これ以上続けさせると、お互い墓穴を掘りそうな予感がする。



「そうだな。うん、行こう。さっ、ソルアも、元気一杯、出発だ!」

    

「は、はぁ……」

 


 未だ納得していなさそうなソルアを無理矢理にでも丸め込め。

 新聞の販売店へと再出発した。



≪ご主人! 大丈夫、モンスターはいないよ≫


 

「よしっ――こっち、モンスターは大丈夫らしい」



 しっかりと仮眠したためか、ファムはまた元気に空を飛べるようになった。 

 視界の共有はせず、ファムとの会話のみで安全・危険の判断を行う。


 おかげでネットカフェにつく前とは異なり、モンスターとも出会わずスイスイと進んでいった。



「どうかしら、マスター。もうそろそろ?」



 再び出発を始めてからは、アトリも自然な態度に戻っていた。 

 気さくな感じで腕に軽く触れ、そして尋ねてくる。



「……おお。もう見覚えあるところまで来てる。後ちょっとだ」



 それは良いんですけど、そういう気軽なボディータッチは(つつし)んでもらえませんかねぇ?

 異性に、それも飛び切りの美少女にそんなことされたらドキッとするでしょうが。


“えっ、この子、俺のこと好きなの!?”みたいな。

 勘違いして黒歴史ノートに新たなページを増やしたくないので、本当にお願いしますね。



「でしたら、日没までには余裕をもって間に合いそうですね」


「だな。まあいざとなったらあの“ネットカフェ”がある。アパートの部屋まで帰ることは考えなくても良い」



 雨風を(しの)げるちゃんとした個室がある。

 モンスターについてもそこまで心配せず休めるから、2つ目の拠点候補としては十分だった。 


 新たに心の余裕が出来たこともあり、目的地への足取りはとてもスムーズに運んだ。

        


「おっ、着いたか――」


 

 そして新聞の販売店へと到着することができたのだった。


 

□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「……まあ、荒らされてるなぁ」



 まず外。

 敷地内に停めてあった配達用バイクは軒並み破壊されていた。

 

 まあそれはここに来るまでに見てきた光景と変わらない。 

 モンスター達にとって、車やバイクはとても壊し甲斐のある外観をしているらしい。



「中も酷い……まあでも、モンスターはいないな」


 

 コンビニよりも狭いんじゃないかと思える室内。

 事務机や棚は倒され、ベコベコにへこまされている。


 一方で、紙類は思っていたほど床に散らばってはいなかった。

【異世界ゲーム】が始まったのが夕方辺り。

 バイクが帰ってきているのもあり、夕刊の配達が丁度終わった後だったのかもしれない。


 

<――【施設】の中に入りました。これより【施設 酒場】を利用することができます>



 おっ! 

 やった、当たりだ!



「どうですか、ご主人様?」


「ああ、どうやら一発目で当たりを引いたらしい」



 もしかしたら明日以降にまで続くとも思っていたが。

 これで販売店巡りは終わりに出来る。




[施設 酒場:○○新聞販売店]


①情報 下:100Isekai ……売却済み SOMA


②情報 中:500Isekai ……販売中


③情報 上:1000Isekai ……販売中 




「あっ!? ――」


 

 えっ、一つ売り切れてる!?

 うわっ、生存者(サバイバー)ネームがある! 


“SOMA”って奴が買ったんだ……。



「ご主人様、どうかされましたか!?」

  

「何っ、マスターどうしたの!?」



 俺が驚いた声を上げてしまったからか、二人が即座に真剣な顔つきになる。

 だが冷静に状況を見ると、そこまで緊急事態というわけでもない。


 申し訳なさを込めながらどういうことかを説明する。 



「いや、悪い。3つ商品があるんだが、一つ、俺より先に買った生存者(サバイバー)がいたらしい。……でも2つ残ってるから、大した問題じゃなかった」


「あっ、そうですか」


「何か問題があったわけじゃないのね? それならよかったわ」



 話を聞くと二人とも納得して、肩に入った力を抜く。

 改めて詳しく状況を伝え、二人の意見を求めることにした。



「この“情報”って商品が、つまり【マナスポット】を見つけるためのヒントなんだと思う。ただ1個“500Isekai”と“1000Isekai”なんだ」


「それは……1000Isekaiは中々な額ですね」


「まだ相場観みたいなのがわからないけど、私も1000はちょっと冒険かなと思うわ」


  

 ソルアとアトリは揃って“情報 中”なら問題なしという意見らしい。

 まあ俺も同じだ。

 

【魔女の工房】と同じように、1000Isekaiは何も考えずポンと出せるような簡単な額じゃない。



「でも、これが【マナスポット】に繋がるのなら、ある意味【マナスポット】が今まで誰も発見できていないのは納得だ」



 結構稼いでる方だろう俺たちでさえ、1000Isekaiは考えるくらいの額だ。

“情報 中”でも500Isekai、つまりゴブリンだと25体分で、オークだと2体倒さないと稼げない。


 開始から2日でそこまでモンスターを倒せる猛者って、中々出てこないだろう。

 

“情報 下”は100Isekaiだが、それを購入したってことはこのゲーム・世界に適応しようとしている生存者だってことだ。



“SOMA”……ソーマ、ソウマかな?

