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105.魔法行使の種類

大変お待たせ致しました。更新再開いたします。

 瞬間移動したことにより、私達と神官たちが互いに後ろを向いている状態となった。そしてパラデシアが神官たちに向き直り「それでは御機嫌よう」と挨拶したところで神官たちがこちらに気付くも、私達は神官たちを無視してそのまま出口へと歩みを進める。


 厩舎に着くと、すでに馬車の準備は済んでいた。私がご飯食べてる時に終わらせていたらしい。

 多少なりとも追手や妨害が来るかと思っていたのだが、どうやら私の機嫌を損ねるのが一番マズイと思われているようで、特に何事もなく出発、旧王都ラルクシィナを出ることができた。


「――今後の道程って、海沿いを北上しながら王都カイエンデに戻る、で良いんですよね?」

「そうです。できればその道中、王都へ着く前に色々と話し合いたいことはあるのですが……まぁ戻ってからでも問題ないでしょう」


 パラデシアはそう言いながらチラリとエミリアさんを見る。

 話し合いたいこととは、おそらく私とあののじゃロリ神に関することだろう。どう考えても内容を精査する必要がある。……あるのだが、問題はこの場に部外者であるエミリアさんがいるということだ。

 帰路への同行にエミリアさんが必要だという神のお告げがあった以上、彼女をパーティーから外すという選択肢はない。しかし彼女が同行している間は、この国の信仰の根幹に関わる話をするのは少々マズいのだ。


 そういうことなので、私はエミリアさんと世間話をすることにした。


「さっき私達を瞬間移動させたのって、時空魔法ですよね? しかもそれなりに強力な」


 時空魔法はかなりの使い手でもコップ程度の物を30分程度止められれば良いほう、という話である。

 時空魔法はその操作する時間、空間、距離に比例して魔力消費が大きくなるとのことなので、私達9人という大所帯を10メートル程度瞬間移動させる、というのはなかなか魔力消費がデカいはずだ。

 魔術士級の時空魔法使いであるグラッジーア軍事長でさえ、サクシエル魔法学園の学園長室で見せてくれた直径5メートル程度の空間を数秒間止める時空魔法が奥の手だと言っていた。

 そのことから考えると、今回の瞬間移動の規模はグラッジーア軍事長の奥の手に匹敵する可能性が高い。


「そうですよ。僕達を時空魔法で包み込み、道を塞いでいた神官達の後ろに出口を設置して、空間を切り貼りしたんです。でも強力……かどうかはわかりませんね。一応僕の魔力量は、この国の基準で言えば魔導師級というのになるらしいんですけど、僕レベルの魔力量なら僕の国ではそう珍しくはありませんし」


 ……嘘でしょ!? こっちでは魔導師級どころか魔術士級ですら貴重になってきているというのに、西大陸ではゴロゴロいるなんて!!

 しかも魔導師級の時空魔法使いとなると、ヤバいなんてものじゃない。いったいどれほどの規模で時空魔法を展開できるのか想像も付かない。


「エミリア、確か貴女は契約魔法の使い手でしたわよね?」

「そうです。向こうでは契約魔法が一般的ですので」


 いきなり知らない単語が出てきた。


「これは魔法学園に行けば補足程度に習うことですけれど、魔法の行使には精霊魔法、契約魔法、精霊降ろしというのが存在します。この国で最も普及している、四属性の魔法を操るのが精霊魔法に分類されます」


 つまり私やパラデシア、モモテアちゃんや他のみんなが使っている魔法は全て精霊魔法なわけか。


「契約魔法とは、火か水、地か風のどちらかと契約し、相反する属性が使えなくなる代わりに精霊魔法より強力な魔法を扱うことができる、と聞いたことがあります。実際に使う人を見るのは私も初めてですが」

「僕が契約したのは水と風ですね。なので火と地属性の魔法は使えません」


 これは……あののじゃロリ神が言っていた「信仰は枷であると同時に力」の法則によるものか。契約すれば制限が掛かる代わりに力が得られる、と西大陸では信じられているから、それが法則となっているのだろう。

