表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の扱いが難しい!!  作者: 匁 参七伍


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/118

112.閑話 アタシのお姉様

 アタシの名前はモモテア・タンテロン。農家の娘です。

 穏やかな村でいつも通り過ごしていたある日のこと、両親と共に農作業をしていたら、丘で火柱が立ちました。原因は一歳年上のアニスお姉ちゃんが魔法を使ったとのことです。そして、その日からアタシの日常が変わっていきました。


 魔法を使えるようになったアニスお姉ちゃんはその翌日に大怪我をしたり、怪我が治ったあとも魔法の勉強が忙しかったりであまりアタシと遊んでくれることが無くなり、アタシは寂しい思いを募らせていきます。


 そんな折、時折身体がゾワゾワする感覚がよく起こるようになりました。院長先生に相談してみると、魔力感知による現象だとのことです。それはつまり、アタシに魔術士級の魔力があることがわかった瞬間でした。

 一応、それまでも魔法使い級の魔法が使えそうなことは自分でもなんとなく感じていたけれど、アニスお姉ちゃんが魔法で大怪我したこともあって、魔法を使うことがなんだか怖く、今まで誰にも言えませんでした。


 ただ発覚してからは、院長先生の説得もあって考え方を改めました。アタシが魔法を使えれば、これからもアニスお姉ちゃんと一緒に居られるかもしれない、また昔のように遊んでくれるかもしれないと思ったのです。驚かせるためにお姉ちゃんには黙っていてもらうように院長先生にお願いして、それから魔法の勉強を密かに始めます。

 ですが、アタシは火属性の魔法があまり得意ではありませんでした。……心当たりはあります。丘で上がった火柱によって、アニスお姉ちゃんが危なかったかもしれない、という話を聞いたからです。その話を聞いて以来、アタシ自身が心の奥底で火属性だけはいまだに怖いと感じているのです。


 でも、それ以外は順調でした。魔法でアニスお姉ちゃんを驚かせることに成功したこと、お姉ちゃんは魔力感知できないからアタシが側に居て助けるように言われたこと、お姉ちゃんはこれから偉い人とも付き合うことになるからお姉様と呼び方を改めるように言われたこと……。

 いろんなことが変わっていったけど、アタシはそれで満足でした。


 それからは付き人としてお姉さまの助けになるように勉強し、剣術なども習っていたそんなある日、お姉さまと共に王都に行くことが決まりました。

 初めての王都は見たことない物がいっぱいあって、楽しいことも面白いことも色々ありました。そして同時に、アタシがお姉さまを守るのにまだまだ力不足だということも実感しました。

 お姉様を守ると息巻いておきながら、いざ戦闘になると恐怖で立ちすくみ、豚人のラッティロさんとの戦闘でアタシはあまり役に立てなかったのです。

 他にもテーブルマナーがわからなかったことで迷惑をかけてしまったりしたので、村に帰ったあとにパラデシア様からの提案で、半年間プルーメトリ家で侍女見習いとして修行し、お姉さまの付き人として相応しい技術と知識を学ぶ機会を与えてくれました。

 修行中はお姉さまもお父さんもお母さんもいない環境で心細く、最初の頃はよく泣いたりしてしまったけれど、プルーメトリ家の方々は皆優しくしてくれた(パラデシア様のお兄様だけはちょっと苦手でしたが)おかげで、なんとか無事にお姉さまの付き人として恥じない程度にはなりました。


 その後はお姉さまと共に神殿入りし、お姉さまの身の回りのお世話をしながら剣術と魔法の腕を磨いていきます。

 剣術を習っていた時、どうもアタシには短剣のほうが扱いやすいということがわかりました。それからは短剣が扱える神殿関係者に教えを請い、短剣術にシフトしました。


 神殿での生活を数ヶ月ほど過ごすと、お姉さまの巡礼の旅が始まりました。最初の頃は順調でしたが、パラデシア様が強行した盗賊退治で馬車と馬が半分やられたり、アタシとお姉さまが初めて人を殺す経験をしたりします。人を殺したという事実に最初はショックがありましたが、アタシはお姉さまのためにやったことなのですぐに割り切ることが出来ました。しかし動物や魔物すら殺すことを嫌がっていたお姉さまにはかなり酷なことであったようで、しばらく精神的に参っている様子に、何も出来ないアタシは歯がゆい思いをしていました。