 その相手を、もしかしたら来宮さんが【読心術(テレパス)】で読んで情報を掴んだのかもしれない。

 何にしても油断はできない相手だろう。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□  


 

「じゃあ、とりあえず“情報 中”を買うってことで、いいか?」


 

 いきなり“情報 上”を購入するのは怖いので、真ん中をまず買ってみてどんなものか確かめることに。



「はい、それでいいと思います」


「うん。私も」



 二人の了承も得られたので、早速購入することに。

【施設利用カード1200Isekai分】が550Isekai分残っているので、決済はそれで行うことにした。


 カードの残額が50Isekaiになったのを確認した後、直ぐに購入の結果が反映される。




[施設 酒場:○○新聞販売店]


①情報 下:100Isekai ……売却済み SOMA


②情報 中:500Isekai ……売却済み TOKI


③情報 上:1000Isekai ……販売中 




「あっ――」



 そして目の前に新たな画面が出現した。



[情報 中:詳細]



 へぇぇ。あんた、生存者(サバイバー)かい?

 あんっ? 


 ……なるほど。

【マナスポット】の場所を知りたいのか。


 俺の知ってることって言えば、そう多くはないが。

 まあ、酒代を(おご)ってもらったのもあるしな。

 

 話してやるよ。

 だが、その後は自分でなんとかするんだな。


 ・

 ・

 ・



「……こういう感じか」



 画面の背景には異世界風な酒場のイメージ画像があり。

 そこに顔のない冒険者みたいな男が、こちらに話しかけている場面が映っていた。 



「どう? 何か、手がかりはあったかしら?」


「いや、まだ読み切ってない。ただ【マナスポット】の場所のヒントを教えてくれるのは間違いないらしい」



 二人を待たせるのも悪いが、読み飛ばしがないようにと慎重に読み進めていく。



[情報 中:詳細]



 あそこは“あんたのいる場所”からは……そう遠くないな。


 だがあそこはとても恐ろしい場所だ。

 老若男女(ろうにゃくなんにょ)問わず、あれほど多くの人間があんなに狭い空間に(とら)われているなんて。


 ただ、信じられないことにな。

 囚われている人間たちは、自分がそこに捕まっているという意識はないらしいぜ?

 あんなに身動きせず、それでいて自分は自分の物語を生きていると信じてやがる。

 

 それと……これは暗い心を持つ男にとっては良い話かもしれないな。

 あそこには女だけを分けて捕まえておく空間もあった。


 女たちはその多くが、露出した肌を見せたまま囚われている。

 こいつらもずっと身動きできないようになっているんだ……恐ろしいと思わないか?  


 ・

 ・

 ・

   


「どこだ? “囚われている”? “身動きできない”? ……刑務所?」


 

 だがこの市内に刑務所は確かなかったはずだ。

 俺のいる場所からは“そう遠くない”と言っているのなら、最低でも市内のどこかではあるはず。



 ……わからん。




[情報 中:詳細]


 ・

 ・

 ・

 だがモンスター達にとってあの場所は、完全にどうでもいい場所みたいだぜ?

 食料もねえし、金銀財宝もない。

 

 その点じゃあ生存者(サバイバー)達にとっても、あそこは盲点じゃねぇかな?

 言ったように、生存者たちが欲しいような食料は基本取り扱ってない。

 それに防衛のための武器や装備があるわけでもなし。


 こんな危険な世界であそこを利用しようと思うような奴は、現実から目を背けたい輩だけだろうよ。



「これで終わりか……」



 正直、これかなと思う心当たりはある。


 だが心当たりなだけで、確信は全くなかった。

 

 うーむ、完全になぞなぞだな。



「えーっと……こういうことなんだけど――」


 

 そうして3人寄れば文殊の知恵というように、ソルアやアトリにも書かれていた文章を説明した。


 だが――



「……うーん。すいません、全くお役に立てず」


「ごめんなさい。私もわからないわ」


 

 あぁ、いや、うん。

 そりゃそうか。

 

 どこか町の何かの施設と対応しているのなら、異世界から来たばかりの二人にはわかりようがない。


 これは俺が解かないとダメらしい。



 クソッ、この情報提供者のオッサン。

 遠回しな言い方せず、もっと具体的な場所言えよ。

   


 心当たりはあるんだけどなぁ……。

 でも行って【マナスポット】がなかったら無駄骨だし……。


 ……仕方ない。

 もう一つの手段に打って出ることになるか。

 オッサンが言わないなら、金にものを言わせるか――



“情報 上”買う?


 

別にとても難しい謎解きという感じではないと思います。

ただ答えを書かずにヒントだけを出す形で書くというのは物凄く難しかったです……(白目)


日間ランキングはまた3位にランクインすることができました。

また、総PVが100万を超え、総いいねも3000に到達することができました。

本当に、読んで応援してくださる皆さんのおかげです。

こうして長い間上位のランキング争いをできていること自体、とても恵まれた幸せなことだと思います。


本当にありがとうございます。


皆さんからいただける日々の励ましのおかげで、今日も他に誘惑されて時間を浪費してしまうことなく、いつもよりも早く更新することができました。


今後も是非、ブックマークや広告の下にある★★★★★のボタンの方、していただけますと執筆の際のとても大きな力になります。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] フィギア?
[良い点] まだ先読んでないけど 満員電車、じゃないかな
[一言] オモチャ屋かな 人形のことを言ってそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