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13.魔導師級の魔力

 魔力とは何なのか? という質問をしたところ、魔術士三人に加え院長も頭を捻り出した。


「魔力が何なのか……。抽象的かつ哲学的な質問だな。魔力とは、一般的にはイメージを魔法として放つのに必要なエネルギー、と言われている。魔力を持つのは個人の資質・才能によるとも言われているため、魔力の有無は生まれつきによるものという説が有力であるが、後天的に魔法を使えるようになる者も少なくはないので、議論に決着は着いていない」


 ん~? 要約すると「よくわからない」って言ってないそれ?


「でもまぁアニスちゃんも魔法が使えるなら、魔力を感じることができるはずよ。私が魔力を高めてるのわかるわよね?」


 マナマトルさんはそう言うが、私は何も感じない。というか魔力って感知できるものなの?


「いえ、全然わかりません」


 すると私以外の全員が神妙な顔付きになる。ワオ、またこのパターンか!!


「おい、それってマズくねぇか?」

「だいぶマズいわね……。一つ尋ねていいかしら? もしかしてアニスちゃんのその怪我って?」


 カレリニエさんに尋ねられたので、正直に魔法の制御の失敗で怪我したことを、院長の補足を交えながら説明する。ただし電気の魔法は異端なので、そのことは隠しながら。


「――とすると、アニスちゃんは自身の魔力量を感知できないせいで、魔法を放つ際に魔力の制御調整ができない、と。魔術士級の魔力があっても、それじゃあ魔術士になるのはあまりに無謀だわ。できるかわからないけど国に特別措置の申請をしたほうが良さそうね」

「一応、威力や効果を正確にイメージできれば問題なく放つことはできますけど。……というか普通は魔力を調整して威力を制御するものなんですね魔法って」


 やはり私の魔法はイレギュラーの塊のようだ。


「一度の魔法で、どれだけ魔力が込められるか調べたほうが良くないかしら? 魔法のイメージを練って詠唱する直前の状態なら、その威力を私達が魔力感知することができるから」


 なるほど。私の魔法を知る上でそれは重要だ。私は即座に「お願いします」とマナマトルさんに言う。


「とりあえず火の玉なり水の玉なりをイメージして、一つ一つ増やしていくの。そうして増やしていって軽い疲労感が出てきたら、それが一度に放てる魔力の限界値ね」


 私は目を閉じて言われた通りにイメージしてみる。もし何かの間違いで発動などしてしまった時が怖いので、火ではなく水玉をイメージ。


 ……だが、50を数えた所で面倒臭くなってきた。全く疲労感が出てこないので、一旦イメージを中止する。


「水と氷ってどっちが魔力消費大きいですかね?」

「それは冷やすイメージを追加しないといけないから氷のほうが大きいけど……もしかしてまだ魔力に余裕があるの?」

「少なくとも疲労感は全然きませんね。もうちょっと効率の良いイメージに変えてみます」


 なんとなく私の魔力は多いのではないかと思ってはいたのだが、「……あれでまだ余裕とか嘘でしょ?」というマナマトルさんの呟きで確信した。たぶん私の魔力量は規格外だ。

 このあとに起こることはなんとなく予想できるのだが、しかしここで私の魔力調査を止めるという手はありえない。今後のためにもここで調べておくのは必須だ。

 若干憂鬱な気分になりながら、再びイメージを高めていく。


 氷の玉を最初から50個イメージ。う~ん、やはり余裕だ。これならいっそ、私の周りに出現させるイメージではなく、空から降らせるイメージにしたほうが良さそうな気がした。つまり雹だ。


