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31.縄張り問題、様子を窺(うかが)い、そして急襲

31話目です。


ではどうぞ。


『GOOB! GOB,GOGOGA!』


『FUGO……FU,FUGA』



 輪を作るようにして多くのゴブリンたちが集まっている。

 その中心に、一線を画す存在感をしたモンスターが6体。


 オークが3体、そしてまともな装備を身に着けた強そうなゴブリンが3体だ。

 オークも、アトリが倒した子オークより明らかに大きく、そして凶暴に見えた。

  


「……何言ってるか全然わからん」



 オークの代表と、そして強い個体のゴブリン代表が相対している。

 ファムと共有した聴覚からは、(かす)かなモンスターの鳴き声くらいしか届いてこない。



 しかしそれでも、この圧倒的なモンスターの数が、視覚に訴えてくる。

 これはただ事じゃないぞ、と。



「ご主人様、どういう状況ですか?」



 ファムと感覚を共有したと一早く察し、ソルアは真剣な表情をして尋ねてくる。


 出来るだけ詳細に。

 見えた光景を可能な限り正確に。

 

 言葉にして、同時通訳的に二人へ伝えていく。



「なるほど……オークはおそらく大人の、成体のそれでしょう。ゴブリンは“ナイト”ゴブリンでしょうか?」


「うーん。その特徴だと普通に“ホブ”ってこともあるかもしれないわね。“キング”ってことはないと思う」



 どういった種類のゴブリンだとしても、単なるゴブリンとは違う奴が3体いる。

 それだけでも十分脅威に思うべきだろう。



『FUGA! FUU,FUGAGA!』



 オーク代表が身振りで何かを訴えている。

 そして相手の代表も納得するように頷いた。



 しばらく話は続いたが、お互いに理解できる結論が出たらしい。



「あっ、終わったっぽい――ん?」


 

 全員が一斉に動き出すかと思いきや、半々になる。

 オークは円陣を作っていた半数のゴブリンを従え、先に帰っていった。


 強個体のゴブリン3体、そして残った半分のゴブリンたちはそれを見送った後、逆方向へと去り始める。


  

 ちなみに俺たちの進行方向と被るのはオーク組の方だ。



「二組に……それに、オークがゴブリンを率いる、ですか」

 

 

 状況を聞いていたソルアが、何か思い当たる節があるみたいな言い方をする。



「確たることは言えませんが、オークはもしかしたらホブゴブリン・マジックゴブリンの代わりかもしれませんね」



 一瞬どういう意味か分かりかねた。

 だが直ぐソルアが補足の言葉を繋いでくれる。



「要するに、代わりの頭というか、用心棒ってことだと思います。その半分のゴブリンたちが、元の地域・住処で活動するための」



 あぁ、そういう感じか。



「私が来る前に、マスターたちがどっちも倒したんでしょう?」


 

 アトリの確認に頷いて返す。



「マジックゴブリンの方、ドラッグストア内のゴブどもは片付けたはずだから多分違う。だからホブゴブリンの元下っ端たちか」



 モンスター同士の縄張り意識みたいなの、地球(こっち)に来てもあるのかぁ。

 あれはじゃあ“失った頭の代わりは俺たちオークが頼まれたんだから、こっちには入ってくるな”って感じかな?



「ですね。……ふぅぅ。では悪い想像はしなくても大丈夫でしょうね」



 今回は、ソルアが言わんとすることが直ぐに理解できた。

 

 要するに、オークも強個体のゴブリンも、加えて半分ずつに分かれたゴブリンも。

 全員が一つにまとまって何か事を起こすのでは、という懸念だ。

 

 あいつらが久代さんや来宮さんの臭いでも嗅ぎつけて“百均”へと侵攻する、みたいな嫌な想像をしたが。

 でも、そうではなかったらしい。


 やはり数はそれだけで脅威だから、一つにまとまられたら困ったことになっていたが……。



「でも逆に、また今がチャンス……って風にも言えるよな?」 



 顔合わせが済んだ以上、何かあればあの2グループは手を結ぶ可能性がある。 


 いくら欲望に忠実なモンスターといえど。

 ここらの地域の実力者たるホブ・マジックの両ゴブリンが死んだ今、自分たちも他人ごとではない、と。



 そして頭は代わったばかり、更に種族も違うオークが務めることになった。

 急ごしらえな集団としてのまとまりは、それだけで付け入る隙がある。



「まあ結局、私たちの行く先に向かってるんだし。どうせ戦うなら、より有利な状況の方が良いと思うわ」


「はい。行きましょう」



 二人も俺の意図するところをすぐに理解して、頷き返してくれた。     

 ファムという情報戦で最強の仲間のおかげで優位に立つ今、少しでも潰しておくに限る。


 そうしてファムの追尾を元に、オークのグループを急襲する準備に入った。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「……ファム、じゃあ“シールド”頼む」



