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79.今後の予定

「ポートマス神殿長にアニス、戻っていたのですね。お帰りなさい。……ふぅ、これでやっと院長代理から解放されますね」


 神殿前広場での私のお披露目を終えたあと、すぐに王都を出立。道中は特に何事もなく、平穏無事にアプリコ村へと帰ってきた。

 そして精霊院に顔を出すと、パラデシアがそんなセリフと共に出迎えてくれる。


「それで、アニスはまた何かやらかしたりしませんでしたか?」


 ちょっ!? 私がいつもやらかす前提で話進めないで!! ……と思ったんだけど、やらかしてるから何も言えない。


 とりあえず褒美の知識を順調に貰ったところから話し始め、そのあと豚人に難癖つけられて稲妻キックを放ったこと、そのせいで目立ってしまったため、変な噂が広まる前に神と精霊の信徒としてお披露目したこと、などを院長の補足を交えながら説明した。

 あ、褒美の知識の詳細は話してないよ。学園長と軍事長に言われた通り、あれは私だけが知って良い内容なので。パラデシアも神殿長もその点は理解しているので、詳細を聞いてくるようなことはしない。


「はぁ……貴女のやらかしで、一年後に神殿入りですか。まぁ、アニスの立場を確固たるものにするという点では、それが一番確実なのは間違いありませんわね。ですが、これから一年間、神殿でまったく姿を見せない天の使い、というのはどう説明するのですか?」

「お披露目で少々力を使い過ぎており、かつ元々病弱であったため、別の地にて療養中ということにしています。これならば、何らかの思惑がある貴族等が神殿へ面会に訪れても断るのに不自然ではありませんし、病弱という点以外はあながち嘘ではありませんからね」


 と、いうことになってるらしい。一年後、療養と身体の成長のおかげで病弱具合が改善された、とでも言ってひょっこり神殿に戻れば問題なし、というシナリオのようだ。


「病弱はまぁ良いとして、力の使い過ぎ、というのは嘘ではないわけですね? アニスが魔力枯渇に陥ったという状況は今まで無かったと記憶していますが、どういうことですか?」

「客観的に見たら、という言葉が付きますけどね。天に向かって放たれたアニスの雷撃が、儀礼用とはいえ普通の杖を使っただけで想像以上の威力になってしまったのです。そうでしたね? アニス」

「はい。私もあれにはびっくりしました」


 そうなのだ。私のイメージでは一筋の雷を空に放ったつもりだったのだが、イメージとは裏腹に無数に枝分かれして、広範囲に渡って雷撃が放たれてしまったのだ。

 魔法は宝石を介することでその効果と安定性を増す――。

 話には聞いていたけど、まさかこれほど効果があるとは思っていなかった。


「いえ、それはおそらくアニスの魔力量が桁違いなのと、魔力感知が出来ないせいでしょう。貴女は魔法のイメージをそのまま再現しようとして、感覚のわからないまま魔力を込めているはずです。本来なら感覚で魔力量を調整し、宝石を介することで安定性を向上させ最適化、イメージ通りの魔法を放つものです。ですが貴女はその有り余る魔力量によって力技でイメージを具現化し、その上で無理矢理安定させようとしてさらに魔力を込めている可能性があります。その結果、イメージ外の意図しない部分で過剰な威力が発生、話に聞く豚人のような被害が出てしまうのです。憶測ではありますが、当たらずとも遠からずなはずです」


 そう言われて、今までの魔法の失敗を思い返す。最初の火柱、電気による身体能力向上で大怪我、ゲームの技を再現して肩の脱臼などなど……。うん、納得しかない。


「そう仮定すると、アニスが杖を使った場合、想定よりも過剰な魔力が宝石に流れ込んでしまうため、イメージとはかけ離れた効果が発揮されてしまっているのでしょう。……そうなると、アニスが杖を使うのはやめておいたほうが良いのかもしれませんね」

「魔導師が杖を持っていない、というのは少々おかしいので、イミテーションの宝石を付けた杖を持つのが良いでしょう。アニスの魔法には安定性が足りないのでできれば宝石を使いたいですが、あの過剰な効力を毎回発揮されるよりは安定性を捨てたほうが遥かにマシですので」


 ぐっ……酷い言われようだが返す言葉もない。


「杖の話はそのくらいにしましょうよ。どうせ村の中では持ち歩く必要なんてないんですから。それよりも、一年で私が覚えないといけないことが色々あるんですよね?」


 一年後には神殿で生活することになるのだから、当然神殿の慣習やしきたりを覚えなければならない。そのため、定期的に精霊院で宿泊を伴う予行練習をしようという話を帰路でしていた。


「そうですね。実際に神殿の生活を体験しておけば、向こうでの暮らし方も早く馴染めるでしょうし。……覚えるといえば、サクシエル魔法学園はどうするのですか? 神殿所属となれば学園の入学は絶対ではありません。入学する気が無いのであれば、貴女への授業内容を少し見直す必要があります。今までの内容は学園の授業対策を含んでいますので」


 魔術士と魔導師は学園を卒業して国所属になるか、信徒になって神殿所属になる必要がある。神殿所属でも学園の入学は可能で、パラデシアがその身近な例だ。


 で、私の入学だが、正直まだ決めかねている。私の最終目的である『元の世界に戻る』ということを考えると、学園に入学する必要性が今のところ見出だせないからだ。

 元凶である鼠人ベンプレオ、その捜索には学園の地下にいる同じく鼠人のパレトゥンさんの力が必要ではあるが、学園に入学しなくても彼に会うことは可能だろうし。


 ただ、ひとつだけ、考える必要があるとすれば――。


「私はまだ考え中ですけど、モモテアちゃんに関しては学園の卒業をさせておいたほうが良いですよね?」


 私が学園に入学せずに神殿に居続ければ、付き人としてモモテアちゃんも側に居続けることになるだろう。だがモモテアちゃんの将来を考えるなら、それではダメだ。


 モモテアちゃんは本来、自由であるべき子だ。だが私という存在のせいで、私の付き人という役割を押し付けている負い目がある。

 あの年で魔術士級の魔力を持っておきながら、私が魔力感知をできないせいで私の側を離れることができず、あり得たはずの将来の幅を狭めているのだ。


 モモテアちゃんは今は私と一緒にいたいと思ってくれているようだが、これから色々な経験をして、いつかは自分の道を見付けるかもしれない。

 もしその時になって、ずっと私の側に居たせいでその道がすでに塞がってしまっている、なんてことになってたりする可能性を、私は看過できない。


「モモテアちゃんを学園に入学させるには、私も一緒に学園に入学するしかありませんよね……」

「モモテアの将来を考えるならば、そうするしかありませんね。では、当初の予定通りモモテアが10歳になったらアニスと共に入学する、ということで。二人の学費に関しては神殿側が持ちましょう」


 そういえば学費が相当高いんだった……!!

 私は自力でも払える手段があるけど、モモテアちゃんの両親にはそんな経済力は間違いなく無い。

 私自身は神殿所属になるわけだし、モモテアちゃんも信徒ではないにしても関係者として、払ってもらえるというのなら払ってもらおう。

先週は更新できず申し訳ありませんでした。

今週からまた頑張りますので、今後とも宜しくお願いいたします。

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