32.ジョブの恩恵と侵入、不意打ち、そして連戦
32話目です。
ではどうぞ。
<所有奴隷“ソルア”がゴブリンを討伐しました。20Isekaiを獲得しました>
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<所有奴隷“アトリ”がゴブリンを討伐しました。20Isekaiを獲得しました>
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<ゴブリンを討伐しました。20Isekaiを獲得しました>
<レベルアップ! ――Lv.6→Lv.7になりました。 詳細:HP+2 (魔術師 →MP+2) 筋力+1 (魔術師 →魔力+2) (魔術師 →魔法耐久+1) 器用+1 容量+1(ガチャ師 +1→+3)>
おっ、レベルが上がった。
それに今までとは違って、【魔術師】補正も加わっている。
MPが更に増えてくれるのは凄くありがたい。
【戦士】じゃなくて【魔術師】にして正解だったな。
[ステータス]
●能力値
Lv.6→Lv.7
HP:30/30→32/32
MP:42/54→44/56
筋力:30→31
耐久:6(装備+5)(【身体硬化】+20)
魔力:19→21
魔法耐久5→6
器用:11→12
敏捷:13
容量39/39(③[●●●●●●]+④[●●●●●○]→50/51)
↓
容量39/42(③[●●●●●●]+④[●●●●●○]→50/54)
「あっ、私もまたレベルが上がりましたよ! これでもっとご主人様のお力になれます!」
ソルアはこれでLv.3か。
……俺よりレベルが低いのに、俺よりもレベルアップのペースは遅い気がする。
あれか。
個体の強さというか、秘めたる潜在能力の高い人ほど育ちにくい的な?
……つまり、相対的に育つのが早い俺は虫タイプか何かですか?
女子受け悪そうな陰キャボッチだし、共通点有りそうだもんねぇ……。
「? マスター、どうして一人で落ち込んでるのかしら?」
「さぁ……。ご主人様、時々一人でああなられるので、大丈夫だとは思いますよ」
ごめんね、ウジウジするウジ虫主人で。
直ぐに立ち直るから。
「――よし。じゃあ次、中のオークを狩りに行くか」
直ぐにメンタルの切り替えを行い、リサイクルショップへと視線を向ける。
ソルアもアトリも戦闘後に関わらず余裕な様子で、直ぐに向かうことに異論はなかった。
配下のゴブリンたちが死んだと気づいてない今、時間を置かず急襲することが大事だ。
<――【施設】の中に入りました。※利用不可。この施設はモンスターにより占領中です。解放の後、利用可能となります>
ドラッグストアの時と同じ通知が表示される。
このリサイクルショップも【施設】らしい。
占領されていること自体に大きな驚きはなかった。
いや、普通にオークたちが中に入るところ見てるからねぇ。
【索敵】で警戒を怠らず、ゆっくりと中に侵入する。
「……意外に、まだ荒らされたような形跡はないな」
「ですね。ドラッグストアは酷かったですからね……」
近くにはいないと分かり、ソルアと静かに感想を共有する。
「他のモンスターもまだ手を付けてなかったってこと?」
「だろうな。リサイクルショップ……モンスターにとって価値のある物なんて中々ないだろうから」
奴らの大体の行動原理は食料だろう。
それか異性……まあ異種族の雌ってこともあるだろうが。
リサイクルショップはその名の通りリサイクル・中古品を扱う店だ。
日本は特に食品の安全性に関して強い関心を払う。
中古品が基本のリサイクルショップに、食料品は中々ないだろう。
……オークたちが立ち寄ったのは、まだ荒らされてない場所だからこそ、かな?
≪……あっ! いたっ。いたよご主人!≫
ファムの興奮したような声が聞こえ、一瞬ビクッとする。
だが他の人には聞こえないのだと直ぐ自分で分かり、ホッとした。
まあからこそ、こうした侵入したりする場面ではありがたいんだよな……。
――あぁ、今見えた。というか、“俺の”目でも普通に見えたわ。
ファムと共有した目からは、2体の姿が見える。
そして自分の目では、1体のオークを捉える。
……まあ人以上の大きな体だしな。
2体がいる場所は入口から距離があった。
美少女フィギュアやアニメなどのタペストリーが飾られている、ホビーコーナーにいる。
そこで興奮した様子で、ソルア達には言い辛いことに熱中しているようだ。
なので、俺たちに気づく感じは全くなく。
「っ! ――」
一方、マズいのは肉眼で目視できている1体だ。
そいつは商品が陳列された棚から、肩より上がはみ出していた。
そう、直ぐそこまで来ている。
外で待機するゴブリンたちを呼びに来たようにしか見えなかった。
□◆□◆ ◇■◇■ ■◇■◇ ◆□◆□
手振りで二人に隠れろと指示する。
ソルアとアトリからもその1匹が見えていたらしく、直ぐに意図は伝わった。
石鹸やシャンプーなどの日用品が並んだ棚。
そこに腰を落として身を潜める。
「FUU……FUGO」
死角となっていて、オークは俺たちには気づかないまま入口に。
自分だけがお楽しみの仲間外れに。
あるいは呼出役というハズレを引いたからか、テンションは凄く低そうだ。
「……行くぞっ! ――」
「はいっ!」
「うんっ!」
短く、それだけ。
しかし俺の意図を、二人はまた瞬時にくみ取ってくれた。
――あの1体を、先に潰す。
敵は残り、オーク3体。
俺たちも非戦闘員たるファムを除き、数は3人だ。
……だからと言って、3対3の舞台を整えてやる必要性は全くない。
相手は侵略者だ。
正々堂々なんて言葉は【異世界ゲーム】が始まった時点で無くなっている。
潰せるときに潰す。
3対1の数的優位で行けるのならそれに越したことはないのだ。
「FUGO!? GOFU,GOO!?」
外、オークが異変に気付いた。
いるはずのゴブリンたちが、綺麗サッパリいなくなっているのだ。
ここでまた、このゲームの仕様が効いてくる。
死んだモンスターは死体となって残らず、光の粒子となって消えていく。
だから、オークは何が起こったのか、その場で直ぐに把握することができなかった。
――今だ!