 敵の集団の存在を、ファムと共有した視界内にしっかりと入れる。 

 仕掛けるための最後の仕上げをするため、ファムに得たばかりの能力を発動してもらうことに。

 


≪うん! じゃあ、行くよ――【フェアリーシールド】!≫



 空に浮かび続けるファムは、円を描くように指を宙でクルッと回す。

 そこから光が生まれ、光線を放つようにして俺たちに向けて飛ばしてくる。


 届いた光は薄い半透明の黄色い膜となって、俺たちを包み込んだ。


  

「んっ、ぁふぅ――」


「あっ、んぁ――」



 ……いや、確かに温かい何かに包み込まれる気持ちいい感覚はあるけど。

 お二人さん、そんな色っぽい声出さないでくださる?


 変な気分になっちゃうでしょ。



「――よしっ。これで行ける」



“シールド”という技名の通り。

 対象に、魔力によってできたシールドを付与するものだ。


 ただ、純粋に耐久を上げるみたいな効果じゃなく、一定のダメージ分を肩代わりしてくれる。



「私も、準備完了です」


「こっちも大丈夫よ。いつでも行けるわ、マスター」



 ソルアは【光核(ライトコア)】を傍に浮遊させ。

 そしてアトリは既にうっすらと【魅了(チャーム)】の霧を、【フェアリーシールド】の上から体に纏わせ。

 

 後は襲撃のタイミングを待つだけとなった。



『FUUUUU……FUGO,FGGOGO!』



 集団はリサイクルショップの前で止まる。

 オークの1体が何かを指示すると、残り2体も頷いた。

 

 3体ほど、ゴブリンが中へと入らされる。 

 


「…………偵察か?」

 


 しばらくすると、中に入ったゴブリンが戻ってくる。

 報告を受け、オークたちが頷き、入れ替わるように中へ。



 だがゴブリンたちは外で待機させられる様子。

 中の物資の優先権は用心棒から、ってわけか。



 一緒に入って仲良く分ければいい物を。

 そんな気配りも思いやりもないのが実にモンスターらしく、そして急づくりの集団らしいと言える。



「……今、だな」



 せっかく集団という数の強さを得たのに、それをみすみす手放す瞬間を作ってくれたのだ。

  

 オーク3体を相手にするのに、何体ものゴブリンに邪魔されるのはやはり不安要素の一つ。

 今、潰しておこう。



「10,11,12……20もいないな」


 

 何体かは見張りなどまともに行わず、地面に寝転がって(くつろ)いでいる。

 ありがたい、隙だらけだ。



「行くぞ――」


「はい」


「うん」



 二人の返事をしっかりと耳にし、前哨戦を開幕させた。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



【操作魔法】を発動する。

 ホブゴブリンの時とは違い、小手調べ的にやるつもりは一切ない。


 確実に数を減らす意思で行く。



 操った大きな瓦礫(がれき)が物凄いスピードで飛んで行った。

“魔力”の能力値がかなり上がったからか、今まで以上に随分と力強く、そして速さがでた。

     

  

「GUBO――」


「GUGYA――」



 しかもそれを同時に複数操ることができた。

“器用”の上昇もそうだが、やはり【魔術師】のジョブを得たことで【魔法】関連のスキルがかなり使いやすく感じる。



 っし!