 それならば魔導師級がゴロゴロいるという話にも納得がいく。


「それじゃあ精霊降ろし、というのは?」

「学園の授業で軽く聞いた程度ですけれど、どこかの民族が祭り事や戦闘の際に、精霊そのものをその身に宿して精霊の化身となる、というものだそうです。火の精霊を宿せば自身が火そのものとなるのだとか。ただしその民族は外部とあまり友好的ではないため、精霊降ろしというものが確認できた、程度の研究しか進んでいないようです」


 つまり精霊魔法は全属性を扱える代わりに魔力は弱く、契約魔法は使える属性が二種類になる代わりに魔力は強く、精霊降ろしは一種類しか使えないがより強力な魔法を使える、という認識で良さそうだ。

 のじゃロリ神曰く、属性という枠組みは本来存在しないとのことなので、それを理解している私なら精霊降ろしで雷の化身といったものになれるかもしれない。しかし頭で理解していても私が時空魔法を使えないように、精霊降ろしも素質に左右される可能性もあるので、まぁとりあえずそういうものも存在する、程度で頭の隅に置いておこう。


 契約魔法に関しては……精霊魔法の汎用性の高さを考えると躊躇うなぁ。普通に生活をしていても、四属性の魔法は頻繁に使うのだ。喉が渇けば水を出し、ちょっと寒いなぁと感じたら火を出して暖を取り、逆に暑さを感じたら風で涼を取り、日課のトレーニングで鉄アレイ必要だと思って地属性魔法で作り出したり。まぁ鉄アレイは私しか作れないにしても、その他に関しては他の魔力持ちにとってもそういった使い方が生活に根ざしている。

 私自身が魔導師級なのもあって、契約魔法を選択するメリットはいまのところ無さそう。


「じゃあエミリアさんは水と風、そして時空魔法を駆使しながら、そのでっかい剣で戦うスタイルなんですね」


 今は馬車の中なので外しているが、乗り込む前まで背中側の腰にやたらとデカい剣の鞘を付けていた。

 エミリアさんは私の質問に肯定しながら、片手で軽々とその剣を持って鞘から少し刀身を覗かせる。そこには真っ黒に光る板にしか見えない刀身が出てきた。


「そうです。この剣は騎士だった父が僕のために特別に作らせた一品で、地属性で強度を高く、風属性で軽く扱えるようになっています。ただし、その機能は僕が持った時にしか発動しません」


 要するに、この剣は高強度と軽量化の魔法陣を組み込んだエミリアさん専用の魔道具、というわけか。……もしかしてこの人、相当良いとこのお嬢さんなのでは? なんで旅なんてしてるの?


「あ~、僕の剣と時空魔法の先生が、ある人物を探し当てることが最後の試験と言われてね。その手掛かりを追ってこっちの大陸に来たんだ」

「人探し……ですか?」

「僕も先生も会ったことはないんだけど、先生が言うには絶対に生きてるから探し当てること、とね。クランカイゾっていう人らしいんだけど」


 クランカイゾ? なんか聞いたことある気がするような?


「ラリオス滅亡戦争の切っ掛けになった、ラリオス国の元隊長の鼠人、だと聞いてるね。どなたか知りませんか?」


 鼠人!? 私が知っている鼠人は……学園の地下で自ら軟禁しているパレトゥンさんと、私を殺した犯人である魔将ベンプレオ。クランカイゾという名は……あっ、パレトゥンさんが探してる同胞、みたいな感じでチラッと言ってたような気がする。ラリオス滅亡戦争の際に、ベンプレオと共に消息不明になったとかなんとか。

 とは言えそこで名前を聞いただけだし、エミリアさんに提供できるような情報は何も持っていない。


 しかし、情報は提供できないにしても、私がこの旅に持ってきた鼠人探知レーダーの魔道具(中に入れる媒体を変えれば探知の対象を変更できる優れ物)が役に立つのではないだろうか。

 王都に帰った際、旅の同行のお礼に量産品を渡すというのもアリかもしれない。

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