 そんな状態になりながらも巡礼の旅の目的地であるラルクシィナに着くと、大きな出来事が起こりました。お姉さまがラルクシィナ神殿の聖地で祈った直後、お姉さまの時間が止まったのです。

 すぐに原因を究明しようとするも手掛かりは何もなく、丁度ラルクシィナに滞在していた魔導師級の時空魔法使いであるエミリアさんにどうにか出来ないかと相談してみましたが、魔導師級の力を持ってしても解除できないほど強力な力だと言われました。

 これはひょっとすると神か精霊の仕業ではないか? と皆がヤキモキしながら二日ほど経った時、お姉さまの時間停止が解けて戻ってきました。

 疲労困憊のお姉さまにパラデシア様がなんとか聞き取りをおこなうと、お姉さまは神様と会っていたというのです。細かいことはよくわからないけれど、お姉さまはとても凄いことをやったのだ、ということは頭の良くないアタシでもわかりました。アタシもなんだか誇らしい気分になります。


 それからお姉さまは疲れから眠ってしまい、翌朝起きた時にはいつものお姉さまに戻っていました。時間が止まる前の精神的に参っていた様子がまるで無くなっていたので、神様に会った時に何かあったのかもしれません。

 お姉さまと、時間停止の解除を試みてくれたエミリアさんと一緒に朝食を摂っているとパラデシア様たちが戻ってきて、急いで神殿を出ることになりました。

 お姉さまをしつこく勧誘する面倒な神官たちをやり過ごし、帰路につきます。


 魔物退治等の人助けをおこないながら進み、もうすぐ王都に着くというところで、お姉さまが捜索を依頼された鼠人というのが現れました。

 でもその鼠人はなんだかおかしく、まるでお姉さまを知っているかのように、しかし意味のわからない内容を話し始めたのです。


 理解は出来ないながらも、話の流れから戦闘が避けられないというのは直感的にわかりました。程なく戦闘が始まり、お姉さまと分断されるなど戦況が目まぐるしく変化するも、お姉さまの無敵の盾とエミリアさんの時空魔法によって、最終的に鼠人を制圧することに成功します。


 ですがここで問題が起きました。鼠人とエミリアさんがよくわからない会話をしたと思ったら、二人は消えてしまったのです。せっかくお姉さまが捕まえた少女も同時に奪われてしまい、お姉さまは今まで見たことないほど落ち込んでしまいました。


 ひとまず馬車に戻り、どうやら何かしらの事情を知っているウィリアラントさんが説明を始めますが、アタシの頭ではよく分かりませんでした。

 でもそんなアタシでも断片的になんとなく分かることはあります。お姉さまは別人で、本物のアニスお姉ちゃんではない――そしてそれはつまり、アニスお姉ちゃんに成りすましてアタシたちを騙していたということ。


 今まで信じていた人にずっと騙されていた――。それがわかった時、私の感情はよくわからなくなりました。今のアタシが感じているのは怒りなのか、悲しみなのか、失望なのか……その正体を定めたいと思ったのか、アタシはほぼ確信し、確定している事実を確認するかのように、無意識に言葉を発していまいた。「ずっと騙してたの?」と。


 お姉さまはビクリと肩を震わせたけれど返答はありませんでした。代わりに、アタシの視界がいきなりブレました。

 直後に頬に痛みが走ります。一瞬何が起こったのかわからなかったけど、ブレた視線を戻した時に、目の前に険しい表情のパラデシア様がいたことで、状況を理解します。

 アタシは、パラデシア様の平手打ちをされたのだと。パラデシア様は言葉こそ厳しいですが、今まで手を上げるようなことは一度もしたことがありません。そのパラデシア様が手を上げた――。


「はぁ……モモテア、あなたはアニスが騙したくて私達を騙していたのだと、本気で思っているのですか?」


 パラデシア様のその言葉と、手を上げるほどに怒っているというその事実。アタシの不用意な発言によって、あれだけ慕っていたお姉さまの信頼を、自分自身で裏切ってしまったのだということに気が付いたのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