 二匹潰した。



「GOBUA!?」 


「GO,GOGYAA!」



 ゴブリンたちは何が起こったのか、直ぐには理解できないでいた。

 その隙を逃さず――



「はぁぁっ!」


「やぁぁっ!」


 

 ソルアとアトリが一斉に駆けだす。

 俺も遅れずゴブリンたちへと突っ込んでいった。



「GOGYA!?」



 ファムが全体を俯瞰(ふかん)するように空から見続けてくれるので、戦況の把握がとてもやりやすい。

 レベルが上がり範囲がより広がった【索敵】と合わせ、今度は戦場全体の動きを理解するのに凄く役立ってくれている。


 

「【フラッシュ】っ! ――せぁっ、しっ、やぁっ!」



 ソルアは【光核】を使って眩い光を放ち、付近のゴブリンをスタンさせる。

 動けないゴブリンを流れるように切っていった。



「ふんっ、らぁっ、りゃぁぁ!」



 ピンクとも赤ともつかないとても綺麗に輝く剣線が、空・真上からも見えた。

 アトリに近づかれたゴブリンは一瞬にして魅了され、そして一瞬にして特大のダメージを与えられる。


 あれは追加ダメージと思っていたが、ごく稀に発動されないので、急所(クリティカル)率が大幅上昇してるんだろう。

 本当に、凄い音が聞こえてきそうなくらい、アトリの加える一撃は威力がおかしい。

 


「おっらっ! うらっ、おりゃぁ!」



 こちらも負けずに、一人暮らしを始めた時からの相棒を振るう。 

 包丁の切れ味が上がったというわけではないのに、ただ切ったゴブリンが(ことごと)く致命傷を負っていった。     

 

 奪った【剣術】が、上手い使い方をセミオート的に導いてくれるのはもちろんだが。

 それ以外にも“筋力”の上昇が大きく貢献してくれているようだった。

 


「GOBAAA!!」


「っと!」



 そりゃ中には果敢にというか、襲われたことへの怒りで攻撃してくる個体もいる。

 こっちが他の個体を攻撃した後を上手く狙われ、全部をかわしきることはできなかった。


 ……だが刃が俺の肌を傷つけることはなく。

 体にまとわれた黄色い膜の一部が破壊されるだけにとどまった。


【フェアリーシールド】が守ってくれているのだ。

 


「“()ったか?”は、フラグだから、やめとけよっと!」

 

「GUGYU――」



 集団戦だと回避特化は難しいが、【フェアリーシールド】がお守り代わりとして大胆さを可能にしてくれる。

 新しく習得した【HP自動再生】もまだ機能してないが、戦闘スタイルをタンクへとシフトする心理的な助けになっていた。


 ケガしてもちょっとずつだが回復できると思うと、その分だけちょっと大胆になれる。



 ……っと! 

 そこ、見えてんぞ――



【索敵】、そして空からドローンのように一帯を見てくれるファム。

 この二つが戦場の完全な把握を容易にし。

 そして戦場の中心から距離をとり、漁夫の利を狙う個体の存在を教えてくれた。


 戦況が悪いので逃げ出そうという意志もありそうで。

 しかし目の前の極上の(メス)二人――ソルアとアトリを何とか自分の物に出来ないか。


 そんな保身と打算とが天秤にかけられている最中のような感じだった。



「おりゃっ――」



 何の挙動もなく、【操作魔法】を発動。

 死んで消えたゴブリンが残したナイフを操る。



「GOBA――」



 命中。

 まさか自分が狙われるとは――そんな死に面をして、離れた位置にいたそのゴブリンも消滅した。


  


「――ふぅぅ……」


「うん。綺麗に片付いたわね」



 そして間もなく。

 リサイクルショップの駐車場から、ゴブリンの集団を綺麗サッパリと倒しきったのだった。



    


日中、久しぶりに頑張って運動したら、疲れすぎて爆睡してました……。

この後寝れるかわかりません(涙)


日間ランキングは何とか3位をキープしております。

投稿から約1か月たつ中、こうして未だに上位にランクインし続けていられるのも読んでくださる皆さんのおかげです。


日々その応援で、執筆するためのとても大きな力やモチベーションをもらっています。

今日なんかは「もう運動で精一杯に頑張ったんだし、他には頑張らなくていいんじゃない?」とそれらしい友人ぶったことを言ってくる悪魔がおりましたが、おかげで撃退に成功できました。


本当にありがとうございます。


今後も是非ブックマークや広告の下にある★★★★★のボタンの方、していただけますと大変執筆の際の励みとなります。


よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
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[良い点] ガチャ要素大好きなので楽しく読んでおります! [気になる点] いくらデフォの衣装とはいえ恥女同然の格好してたら男に絡まれてもそりゃそうでしょ、としか思えないので、主人公はせめて上着くらい見…
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