 そんなイメージをした瞬間、魔術士組が血相を変えて私に武器を向けた。

 そのあまりの形相にびっくりして、私は「うひゃぁ!!」と情けない声を上げながら椅子から転げ落ちてしまった。当然イメージも霧散する。


「な、何なんですか一体!! どうしたんですか!?」


 打った背中を擦りながら、私は訴える。


「アニスちゃん今……どういうイメージをしたの?」

「どういうイメージって……、一つ一つ増やした程度じゃ変化無さそうだったので、空から氷を降らせるイメージを練ったんですけど……あっ」


 お父さんとの会話を思い出せ!! 魔法使い級、魔術士級、魔導師級の違い。それは魔法の威力や効果だ。『魔物の大群に立ち向かえたり、地形や天候を操れるレベルになると導ける者として魔導師と呼ばれる』。

 そう、私は天候を操ろうとしたため、魔導師級の魔法をイメージしたわけだ。

 魔力量で驚かれることは予想していたが、私が魔導師級であるというのは完全に予想外だ。


「こんな子供が魔導師級だと!? いやちょっと待て。疲労感の方はどうだ?」


 ロニスンさんの問いに手のひらをグーパーしてみたりして確認する。そして私の血の気が引いた。


「余裕です……」


 魔法そのものは発動していないが、放つ直前までイメージした魔法で疲労を感じず、その魔法で魔導師級の魔力を魔術士組が感じ取ったのならば、それはそのまま魔導師級の魔法が放てる、ということになるのだろう。


 みんなの表情が複雑になる。私の今後を憂うような表情、単純に希少な魔導師の発見に歓喜する表情、魔導師の発見でこれからどういうことが起こるのか考える表情など。

 魔導師級は国に数人しかいないらしく、魔導師ともなれば国に重用され、人々に尊敬され、一生安泰の暮らしが約束されると聞いたことがある。

 果たしてそれが良いことなのか悪いことなのか、今の私には判断が付かないが――。


「皆さん、このことは口外無用でお願いします。アニスが魔導師となるのは色々と問題がありますので」


 何かと察しの良い院長でも、さすがにこの事態は想定外だろう。院長がそう言ってくれた。先程、魔力感知ができないせいで魔術士には向かないと言われたばかりなのだし。


「本当に問題なのか? 魔力感知ができないとは言っても、さっき嬢ちゃんはイメージさえ正確にできれば放つのに問題はないと言ってたが」


 くっ、ロニスンさんめ余計なこと。


「大アリよ。魔力感知ができないとなると、魔法の不意打ちに対処できないじゃない。意識してない所から魔法が飛んできたら簡単に死ぬわよ」


 なにそれ怖っ!! そうか、魔力感知ができないってことは他人の魔法の発動もわからないから、不意打ちに対して無力なのか。


「それにさっきの魔法が万が一発動してたら、アタシ達に対処する術は無いわ。本人が魔力の制御を確実にできないと、そのうち大事故に……キャー! アニスちゃんごめんなさい!! 落ちっぱなしなのにアタシとしたことが放ったらかしちゃてた! それにこんな話、本人の前でするべきじゃないわね」


 そう、私は椅子から転げ落ちたまんまなのだ。立ち上がれないことはないが、一人で立ち上がるのはまだ不安なので、そのまま地べたに座っていた。

 いやまぁそれはどうでもいい。本人の前で話すことじゃないと言われたが、さすがに今後の将来に関わってくる話だ。

 アニスになった時に思った、平凡に過ごしたいという思いから高速で遠ざかってて、もうとても面倒臭くなってきたのだが、無視はできないので是非とも話を聞かねばならない。


 カレリニエさんの手を借りて椅子に座り直し、皆が少し落ち着いてきたので、さぁ話を再開しよう! としたところ、精霊院の院生さんが他の子供達がお昼を食べて戻ってきたことを告げに来た。

 タイミング悪い!!


 仕方がないので今日はお開きとし、今夜にでも院長と亜人さん達で私の今後について話し合ってくれるらしい。私も話し合いに参加できたら良いのだけれど、私にはまだ基礎知識と常識が足りないこと、そして子供が夜に出歩くのは禁止されているので、完全にお任せするしかない。




 その夜、話し合いの結果で今後の私がどういう扱いになるのかとても気になって、とても眠れそうにない……と思ったのだが、子供の身体なせいか案外ぐっすり眠って翌日になるのであった。

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