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103.神の言葉

 魔力を持つ魔物の肉を食べることで魔力が得られる――。この事実に今の今まで気付かれず、そして魔物の肉は基本的に美味しくないという認識があるために畜産業が発達してしまい、魔力を得られる手段が減って、魔術士と魔導師の人口が減り続けている。

 この事実を教えればそれらの人口は回復に向かうだろう。しかしこの国の制度では、魔術士級以上は国か神殿に所属する必要がある。職業選択を制限されるのだ。

 それともう一つ、私に魔力感知能力が無いばかりに、ちょうど魔術士級の魔力を持ってしまったモモテアちゃんが、私の魔力感知要員として離れられなくなってしまった。レアなケースではあると思うが、これ以上モモテアちゃんみたいな、本来自由であるべき子供時代を失くしてしまう子が出てくるのは本意ではない。


 ……いや、逆か!? むしろこの事実を周知徹底させることで、魔術士になりたくない人は食べなければ良い話なのだ。モモテアちゃんの場合は知らなかったので今更どうしようもないが、知っていて食べるのならばそれはその人の責任だ。飢えて仕方なく食べることがあっても、魔術士になれば収入源を得られるので、むしろ貧乏脱却の手助けになる。


 パラデシア達は何やら考え込んでいるようで、おそらくさっきまでの情報を整理しているのだろう。だが私としてはさっさと情報を伝えて休みたい。魔力は一晩寝れば回復するらしいから、この魔力枯渇からくる極度の疲労感を改善するためにも、今日はもう寝たいのだ。


「――それから次に語られたお話も重要です。昨今は魔術士や魔導師の人数がどんどん減っているわけですが、魔力をより多く持った存在を体内に取り込むこと……すなわち、魔物を食べることで、魔力を得られるというお話をされました」

「なんですって!!」


 パラデシアが額に指を当ててしばらく下を向き、ふたたび私に向き直った。


「……神はどの程度の魔物を食せば魔術士級や魔導師級に到れるか、と言ったことは語っていませんか?」

「いえ、そこは特に何も仰っていませんでした。そもそも魔術士級という区分がそもそも私達人間が勝手に呼称しているだけですから、神様にとってはどうでもいいことなのではないかと」


 でも言われてみれば確かに、どれくらい食べれば魔術士級や魔導師級になるのかは気になる。

 私の人格が宿る前のアニスが、モモテアちゃんと一緒にこっそり魔物肉を食べていたわけだが、そうなると同じ物を食べていたモモテアちゃんと私との魔力量の差が気になる。同じ物を食べていたなら、モモテアちゃんも私と同じ魔導師級でなくてはおかしいはずだ。

 ……そういえば、私の人格が宿る前のアニスには魔法の素質が無いって言ってたな。そうなると私の場合は魔物肉で魔導師級の魔力を得たとはとても考えられない。とはいえ私は色々特殊過ぎるので、その辺の事例は当てにならないということなのだろう。


 まぁ少なくとも数匹程度食べたところで魔力を得られるわけではないはずだ。パラデシアに情報は与えたわけだし、あとは王族まで案件を持っていって勝手に検証してくれると思う。


 ――次の話題に進めよう。

 のじゃロリ神の目的は精神を宿す生物なら同じ次元の引き上げ対象であること。それは人間だけではなく魔物等も含まれる。つまりのじゃロリ神にとって人間だろうと魔物だろうとそこに種の優劣等は存在しない……この事実ははっきり言って多大な混乱を招きそうだ。流しておこう。


 その後にのじゃロリ神と話した内容は……私の兄が関わる話だ。

 兄が地球で遺跡調査に赴いた先で別世界に転移し、マカデミルさんとウィリアラントさんに出会ったために、二人に宿っていた精神エネルギー生命体が兄にも宿り、地球に戻った兄を介して私にも宿った、という経緯。……考えてみたらモロに空気感染だなこれ。厄介すぎる。

 そして私に宿った精神エネルギー生命体は、地球にいた鼠人にとっては貴重な魔力であったため、その魔力目当てに私は殺された、と。

 うん、私にとってはかなり重要な情報だが、パラデシア達に話す必要はない。次だ。


 えーと次は確か……私に精神感応の能力があるという話だったな。

 まったく自覚無しに、たまに相手の感情を高精度で読み取っている時があった。ただし発動条件がわからないから、残念ながら今の私にコントロールできる気はしない。これも流そう。


 次、のじゃロリ神の精神世界へ招かれた現象は、私の魔法の行使だという話。

 そもそも魔法はイメージの具現化だから、聖地に集中している精神エネルギー生命体が深層心理にある私達の望みに反応して、その上で神様の存在をある程度正確に理解できる知識があれば精神世界へと連れて行かれる。

 ただし、連れて行かれるとは言っても現象としては魔法の行使だから、その滞在時間に応じて自身の魔力を消費し、現実に戻ったらご覧の通りの魔力枯渇が待っていた。

 ……私の場合、精神世界に居たのは体感時間でせいぜい数十分だが、現実では二日経っていた。これがもし魔術士だったら、精神世界に招かれたとしても一瞬で終わるのではないだろうか? まぁその前に精神エネルギー生命体という存在の定義を理解する必要があるのだが。

 この辺の話は、今私が疲労困憊している状況を説明するため部分的に話す必要があるだろう。


「私の時間が止まっている間、私は神がお作りになられた精神世界に招かれました。現実では二日経っているという話ですが、私の体感時間ではせいぜい二十バム(約三十分)程度の出来事です。そして精神世界に招かれている間は私の魔力を消費し続け、魔力が無くなったため現実に戻ってきました」

「神に招かれるには最低でも魔導師級の魔力が必要、というわけですね……」


 えっ!? そう解釈しちゃうの!? 招かれるのと魔力量は関係ないけど……まぁいいか。話を聞くならそれなりに魔力量が必要なのは間違いないのだし。ぶっちゃけ細かく説明するのも面倒くさい。次だ次。


 次は、地球に戻る方法は教えられない云々の話をしたな。でも探している鼠人――魔将ベンプレオには確実に会える、という情報は教えてくれた。これも私自身には必要な話だが、パラデシア達には関係ない。


 そして魔力枯渇する直前の最後の話題、旅のメンバーが親しくなっている人を旅に同行させるといい、という話だったな。……考えられるのはラルクシィナ神殿の関係者とか、この都市に住んでいる友人知人、あとは私の時間停止の解除を試みてくれた時空魔法使いの女性か?

 パラデシアはここに巡礼の旅で四度も来ているし、どれも可能性はありそうではある。だがこれに関しては私が判断できるものではないし、さっさと聞いたほうが早いか。


「それから私が現実に戻る直前、神様は最後に、旅のメンバーが親しくなっている人を同行させるといい、と仰っていました。誰か心当たりはありますか?」


 その問いにパラデシアはハッと表情を変えた。


「直近で親しくなっている人物なら、おそらく彼女しかいません。神は本当に、同行させるように仰ったのですね? 彼女を」

「その彼女、というのがどなたか存じませんけど、文言については間違いないです。パラデシア様に心当たりがあるのなら、その彼女が当てはまるのだと思います」

「神様からの御神託ということね!! ラッティロ、アタシと一緒にエミリアちゃんを呼びに行くわよ!! 今すぐに!!」

「へい!! アネさん!!」


 言うが早いか、カレリニエさんとラッティロが部屋から出ていった。

 該当する彼女というのはエミリアという名前らしい。……いったいどんな人だろうか?

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