俺たちに切ってくださいと言わんばかりに背中を向け。
そして目の前の事態に混乱し、俺たちへと回せる意識すらない。
今が絶好の攻撃チャンス。
――【操作魔法】!
入口近く、オークたちの侵入で破壊されたドアのガラス。
それらを多数、そーっと浮き上がらせ、射出準備を完了させる。
「っ! ――」
ソルアが、切り込んだ。
首を切り落とすことだけを狙った、完璧な不意打ち。
「FUGU――」
――だが運が悪いことに、それが避けられてしまう。
オークが寸前の所でしゃがんだのだ。
意図した回避ではないはず。
野生の、そして強者の勘。
そんなほぼ反射的に、ただ体勢を低くしただけの動作に見えた。
チッ!
流石に、一筋縄じゃ行かない。
「ふんっ――」
――だがそれは、ソルアだけならばの話だ。
アトリが、既に刃の届く距離に詰めていた。
【魅了】が発動され、桃色の霧がオークを一瞬にして包み込む。
「FUGA――」
ソルアの完璧な攻撃を無理矢理に回避して、オークは次の動作へと移るテンポが遅れざるを得なかった。
そこに魅了がかかり、思考を完全に溶かす。
「そこっ!」
そして俺も、準備していたガラスの刃弾を発射した。
その場に縫い付けようとするかのように、足だけを狙い撃ちにする。
ソルアの一撃を回避したあの奇跡的な1回を、二度とさせないために。
「はぁぁっ!」
目にも止まらぬ速度で、アトリが刃を振り下ろす。
流石にここまで状況を整え直しただけあり、アトリの剣はオークの首を捉えた。
今度は回避する動作を見せず、あるいは間に合わせることができず。
綺麗な軌跡を描いて、オークの首を切り落としたのだった。
<所有奴隷“アトリ”がオークを討伐しました。250Isekaiを獲得しました>
□◆□◆ ◇■◇■ ■◇■◇ ◆□◆□
≪ご主人っ! マズいっ、何か残りのオークが気づいたっぽい!≫
1体を何とか倒しきったと思ったら、ファムから凶報がもたらされる。
確かに、共有した視界からは2体のオークがお楽しみを中断し、こちらに向かってくる光景が映っていた。
「……二人とも、悪いが連戦の様だ」
「すいません、私が外したせいで余計に時間がかかったから」
「いいえ。あれは避けた方が凄かったわ。私だってあれは絶対当たったと思ったもの」
ソルアは申し訳なさそうにしながらも、アトリのフォローで直ぐに切り替える。
「FUUUUU……」
「FUGAAAA!!」
間もなく、2体のオークがやってきた。
倒した1体の死体はゴブリンたちと同じく粒子となって消え、この場にはない。
だが流石に俺たちの存在は状況証拠として十分だったようだ。
「1体は俺が相手する。その間に、二人で1体を潰してくれ」
「えっ? ――あっ、はい!」
「……分かったわ。直ぐ倒すから、それまで何とか耐えて!」
一瞬だけ考えるような間があった。
だが、ソルアが直ぐに頷き。
そしてそのソルアの反応を見て、アトリも納得してくれた。
「FUU,FUGOAA!」
俺が相手をする1体は、おそらくあの会談で代表をしていた個体だ。
お楽しみを邪魔され、そして同胞を殺されていたくご立腹の様子。
……だが、ソルアとアトリを視界に入れ、顔を醜く歪ませる。
この落とし前は、そこの極上の雌二人でつけさせよう。
捕らえた後、一体どうしてやろうか。
そんな未来のお楽しみに妄想を膨らませ、再び興奮が全身を満たしている様子だった。
「まあ、俺は眼中にないというか、目障りな雑魚程度の認識だよなぁ……」
――でも、それでいい。
そうやって油断して、ホブゴブリンも死んでくれた。
戦局を1対1と2対1の二つに分けたのは、もちろんアトリが1対1に圧倒的な強さをもっているからだ。
そこにソルアが加われば、絶対にそっちでは勝てる。
だが一方で。
俺自身も別に、自分が足手まといになるからとこの役を引き受けたわけじゃない。
――ファム、また頼むわ。
≪うん! ボク、何が何でもアイツの背後、張り付くよぉ~! しゅっ、せいっ、てやぁ!≫
そう。
相手が1体に限定できるなら、再び俺は【索敵】とファムとの感覚共有で超回避スタイルをとれる。
また、回避性能を引き上げるからと言ってタンク性能を捨てるわけじゃない。
【身体硬化】もあるし、【フェアリーシールド】も【HP自動再生】も健在だ。
そして何より、【時間魔法】もまだ残している。
オークよ。
回避と防御が自慢の【時間魔法】使い虫タイプボッチ。
倒せるもんなら倒してみろ。
日間ランキング、何とか今回も3位をキープしております。
確認すると、年間にもランクインできていたようですね。
一時的なものではなく、継続的に皆さんが読んで、そして応援してくださっているのだと実感できて、本当にとても嬉しいです。
頑張って更新し続けている努力が報われるような思いです。
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